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映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。

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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo Vol.27-2 2004.12.15

発行日:12/15


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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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  ┗━┛ ☆━┛ ┗━☆    27-2号  2004.12.15


∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 †01 日本のドキュメンタリー映画のかたち
      対極のドキュメンタリー
         ―小川紳介と土本典昭(9−最終回)  大津 幸四郎
 †02 自作を解剖する
      『みやび 三島由紀夫』   田中 千世子
 †03 ワールドワイドNOW ≪ベルリン発≫
      映像と現実の関係性―ドイツの移民社会を見る  梶村 昌世
 †04 列島通信 ≪埼玉発≫
      埼玉映像事情と私(3)  村上 賢司
 †05 neoneo坐通信(12)
      12月25日:「小川紳介のコスモス〜小川プロの仕事」(第3弾)
            『日本解放戦線 三里塚』
            『三里塚・第三次強制測量阻止闘争』
      科学映画特捜隊・御来場御礼短信  シミズ ヒロユキ(科特隊)

※27-1号より

     ◇────────────────────────◆◇◆    


 †06 広場
     告知:neoneo坐・忘年会<12月25日(土)19:20〜>
     告知:年末のアンケート大募集(締め切り;12月31日)
           「わが一押しのドキュメンタリー」
           「ドキュメンタリーの現状について」
           「私の2004年」
     投稿:『Cuba/Okinawa サルサとチャンプルー』(16―最終回)
         『君が代』in キューバ  波多野 哲朗
     投稿屋台『クチコミ来来軒!』(4)
         阿部理沙/脇阪亮/清水浩之
     投稿:レビューリレー(3)
        テクストを生きる―『日本解放戦線・三里塚の夏』を見て
           佐々木 恵龍
  †07 編集後記  伏屋 博雄


   ★バックナンバー閲覧はこちらまで

   まぐまぐ配信   http://www.mag2.com/m/0000116642.htm
   melma!配信    http://www.melma.com/mag/39/m00098339/



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┃06┃□広場
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■告知

●neoneo坐・忘年会のお知らせ

期日:12月25日(土)19:20〜
会場:スペースneo(下記のneoneo坐のサイトに地図が掲載してあります。)
 http://www014.upp.so-net.ne.jp/kato_takanobu/neoneoza/index.html 
参加費用;2000円(飲み物+大皿料理)

どなたでも参加できます。当日は、『日本解放戦線 三里塚』と『三里塚・第三次強
制測量阻止闘争』の上映があり、ゲストトーク(本田孝義監督)を終えた19:20頃か
ら開始します。パァーッとやりましょう。


●年末アンケート大募集!      伏屋 博雄(本誌編集長)

早いもので2005年まで残りわずかとなりました。本誌では皆様からアンケートを募集
します。下記3問のうち1問でも構いません。奮ってご応募ください(締め切り:12月
31日)。1月15日号に新年特集として発表します。

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
2004年にご覧になった作品のうち、これこそドキュメンタリー!と思う作品と
その理由。旧作でも構いません。(200字以内)

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
「どう思うか、どうしたいか、どうなるといいと思うか?」を、制作・上映・批評・
宣伝・観客…などいろいろな角度から意見を求めます。(200字以内)

(3)「私の2004年」
印象に残った出来事、取っておきの話、あるいは問題提起など、映画に限らず思いを
新たにすることは?(200字以内)

各問いに200字以内(1問でも可)、氏名とお仕事を明記のうえ、年末までに送信くだ
さい。 送信先: visualtrax@jcom.home.ne.jp  伏屋まで。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■投稿

□投稿:『Cuba/Okinawa サルサとチャンプルー』(16―最終回)
■『君が代』in キューバ
■波多野 哲朗

●歴史と音楽に触れ合いながら・・・

故郷に想いを馳せながら死んでいった日系移民1世は当然であるにしても、キューバ
で生まれ育った日系2世や3世たちもまた、みずからの身体のどこかに宿るかすかな記
憶や痕跡をたどっていくうちに、いつの間にか「国」という抽象概念を抱え込んでし
まうようだ。日系2世といっても、両親がともに日系1世でないかぎり、その風貌はか
なり一般の日本人とはかけ離れている。日本語も話さない。ましてや3世ともなると、
外見から日系と認めることはまず不可能である。にもかかわらず、彼らは「日系人」
の組織に参加し、できればこの関係をずっと失いたくない、と言うのである。

