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元外交官・原田武夫の金融史探訪 あなたの知らない、歴史の中からマネーを掴め!

通貨を発行しているのは誰か?

2008/12/22

揺さぶられる香港ドル

昨年の夏頃だっただろうか、我が研究所の研究員(当時)から次のような意見を聞いたことがある。

「原田代表、これからは香港ドルが高騰するんじゃないでしょうか。多くの金融機関がそういったレポートを出しています。ひととおり見てみたのですが、かなり納得の行く説明であるように思うのですが・・・」

真面目な研究員君には非常に申し訳ないが、私は即座に「これは仕掛けられてるな」と感じた。マーケットにおける格言の一つにこんなものがある。―――「日本人とアラブ人が来たら、その金融商品は終わりだ」情報リテラシーが相対的に乏しい民族が最後には出し抜かれるのが金融マーケットである。悲しいかな、その典型ともいえる日本人は、米欧系“越境する投資主体”たちの正に食い物になっているというわけだ(ちなみに並び立って“不名誉な地位”を与えられているアラブ勢はというと、少なくともこれまでは石油という錬金術を持っていたため、多少の損をしても全く意に介さなかったというのが実態だろう)。

実際その後、昨年6月後半をピークとして香港ドルは暴落(対円レート)。現在では見る影もないほどの低落ぶりである。つまり、あの時、私が直観的に思いだしたこの“格言”は、正に現実になったというわけなのだ。

それだけではない。―――香港ドルを発行している銀行は全部で4つある。英国系が2つ、そして中国系が2つである。その内、前者の一つであるスタンダード・チャータード銀行について、中国の通貨当局が突如として“物言い”を始めたのである。止まぬ金融メルトダウンの中、同行は今、厳しい局面に立たされている。そのため、これをカヴァーすべくシンガポールの国営ファンド(SWF)からの出資を受けているのだ。ところがこれを中国当局が見咎めた。「華僑が牛耳る国・シンガポールとはいえ、外国は外国。その影響力が益々増している銀行に、香港ドルの発行権限を与えるわけにはいかなくなるかもしれない」というのだ。

つまり、香港ドルはその信用を支える梃子としての英国勢によるサポートを失うかもしれないのである。そのような中、香港ドルはますます暴落の一途をたどりつつある。

日本人が通貨を取り戻した理由とは?

このような香港ドルをめぐる状況を思い起こしながら、私はふと、幕末から明治維新当初にかけて、通貨を巡り生じた出来事を思い出した。

鎖国政策から開国へと江戸幕府の外交方針を大幅に変更させたことで有名なのが「安政条約」である。この安政条約は外国貨幣の国内流通を認めていたが、他方で外国銀行紙幣については特に規定していなかったため、続々と日本にやってくる外国勢は盛んに紙幣を発行し流通させた。

しかし、通貨を発行する権限(通貨高権)といえば、国家を国家ならしめるための3つの権限(外交権、警察権)の一つである。それをなし崩し的に奪われてしまっては大変だとばかりに、明治維新政府はあれやこれやと手段を講じては、これらの紙幣(外国銀行洋銀券)の締め出しにかかったのである。

道のりは決して平たんではなかったが、早くも1874年には函館で活動する英国人商人ブラキストンが発行した紙幣もどきの証券の発行差し止めに維新政府は成功する。これは当時の日本勢にとって相当勇気づけられる出来事であったらしい。「此機ニ乗ジ諸外国銀行証券ノ処分ヲ為スベシト決シタ」(立脇和夫「外国銀行と日本」蒼天社出版より引用)のだという。実際、その後も着々と外国銀行洋銀券の“締め出し”に成功した日本では、日本円のみが流通するようになる。

一見当たり前のことのように思える日本円(日本銀行券)だが、実は先人たちの涙ぐましい努力がそこには隠されていたというわけなのである。そして、仮に外国銀行洋銀券にとどまらず、日本の通貨高権そのものが狙いうちにされ、米欧系の“植民地銀行”たちがイコール発券銀行となるような国制になっていたとするならば、昨今の独歩高に見られるように、実は世界中で最も今信頼されている通貨である日本円の地位はなかったかもしれないのである。

その先の未来を見通す

こうした論点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その背景にありながら私たち=日本の個人投資家が知ることのなかった歴史上の“真実”について、私は、来る2009年2月7・8日に東京・横浜、21・22日に大阪・名古屋でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。

このコラムを書いている最中(12月12日)に、米国では大手自動車メーカー3社(ビッグスリー)に対する救済法案が連邦上院で事実上否決されたことを受け、ドルが暴落、一気に1ドル=80円台後半までの円高展開となった。様々なセクターから公的救済を求められるものの、もはやそれを行うための資力を全く持たない米政府が持つ唯一のカードは「デフォルト(国家債務不履行)」を宣言し、まずは“無かったことにする”という手段しかないように思われる。

当然、そうなれば“米国的なるもの”は投げ売りとなる。無担保・無金利の米国債に匹敵する“米ドル”もその例にもれず、一気に暴落ということになるだろう。だが、転んでは絶対にタダでは起きないのが米国勢である。その先には必ず何らかのシナリオが想定されているはずだ。つまり米国をめぐり、今後「通貨」こそが新たな焦点となってくるというわけなのである。

米ドルは戦後、国際基軸通貨であり続けてきたが、それがまさに今変わろうとしているのである。当然、香港ドルは言うに及ばず、日本円も根底から揺さぶられることになるに違いない。その動揺の中で、これまで通貨高権をめぐって展開してきた密やかな歴史が一つ一つ覆され、同時に新しい歴史が紡がれていく。私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンは正に今、そうした「歴史の生き証人」になりつつあるのである。今回取り上げた「通貨」も含め、様々なシステムが世紀の転換を迎える時代=現代を、今後私たち日本人はいかに生き抜き、どのような日本を築いていくべきなのか。この根本的な問題を考えていくためのカギについては、来年(2009年)1月に開催する「新刊記念講演会」でお話する予定である。ご関心の向きは是非ご来場の上、この喫緊の問題をともに考える作業にご参画いただければ幸いである。


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著者:原田 武夫(はらだ たけお)

原田 武夫

1971年生まれ(36歳)。東京大学法学部中退後、外務省にキャリア外交官として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。その後、個人投資家の情報リテラシー向上を目的とした日本初の“private intelligence agency”「原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)」を立ち上げる(2007年4月に株式会社として設立登記)。現在、同社代表取締役をつとめる一方で、これまで合計16冊の著作を日本とドイツで刊行する。また、社会人や大学生を対象に無償の『情報リテラシー』セミナーを開講し、好評を博す。


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