映画

ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo

映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。

全て表示する >

ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 71号 2006.12.15

2006/12/15

 
 
☆━┓ ┏━┓ ┏━┓
┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
┗━┫e┣━┫n┣━┫o┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○
  ┗━┛ ☆━┛ ┗━☆    71号  2006.12.15


∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 †01 日本のドキュメンタリー映画のかたち
     コウモリのフェスティバル
     <EARTH VISION 地球環境映像祭>(2)  宇津 留理子
 †02 ワールドワイドNOW ≪ベルリン発≫
     空間と時間による摩擦 ―映像アートを観る  梶村 昌世
 †03 四海放浪
     三峡の善人(たち)「その4 映画の後」  藤岡 朝子
 †04 neoneo坐12月後半の上映プログラム
 †05 広場
    新・クチコミ200字評!(45)
      『硫黄島からの手紙』『人のかたち』  (以上の評 清水 浩之)
    告知:年末の所感(……年賀状に代えて)  土本 典昭
    募集:「わが一押しのドキュメンタリー2006」アンケート大募集!
    募集:「自作を語る」などの原稿募集!
    上映の告知の有料化とカンパのお願い  伏屋 博雄
 †06 編集後記  伏屋 博雄


    ★バックナンバー閲覧はこちらまで

   まぐまぐ配信   http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/
   melma!配信    http://www.melma.com/backnumber_98339/


┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■コウモリのフェスティバル<EARTH VISION 地球環境映像祭>(2)
┃ ┃■宇津 留理子
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●出会ってしまう

出会ってしまうことがある。1つの言葉に、写真に、映像に、場面に。そこで、何
かが変わる。たとえ、その瞬間には気づかなかったとしても、自らの思考に、心に、
今までにはなかった、「ひっかかり」のようなものができる。世界が変わる。ささ
やかに、でも確実に。
映像祭は、出会いの場である。作品に、アジア、オセアニア、ポリネシアの自然、
生き物が、環境問題が、ひとや生活、文化が映し出される。制作者の深いまなざし
に支えられた映像作品に出会うことは、楽しく、また、時に、心を引き裂かれるよ
うにつらい。それでも、出会うことを求めてしまう。映像祭は、そう、魔物だ。
そして、映像祭はたぶん、今、私が生きている世の中にあける、ささやかな風穴だ
と思う。

●作品とフェスティバルの幸福な出会い

「EARTH VISION 地球環境映像祭」の中で、私はたくさんの出会いに立ち会ってき
た。その中で、いくつか忘れ得ぬものがある。
『ブッダの嘆き』がもたらした出会いは、その中のひとつだ。
『ブッダの嘆き−ウラン公害に立ち向かう先住民』(シュリプラカッシュ監督/
1999年)この作品は、ウラン鉱山開発が始まった、インドの先住民の住む地域を追
ったドキュメンタリーである。環境対策がなされないまま、開発が続き、川や土地
は放射能汚染にさらされる。そして、人々、特に子どもたちに、病気や障がいがも
たらされる。映像に映し出される、人々の被った被害は、時に正視するのが非常に
辛いものだ。しかし、この作品の真骨頂は、この被害を受けた人々が、自らの生き
る権利を求めて立ち上がり、この不正義に抗するところにある。

この作品は、第8回のアース・ビジョン大賞を受賞した。そして、これを機に、大
きな動きが生まれた。シュリプラカッシュ監督の友人とこの作品を観て動かされた
人々によって、日本で、この現地の人々を支援する「ブッダの嘆き」基金が立ち上
がったのだ。この基金は、現在、被ばくした子どもたちのためのシェルター建設を
始めている。
ブッダの嘆き基金:  http://www.misatoya.net/jadugoda 

