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映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。

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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 50号 2006.1.15

発行日:1/15


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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 †01 発表:「わが一押しのドキュメンタリー2005」アンケート
       想田和弘、岡田秀則、村上賢司、清水浩之、松江哲明、石垣友子、
       藤原敏史、柳下美恵、高田亮、佐藤真、今田哲史、阿部嘉昭、
       脇阪亮、波多野哲朗、片山薫、本田孝義、小野さやか、山崎幹夫、
       春田実、平野俊如、青原さとし、越後谷卓司、安井喜雄、佐藤寛朗、
       細見葉介、山下治城、中村のり子、伏屋博雄(回答順)
 †02 neoneo坐 2006年1月後半のプログラム
 †03 編集後記 伏屋 博雄

    ★バックナンバー閲覧はこちらまで

   まぐまぐ配信   http://www.mag2.com/m/0000116642.htm
   melma!配信    http://www.melma.com/mag/39/m00098339/



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃01┃□発表:「わが一押しのドキュメンタリー2005」アンケート
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
■想田 和弘(映像制作者)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
旧作ですが、フレデリック・ワイズマンの「霊長類」を図書館で観て、衝撃を受け
ました。究極のドキュメンタリーでありながら、地獄をテーマにしたSF映画のよう
でもあり、ドキュメンタリーというジャンルを超越した傑作であると思います。


■岡田 秀則(東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究官)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
松川八洲雄さんの『不安な質問』(1979年)を初めて観て、ただただ感動しました。
泣きました。新作では、韓国の全州国際映画祭で出会った『ダーウィンの悪夢』に
尽きます。誰もがビジネスと市場の話しかしない今、そういう世界の最暗部にげっ
そりする瞬間も必要でしょう。日本の新作では、『山中常盤』と『阿賀の記憶』が
スリリングでした。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
語れるほど観てはいませんが、もっと“大きな”ドキュメンタリーに出会いたい、
という身勝手な思いはあります。あと、古典をしっかり観られる環境が必要だと痛
感します。その点で、川崎市市民ミュージアムの牛山純一コレクションに注目して
います。

(3)「私の2005年」
2月から3月に、1970年代以降の日本ドキュメンタリーを55本集めた上映会を企画し
て、それなりの手応えを感じました。「科学映画特捜隊」も引き続きメンバーをや
っていますが、人間の出てこない映画を楽しんでもらうのは本質的に難しい仕事で
すね。あと2005年は「教育」の意味を真剣に考えさせられた年でした。映画を「観
る人」と「観ない人」に社会が分断されてゆくのを、どうにかしなければなりませ
ん。


■村上 賢司(映画監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
まず『赤塚不二夫の激情No.1』(演出・佐藤輝雄)ですね。テレビマンユニオンの
レトロスペクティブで上映された70年代初期の番組なんですが、一言で言えば30分
間延々と続く、‘発狂ショー’。今回は渋谷のミニシアターでの上映でしたが、次
回はぜひミラノ座の大画面で体験したい!これは、東京ファンタ関係者への提言で
す。
『不滅の男 エンケン対日本武道館』(監督・遠藤賢司)はドキュメンタリーとい
う枠組みをぶち壊す、ダントツの作品。映画なんて、面白い人が面白いことをして
いるところをそのまま撮影すれば、面白くなるのです。方法論なんていらないね。
テレビでは「奈良の騒音おばさん」ぐらいでしょうか。あれを放映して本当によか
ったのでしょうか?

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
監督でも、被写体でもいいのですが、ドキュメンタリー映画からアイドルが登場し
ないかしら?「引き蘢り」のドキュメントが切っ掛けでCDデビューとかあってもい
いと思う。当然、ビジュアル重視ですよ。ん、無理かな?でも『新しい神様』の例
もある。批評では「映画をめぐる怠惰な日常」
( http://d.hatena.ne.jp/molmot/ )のmolmotさんは、大谷淳さん(月刊ツヴァ
ング通信)や快楽亭ブラック師匠と並び、私にとって信用のおける‘審美眼’を持
っている人だと思っています。特に彼と松江哲明くんの関係は批評家と作り手の関
係性を考えることにおいて、これからも注目すべき!
eichi44 さんの「嗚呼、テレ日シネマ」( http://d.hatena.ne.jp/eichi44/ 
の情報収集能力、清水浩之さんの「4310」
http://d.hatena.ne.jp/shimizu4310/ )のメディアの楽しみ方、山崎幹夫さんの
「山崎幹夫の映像制作ノート」( http://blog.goo.ne.jp/gootari )の日々是撮
影生活も毎日更新されるたびに敬服しています。

(3)「私の2005年」
「背徳映画祭」で『背徳コンクラーべ』を発表。「ファンタスマゴリア 闇に封印
された映像コレクション」で世界唯一の‘念写映画’と、観たら呪われる‘高校生
映画’を発掘。TBSで「新耳袋」3作品、「スパイ道2」の『スパイ勧誘ビデオ』を
放映。あとテレビの特番やアイドル映画の特典映像やスペイン映画の予告編とかを
制作しました。もう訳が分かりませんが、今年はもっと凄いことになりそうなので、
呆れないでくださいね。お仕事お待ちしております!


■清水 浩之(短篇調査団・1月25日は富士の巻!
        http://d.hatena.ne.jp/tancho/ 
 (1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『不滅の男 エンケン対日本武道館』(遠藤賢司監督)。この作品と綿井健陽監督
の『Little Birds』は、映画そのものの素晴らしさは勿論、映画化のきっかけを作
ったプロデューサーさんの「企画者」としての慧眼にも注目しました。この監督で
この映画を…最高のキャスティング!こういう監督とプロデューサーの連携がもっ
ともっとありますように。ドキュメンタリー映画のプロデューサー養成講座(企画
開発から配給まで)なんてあったらいいのになーと思ったりします。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
自主上映の場を維持していくためにも(!)neoneo坐で上映会を主催する人が増えま
すように。興味をお持ちの方、まずは挑戦していただきたいところです。ところで
赤字続きの清水としましては1月28・29日の「TV-WORKS テレビドキュメンタリスト
の仕事」
http://tvworks.exblog.jp/ )と3月の特集上映「百歳の映画作家 樋口源一郎」
http://kinoko2006.exblog.jp/ )へのご来場をお待ちしております!