日系人社会の濃密な空気を保持するイスラ(島)はともかく、異種融合を誇るあのハ
バナにも、若い世代の日系人の集団があった。「コール・フジ」は日系3世・4世から
成る混声コーラス・グループで、日本の歌だけをうたう。ある日曜日、ハバナ新市街
の日系人宅で開かれた練習の現場を訪ねた。20数人の男女が歌っていた。発声の中心
を担っていたのは10代の女性たちだったが、年齢の分布は、下が小学生、上が50歳ぐ
らいだろうか、その間のいろんな年齢の人たちがいた。かれらの風貌もまたいろいろ
で、明らかに東洋人らしい風貌の持主は数人程度、あとはほとんどがスペイン系ある
いはアフリカ系の風貌の人たちで、「これがどうして日系なの?」とちょっと不思議
な気もしたが、さすがはハバナだ。

歌唱力はなかなかだった。『こんにちは赤ちゃん』『少年時代』『花とおじさん』な
ど懐かしい日本の歌をつぎつぎとうたったが、日本の並みのアマチュア合唱団よりは
上手かもしれない、と思ったほどだ。日本語の発音も悪くない。この合唱を指導して
いるのは、ナカオという姓の若い姉妹だった。彼女らは音楽学校の卒業生で、その指
導ぶりは厳しく本格的だった。日本語はまったく話さないが、彼女らがコーラスの歌
いかたをこまかくチェックしていくうちに、次第にうたわれる歌詞の日本語に情感が
こもるようになっていくのが不思議だった。

驚いたことに4曲目は、かれらがいまレパートリーに加えようと目下特訓中の『君が
代』だった。練習はまずメロディをつけずに、歌詞だけを斉唱することからはじまっ
た。ナカオ姉妹の1人がまず『君が代』を一節ずつ読み上げ、そのあとを追って全員
が復唱する。それは不思議な光景だった。「キミガー ヨーワ」…「シヨニー ヤー
シヨニ サザーレ」…「イーシノ イワオトナーリテイ」…と風貌も色とりどりのメ
ンバー全員によって、一語一語にかならず強弱のアクセントをつけて斉唱されるその
『君が代』は、われわれが日ごろ目や耳にする『君が代』とはまったく別の、どこか
異様な歌であった。と同時にわれわれの知る『君が代』が、むやみに母音を引き延ば
したアクセントのない平坦な歌であることを痛感する。.

やがてメロディを加えた『君が代』がうたわれた。それはキューバ音楽に似て、幾分
リズミカルで早いテンポの歌だった。ところがかれらはそれをうたい終えると、こん
どはその様子を撮影していたわれわれに向かって、どうか正調の『君が代』をうたっ
てくれと言いはじめたのだ。これには困った。だいたいコーラス・グループの前で歌
えるようなタマはいない。私は若いスタッフに「歌え、歌え」と呼びかけてみるが、
「どうか『君が代』だけは勘弁してください」などと言う。これにはほんとうに参っ
てしまった。しかし撮影だけ済ませて、先方の希望に応えないことは許されない。そ
こで私がほかのスタッフ2人を引き込んで、みずから『君が代』を歌うことになって
しまったのだった。さぞかし、いかがわしい「正調」に見えたことだろう。

練習のあと、ナカオ姉妹にインタビューをこころみる。彼女たちは言う。自分たちは
キューバの日系人社会に属していて、なにか共通のものも求めていた。それが日本の
歌だったと。自分たちはおじいちゃんの国だった日本の歌が好きだった。日本の歌を
うたっていると、日本的な感情を受け継ぐような気がする。実際歌は間違いなく人の
心をつないでくれたようだ、と。『君が代』については、いま話を聞くまで、「天皇
の代は永遠に栄える」という意味の賛歌だとは知らなかった。でも、他の日本の歌だ
って意味はまったくわからずに歌っているんだから、同じようなものですね、と。

自分たちが日系人社会に属しているという彼女たちのアプリオリな信憑を別にすれば、
私は音楽をめぐる彼女たちの気持をほぼ共有することができる。私はこれまで現在制
作中の映画『Cuba/Okinawa――サルサとチャンプルー』に関して、一方では20世紀の
埋もれた歴史の一部である移民の問題、とくに沖縄とキューバ間の移住の問題へと深
くかかわり、それなりに論理的に踏み込んできたつもりだった。しかし他方では、ほ
とんど没論理的にあるいは生理的にキューバの音楽に惹かれ、また沖縄の音楽に魅せ
られてきたのも事実である。実際、キューバではいつでもミュージシャンのあとを追
っていたような気がするし、沖縄でも同じだった。そこでは、歴史的なテーマと、音
楽的なテーマが触れ合っていたのだった。