『夢と恐怖のはざまで』(メイ・マスリ監督/2001年)
パレスチナの難民キャンプに生きる少女モナとマナール。レバノンのシャティーラ
キャンプ、そして、ベツレヘムのデヘイシャキャンプという隔てられた場所で暮ら
す2人は、メールや手紙の交換によって友情を深め、やがて、国境の有刺鉄線ごし
に出会う。
このドキュメンタリー作品で描かれるのは、モナやマナールの日常だ。友達とのた
わいのないおしゃべり、クラブ活動、恋、将来への夢。しかし、この日常を縁取る
のは、イスラエルによる故郷の占領という圧倒的な不正義と暴力、それによって故
郷を追われ、難民として生きることの困難さ、である。
最優秀賞を受賞した第10回のEARTH VISIONを機に、メイ・マスリ監督が行っている
「パレスチナこども基金」を、日本で支援する窓口をNPOが引き受けてくれること
となった。

【メイ・マスリ監督のパレスチナこども基金 窓口>
 パレスチナ子どものキャンペーン  http://www32.ocn.ne.jp/~ccp/ 】

<極めて個人的な、9.11>
この作品が忘れ得ぬものとなったのは、私の個人的な経験、この作品に出会ったの
が、2001年9月11日の夜であったことも由来する。
この1本の応募ビデオを自宅で観た私は、私自身を含めた世界の沈黙が許している、
あまりに大きな不正義に打ちのめされた。作品が終わっても、私は、テレビのモニ
ターの前を離れることができなかった。画面には、いつの間にかテレビドラマが映
し出されていた。そして、あの事件の映像が流れ始めた。飛行機がニューヨークの
貿易センタービルに衝突する場面、逃げまどう人々、崩壊する建物。しばらくして
から、ニュースが未確認情報として、「パレスチナの過激派が犯行声明を出した」
と伝え、脈略も説明もなく、事件を「喜んでいる」として、パレスチナの人々の映
像を流し始めた。
その映像は、事件の映像に挿入され、流れ続けた。悪夢のように。その後、放送局
がそのニュースや映像について、訂正をした場面を、私はとうとう観なかった。
ある事件、多くの人々の死悲しみをもって報じられるさなかに、不当な誹りを受け、
反論する場さえ奪われている人々がいるということ。この不均衡。

それから、「EARTH VISION 地球環境映像祭」という場を作ることは、この圧倒的
な不均衡に抗して、小さな風穴を開けることでもあるのだと、私は思うようになっ
た。


■宇津 留理子(うづ・るりこ)
「EARTH VISION 第15回地球環境映像祭」の入賞作品 決定!ということで、来年
3月9日(金)−11日(日)の映像祭本番に向けての準備は本格化。今回は、オース
トラリア、韓国、タイ、台湾、日本、フィリピンから監督を招きます。前回から始
めた子どもプログラムも、クレイアニメーションあり、ドキュメンタリーあり、ミ
ュージカルありという面白い展開に。
最新情報は、 http://www.earth-vision.jp へ。
<幕が上がるやいなや、どたっと緞帳が下りた前回。本当にすみません。いやしか
し、今年の風邪はこじれると大変なので、ご注意。>



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃02┃□ワールドワイドNOW ≪ベルリン発≫
┃ ┃■空間と時間による摩擦 ―映像アートを観る
┃ ┃■梶村 昌世
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●映像の果敢な試み

最近映像展を観に行った。ベルリンの現代美術館ハンブルガー・バーンホーフで開
催されている『Jenseits des Kinos: Die Kunst der Projektion』(映画の向こう
側:投影の芸術)という題名の展示会では1960年代から現代までの代表的な映像・
ビデオアートの作品が紹介されている。 Nam June Paik, Bruce Nauman, Valie 
Export,Pipilotti Rist, Stan Douglas, Gary Hillをはじめ27人の作家たちが参加
しているこの展示会は、アート界での映像作品のほんの一部にしか取り組んでいな
いにせよ、印象深く映画館外の映像の在り方を示す。ほとんどの作品が大規模のイ
ンスタレーションで、三次元の空間の中で映像という媒体を体感することを強く意
識している。
多くの作家は以前から知っていたし、いくつかの作品は観るのが2、3回目だったが、
ハンブルガー・バーンホーフの広大な空間で観るインスタレーションは改めて力強
かった。