(3)「私の2005年」
2005年の「短篇調査団」で上映した79本から個人的ベストテンを…。『でたらめの
規則』(花松正卜)『群集の行動を考える』(新井慎一)『自然界のつりあい』
(布村建)『ぬれる』(片野満)『はだかの天才画家 山下清』(西沢豪)『生活
と寸法』(竹内信次)『あなのふしぎ』(武田純一郎)『球』(市川雅啓)『雨に
考える』(樋口源一郎)『ぼくのいる街』(黒木和雄)。別格に実相寺昭雄監督の
『涅槃−雛−』と金井勝さん撮影の『演劇入門 ジュリアス・シーザー』です。


■松江 哲明(ドキュメンタリー監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『ノロイ 監督:白石晃士』。実はヤマガタで見た残酷ドキュメント『ダーウィン
の悪夢 』(監督:フーベルト・ザウパー)が今年のベストだが、あえて。見てい
る間、自分が『ほんとにあった!呪いのビデオ』を撮影してた頃、白石君や村上賢
司さんたちとパル企画の事務所で互いにネタを探っていたことを思い出した。あの
頃の変な熱気の一部がこのような形で全国の少年少女に伝染したかと思うと嬉しく
なる。しかし、ニュースで不可解な事件を聞く度に『ノロイ2』の必要性を強く感
じる、今日この頃。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
「ドキュメンタリーブーム」への疑問から自身で企画した「セルフドキュメンタ
リーの逆襲」を有楽町ファンタスティックシアターで上映し、何らかの手応えを感
じることが出来た。この経験を06年は作品や上映という形で提示したいと思う
(『IDENTITY』を初春アップリンクXにて上映予定)。また『パラダイス・オブ・
トーキョー 』(監督:カンパニー松尾)、『その先の私を見に。〜少女と鉄道 九
州編〜 堀北真希』(演出:尾形正喜)、『影』(監督:河瀬直美)といった作品
の限られた時間で、何を撮るのかという手法に共感を覚えた。

(3)「私の2005年」
ドキュメンタリー絡みではアテネフランセでの『カレーライスの女たち』の上映、
『IDENTITY』でヤマガタに参加、そして「セルフドキュメンタリーの逆襲」を企画、
突然ブログ( http://d.hatena.ne.jp/matsue/ )を始め、neoneo座での『あんに
ょんキムチ』上映をきっかけに、立教大で阿部嘉昭さんの講義に参加したことが印
象的だった。自作としては『赤裸々ドキュメント 天宮まなみ』を撮れたのが良か
った、かな。


 ■石垣 友子(テレビ番組の制作)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
小川紳介監督の『日本解放戦線 三里塚』。ベタかもしれませんが、何より驚きと
ショックが著しかった映画です。
そのショックが「一押し」という言葉を即座に連想させた、そのことがここに挙げ
る唯一の根拠です。三里塚闘争について私が無知だったことも要因してますが、そ
のような発見を与えてくれるのもまたドキュメンタリーだと感じました。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
状況からいって、経済的に比較して恵まれている日本人が、実生活の傍らで切実な
問題がむき出しになっている地域の人々に、どう太刀打ちできるのか、と山形映画
祭作品など見るとよく思います。その緊迫感、切実さでは、不謹慎とか何かとは別
に、現実として勝てない。がしかし、私たちの生活にも人間同士の真のぶつかり合
いや、触れ合い、問題などはある。そうも思います。けれど、ドキュメンタリーは、
安易に撮るものではない、そういう思いが、強くするのです。

■藤原 敏史(映画監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
アルトゥーロ・リプステイン監督『英雄たちとその時代』(neoneo○号に評を掲
載)・NHKスペシャル『あかい背中』(NHK長崎製作)。体裁としてはおなじみNHK
風ながら、とにかく対象である被爆時に17歳の郵便配達だった人物が圧倒的な存在
感を持つ。なんと見合い結婚だという妻との非常に個人的なシーンまで撮らせても
らうほど熱意を持って密着したスタッフの心意気がいかにもNHK的な“客観性”の
行間から浮かび上がり、国連核拡散防止条約が暗礁に乗り上げたニュースを見る主
人公がぼそっと「核兵器を持ってる国が他の国に持つなということ自体、筋が通ら
ん」と呟く声をちゃんと聞かせた瞬間、「NHK=体制側」の構図を地方局のスタッフ
たちがみごとに転倒させてしまう。ただ(2)と関連して言えば、一連の終戦60年特
集のなかでこの対象密着型の素朴な作品がもっとも際立っていたことを考えると、
ドキュメンタリーとは結局対象がすべてなのか、とも思ってしまうが…(というの
は半人前のクセして作家の傲慢な自意識だけは増長している証拠か?)。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
結果として「今の日本社会」を考えるのにもっとも刺激的映像となったのが、いわ
ば垂れ流し的にどんどん生放送された総選挙関連の党首討論やニュースでのインタ
ビューや、建築構造書偽造問題の国会参考人招致・証人喚問の生中継だったりする
ことを考えると…。しかし2005年には一本も作品を完成させていない僕自身にして
も、この一年に連続した不可解な事件や、個人的な体験のなかで、いったい今がど
ういう時代なのか、この時代とどう切り結ぶべきなのかさっぱりわからなくなる気
分になった。

(3)「私の2005年」
2005年に完成できなかった何年か越しになっている映画を2本、今年の前半に相次
いで完成させることになる。その一本、僕の最初の劇映画が、唐突にも11月末にベ
ルリン国際映画祭の正式出品作品に決まった(フォーラム部門)。あえて脚本は一
切なし・出演者もいわゆる素人・演技初体験ばかり、こちらからストーリーや台詞
や人物像を与えるのではなく出演者自身が持ち込んだ、たぶんに自分自身を反映し
た物語と人物をぶつけ合わせるという方法論で、“この時代”がどんな時代なのか
をまずじっくりあぶり出しにして見つめようと思って始めた映画で、極端に実験的
な手法のため完全に自費の自主製作で進めるしかなく、編集から仕上げまで仕事の
合間合間を縫って進めて来た結果、2月の映画祭でのワールドプレミアまで1年以上
かかってしまう計算になる。撮影自体は2004年にほぼ完了しており、今年の6月に
最後の追加撮影(実はいちばん最初のシーン)を終えた時点で、出来不出来はとも
かく、“この時代”を少しは把握できる映画になったと自負もしていたのだが、し
かしそろそろ出来上がるという段階になって仕上げのために見直すなかで、やや辛
口のコメディにしたつもりの映画が、きわめて楽観的な映画に思えてしまう。たぶ
ん撮影を終えてとっとと2005年のうちに完成させていたら、そんな風には思わなか
っただろう。

