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元外交官・原田武夫の金融史探訪 あなたの知らない、歴史の中からマネーを掴め!

これからの焦点は「債券」であるという分析

2008/09/22

越境する投資主体”の破綻―――これからどうなるのか?

先日、米系“越境する投資主体”の雄であるリーマンブラザーズが経営破綻した。米国において第4位の座を占める投資銀行のあっけない終わりに、唖然とした方も多かったことであろう。 もっとも、マーケットにおけるささやきを聞く限りにおいては、こうした最悪の事態はあらかじめ“織り込み済”であったというべきだろう。むしろ2、3ヶ月ほど前より「どこが最初で、どこが次、そしてその次は・・・・」といったレベルの会話すら漏れ聞くようになっている。ただでさえ情報に乏しい私たち=日本の個人投資家を相手にひたすら危機を説く向きがいるようだが、そうした声に惑わされることのないようにまずは気をつけたいものだ。

むしろここで考えておくべきなのは、じっくりと地に足をつけながら「次のフェーズ、さらにその次のフェーズにおける“潮目”は一体何なのか?」を考え、時に機敏に行動することであると私は思う。「危機という言論」を売り物として叫びつつ、自らは一切リスクをとっていない自称「専門家」「経済評論家」「米国のエキスパート」といった輩の誘導に惑わされてはならない。 そう考えた時、私がどうしても気になって仕方が無いことが一つある。それは、「“越境する投資主体”たちはここまでマーケットを随所で食い荒らしておきながら、次は一体どこを主戦場に据えるのか」ということである。「株式」、「為替(FX)」、そして「商品先物」と順番に食い荒らしてきた“越境する投資主体”たち。その次に狙われるのはどこかというわけである。

なぜか次は「債券」であると叫び出した米英勢

この観点で想起しておきたいのが、1920年代末から1930年代初頭を覆った「世界大恐慌」の時どうだったのかということである。歴史を紐解くと、まず1920年代とは米国が金融マーケットとして事実上「お披露目」となった時期であった。それまで、各国がファイナンスをするといえば、第一にロンドン、第二にパリといった欧州だったのである。ところが、第一次大戦を契機に米国がこの状態にいきなり“殴りこみ”をかけてくる。米政府は第一次大戦中、欧州諸国の戦時国債を大量に引き受け、世界最大の「債権国」へ踊り出る一方、国内との関係では戦争継続のため「自由公債」なる債券を安価で売り出したのである。これがあまりにも“お手ごろ”な値段であったため、一般庶民までもが飛びつき始め、徐々に戦勝色が濃くなるにつれ、いわば債券バブルとでもいう状況になっていった。

これに眼をつけたのが、“越境する投資主体”たちである。次々に新手の「債券」をNYマーケットに投入しては、個人投資家=庶民たちの射幸心を煽り、バブルをつくりあげていったというわけなのである。ちなみにこの時、もっとも好まれた商品の一つが日本の発行した債券(日本から見れば米ドル建て外債)であった。1920年代半ばよりNYで売りさばかれ始め、大好評を博したという。

ところが、「潮目」は必ずやってくる。―――債券バブルの背景には、「最後は米政府が支えてくれるだろう」という漠然とした期待感が個人投資家たちの間にあった。しかし、実際にはとりわけ欧州諸国の発行する債券について米政府は一切サポートしておらず、一つにはそれが露わになった瞬間、人々は凍り付いてしまったというわけなのである。バブル崩壊という「潮目」が瞬く間に訪れ、世界は大恐慌へと突入する。金輸出再禁止へと連なる中で世界各国は順番に「ウチの国だけは助かろう」とブロック経済化し、最後はその領分の奪い合いとなって第二次世界大戦へと突入していく・・・・。一般に「株式バブル」と考えられがちな1920年代の米国経済であるが、“越境する投資主体”に着目すると、むしろ「債券」こそがメインだったともいえるのである。 一方、翻って考えてみるに、現代においてはどうかというと、株式マーケットは下落に下落を重ね、米ドルも低落の一途である。さらに商品マーケットも「需要減退」を理由に(地政学リスクによる短期的な「仕掛け」は別とすると)今後は長期低落の傾向にあることは間違いない。―――そのような中、とりわけ東アジアについては「これからは債券だ」と、どういうわけか英米勢が叫びつつあるということをご存知だろうか。その雄たけびは、このままでいくとまずは10月後半に中国沿岸部を起点として発せられることになりそうである。大手メディアは決して語らないが、人の動き、マネーの動きを丹念に金融インテリジェンスの手法で追っていくとそのことが分かってくる。

しかし、なぜ今「債券」なのだろうか。そしてまた、どうして「東アジア」においてなのだろうか。北朝鮮?中国における上海万博に向けた第2次バブル?日本における公共事業の大規模な再開?―――謎が謎を呼ぶ展開であるが、とにもかくにも、全くの死角に“越境する投資主体”たちの注目が集まっているということにだけは気をつけておこう。そしてまた、やがて訪れる「債券バブル」についても、結局は「世界大恐慌」の際と同じような崩落が待っていることも、あらかじめここで注意喚起しておきたいと思う。

そして歴史は繰り返す。あなたはリスクをチャンスに変えられるか?

時代は変わり、状況は変わったとはいえ、明日を考えるためには変わらぬ重要性を持っている金融をめぐる歴史を、学校で真正面から学ぶこともなく、ただひたすら前に突き動かされているのが私たち=日本の個人投資家である。しかし、「過去」を知らぬ者が「未来」を先取りできるはずもない。債権と東アジアをめぐる歴史は、そのことを間もなくまざまざと見せ付けてくれるのかもしれない。

こうした論点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、それに対する私たち=日本の個人投資家のあるべき対処法について、私は、10月4・5日に神戸、大阪、名古屋、そして10月18・19日に東京、横浜でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。

債券といえば、現下の状況を踏まえ、もう一つだけ述べておかなければならないことがある。それは今後の動向を握っているは、米国債と日本国債であるという点である。米国由来のリスク資産に基づく損失額が大きくなればなるほど、先般の住宅系金融機関に関する救済措置に見られたとおり、結局は国庫が頼りとなり、そのファイナンスのために米政府は大量の国債をしかも長期で発行し始めることであろう。最初はうまくいくだろうが、やがてそれもうまくいかなくなる時がくる。そうなった時、「誰がいったい世界最大の米国債保有者(国)なのか?」という問いに対する答えを知っておくことが私たち=日本の個人投資家、いや日本人全体にとって最も重要なのである(その答えとしての“厳然たる事実”、それは「最大の保有国=日本」ということに他ならない)。

その意味で、来る秋に行われる衆院解散総選挙の本当の争点は「金融救国」、この一点に絞られている。果してそれに見合うだけの「情報リテラシー」と歴史感覚を持った候補者が永田町に現れてくるのかどうか。このことをしっかりと見据えて行動していきたいものである。


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著者:原田 武夫(はらだ たけお)

原田 武夫

1971年生まれ(36歳)。東京大学法学部中退後、外務省にキャリア外交官として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。その後、個人投資家の情報リテラシー向上を目的とした日本初の“private intelligence agency”「原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)」を立ち上げる(2007年4月に株式会社として設立登記)。現在、同社代表取締役をつとめる一方で、これまで合計16冊の著作を日本とドイツで刊行する。また、社会人や大学生を対象に無償の『情報リテラシー』セミナーを開講し、好評を博す。


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