展示会の題名通りプロジェクションを使った作品ばかりで、空間の使い方が興味深
い。Douglas Gordonの『Twenty Four Hour Psycho』では 巨大なスクリーンが天井
から吊られ、空間に浮かんでいる。Pipilotti Ristの『Ever Is Over All』は展示
空間の角を利用し、ニ面の壁に同時に映る映像はゆがんだように絡み合う。Doug 
Aitkensの『Eraser』は7部の映像から成り立つインスタレーションで、火山の噴火
を辿るこの作品は溶岩の道をなぞるように視界を打ち切ったり広げるように空間が
設計されている。展示のキューレーターの一人でもあるStan Douglasの
『Ouverture』では2台のスクリーンが並んで暗闇の中に巨大な境界線のように立ち
すくんでおり、そこには照明に照らされる夜の森の映像が映され、ヘリコプターの
飛ぶ音が空間を満たす。

マルチスクリーンを使ったり、スクリーンの表裏に映像を投影したり、観客の動き
を認知し映像が反応する作品もあり、それらは映画館の極めて制限された見方とは
異なる映像へのアプローチを提供する。観客は常にスクリーンに対しての自分の位
置を探らなければならない。始めと終わりがある一本の映画と違って映像がループ
する作品も多く、どれほどの時間を作品に費やすかも観客次第である。また、
Douglas Gordonの『Twenty Four Hour Psycho』はおなじみのヒッチコック映画
『Psycho』をフィルムからビデオに変換し、長さを24時間に伸ばしている。テレビ
や映画館のしきたりを破り時空間的な変化を与えるこれら映像作品は、鑑賞者の受
動的になりがちな姿勢を見直すきっかけとなる。それは結局内容もより注意深く観
る姿勢を養うことに繋がる。1960年代にビデオという媒体の誕生とともに映像は
アートの世界に定着したが、それ以来映画の(特にハリウッドの)幻想主義と異な
る表現を追求してきた。媒体の多様性が更に増し、止まることなく無数の映像が流
れる現代社会で観るという行為を考えさせてくれる展示会である。

もうひとつ改めて感じさせられたことは、テクノロジーと映像表現の密接な関係で
ある。ソニー社の様々なビデオ機器の開発はビデオアートの発展と密接に繋がって
いることは知られていることだし、映像文化の革新は軍事開発と監視技術の発展か
ら来ることが多いのも言うまでもない。(英語の「to shoot a film」という表現
は適切に思える。)

今回の展示会では多くの作品がDVDで再生されプロジェクターで投影されているわ
けだが、そうするとフィルムで撮影された映像もピクセル化されデジタル技術の質
感を持つ。表面の摩擦が違うと、作品の効果もまた変わる。Valie ExportやDan 
Grahamの16ミリと8ミリフィルムを展示にも利用した作品を眺めるとその差が明ら
かになる。
フィルムにしかない表現力が薄れていくことは、そこにしかない現実が消えること
でもある。つまりテクノロジーはまたいつも現実をつくるわけであり、その現実の
中でこそ可能なコミュニケーションがある。

戦後は映写技師が映写機を持って村から村へ点々とまわり、集合場所であったお寺
でずいぶん傷だらけのフィルムを上映したと母から聞いている。まだ幼かった母は
その一大イベントに遅れて駆け付けることもあり、お寺の門に辿り着くと白い布に
投影されているハリウッド映画を裏側から観たことが記憶に残っていると言う。左
右逆に映るヒーローたちは、それだけで違うものに見えたそうだ。時空間と映像技
術はさりげなくしかし徹底的に見えるものを変えるみたいだ。熱で焼けてしまうフ
ィルム、ブラウン管のスノー、液晶画面のピクセルノイズ、これらもまた私たちの
現実への関わり方に影響している。より表面が滑らかなデジタル世界ではこういっ
た「ミス」はシステムの不調と考えられがちだが、そこで生じる亀裂は生々しくて、
意図的に利用されると、ひとつの抵抗にもなりうる。メディアアーティストの
Golan Levinは体感できるアナログへの憧れを「汚れたいという願望」であると言
う。それはたぶん摩擦や痛みによる生きているという実感に繋がっているのだろう。
あまりもスムーズなコミュニケーションはどことなくうさん臭い。