我々がフィクションとして作り出した東京が、2005年が終わった時点で見てみると
実に理想的で幸福な場所にも見えてしまうのだ。結局この映画が成功なのかどうか
は完成させてベルリン映画祭での反響をまず待つしかないのだが、しかしその前か
ら「失敗した」と思ってしまうくらいに、尼崎の鉄道事故で戦後60年間封印されて
きた「生き残ったものの罪悪感」が突然流行語になり(なのに戦争を生き残ったこ
とは結局ほとんど言及されない)、遺族がテレビ向けに自分たちの悲しみをショー
アップしているとしか思えない映像の垂れ流しに始まって、メディアからでも、あ
るいは僕自身が私的に接してきた人々からでも、感じ取らざるを得なかった「2005
年の日本社会」の姿は、不可解で、いささか不気味ですらある。

3月に、こちらは3年越しになるドキュメンタリー『土本典昭:映画は生き物の仕事
である』(仮題)を完成させたら、やはり次はなんらかの形で「小泉純一郎の時
代」に本気で取り組まなければならないのだろう。


■柳下 美恵(ピアニスト)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
昨年暮れに今年3月ユーロスペースで公開の『Touch the Sound』の試写を見せてい
ただきました。エヴリン・グレニーというスコットランド出身のパーカッショニス
トを追ったドキュメンタリーなのですが、耳が聞こえないのにドラムを叩くので
す!どうしてそんなことが??と思うのですが、障害の有無に関わらず、演奏も人
柄も最高でした!同じ音楽家として勇気ももらいました。機会があれば是非ご覧下
さい。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
メルマガneoneo、そして山形国際ドキュメンタリー映画祭などで,ドキュメンタ
リーの関心は徐々に広まっていると思います。neoneo坐で上映されている科学映画
などは伺えなくてもこんな映画があったのかと知るだけでも楽しいです。今年も楽
しみにしております。

(3)「私の2005年」
社会や身近で事件が多い年でした。私自身も心身ともにアップダウンの激しい1年
で様々な面で勉強になりました。日常生活の中でドラマが多い分、事件そのものを
追っていくだけで見ごたえのある作品になるのではと思います。世の中が騒然とす
るのはけっしていいこととは言えませんが、ドキュメンタリー映画の可能性が広が
っているのではないでしょうか?


■高田 亮(映画監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
マイケルムーア登場から巻き起こった、おしゃれドキュメンタリーブームも落ち着
いてきた。『スーパーサイズミー』やら『皇帝ペンギン』やら、頑張って観てみた
が、どれも観易いだけで中途半端な印象が拭えない。某批評家は、「土本典昭の映
画では、水俣病の患者がエロティックに見える瞬間がある」と言っていた。水俣病
患者を、単なる病人や被害者としてしか映し出されなければ、人間は記号に落ちぶ
れてしまう。対象を立体的捉えていなければ、映像は単なる平面に過ぎないのだ。
例えば『皇帝ペンギン』は、ペンギンの持っている見た目のコミカルさや愛らしさ
を排した硬派なドキュメンタリーだったが、それはペンギンの持つ肉体的な特徴を
なくしてしまい、個々の持つ特徴おも消し去った、立体的とはほど遠い単なるメッ
セージドキュメンタリーだった。

そんなものが多い中、『インサイドディープスロート』という、一本のポルノ映画
が巻き起こす騒動を捉えたドキュメンタリーには可能性を感じた。単なるポルノ映
画『ディープスロート』が、大ヒット(『タイタニック』以上と言われている)し、
ウーマンリブから政治まで巻き込んだ大騒動へと発展していったのだが、この映画
を作った監督には、監督料以外のギャラは一切入ってこなかった。それは、マフィ
アの金を使って製作された作品だったために、ロイヤリティーなどは完全に無視さ
れたせいだった。マフィア、女性運動、大統領選挙、ポルノ映画業界、上映劇場主
たち、様々な常識が鬩ぎあう様が示されてゆき、最終的に『ディープスロート』の
監督の娘が踊る、ファイヤーダンスで締めくくられる(彼女は、ファイヤーダン
サーになったのだ)。このラストは、政治や社会、常識や世間の渦巻きに揉まれな
がらも、個人や家族の持つ独自性を失わずに生きてゆけることを端的に示していて
感動的だった。
この映画は、映像を加工し、細かいカットを積み重ねて、ナレーションをのべつ幕
無しに流し続けている「観易い」「おしゃれドキュメンタリー」の一本だが、そこ
に世界と個人を同時に映し出そうという意思が貫かれているようで、快感があった。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
インターネット等で情報があふれているとは言うものの、結局はどうでもいいよう
な噂話的なものが大半を占め、架空の空間で別人になるのが主な目的の文章が列挙
され、マスコミは短いセンテンスで印象的な事を繰り返しいているだけだ。
そんな「雑」なものが乱れ飛んでいる今、人間の肉声や、その場の空気、土地の表
情等、より具体的な表現の重要性が高まっているような気がする。
それは、ネット利用者自身も気づいている事ではないだろうか?
ドキュメンタリーブームなるものも、その反動からくるものかも知れない。
ただ、今のメディアに毒されている人間は辛抱がなく、次々と話題を進めるなり変
えるなりしなければじっとしていられない。真に多くの人間に訴える意思があるな
らば、それを突破する戦略をたてるべきだ。

(3)「私の2005年」
脱線事故、建築偽造、幼児殺害、小泉圧勝、等が今年の主な出来事だろうか。どれ
も大変な問題だが、脱線や建築は民営化の問題を孕み、「郵政選挙」で自民党が圧
勝した年に起きたのが象徴的で、幼児殺害は宮崎勤からの流れの事件と在日外国人
問題に関係した事件とをごっちゃにしてはいけないし、子供を守らなくてはいけな
いのは当然だが、今はほとんど聞かなくなった営利誘拐等子供の危険はかつてから
あった。近所に頭のおかしいおじさんがうろうろしていた昭和のほうがむしろ危険
は多かったのではないか。実は教育の問題なのではないかとさえ思う。つまり、ど
れもが「今年」というよりは、平成からの問題なのなのではないか?
「今年」の印象的な問題としては「天皇世継ぎ問題」だった。
女系天皇容認論が出てきてついに天皇制が終わるかと思うと、なにか薄ら寒い気が
した。