だが、すでに16回にもおよぶこの投稿を通じて、前者についてはかなり語り得たつも
りだが、後者すなわち音楽的なテーマについてはまだほとんど語っていない。そして
この後者の側面を抜きにしては、実はキューバと沖縄とは「いま、ここ」に結びつく
ことはないのだと思う。むろん歴史的探求も「いま」を生きることの緊張から始まる
のだが、音楽はより直裁的に「いま」を表現するだろう。ただ、音楽のテーマを言葉
で語るのはほんとにむずかしい。少なくとも映画制作に先んじては。.

そこでいささか勝手ながら、ことしの最終号となる本号で、いったんこの「連続投
稿」を中断したいと思います。もうすこし映画編集の作業を先行させないと、論述が
抽象的になりがちで、逆にそれが映画作りに悪影響を与えるように思えるからです。

伏屋編集長には、これまでずっと勝手な振る舞いを許してもらってきましたが、映画
の編集に集中するためにという理由で、ふたたび気ままを許してもらうことになった
次第です。ほんとに有難う。そして拙稿に付き合ってくださった皆さんにもお礼を申
し述べます。
                                  (了)

■波多野 哲朗(はたの・てつろう)
映画は来年3月に完成の予定。それまでは当分映像とにらめっこが続きます。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■投稿屋台『クチコミ来来軒!』第四回
■屋台引き:清水浩之(ゆふいん文化・記録映画祭)

ここはメルマガ上に出店した「投稿屋台」です。皆様の投稿をお待ちしております。
宛先:清水浩之 E-mail: shimizu@ad-ult.co.jp /ファクス:03-3703-0839

本文とは別に「あなたのお名前(ペンネーム可)/掲載確認のご連絡先(メールアド
レスor電話)/題名/制作年/監督/見た場所(よろしければあなたのプロフィール
や近況も)を付記して、清水までお送りください。


●『お味見レビュー100!』投稿募集中!
特定の作品やテーマでの「お題」を出して、皆さんの感想を募集するコーナーです。
お一人様につき本文100字以内が目安ですが、あくまでも目安です!
第一回目のテーマ《『華氏911』とポリティカル・ノンフィクション》、前回〆切を
年内一杯に延ばしましたが、キチンと守ってくださった方には申し訳ございません。
ひと足お先にご紹介させていただきます!

『華氏911』2004年/監督:マイケル・ムーア/見た場所:立川シネマシティ
うかつにも涙した私。やられたなと思う。エンターテイメントとして観て、お土産を
持ち帰った。ブッシュ批判映画にとどまれない炎が、監督のおおきなおなかで燃えて
いる。(阿部理沙/東京/19歳)

『A』1998年/監督:森達也/見た場所:シネ・ヌーヴォ
はじめてこの映画を観て、森監督の『華氏911』批判が理解できるような気がした。
森監督はオウム真理教の信者たちを「マインドコントロールされた愚か者たち」や
「悪の権化」のような図式としてではなく、「人間」として描いている。森監督の
『華氏911』批判は、ブッシュ大統領を「暗愚の大統領」のような図式ではなく、
「人間」として描くべきだった、ということか。
(脇阪亮/大阪/35歳/行政書士兼ファイナンシャル・プランナー)

『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』
2003年/監督:エロール・モリス/見た場所:ヴァージン東宝六本木ヒルズ
フォード社長からケネディ政権の国防長官にとらばーゆしたマクナマラ氏、ミドルネ
ームの“ストレンジ”とは裏腹に「能吏」な彼が、相手国ベトナムの真意を読み取れ
なかったことを過ちとして素直に認める姿勢は我々凡人も見習いたいところです。
(清水浩之/東京/37歳/おかげさまで来年も会社員)

※『私のオススメ三品!』選者募集中!
ゲスト選者をお招きして、ひとつのテーマにちなんだオススメの三作品をトータル
400字でご紹介していただくコーナーです。次回は2月1日号の予定!