更に言うと、痛みや裂け目、何かへの憧れ、またはある種のずれや不足を感じない
ことには表現したいという気持ち、そして観たいという姿勢が生まれない気がする。
最近関わっているドキュメンタリー映画企画ではベルリンの移民二世の若者たちを
テーマにしているが、この企画に参加している映像作家のIrati Agirreは、移民が
多くいる地区に住んでいるのに見えない壁があってコミュニケーションが取れない、
触れ合いを感じたいから映像をつくりたいと言う。記号化されている現代社会では
同じ空間にいる人間が逆に遠い。それでもまた映像という方法を選んでその現実を
探る。最近この間接的な不器用さがいいなとつくづく思う。


■梶村 昌世(かじむら・まさよ)

今秋の日本滞在で見過ごしたがお進めしたい展示会がある:来年1月8日まで開催さ
れている森美術館の『ビル・ヴィオラ:はつゆめ』展
( http://www.mori.art.museum/jp/index.html )。ニューヨーク出身のビル・ヴ
ィオラはやはり映像アートの代表的な作家であり、独特な時空間を創成する人であ
る。たぶん印象的な「夢」を体験できるのではないだろうか。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃03┃□四海放浪
┃ ┃■三峡の善人(たち)「その4 映画の後」
┃ ┃■藤岡 朝子
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●姓名判断を診てもらう

この連載は中国のジャ・ジャンクー監督の『三峡好人』の撮影現場に遊びに行った
私の雑記なのだが、完成した映画が先月、第7回東京フィルメックスという映画祭
のオープニング作品として日本で初上映を遂げた。ごらんになった方はおられるだ
ろうか。上映に合わせ、監督は主演女優のチャオ・タオさんと共に来日し、舞台あ
いさつや取材など、つかの間の東京滞在を忙しく過ごしていった。『三峡好人』は
ちょうど今日あたり(12月半ば)中国で一般公開され、日本では来年ビターズエン
ド社の配給で劇場公開されることになった。

ちなみに『世界』『三峡好人』などの助監督を務めたハン・ジエの初監督映画『ワ
イルドサイドを歩け』もこの映画祭のコンペティションで上映され、本人も初めて
来日した。(10月15日号、この連載の第2回目参照。)山西省の宮沢賢治は渋谷に
仰天し、焼き鳥屋を喜び、「日本の農家を見たい」と稲刈り後の田のあぜ道を歩く
など、充実した滞在を楽しんでいった。

さて、ごらんになった方はお分かりだが、『三峡好人』には存在感あふれるバイプ
レイヤーとしてダンディな帽子をかぶったおじいさんが登場する。日雇い解体労働
者の安宿のオヤジ、向(シャン)おじさん。この人に見覚えはありませんか。

そう、ヤマガタ2005で大賞を受賞した『水没の前に』の主人公その人である。ドキ
ュメンタリーは彼が移転の補償をめぐって右往左往する姿を追うのだが、その後彼
は無事に新しいアパートをもらうことができたという。ある日、リ・イーファン監
督とおじさんの新しい家を訪れた。

水没しつつある奉節の旧市街からバスで30分ほど上ったところに、新しく町の中心
街となった繁華街がある。三峡ダムの建設が全人代で可決された1992年から町の移
転が決まっていたためか、新しいと言っても今や生活感あふれるホコリだらけの市
街だ。
歩道にビリヤード台を並べて中学生相手に商売している人がいたり、屋根の上に煎
餅のようなものを並べて日干ししてたり、と見どころがいっぱい。坂と急な階段の
多い街だ。

商品のほとんど置いてない雑貨屋の脇の路地に青い横断幕がかかっている。「向雲
三診」。向おじさんは、今や結核を治療する漢方医として開業しているのだった。
路地を入り階段を上がると、『三峡好人』のドヤに似た雰囲気が。奥の部屋ではま
だ日雇い労働者を泊めているという。玄関に近い診療室には写真入りで、大きなコ
ブが消えた患者の「治療前」「治療後」の宣伝ポスターが貼ってある。向おじさん
の奥さんが裏の畑から採りたての「地瓜(ディーグワ)」を出してくれた。見た目
はカブのようなのだが、味は水気の多い梨に似てさっぱりしている。おかげで胃も
たれしていた私はいきなりの回復。

