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元外交官・原田武夫の金融史探訪 あなたの知らない、歴史の中からマネーを掴め!

歴史が教える“越境する投資主体”の押し寄せるタイミング

2008/10/27

“越境する投資主体”と技術革新の密やかな関係

世界中のあらゆるマーケットで、あらゆる金融商品の乱高下が止まらない。
「猫の目相場」などといって済ませている向きもいるが、これは要するに、米国由来のリスク資産に基づく損失額が余りにも巨大(1000兆円超)であることが露呈し始めている中、「真実の時」が訪れる直前まで、自己勘定取引によるトレーディングで少しでも小遣い銭を稼ぎ、別腹を満たそうとする“越境する投資主体”たちの動きによるものである。したがって、こうした乱高下は「真実の時」が訪れるまで続く。プロでさえもはやデイリーには先読みできない相場で、情報力の少ない個人投資家が参戦し続けるかどうかは、個々人の趣味の問題というべきであろう。

そのような状況だからこそ、むしろ歴史の大局を見据えた思考に努めるというのも一法なのかもしれない。事実、私たちの研究所では今、すぐそこにあるマネーの「潮目」を追うのもさることながら、100年に一回あるかないかの世界システムの大転換を控え、どのような歴史の「潮目」が紡がれるのかに専心している。日本語で「急がば回れ」とは良くいったものだ。そのようにするからこそ見えてくる今のマネーの「潮目」がくっきりと浮かび上がってくる。

続々と経営破綻する“越境する投資主体”たちを見て、多くの場合、大手メディアは米国流金融資本主義という悪魔の錬金術がついにはじけたと大騒ぎするだけである。確かに、要するに「安く買って高く売りつける」「リスクは自分で負わない」という二つの大原則だけが支配するマーケットの世界にあって、あれやこれやとこねくり回し、結果として複雑怪奇で不透明な金融商品を続々と生み出した米国流の手練手管にはただただ呆れるばかりだ。だが、そもそも米国流金融資本主義が100年前の昔から、ずっとそのような調子であったと考えるならば、歴史の真実、すなわちこれから何が生じるのかを見損なうことになるであろう。

なぜなら、“越境する投資主体”が国境を超える(すなわち「越境する」)のには、それなりの理由があるからだ。しかも、“越境する投資主体”だけがそうするのではなく、彼らは逆に別の主体が越境するのを助ける形でいわば後追いをするに過ぎなかったのである。

それでは“越境する投資主体”に先行するそうした主体は一体何なのかといえば、技術革新によって誕生した新しい技術を海外へ移植しようとする事業主体なのであった。技術革新の結果、まず米欧で新しい技術は花開き、マーケットを獲得していく。しかし、やがてそれが飽和状態になった時、新たな技術を引っ提げてこれら事業主体たちは、海外へと雄飛するのである。

そのような時、「先立つもの」が必ず必要となる。そこで、これをファイナンスすべく、別の専門家たちがついていったというわけなのである。これが、20世紀後半より生じた“越境する投資主体”たちの元祖による行動パターンだったのである。

世界最大級のIT大国・ニッポン

ところが、当たり前といえば当たり前のこうした歴史上の連鎖反応は、意外にも歴史家たちによって研究されていない。軍隊による侵略なら侵略、あるいは工場による進出なら進出、そして植民地銀行の開設なら開設といった具合で、各々の主体について研究だけがなされてきたのである。とりわけ戦後日本の歴史学においては、一定の歴史観に基づいて歴史叙述が行われてきたので、これらを複合的にとらえることは時に都合の悪いやり方だったのであろう。なぜなら、これらの主体が折り重なる中で“越境する投資主体”たちが海外へと雄飛し、やがては利益確定して、別の地域に移ることによって資本主義の歯車が絶えず回っているという歴史の真実が明らかになってしまっては、「資本主義はやがては終わり、社会主義・共産主義がやって来る」という主張が正に打ち壊されてしまうからだ。

19世紀後半以降の世界で、こうした「越境する事業主体」の後に「越境する投資主体」が追って出て行くというパターンを最も美しく描くことができるのは、電力セクターにおける展開である。この分野においては、ようやく最近、欧州において集中的な研究成果が公表され、研究者たちの間で耳目を集めているところだ(William J. Hausman他“Global Electrification”)。これを読む限り、当時から閉鎖的なマーケットなど存在しなかったのであって、日本の電力セクターでさえ、“越境する投資主体”たちの手を借りなければ立ち行かなかったことが明らかなのである。そして、こうしたトレンドを作り出したのが、米国でかのエジソンが作り出した「電灯」という技術革新なのであった。電灯を“越境する事業主体”たちが続々と普及させる中、これをファイナンスするために“越境する投資主体”たちも国境を超えていく。その中で日本の“事業主体”=電力セクターとであったというわけなのである。