■佐藤 真(ドキュメンタリー監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『チーズとうじ虫』(監督:加藤治代)
手前味噌を怖れず、やはり今年のわが一押しはこの一本でした。この映画は、編集
の細部や音の仕上げ・音構成が微妙に変化しながら少しずつ進化していったのです
が、それまではずっと見続けてきたはずなのに、山形での受賞版はずっと見れずに
いたのです。それを京都で見たときに、その驚くべき静謐な時間の濃密な緊張感に
まるで別な作品を見たような驚きを感じました。少し甘いかもしれませんが、同じ
映画でも微妙に成長するのだと気づかされたその一瞬がやはり今年の一押しでした。


 ■今田 哲史(ドキュメンタリー監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『ダーウィンの悪夢』、『リトルバーズ』、『ノロイ』等が心に残りました。自分
の生活空間とは異なるところ、異層の世界を観ることへのスリリングさと、その渦
中にいる人々へ思いを馳せることの重要性、並びにその限界を示唆してくれた作品
であったと思います。どの作品も深刻な事象を内包しながらも豊かな作品世界を展
開していたのが特徴であり、テーマや対象にもたれかかった作品とは一線を画して
いたと思われます。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
あまり、ドキュメンタリーの現状について考える機会はなかったのですが、自分の
生活の現状については良く考えました。ドキュメンタリーの現状について考えるこ
とが出来るのは、まだまだ先だと思われます。

(3)「私の2005年」
今年は、色々な失敗を繰り返した年でした。幾本かの関わった作品や計画していた
ことが途中で流れたり、喧嘩別れとなったりしました。しかしそのような年であり
ながらも、幾本かの作品が産み出され(未だ妊娠中の作品もありますが…)、その
時の感動とそこで出会った人々の優しさに随分救われた気がします。結果的に昨年
は、編集等で、人の作品の手伝いをしたことが多い年でした。勉強と精進の年であ
ったのかと。本年は、謙虚にアグレッシブに生きようと思います。


■阿部 嘉昭(評論家)
(1)わが一押しのドキュメンタリー
すべて「neoneo」誌上に論考を発表したものだが、「映像の現在」に対応してか、
やはりセルフ・ドキュメンタリーに属するものに刺激的なものが多かった(ほかを
観ていない面もあるが)。以下、順不同で三つ。
・松江哲明『カレーライスの女たち』
(松江が『あんにょんキムチ』だけではないセルフ・ドキュメンタリストだと示し
た、フットワークの素晴らしい作品。彼の美点は、言葉の真の意味での「可愛さ」
「やさしさ」、それに「機略」だとおもう。松江君と僕がneoneo座でおこなった対
談、起こし原稿をいただけませんか? できれば僕のサイトにアップしたいの
で)・小野さやか『アヒルの子』(日本映画学校の卒制作品。「私」への肉薄が、
「つんのめり」から最終的に中立性を獲得する点が美しい。プライバシー保護の問
題から、公開不能となったのが残念です)・木村茂之『私をみつめて』(被写体の
「私を撮れ」という命法に従うかにみえて、これも、撮影隊が最終提示するものが、
静かな、しかし衝迫力ある中立性へといたる。「私を撮れ」という命法の作品は、
これはドキュメンタリーではないが、遠藤賢司主演・監督の『不滅の男〜エンケン
対日本武道館』もそうだった。今後の一潮流となるかも)

(2)ドキュメンタリーの現状について
一点だけ。試写会に来るひとが少なすぎる。宣伝の弱さもあるが、批評家の怠惰も
ある。とくに学生のつくったドキュメンタリー。ドキュメンタリーこそ、学生と職
業映画人の差が少ないものだから学生作品にたいする期待値も高まるとおもうのだ
が。

(3)私の2005年
教えている立教大学では、前期・後期、別のかたちで「私自身を表現すること」の
考察をおこなった。そうなりえたのは、表現の現状で、この点に関わる秀作が目白
押しだったことも後押ししている。とくにマンガ。05年は、吾妻ひでお『失踪日
記』と福満しげゆき『僕の小規模な失敗』の刊行年として今後、記憶されるだろう
(当然この2作は講義で分析した)。あと、「私」に関わる定義不能の文献として、
荒井晴彦の映画評論集『争議あり』もマークしておきたい。


■脇阪 亮(行政書士兼ファイナンシャルプランナー)
(1)わが一押しのドキュメンタリー
『略称・連続射殺魔』(足立正生監督、松田政男氏ほか)。この映画を構成する
ショットのほとんどは、平凡な風景のショットだ。だけど、なぜ、こんなにも画面
に惹きつけられるのだろうか?その謎によって、一番印象に残ったドキュメンタ
リーとなりました。

(3)私の2005年
つたない文章を“neoneo”に3回も載せてもらったことです(そのうち1回は、新・
クチコミ200字評!)。伏屋さん、ありがとうございました。清水さん、200字を大
幅にはみ出した文章で、すいませんでした。『Little Birds』についての文章は、
松江哲明監督にブログで言及してもらいました。


■波多野 哲朗(映画研究家)
(1)わが一押しのドキュメンタリー
特集「日本に生きるということ――境界からの視線」(山形国際ドキュメンタリー
映画祭2005)。ディアスポラたちの映像。1本の映画の出来に感動するという体験
ではなかった。むしろ時代や状況が強制したさまざまな歪みや偏向をいまなお生な
ましく露呈している、いわば作品としての不完全さを露呈する傷痕こそが興味深か
った。こうした体験は、複数の映画によってしか得られない。しかしそうは言って
も、千葉泰樹監督の『煉瓦女工』(1940年)という1本にめぐり会えたのは幸運だ
った。

(2)ドキュメンタリーの現状について
ドキュメンタリー映画に対する批評が、撮影対象となった世界についての言及にの
み終始したり、監督やスタッフたちの意図を代弁するかたちになるのはある程度や
むを得ないにしても、やはりもうすこし息の長い本格的な批評が書かれなければな
らないと思う。それにはまず、批評相互間のreference が必要になるだろう。
何事も一発勝負では駄目なのだ。

(3)私の2005年
製作中の映画『Cuba/Okinawa』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭2005のエント
リーに間に合わなかった。だらしがない、と思うことしきり。でも、私がキューバ
で取材した日系2世、3世の懐かしい顔ぶれが、映画祭の招待作品『ミュージック・
クバーナ』に、日本からやって来た観光客としてつぎつぎと登場する光景にはたま
げてしまった。