久しぶりに会うイーファンは嬉しそうに、いろいろおしゃべりをしている。収入が
前よりもいいこと、子どもの頃に教わった結核の漢方薬を山で採ってきては煎じて
患者に飲ませ、何人も治療したこと。運勢占いもやっているらしい。おじさん、血
色がよく元気そうだ。

話の途中で、患者が来た。5歳くらいの幼子を連れたお父さん。治療代の代わりに
野菜を手土産に持ってきた。私たちがいる前で、向おじさんは問診、交渉などをし
た。

患者が帰ったあと、向おじさんは私の姓名判断をしてくれた。日本人に対する偏見
を避けたいイーファンは撮影現場で私を「マレーシア人」「韓国人」「モンゴル
人」などと紹介してきたが、おじさんには私がアメリカの華僑の学者だと言ったら
しい。
「藤岡朝子」などという名前の華僑はいまい。それでも向おじさんはおもむろに分
厚い老眼鏡をかけ、黙ってあちこちの本で調べてくれた。

「『藤岡朝子』は悪くない。80パーセントくらいにいい名前だ。」おじさんは言う。
「しかし、名前を変えれば、95パーセントの幸運に変わる。」

「藤岡を変えずに下の名前だけ変えたら?」とイーファン。「僕も芸名をつけても
らったよ、漢字が違うだけだけど。」

では、いかに?「恒安(ヘンアン)。『藤岡恒安』でどうだね?」
おじさんはギロっと私を見た。「ありがとうございます。頂戴いたします。」
帰りに名前と電話番号を書かされた。姓名判断の広告チラシに使うのだろうか?

(つづく)


■藤岡 朝子(ふじおか・あさこ)

東京フィルメックスでは、世話になった中国の監督たちへの恩返しで連日おつきあ
い。他にもヤマガタ「卒業生」のアピチャッポン・ウィーラセタクン(タイ)やア
ウレウス・ソリト(フィリピン)らとの再会とおしゃべりが楽しかった。今月は河
瀬直美監督の新作劇映画の仕上げに関係した仕事に突入。やはり私は映画が誕生す
る現場がおもしろい。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃04┃□neoneo坐12月後半の上映プログラム
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

会場はいずれも神田・小川町のスペースneo(都営新宿線小川町駅B5出口より徒歩
1分、JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩5分)です。
詳細と地図はneoneo坐のサイトをご覧下さい。  http://www.neoneoza.com/ 


■川口肇映像個展【人造の時間】

川口肇(かわぐち・はじめ)
1967年東京生まれ。九州芸術工科大学(福岡)にて実験映画に出会う。1987年から
作品制作を始めて以来、フィルム・ビデオメディアを中心に、世界の探求を基本テ
ーマとする作品群を制作。1993年から山形に移り、東北芸術工科大学の教員を務め
ながら制作活動を続けている。


●12月16日(土)
15:00〜16:30 Aプログラム “粒子の眼底”
『粒子束』 8ミリフィルム/3分/1991
それは世界の広がりか、あるいは粒子のグラデーションか。凝視による移行。

『青(世界/2)』8ミリフィルム/3分/1994
『cliche kitchen(1993)』8ミリフィルム/3分/1993
『portrait(世界/5)』8ミリフィルム/3分/2000
8ミリフィルムの長時間露光(バルブ撮影)による光の描画。9月の月山の青い空、
昼寝する猫、そして女性の肖像。

『prominence』8ミリフィルム/3分/1991
『inter-face(世界/3)』8ミリフィルム/3分/1996
長時間露光と言葉の組み合わせによる展開。太陽光によってフィルム上で燃え上が
るバラ、フィルムに削り込まれた作者と、それをとりまく世界。

『AQUARIUM』 16ミリフィルム/7分/1991
「映写」(投射された光)によって空中にイルカを描き出す。光は対象を照らすも
のであると同時に映像そのものでもある。フレームの中と外、消失する境界。そし
て基底現実としての肉体感覚。

『eyelids(世界/6)』 8ミリフィルム/3分/2001
ゆっくりと、瞼を開いてゆくカメラ。瞼の向こうには、瞼を開いてゆく人。そこに
生まれる視線。無数の視線を多重露光技法によって混合する。アノニマスに変質す
る、親密な視線。

『POINT1415』 ビデオ/24分/1996
猫の死を契機とした、ここではないどこかへの視覚の彷徨。冷徹な定数によって紡
がれる世界/ビデオ。

『CORRIDOR』 ビデオ/11分/1994
ビデオダビングを繰り返す。電子の回廊をくぐり抜けるうちに失われ、付加される
何か。それは、ビデオ自身が望んだもの?