それでは、今、バタバタと倒れつつある“越境する投資主体”たちは一体どのような“越境する事業主体”について、国境をまたいでやってきたというのであろうか。――――様々な考え方があるだろうが、私としては何といってもインターネットがこれら二つをつなぎ合わせる決定的な役割を果す技術革新であったと考えている。今では死んだようになっている日本の新興マーケット。そこでかつては大商いを繰り返していたIT関連銘柄のバックでは、絶えず「あの米系投資銀行がいる」「いや、この米系ヘッジファンドが潜んでいる」などと数年前まで叫ばれたものである。

だが、そうした米系“越境する投資主体”たち自身がもはや息も絶え絶えとなっている中、もはや彼らから手助けを得ることの出来ないインターネット業界は、死んだように静まり返っている。かつては「年次改革要望書」などという大鉈を振り回して日本マーケットへの参入を求めてきた米系“越境する事業主体”も、インターネット分野ではすっかり息を潜めてしまっている。その意味で、「“越境する事業主体”に“越境する投資主体”が追随し、大量のファイナンスを行う中で、マーケットが大暴騰するものの、やがてバブルが弾け、両者は共にターゲットから去っていく」という原理原則がここでもまた働いていると見るべきなのである。

そのような中、日本では700万人超もの人たちがネット上の仮想空間を利用しているとの統計が報道された(10月23日付日本経済新聞)。ブログの利用率、あるいは携帯でのネット使用などを見ても、日本が今や随一のIT“利用”大国であることは誰の目にも明らかだろう。遠く離れた米国で生み出された技術が、またしても日本にとどまり、発展を遂げているのだ。

この事実は、かつて英国海軍の水兵たちが着ていたセーラー服が、極東へと伝わり、女子学生の制服として「日常」のものになったという文化の大流すら思い出させてくれるものである。しかし、セーラー服を着ている欧米人は今や誰もいない。全く新しいモードへと切り替わった欧米の文化との比較でいえば、次なる技術革新が何であり、それを伝播させるべくどういった“越境する事業主体”が「潮目」を生じさせ、これにいかなる“越境する投資主体”が追随するのかが大変気になるところなのである。

次に“越境する投資主体”が押し寄せるのはいつか?

こうした論点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その背景にありながら私たち=日本の個人投資家が知ることのなかった歴史上の“真実”について、私は、11月8・9日に東京、仙台で、そして11月29・30日に横浜、さいたま、東京でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。

冒頭でも書いたが、米国由来のリスク資産に基づく損失額、すなわちマーケットに開いた「大穴」が余りにも巨大である中、これを埋める手段は二つしかない。一つは、「戦争」によって有効需要を創出すること。そしてもう一つが、技術革新によって新たなマーケットを作り出し、需要を作り出すことである。これらによってようやく「大穴」は埋まり、マネーの「潮目」がゆっくりと動き出す。

その意味で「越境する投資主体」は、一部の自称“専門家”たちが叫ぶように死んだのではない。役回りが終わったので、幕間の休憩を取っているに過ぎないのである。彼らが束の間の休憩を終え、次に動き出すのがいつになるのかを今の段階で断定することは難しい。バイオテクノロジーか?WEB3.0か?あるいは新型の航空機なのか?代替エネルギーなのか?

「潮目」の予兆は世界の至るところで見え始めている。歴史を振り返りながら、徹底的に考え抜き、乾坤の一滴とでもいうべき一打を「真実の時」に打ち込むこと。これこそが、私たち=日本の個人投資家に求められる、あるべき思考と行動なのだと思う。「猫の目相場」に付き合っている暇など、本当は全く無いのである。なぜなら、今の世界を仕切る人々(ファミリー)は、いずれも前回生じた「真実の時」で全く同じ思考と行動に努めたが故に、現在の栄誉ある地位を獲得したのであるから。


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著者:原田 武夫(はらだ たけお)

原田 武夫

1971年生まれ(36歳)。東京大学法学部中退後、外務省にキャリア外交官として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。その後、個人投資家の情報リテラシー向上を目的とした日本初の“private intelligence agency”「原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)」を立ち上げる(2007年4月に株式会社として設立登記)。現在、同社代表取締役をつとめる一方で、これまで合計16冊の著作を日本とドイツで刊行する。また、社会人や大学生を対象に無償の『情報リテラシー』セミナーを開講し、好評を博す。


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