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元外交官・原田武夫の金融史探訪 あなたの知らない、歴史の中からマネーを掴め!

眠れる獅子・中国は今度こそ起きるのか?

2008/10/20

「満洲」という密かな復興プログラム

去る9月16日のブラディー・サンデー(血の日曜日)からいよいよ本格化した米国発の金融メルトダウン。10月10日より行われたG7蔵相・中央銀行総裁会議や、IMF(国際通貨基金)総会などを契機に、“国際協調”のための一連のお膳立てが出来、それらが着実に実行されているかのように見える。マーケットは引き続き一喜一憂、14日には日本株が歴史的高騰となったことは記憶に新しい。

しかし、誰が何と言おうと、現在起きていることは「金融メルトダウン」、すなわちこれまで世界を成り立たしめてきた金融システムそのものが溶けていく過程なのである。一喜一憂してはこれからやって来る本当のマネーの「潮目」を読み違えることになるであろう。とにかくこれから事態が収束するには時間がかかるという認識を頭の隅々にまで刷り込んでおくことだ。

そのことを理解するには、1929年の金融恐慌から始まる1930年代の日本とそれを取り巻く諸外国の動向を振り返ると良いだろう。もちろん、「歴史は二度繰り返す」などと陳腐な格言をここで言うつもりはない。マーケットは当時と比べ、量・質・スピードの点ではるかに発展してきている。単純な比較が可能であるなどというべきことでないのは重々承知している。

だが、一つだけ当時と明らかに変わらないことがあるのだ。それは、日本がおかれている地政学的な状況である。言い換えれば、地理的な条件とそれに伴う政治・経済・文化などの各種条件だ。この変わらぬ地政学的な状況を振り返ることがなぜ重要なのかといえば、それを見つめることを通じて、当時と同じような「危機からの脱出プログラム」が可能かどうか、またそもそもその「脱出プログラム」とはどのようなものであり得るかという頭の体操が出来るからである。

一般に1930年代前半から中盤にかけて、日本を昭和恐慌から救ったのはインフレを旨とする「高橋財政」によるものであったといわれている。しかし、大手メディアもしばしば口にするこうした歴史理解は、実は重大な事実を見落としていることをご存知だろうか。

なぜなら、少なくとも1936年に至るまでの過程で日本経済を最終的に上昇気流へと再び乗せたのは、「満洲」(現在の中国東北部)だったからである。昭和恐慌によって明らかに過剰となった生産力と資本を、日本は「満洲」の経済開発へと割り当てることによって、ものの見事に再浮上することに成功したのであった(参考文献:「日本興業銀行五十年史」)。しかし、余りにこれが旨味のあるビジネスであったので、関東軍を中心に日本の一部勢力がこれを独り占めしようとした。

―――これに米英を中心とする列強が声高に非難し始めたところから、第2次大戦に至る日本の悲劇が始まる。

「中国が勝ち組だ!」と叫ぶソロス

このように、近未来における日本の再浮上シナリオを考えるには、過去とのアナロジーでいうと、中国の存在が極めて重要なのである。それではその中国を巡ってどのような状況が今、進行しつつあるのだろうか。

この点から、最近、大変気になる報道があった。「伝説の投資家」であり、現在でも「世界の大富豪10人の内の1人」でもあるジョージ・ソロスとのインタビューである(10月14日付「ディ・ヴェルト」(ドイツ)参照)。その中で、ソロスは米欧を中心とする世界の金融システムが安定を取り戻す為には、次の5つの条件が整うことが必要だといっている。

第一に、政府が銀行システムに対してあらためて資本を注入すること。
第二に、銀行間の信用取引を再び活性化すること。
第三に、米国における不動産信用システムを再構築すること。
第四に、欧州はユーロが減価することを防ぐべきこと。

そして第五に、今後、金融危機が新興諸国へと及んでいくことを防ぐべきこと。この関連でソロスは日本が先のIMF総会で行った新興諸国支援スキーム設立の提案を高く評価している。

なぜこの報道が気になるのかというと、以上を述べた上で先進国が過去25年にわたって生産する以上に消費していたのに対し、中国はずっとカネを貯め込んできたとソロスは指摘しているからだ。そして、米国が25年にわたって行ってきたこうした愚行の結果、パワーは明らかにアジアへ、そして中国へとシフトし始めていると断言するのである。

出し惜しみする中国の国営ファンド(SWF)は何を狙うのか

こうした論点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その背景にありながら私たち=日本の個人投資家が知ることのなかった歴史上の“真実”について、私は、11月8日(土)“東京”、11月9日(日)“仙台”等でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。

一方では、1930年代に戦前日本が経済復興する際の礎となった「満洲」という意味での中国。他方で、現代金融資本主義の“達人”がプレイアップする「中国勝ち組」論。これらは一見したところ、相互に全く関係が無い様にも見える。

だが、よくよく考えるとそうではないことに気づくのだ。なぜなら、日本は米国という最大の“お得意さん”があの体たらくである以上、現実問題として輸出経済のはけ口を西の大消費地である中国を中心とした東アジア経済圏に求めざるを得ないのである。1990年代半ばには円高不況のクラッシュから日本を救ってくれた東南アジアが、タイを中心にいきなり「政治の季節」を迎えており、マーケットどころではない状況に陥ってしまっていることが、こうした方向転換に拍車をかけている。

それと並んで米国はというと、あの手この手で中国の国営ファンド(SWF)からカネを搾り取ろうと画策を繰り返している。しかしこれまでのところ、左団扇の中国の方が上手であるといわざるを得ない。華僑華人勢力の国・中国は明らかに出し惜しみをしているのだ。それもそのはずだろう、まだ金融メルトダウンは続き、「底」ではないのだから。しかしこのような状況が継続する限り、米国勢の広告塔となっている御仁たちによる「中国礼賛」の雄たけびは続くのである。

金融危機から脱出するための方途として、またしても「中国」にフォーカスする日本、そして米国。眠れる獅子・中国が今度こそ起きるのかどうかに加え、70年前のあの日と同じく、日米の熱い奪い合いが始まるのか否か、手に汗握る展開がこれから待っているのかもしれない。


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著者:原田 武夫(はらだ たけお)

原田 武夫

1971年生まれ(36歳)。東京大学法学部中退後、外務省にキャリア外交官として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。その後、個人投資家の情報リテラシー向上を目的とした日本初の“private intelligence agency”「原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)」を立ち上げる(2007年4月に株式会社として設立登記)。現在、同社代表取締役をつとめる一方で、これまで合計16冊の著作を日本とドイツで刊行する。また、社会人や大学生を対象に無償の『情報リテラシー』セミナーを開講し、好評を博す。


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