『Air』 8ミリフィルム/ 6分/1992
現実の風景から粒子の絵画へ、此岸から彼岸へ。

●12月16日(土) 16:45〜18:15 Bプログラム “人造の時間”
『filmy』 8ミリフィルム/5分/1988
映画のフレームの中の時間と観客との同期が外れた刹那、映像は前景化する。映画
と我々の間の限りなく薄く、かつ、遥かな距離。

『un-recognizable』 8ミリフィルム/4分/1988
再撮影による輻輳・干渉。それによる視覚的なパターンである映像そのものへの還
元。

『鏡面 Mirror Surface』 ビデオ/15分/1990
空を映す、冷たく硬質な鏡としてのビデオ。それは実と虚との間を交差する。

『reaching』 ビデオ/12分/1992
リュミエールのフィルム「列車の到着」。写っている人々は全て、既にこの世を去
っているが、映像の中では列車はまだ到着していない。動きによって生じる人造の
時間。人形のような、死者のダンス。到着し続ける列車。

『Mechanical Kitchen』 ビデオ/20分/1993
人工現実の生成装置としてのビデオの側面。閉ざされた時間と空間とを変質させ、
時間を作り出す。

『MIR』 ビデオ/15分/2004
日常の一瞬に現出する1/128倍速の超スローモーション・ビデオ空間。一瞬の中に
存在する無限の時間。ファンタジーとリアリティの狭間に存在する「ビデオ」の本
質。

●12月16日(土) 18:45〜20:20 Cプログラム “自走する言葉”
『位相 Phases of Real』 ビデオ/30分/1997
何気ない日常と、祖母の葬式。画面上のテロップ文字とコンピュータ音声によるナ
レーションによって人間関係を巡る物語が語られてゆく。メディアと現実。真実と
虚構。

『異相 Variant Phases ver.7.6』 ビデオ/51分/2001
1秒間あたり30枚の連続写真。これはビデオ装置自身にとっての揺るぎない現実。
ここから「外」に向かって展開を始める。作品のそれぞれの相における“真実”。
上映と追加制作を繰り返すことによって現実を織り込むことを繰り返すなか、物語
が転がり始める。“現実”とは何か? “作者”とは何か?

上映会終了後 、交流会

【料金】1プログラム:1,000円、3プログラム通し券:2,000円、
    各プログラム入替制
【交流会】2,000円 (飲食付)
【お問合せ】川口:E-mail または Tel:070-6658-6025



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃05┃□広場
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■新・クチコミ200字評!(45)
■清水浩之(短篇調査団・新年1/24は雪の巻! http://d.hatena.ne.jp/tancho/
オススメの作品を200字以内の短評で紹介してください!映画・ビデオ・テレビな
ど皆さんがノンフィクションだと思う作品だったらなんでも可!もちろん「オスス
メしない映画とその理由!」もOKです。
本文とは別に「あなたのお名前(ペンネーム可)/掲載確認のご連絡先(メールアド
レスor電話)/題名/制作年/監督/見た場所(よろしければあなたのプロフィール
や近況も)を付記してお送りください。ちなみにここでは稿料は出ません。
清水浩之 E-mail: shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp /ファクス:03-3703-0839

B-190『硫黄島からの手紙』
2006年/アメリカ/監督:クリント・イーストウッド/脚本:アイリス・ヤマシタ
 http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/ 
今年は日本映画の興行収入が外国映画を上回るほど好調だったそうですが、内容面
では『太陽』、そしてこの『硫黄島からの手紙』を“輸入”しなくてはならなかっ
たことを忘れずにおきたいと思います。“東森久林人”監督の演出は、地下壕で満
杯になった便器から海岸に集結した敵部隊へワンショットで見せたりと、かつて岡
本喜八監督が『沖縄決戦』で描いた戦場の「むごさ」を継承したかのようで、いく
ら戦中派とはいえ達者過ぎます!(清水浩之)