●新・クチコミ200字評!(その3)
オススメの作品を200字以内の短評で紹介してください!映画・ビデオ・テレビなど
皆さんがノンフィクションだと思う作品だったらなんでも可!もちろん「オススメし
ない映画とその理由!」もOKです。

B-070『史上空前の論文捏造』
2004年/NHK/構成:村松秀
放映:2004年10月9日・NHK衛星第一「BSドキュメンタリー」
エネルギー革命の期待が高まる「超伝導」…よくわかりませんが。この超伝導の分野
で「画期的な」実験結果を発表した若い学者を巡る、学界からジャーナリズム、産業
界まで巻き込んだゴールドラッシュの顛末記。「架空の」実験結果を証明するために
世界で100組以上の研究者が「時間と予算を浪費した」責任が“彼”一人にはないこ
とが、番組に登場する全ての関係者が「自分は被害者」だと思っていることからも明
らかなんですが。
(清水浩之/東京/37歳/『史上空前の制作費捏造』も放送してほしい気が…)

B-071『照明熊谷学校』
2004年/フェローピクチャーズ/編集・構成:伊藤正治/監修:和田誠
見た場所:ユーロスペース
CM会社の新人制作進行係だった清水にとって、撮影現場での照明部さんの仕事は謎だ
らけ。黒紙、トレぺ、カポックといった品々でどんどん被写体を覆い隠していってし
まうのは何故ゆえに?と思っていました(以上、20世紀のお話)。映画照明の重鎮熊
谷秀夫氏の仕事を分析するこの作品はそうした疑問に役立つ教育映画としてオススメ。
映像の中で「何を見せるか/見せないか」そこを取捨選択していくのが照明だったり
するのですねー。
(清水浩之/東京/37歳/カポック=光をバウンドさせる発泡スチロールの板です)

B-072『妄想代理人』
2004年/マッドハウス/原作・監督:今敏/シリーズ構成:水上清資
全13話/ビデオ・DVD発売中→ http://www.mousou.tv/ 
またアニメ?でもここまでアクチュアルな企画はあまり見当たらないし。連続通り魔
「少年バット」の被害者達と、事件に翻弄される刑事達が数珠つなぎで進行させる物
語は、数多の脱線を孕みながらも、当面の問題からリセットされる「被害者の役得」
が人々にテロルを待望させ、遂には癒し願望と合体してしまう!やたらに安息の場を
求めている今の日本で「居場所がないという現実こそが本当の居場所だ!」という啖
呵は何人の耳に届く?
(清水浩之/東京/37歳/改憲論そのものが「癒し願望」に聞こえる今日この頃)


     ◇────────────────────────◆◇◆    

■投稿:「小川紳介のコスモス〜小川プロの仕事」レビューリレー(3)
■テクストを生きる―『日本解放戦線・三里塚の夏』を見て  佐々木 恵龍

その輪郭を疑うように、あるいは解体していくように、並べられた鎌や鍬などの農具
を執拗に眼差す視線は、どこかその宛先を探しあぐねている「揺らぎ」を孕んでいる
ようにみえた。そしてこの「揺らぎ」は作品を通して静まる事はなかったし、さらに
最終的には、その「揺らぎ」が「テクスト/オーディエンス」という断絶を超え、自
分へと連鎖していることに気付いた。このいつしか始まっていた「揺らぎ」に、僕は
「責任」という名前を与えた。

千葉県成田市の三里塚周辺に新しい国際空港の建設が1966年に決定された。『日本解
放戦線・三里塚の夏』はその空港建設への反対闘争を農民の側から撮った1968年の作
品であり、その後撮られていく、いわゆる「三里塚シリーズ」の第1作目ということ
だ。
「我々の昔からの土地と生活を、権力の側から守る闘争」、「三里塚と芝山がもつ人
間性という不滅の力を武器に、権力側に屈しない闘争」―これらの作中で反復される
言葉と、その両側に「農民の側」と「権力の側」を弁別し、配置したような「闘争」
は相互に支持しあいながら、一つの「世界像」をフィルム上で表象していく。その表
象のコードは「権力」を「農民の側」から注意深くわけつつ、両者を別種のものとし
て定義していく。別な言い方をすれば「権力」を「権力」として承認しつつ、それと
は違った「外部」を同定していくことにより、「権力の側」と「農民の側」は、矛盾
なく「対立」し、お互いを「排除」しつつ互いの「存在」を保証していく。.