■片山 薫(ミストラルジャパン/One's Eyes Film)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『日本の子どもたち』/監督:青山通春/1960
厳密には劇映画であるが、山形の在日特集で観た中でも意外に面白くて思わず感動
した作品。長崎の大村収容所近くの小学校が舞台。収容所慰問の提案をめぐり、ク
ラスでの討論、在日と日本の子どもとの関係の変化、密入国の子どもとの交流、韓
国にだ捕された漁師の家庭への言及、インタラクティブな授業や酒を飲みながらの
家庭訪問など現在の学校では考えられない双方向な教育の在り方まで、様々な要素
が詰め込まれた映画だと思った。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
ドキュメンタリーにせよ、劇映画にせよ、ビデオやDVDなど個人で見ることが「映
画を見る」主流になっているのではないだろうか。上映する側も観る側も大変だが、
できるだけ映画館や上映会という場で「映画として観る」という体験も大事にして
いかないと、特にドキュメンタリーは情報ツールとしてしか認識されなくなるよう
に思う。フィルムでの上映こそがドキュメンタリー的、と思うこともしばしば。

(3)「私の2005年」
映画は純粋ではなく、いろんな要素があっていかがわしいから面白い、という気持
ちで市民運動系のおばあさまたちと地元で上映会をやっていたらトラブッた。彼女
たちにとって映画は純粋なものだったようだ。それでも、実験映画や個人映画の人
たちとはまったく別の人たちと上映会をやってみたことは、とても勉強になった。
いつもの上映とは全然違う人たちが観に来てくれたし。懲りずにまた別の上映を提
案してみよう。


■本田 孝義(ドキュメンタリー監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
なし:それなりに2005年もドキュメンタリー映画を見たと思うのだが、「これ
は!」
と刺激を受ける作品に出会えなかったというのが正直な感想。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
ドキュメンタリー映画を見る機会は確実に増えたと思う。その分、見逃した作品も
多々あり、これまでなら少々悔しい思いをしたはずなのだが、どこかで「まあ、し
ょうがないか」とも思ったりもし、受け止め方が鈍くなったかもしれない。 数多
いドキュメンタリー映画を網羅的にフォローするような批評を読みたいと思う。

(3)「私の2005年」
新作の撮影が2005年後半なかなか思うように進まず、やきもきした時間が長かった。
思うにまかせずというのも、まあ、ドキュメンタリーにつきものかとも思う。2006
年は打開の年としたいと思う今日この頃。


■小野 さやか(『アヒルの子』監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『わくわく不倫旅行2』、『由美香』。『由美香』を4年前にBOXで観て、ドキュメ
ンタリーっておもしれぇって思った。その一年後、読売ランド前にあるグリソムギ
ャングにてピンク映画特集のゲストに林由美香が来た。酒飲みながら由美香は私の
話をずっと聞いてくれた。次の日、日本映画学校、安岡卓治ゼミの「撮られる側の
論理」という授業で由美香が来た。私は自分と由美香を重ねて暴走し、いざ由美香
の話を聞く時耐えきれず逃げ出した。その後も、何度も飲み屋で会った。へらへら
笑って私は逃げた。由美香に触れたかった、けど触れられなかった。彼女は死んで、
この作品が残った。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
勉強中です。

(3)「私の2005年」
2005年に『アヒルの子』が完成し、山形映画祭に応募したが落ちた。作品が落ちた
理由を明確に聞きたいと山形に参戦した。しかし、気合いの入った在日特集に心奪
われ『赤いテンギ』『Dear Pyongyang』『IDENTITY』を観たことで、こうしちゃ
おれんと意気揚々と帰ってしまった。


■山崎 幹夫(個人映画作家)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
山形ドキュメンタリー映画祭事務局の発行する『DOCUMENTARY BOX #26』に那田尚
史さんが「セルフドキュメンタリーの起源と現在」という論文を書いている。そこ
で取り上げられた大川戸洋介『夢主人』を再見。いや凄い。徹頭徹尾、理に落ちて
いない。ビデオではありえないような光への昆虫的こだわりにドキドキする。しか
しこれ、私がイチオシしても見る手段がない。なんとかまた上映会を組みたいもの
です。

(3)「私の2005年」
2005年末に突然、フジの8ミリフィルムR25Nが店頭から消えてしまい、映像制作や
学校での授業に支障をきたしたという出来事がありました。幸い、年末には製品が
出荷されたのですが、あわてふためいて集めた情報のなかには見過ごせないような
性質のものもあり、あらためてユーザー側として製造中止に直面したときの準備を
しておかなくてはと思いました。


■春田 実(アジア誌「恋するアジア」発行)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『戦場の夏休み』(監督:吉岡逸夫)
イラクでは連日のように自爆事件がおこり、毎回数十人の人間が殺されている。そ
のたびに思い起こすのがこの作品である。ずいぶん前に見た作品なのだが、何回も
脳裏によみがえる。この作品は戦場のイラクにバカンスにでかけたヘンな一家の旅
日記なのだが、マスコミ映像では見ることのないイラクの市井の人の表情が活き活
きと映っている。監督はジャーナリストなので戦車や銃声に細かく反応するのだが、
妻や子供は無関心、のほほんとしており、カメラをまわしている妻は、あらぬ方向
を撮っている。このあらぬ方向の映像が、旦那の撮る"問題"映像より、的確にイラ
クの人の生活感の重みを切り取っていて、リアリティでは断然、旦那の映像より勝
れている。
最後のほうでご飯を炊く老婦人が映るが私はこのシーンに泣けて仕方がなかった。
戦闘シーンはいっさいない作品だが、戦争の悲惨や実態がじわっと伝わってくる作
品である。未見の方には、ぜひ鑑賞をおすすめしたい。イラク戦争が何なのかが、
よくわかるだろう。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
上の文とも関連するのだが、ドキュメンタリーはこうでなくてはいけない、という
ことから、もっと自由でいいのではないか。"いい"作品を作ろうとするあまり、構
成やテーマが、マスコミや映画祭などに擦り寄っていくのは、つまらない。

(3)「私の2005年」
取材でいろんな方にお会いしたが、本や映像より生身の人間が一番面白いという思
いを新たにした。今年06年もいろんな方にお会いしたいと思っている。


■平野俊如(会社員・営業)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
私がオススメするわが一押しのドキュメンタリー映画は『マンゴと黒砂糖』(監督
:鯨エマ)です。 その理由は、世界のどこかではこの瞬間も戦争で命を落とす人
たちがいます。最近の戦争を題材にした映画では 血 死体 麻薬 兵器などとて
も過激な映像が多く見られます。これらの作品は、戦争をリアルに写しとっている
かもしれませんが、あまりにも過激で心の中に浸透するまでに時間を要しますが、
『マンゴと黒砂糖』ではそういった過激さは無くむしろ心にやさしく浸透していく
ように思います。決して押し付けるものではなく見るものに選択権があるように感
じました。