B-191『人のかたち』
1998年/監督:能瀬大助
12月16日〜17日「The Possibility of 8mm film 日本凱旋上映」にて上映
会場:イメージフォーラム3階・シネマテーク
 http://www.imageforum.co.jp/cinematheque/index.html 
シングル8フィルム「生産終了」まであと3ケ月…でもカメラの生産終了から20年後
の今もなお新しい8ミリ作品と作家が生まれ続ける、その理由を探るにはうってつ
けな特集上映。地面の影を白墨でトレースする作業をコマ撮りした労作『人のかた
ち』は、低予算で高品質な「活動写真」が作れることを実証する好例です。20年間
意識変革できなかった富士フイルムさん、文化庁さんにはぜひご覧いただきたいと
ころ(今からでも遅くない!)(清水浩之)

今年もいろいろあって思い出せないくらいですが(笑)、同感と仰る皆さんには、
4年目に入ったneoneoのバックナンバーを振り返りながら毎年恒例の「わが一押し
のドキュメンタリー2006」アンケートに参加されることをお薦めします。詳細はこ
の下の告知欄をご参照ください。それではよいお年をお迎えください。


    ◇────────────────────────◆◇◆     


■告知

■年末の所感(…年賀状に代えて)  土本 典昭

今年−2006年は映画の友人、水俣病事件の知己である代えがたい仲間を見送った年
でした。とくに黒木和雄・松川八洲雄、じつは早稲田の同窓生でもあった今村昌平、
そして宇井純氏らはともに半世紀近い付き合いでした。その別れは大きく私を揺す
ぶり、これまで真剣には考えなかった“余生”を考えさせました。

改めて“あちら”で彼等に再会の折、話できるよう、多くの仲間の事、この世の事、
映画をはじめ、あらゆる事を叩きこんであの世に行く気持を新たにしました。

“生涯現役”の気概をもってそれぞれ生き抜いた諸氏を見習い、私も持病(糖尿病
ほか)にめげず,むしろ“一病息災”ととらえ、納得のいく日々を考ていきます。
ただし今後も一日に数時間を療養の日課のために割きますので、勝手を申し上げま
すが、もっぱらひとと会う事を芯にするつもりです。つまりどれだけ多くの人々と
語り合えるかが私の“快楽”となるでしょう。それが亡くなった古い友への“土産
話”になるからです。…多言多謝。どうか良き年をお迎え下さい。

〒168-0064 東京都杉並区永福 2丁目19-17  土本典昭
Tel&Fax:03-3321-8678/03-3323-1893  (06,12,15)


   ◇────────────────────────◆◇◆    


■募集
■「わが一押しのドキュメンタリー2006」アンケート大募集!

早いもので今年も残りわずかとなりました。そこで本誌では恒例の「わが一押しの
ドキュメンタリー2006」アンケートを募集致します。皆さん、奮ってご応募くださ
い。下記3問のうち1問でも構いません。締め切りは2007年1月10日です。
1月15日号に新年特集として発表します。(伏屋博雄、本誌編集長)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
2006年にご覧になった作品のうち、これこそドキュメンタリー!と思う作品とその
理由。旧作でも構いません。(200字以内)

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
「どう思うか、どうしたいか、どうなるといいと思うか?」を、制作・上映・批評
・宣伝・観客・映画祭…いろいろな角度からご意見を求めます。(200字以内)

(3)「私の2006年」
印象に残った出来事など、映画に限らず思いを新たにすることは?(200字以内)

各問いは200字以内(1問でも可)。氏名とお仕事を明記のうえ、2007年1月10日ま
でに送信ください。 送信先: visualtrax@jcom.home.ne.jp  伏屋まで。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■募集:「自作を語る」などの原稿募集!

「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。

文字数:1600字程度。厳密な規定はございません。
監督のプロフィール(150字程度)
その他:作品の仕様(制作年度、時間、ビデオ又はフィルム、スタッフ等)
上映のスケジュール、HP等をお知らせください。

原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp  伏屋まで
稿料:無料。

その他、さまざまなご意見、投稿を募集しています。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)

neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。

(1)上映等の告知の有料化 1200字(40字×30行)以内につき、2,000円です。
  それ以上の字数の場合は加算します。
(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。

送金方法:郵便振込み:00160?8?666528 neoneoの会、又は、
     みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782
      (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせ
ください。)

以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃06┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●己の身の丈を考え、かつ、ドキュメンタリー映画に何らかの寄与したいと思いつ
つ、neoneoも今年で4年目に突入した。ともすれば怠惰になりがちな身を叱咤した
のは、15日ごとに訪れるneoneoの編集だった。毎回送信されてくる原稿の内容は多
岐にわたり、脳髄を撹乱し、刺激した。時には執筆者と原稿の点検で数回やり取り
することもあった。今年も実に多くの執筆者に支えられてきた、ということである。

号を重ねるにしたがい、読者数は増加していった。創刊号が319名から出発し、そ
して今や2500名の大台を記録したことは感慨深く、心より読者に感謝したい。欲を
いえば、投稿や上映の告知等で、より積極的に「広場」欄をご利用していただけた
ら、と思う。また本誌を支えるためにカンパをしてくださった方、ありがとうござ
いました。こうした支援も継続には心強く、実にありがたかった。今後も持続して
いくためにはまだまだサポートは必要で、皆様のご協力を、よろしくお願いします。

本誌の前身である「NEO」(2001年2月1日号から2003年8月15日号まで59号を配信)
の創刊にあたって私は 「人々がドキュメンタリーに、より一層の関心を持ち、互
いに刺激し合い、ドキュメンタリーの活性化に寄与」したいと記した。

さらに、neoneoの創刊号では、私は下記のように初心を綴った。

「neoneo」はドキュメンタリー映画の可能性を問うメールマガジンです。積極的に
皆様の声を反映していきたいと思います。執筆者は異論、反論を恐れず、率直に発
言してください。読者は、そうした執筆者の一つ一つの熱い言葉を真っ向から受け
止め、「neoneo」に投げ返して下さい。本誌が、風通しのよい皆様の「広場」とな
るならば、編集者としてこれ以上の喜びはありません。

この気持ちは今なおいささかも変わりない。ドキュメンタリーへの希望も可能性も
信じたい。そのためにも読者参加型の、より充実したneoneoを配信続けていきたい
と思う。

●今年も読者参加の「わが一押しのドキュメンタリー映画2006」アンケートを募集
することになった。アンケートの問いは「広場」欄に掲示しているので、奮ってご
応募ください。締め切りは1月10日で、本誌1月15日号に発表します。

●1月1日は休刊します。1月15日号から配信を開始します。では、来年は希望の年
であることを祈りつつ、またお目にかかりましょう。よいお年を!



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■発行:ビジュアルトラックス  visualtrax@jcom.home.ne.jp 
■責任編集 伏屋博雄
─────────────────────────────────────
★ご意見・ご感想はビジュアルトラックスまで
★いただいたメールには全て目を通しますが、必ずしも返信できるわけではありま
せん。また、いただいたメールをこのメールマガジンに掲載させていただくことが
ありますが、掲載不可の場合はその旨をお書き添えくださるよう、お願いいたしま
す。
─────────────────────────────────────
★バックナンバー閲覧、およびメールマガジン配信解除はこちらまで

 まぐまぐ配信   http://www.mag2.com/m/0000116642.htm 
 melma!配信    http://www.melma.com/backnumber_98339/ 
※編集部では配信解除、メールアドレスの変更などは受け付けておりません。
お手数ですが、ご自身でお願い致します。
注)デザインが崩れて見える場合は等幅フォント(MSゴシック、Osaka等)でご覧
ください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright (C) 2003 visualtrax

当マガジンの記事を許可なく転載することを禁じます。
 
 

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-09-01  
最終発行日:  
発行周期:月/2回  
Score!: 74 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。