■青原 さとし(ヒロシマ平和映画祭実行委員会代表) 
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
昨年は、私が発案しましたヒロシマ平和映画祭2005が、開催が実現され非常に有意
義な年でありました。本映画祭は、戦後60年を節目に、それまで製作されたヒロシ
マ・反核・平和をキーワードにした映画を集大成する映画祭です。劇映画、アニ
メーション、ドキュメンタリーとジャンルを越境したセレクションを意識し、被爆
地広島から「原爆映画42作品」を改めて問い直し世界に向けて発信する機会でもあ
りました。本映画祭中、ドキュメンタリー映画では、世界でも初公開となった以下
の作品が、目をひきました。

『マッシュルーム・クラブ』(監督スティーブン・オカザキ、2005・35 分・ビデ
オ・アメリカ)
日系三世の映画作家スティーブン・オカザキによる最新作。原爆60周年を記念して
ヒロシマの現在を再び考察し、自らのナレーションで語ったパーソナル・フィルム
として仕上げている。街を練り走る右翼の凱旋車、SPに守られながら小泉首相が
参列する仰々しい慰霊式典、「国際平和都市ヒロシマ」とは裏腹な広島を活写しつ
つこの映画は始まり、高齢化を迎える被爆者たちの証言が展開する。そして母親の
胎内で被爆した原爆小頭症患者とその家族の会「きのこ会(マッシュルーム・クラ
ブ)」の現在が追われ、ヒロシマが残した傷とその面影が風化しつつある日本の現
状が描き出されていく。「きのこ」の傘下にあるのは、ヒロシマ・ナガサキではな
く世界全体のことなのである。

『“ソンバ ケ”危険な石』(監督デビット・ヘニングソン、2005・50 分・ビデ
オ・カナダ)
原子爆弾の発明の遥か以前、1880年代にカナダの少数民族デネ族の呪医が「危険な
岩がデネの土地から運び出され『巨大な鳥』によって海をこえて運ばれる。そして
デネ族に似た人々の頭上へ炎が落とされる。」と危機を予言した。1932年カナダ人
はウラン鉱山からウランを入れた袋とも知らず運んでしまった。このウランこそ広
島・長崎の原爆と化したのである。第二次世界大戦中カナダ人は無意識にマンハッ
タン計画に加担したのだ。その後ウラン鉱山によって水源を汚染され、被爆のため
デネ族はほろびかけている。未消化なまま仕上げられた作品であるが、広島の原爆
の大本になった原材料の産出地とその人々を追及した意義は非常に大きい。またこ
の作品を広島で世界初公開した価値も大いにあった。

また広島のテレビ放送各局は、原爆の日を中心に毎年かならず製作してきた 原爆
関連のテレビドキュメンタリ−を特集連続上映する「テレビドキュメンタリー8・6
の六十年」も壮大な企画となった。

ヒロシマ平和映画祭   http://www33.ocn.ne.jp/~dotoku/HPFF2005/index.html 


■越後谷 卓司(愛知県文化情報センター主任学芸員)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『アフリカ ゼロ年』(「NHKスペシャル 21世紀の潮流」として7月に4回シリーズで
放送)は、テレビ・ドキュメンタリーとして久々に力の入った番組だったし、10月
に開催された「山形国際ドキュメンタリー映画祭2005」では、どれか1本を選ぶこ
とが酷なほど、レベルの高い作品群に出会えたが、個人的に最も印象に残った作品
としては、実験映画の系譜から生れた傑作『映像書簡10』(かわなかのぶひろ、萩
原朔美共作)を挙げたい。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
日本のドキュメンタリーでは、実験映画における個人映画の概念の延長上に位置づ
けられる作品が、やはり本数的な優勢を占めていた。「山形」で観た若手作家たち
の作品は、ビデオ制作という点が少なからず関与していると思われるのだが、イン
タビューやナレーションなど、言葉の占める比重が高い。『映像書簡10』がこうし
た作品群から距離を置くのは、フィルムで培われた、映像によって思考する姿勢が
一貫しているからだろう。

(3)「私の2005年」
7月の「アジアの実験映像Part2」で、リティ・パニュ『S21 クメール・ルージュの
虐殺者たち』(2002年)などを、愛知県で初上映できたことも印象深いが、やはり11
月末から12月に開催した「第10回アートフィルム・フェスティバル」の吉田喜重特
集プログラムで、吉田監督を始めとする、関係者のご尽力により、東京大学のPRビ
デオ作品『知の解放 知の冒険 知の祝祭』(1997年)を、初めて一般に向け上映でき
たことは大きかった。


■安井 喜雄(プラネット映画資料図書館)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『アジアはひとつ』。竹中労が企画しNDUが制作した幻のドキュメンタリー。この
映画には沖縄に在住する朝鮮人や台湾人が出てくるので山形の特集上映でぜひ上映
したいと思った。画ネガとシネテープを探索し発見したものの、ネガはキズだらけ、
シネはカーリングしてワカメ状。プリントを焼く金は毛頭なし。東京光音のネガ・
テレシネでカビ取りやキズ消しをしてもらい、ようやく上映に漕ぎつけた。おもろ
い映画でっせ。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
答えるのに困った。分かりまへん。

(3)「私の2005年」
国内の映写機メーカー全てが16mm映写機製造から撤退したのは痛い。新たに作られ
るホールや会館などにも最新のビデオ・プロジェクターは入っているものの16mm映
写機を設置しているところは極めて少ない。作者側はフィルム上映を希望している
のに、会場に映写機がないため上映側がビデオ上映を希望するケースが多くなって
いる。
困ったものだ。映写機ないなら貸すで。


■佐藤 寛朗(neoneo坐・上映企画)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
インパクトという点で『ダーウィンの悪夢』(フーベルト・ザウパー監督)に軍配。
私にとって新聞紙上の言葉に過ぎなかった、「グローバリゼーション」という言葉
の陰で進行する搾取や生態系破壊の実態、そして我々もその構造に加担する一員で
あるという当事者意識を想起するのに、これほど判りやすくて衝撃的な作品はあり
ませんでした。遠いアフリカの話ですが、それ以来、白身魚(スズキ)が食べられ
ません。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
せっかく劇場公開された作品を見に行っても、お客さんが数人でガッカリ、という
ことが今年は良くあった。色々原因はあると思うが、1つはっきり言えるのは、た
だ映画館で流す事を目標にしても、それだけではお客はこないということ。ブログ
やmixiといった「私メディア」を使った地道な宣伝も引き続き重要だが、上映活動
に対しても作家の主体性や戦略が問われることを今一度記しておきたい。そして、
もっと面白
い作品を!

(3)「私の2005年」
(2)の実践場であるneoneo坐や山形映画祭で、自分自身と、そして特に日本のドキ
ュメンタリーの力不足を痛感した一年でありました。市場がニッチな事は仕方ない
が、映画に理解のある、良心的な仲間にさえ見放されるような作品作りをしていて
は、ドキュメンタリーの未来は暗い。アーカイブの探求も楽しいが、現在形の世界
や時代と正面切って向きあう事を考えたい。


■細見葉介(大学生/映像研究者)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『叛軍 No.4』(岩佐寿弥監督、1972年)
軍内部の非人間的な実態を、ひたすらに固定されたカメラに向かって語り続ける元
兵士。何回ものフイルムチェンジを挟みながらの告発に、かつて読んだ野間宏『真
空地帯』を思い出した。演出のない単なる「語り」の迫力、こうした証言をもっと
若い世代に見せたいものだ、と思いを巡らせた途端にやってくる、巨大な破綻、裏
切りのシーン。映像の最も基本的な機能が否定される訳だが、たまにはこの位の衝
撃を受けるのも「あり」だ。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
世代と政治性との関係に引き続き注目している。憲法の問題が今年は大きくなるだ
ろうが、現実に大きな鍵を握っている、非政治的な世代の憲法観をじゅうぶんにと
らえる必要があると考えている。実体験や、思想によって裏打ちされていない語り
口もほしい。その論調を問わず、10〜20代が自らまたは同世代を主語にして撮った
ものがあってもいいと思う。

(3)「私の2005年」
就職活動の渦中にあった。山形にも行けず、わずかな本数しか観に行く機会もなく
残念だった。しかし、自然あふれる山村の小学校をとらえた太田綾花監督『花のこ
え』など、近い世代の優れたドキュメンタリーに出会うことができた。秋には、横
浜学生映画祭の学生シンポジウムの司会を務めたが、司会業の難しさを痛感した。
さらに大学「改革」で、教員の大量流出や授業崩壊など、在籍する大学が混乱に陥
っており、現在知人たちと映像化の最中で、ドキュメンタリーとして今年春頃に公
開の予定なのでご期待いただきたい。


■山下 治城(TVCMプロデューサー)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『ファイナル・ソリューション』。「山形国際ドキュメンタリー映画祭05」のコン
ペ出品作品。インドのヒンディー教徒と少数派であるイスラム教徒の対立を延々と
追っている。これを見ると、必ずその場所での少数派が迫害され、差別されている
という構造が明らかにされる。それは、演繹すると、世界で同じことが行われてい
るんだということを強く意識させられた。対立は対立のままで解決などはないとい
う現状も、同時に突きつけられる。
しかしながら、何とか解決法が見つからないのだろうか、という監督の意思が延々
と描写され、そして画面を通して我々にも伝わってくる。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
『ファイナル・ソリューション』はビデオカメラで撮影されている。テクノロジー
が進化し、ローコストで長時間撮影出来、コンピューターによるノンリニア編集の
簡便化により多彩な映像作品が作られるようになった今、ドキュメンタリーはチャ
ンスでもある。ただし、ドキュメンタリー作品が玉石混交になってしまうという現
状も確かにあるだろう。そのためには、情報を選別し、僕たちに選別したものを提
示するものが必要になってくるだろう。そのために「山形国際ドキュメンタリー映
画祭」やこのようなドキュメンタリーのメールマガジンによる情報が非常に重要に
なってくるのではないだろうか?そして、そういったものが集中して見られる場所
が本当に大切になってくるだろう。

(3)「私の2005年」
今年は、僕にとって身体を強く意識させる年だった。特に、12月に生まれて初めて
参加したホノルルマラソンの何とか、かんとかの完走は、その準備も含めて思い出
深いものになった。また、舞台に於いても身体を意識した公演が、僕のココロを強
く捉えた。以前は、ダンスで感動するよりも、演劇で感動していたのに。これは、
どういうことだろうか?
物語を語ることが飽きられてきているのか?いや、決してそうでない。では何故?
「マシュー・バーニー」という現代アーティストもまさしく身体的な作家である。
たまたま、そういったものの公演や催しを見る機会が増えたからなのか?僕自身が、
そういった身体的な表現をもったものに興味が移ってきているのかはわからない。
「わからない」ということだけは、わかっているので、「わからない」ということ
を意識しつつ、これからもそういった身体性の強い表現を見続けようと改めて思っ
ている。


■中村 のり子(大学生)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『わたしの季節』(監督:小林茂):カメラが逞しい。「世間」はこの学園の人た
ちのようにシンプルな表現ができないところなんだ。『リトアニア旅への追憶』
(監督:ジョナス・メカス):まったく制度化と無縁なナレーションとモンタージ
ュ、一人一人のhomeがある。『無人列島』(監督:金井勝):艶やかなモノクロー
ムと尼さん。国会議事堂前でチャンバラ。最後には尼さんが勝つ、ということは…
 『ルート181』(監督:ミシェル・クレイフィ/エイアル・シヴァン):“君た
ちはどうも怪しい”と被写体に言わせる曖昧さを貫いた。『OUT OF PLACE』(監督
:佐藤真):観念的なテーマと生き生きした被写体との両存。今社会でいちばん必
要な発想が示されている。『15日間』(監督:鈴木志郎康):「見る」ことと「見
られる」こと、誰もがごまかしている自意識を見つめている映画だった。

(3)「私の2005年」
ヤマガタで風邪をひいたのが悔しかった。上の作品群を、自分でノートを見るまで
思い出せなかった。もっとまともに記憶したい。それから、もっと本をさくさく読
めるようになりたい。


■伏屋 博雄(本誌編集者、プロデューサー)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『不知火海』。戦後のドキュメンタリー映画の源流ともいうべき土本典昭監督のミ
ナマタ連作の代表作。久しぶりに再見したが、見るほどに対象に対して配慮が行き
届いていて今なお新鮮だ。人間観察の驚くべき深さで、表層では伺えない患者さん
の孤絶する深部に視線が到達している。小川紳介と土本典昭、その持続力と肺活量
の大きさに、デジタルカメラ世代がこの二人の水準を越えるのは容易でない。知恵
と策略を用いて突破するしかない。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
デジタルカメラによって低予算で制作できるようになり、ドキュメンタリーの裾野
は広がったが、ノンリニア編集は個に委ねがち。フィルム編集のときは監督を中心
にスタッフが参加し、あれこれ意見を出し合い共有化をはかったものだ。山形映画
祭は応募規定や予備選考を改善する余地があると思う。コンペとアジア千波万波は
応募規定が変わり、どちらかを選択せざるを得なくなり、日本を含むアジアからの
応募者は戸惑ったのではないか。

(3)「私の2005年」
初めて代島治彦監督と組んで『ドキュメンタリスト黒木和雄 いつかきた道』
(So-netチャンネル)をプロデュース。小川プロでお世話になった大津幸四郎カメ
ラマンと仕事をしたことも忘れがたい。ここ数年来取り組んでいる土本典昭監督を
描く撮影をやっと終え、目下編集中。土本さんの歩みを辿ることは、日本の戦後史
でありドキュメンタリー史そのもの。その映画術を直に聞ける幸運を味わった。
「neoneo」の登録者数が2027名に達した。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃02┃□neoneo坐 2006年1月後半のプログラム
┃ ┃■「知られざる短篇映画を見てみる」上映会―「短篇調査団」
┃ ┃毎月第2・第4水曜/20:00〜21:40 終映予定/16mm上映
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(21) 富士の巻…2006年1月25日(水) 20:00〜
『富士山〜その植物社会〜』(1973年/23分/カラー)
制作:記録映画社/プロデューサー:古川正思/演出・脚本:上野耕三/撮影:古
川直木
■自然界に対する認識を高めようとするもの。富士山にスバルラインが通り、シラ
ビソの林が枯れた。林内のバランスが崩された為らしい。植物社会のバランスをさ
ぐる。
『富士山を測る』(1994年/24分/カラー)
制作:桜映画社/企画:大成建設/プロデューサー:村山英世/演出・脚本:山田
和広/撮影:木村光男・大野洋
■富士山の高さが初めて測られたのは江戸時代で、明治以降測量技術の発展と共に
その高さは書き替えられてきた。その測量の歴史と共に、今までの直接水準測量法
と最新の「GPS測量」を比較紹介し、これらの技術の応用を展望する。
『日本人の富士』(1980年/43分/カラー)
制作:生物映画研究所/企画:富士銀行/プロデューサー:上島雅文/
演出・脚本:愛川直人/撮影:鈴木信之
■富士山は日本人の心のふるさとである。北海道から九州まで、季節を追って有名
な八つのふるさと富士を紹介し、その周辺にくらす日本人の姿を描いたドキュメン
タリー。

鑑賞無料・上映カンパ歓迎
プログラム詳細・お問合せ先  http://d.hatena.ne.jp/tancho/ 



■「TV-WORKS テレビドキュメンタリストの仕事 Vol.1」
約50年の歴史を持つ日本のテレビドキュメンタリーは、作品の資料や評論も少なく、
その全貌はあまり知られていません。ノンフィクション映像の「たまり場」neoneo
坐では、テレビドキュメンタリーを従来のテーマ別ではなく作家別に検証する研究
上映を開催し、彼らの「仕事」を見つめていきたいと考えます。第一回目はNHKの
膨大なドキュメンタリー作品の中から、テレビフレームを軽々と飛び越えた傑作・
異色作を大特集!特別協賛:NHKマルチメディア局(NHKアーカイブス)

1月28日(土)
13:00〜13:30 ディレクター・玉井勇夫の仕事
『ベトナム帰休兵』(1966年/30分/白黒)
13:35〜14:50 プロデューサー・諏訪秀樹の仕事
『ファインダーの中のベトナム戦争』(1991年/75分/カラー&白黒)
15:10〜16:00 ディレクター・小沢爽の仕事
『いつもでない一日〜北見北斗高校の強行遠足』(1970年/50分/カラー)
16:05〜16:35 ディレクター・龍村仁の仕事
『18歳男子』(1971年/30分/白黒)
17:00〜18:30 ディレクター・工藤敏樹の仕事
『廃船』(1969年/80分/白黒)
18:40〜19:30 ディレクター・西川啓+カメラマン・中野英世の仕事
『静かに時は流れて〜長崎の少女と写真家の歳月』(1999年/50分/カラー)
19:30〜 トーク&交流会 ゲスト予定:中野英世氏・西川啓氏 ほか

1月29日(日)
13:00〜13:30 ディレクター・小泉三郎の仕事
『チッソ株主総会』(1970年/30分/カラー&白黒)
13:35〜14:25 ディレクター・萩野靖乃の仕事
『密航』(1980年/50分/カラー)
15:00〜16:35 ディレクター・片島紀男の仕事
『二つの祖国〜中国残留日本人孤児』(1986年/50分/カラー)
『命もえつきる時〜作家 檀一雄の最期』(1987年/45分/カラー)
17:00〜19:30 ディレクター:伊藤純の仕事
『宋姉妹〜中国を支配した華麗なる一族(前後編)』(1994年/75分×2/カラー
&白黒)

全回鑑賞無料・上映カンパ歓迎(500円=作品資料集/お茶/お菓子付)
トーク&交流会参加費:お一人様2,000円(飲食付)
プログラム詳細・お問い合わせ先  http://tvworks.exblog.jp/ 



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃03┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●年が明け、今年もneoneoをよろしくお願いします。

さて今回は、昨年にご覧になったドキュメンタリーの中で一押しの作品を選んでい
ただくアンケートの発表です。その他に2問ありますが、いずれも現下のドキュメ
ンタリーを考える上で貴重な回答をいただきました。心より御礼申し上げます。中
には指定した文字数200字を大幅に超える回答もいくつかありましたが、それもド
キュメンタリーへの情熱の発露であり、真剣に応じてくださった結果だと理解し、
割愛せずそのまま掲載しました。

neoneoを創刊した当初は319名に過ぎませんでしたが、現在2027名もの登録者数を
数え、発行・編集者として責任の重さに身の引き締まる思いがします。誌面の一層
の充実に心がけ、ドキュメンタリーの活性に寄与したいと存じます。ご愛読のほど、
そしてさまざまな角度からのご意見の投稿を切にお願いする次第です。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■発行:ビジュアルトラックス  visualtrax@jcom.home.ne.jp 
■責任編集 伏屋博雄
─────────────────────────────────────
★ご意見・ご感想はビジュアルトラックスまで
★いただいたメールには全て目を通しますが、必ずしも返信できるわけではありま
せん。また、いただいたメールをこのメールマガジンに掲載させていただくことが
ありますが、掲載不可の場合はその旨をお書き添えくださるよう、お願いいたしま
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