怒りの眼差しや投石や、「帰れ!」や「人殺し!」といった罵倒の先には「権力」が
あり、「権力」とその行使を可能にする組織の先には「人間性」が溢れかえっている
というように。この種のフィルム上で表象された「世界像」の成立に荷担し、またそ
れを引き受けた時、僕らは「テクスト」に対して上記の読みを反復するような「観
客」という存在を保証される。つまりそこで表象のコードは「<農民の側>/<権力
の側>」ばかりでなく、それを「<眼差すもの>」をも、「テクスト」の優勢な在り
方を維持するために産出していくのだ。.ここで、「テクスト」をより広い意味で使
いたい。つまり「テクスト」が「意味のあり方」の一つの状態だと定義するならば、
僕の眼前に広がる「現実」もまた「テクスト」だ。とするならば、僕は一体、何に対
しての「観客」となっているのか?つまり「映画」に対してなのか、「現実」に対し
てなのか?そして、このように僕の眼差しが「観客」化した時、「映画」や「現実」
といった「テクスト」のある種の成立の仕方に荷担していくわけであるが、ではそこ
で生産・再生産された世界とはどんなものであり、またこの荷担の意味とは何なので
あろうか?.

フィルムが中盤にさしかかる頃、外の光が遮られた冷ややかな場所が映し出される。
そのまるで三里塚の夏の窪みと形容したくなる空間には、たくさんの使い込まれた農
具が整理されている。その映像に男性の闘争の状況を伝える言葉がかぶせられる。カ
メラは、その並べらた「農具」の先のざわめきを捉えようとするかのように凝視する。
また、後の自分達の闘いについて話し合われる場面では、机の上を撫でたり、タバコ
の灰を無心に集めたりする手―その目的や行き場をなくした手の動きに同調するよう
に、カメラは自らの視線の浮遊感も隠さない。.ここで、僕は、ある種の「正当性」
を付与されつつ武器化する以前の「農具」、あるいはその「正当性」を付与された武
器をもつ以前の「手」に出会う。さらに、最後のシーンの、誰もいない三里塚の土地
を上空から撫でるように飛行する視線は、そこに「農民/権力」といった図式以前の
「世界」を示唆する。この「テクスト」の表象が別様にも有り得たという可能性の現
前は、オーディエンスと「テクスト」の共犯関係により築かれ、「自然」化した「優
勢な読み」の専横性と、それはまぎれもなく自分が荷担する事により成立していると
いう自己の認識の≪権力≫―「世界」や「他者」を自己の側へと回収していくような
運動―を可視化する。女性が作品の最後で、「子供は女が産む。どこの母親が自分の
子供を人殺しに育てたいと思う?」と問い、誰もいなくなった不在の土地へとシーン
が移った時、僕が「社会」で育つ中で獲得してきた眼差しや認識が「他者」を殺す可
能性を、「他者」のいない「世界」で暗示されているように感じる。.

小川作品は上記のように、しばしば、何かにとり憑かれたようにモノを凝視する。そ
れはまるで「テクスト」の安定をこばむように、そこにざわめきを持ち込む。その時、
僕は言い様もなく不安になる。自分の「観客」化した視点が壊され、あるいは画面を
眺める視線が反転し、自己の≪権力≫を問いつづける眼差しとなって帰ってくるから
だ。そうした時、僕は「テクスト」に対しての「観客」といった安定した立場を手放
し、まさに「テクスト」の只中に生きられている「主体」として、自己の≪権力≫と
「責任」を引き受けざるをえないのだ。この小川作品からそっと手渡される「責任」
への応答が行なわれる時、「テクスト」は過去のものではなく、今、まさに僕が生き
られている「現実」でおこっている出来事となるのだ。そしてそれこそが僕が作品を
見る最大の理由だ。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映

●EARTH VISION in 新宿御苑vol.4「イラクから六ヶ所村へ」

今年5月から新たに始まった「EARTH VISION in 新宿御苑」。今回は、第12回アー
ス・ビジョン大賞「ヒバクシャ−世界の終わりに」の監督 鎌仲ひとみさんをゲスト
に迎え、劣化ウランや放射能汚染の問題を取り上げます。今回、初公開となる監督の
最新レポート『六ヶ所村通信No.1』も上映します。

劣化ウラン、放射性物質による被ばくへの不安は、どこか遠い国のものではない。映
画「ヒバクシャ」の鎌仲ひとみ監督がたどり着いたのは青森県の六ヶ所村。新たに完
成した再処理工場が2005年の本格稼動に向けて、今月、劣化ウランを使用した試運転
を開始する。2つのドキュメンタリーを通して核の時代に生きる意味をあらためて問
い直す。 http://www.earth-vision.jp/evhtml-j/5latesteventinfo-j/00gyoen.html

12月26日(日)午後0時45分開場 午後1時開始 16:30終了予定
13:00〜『ヒバクシャ−世界の終わりに』(2003/Japan/116min)
ヒバクしたイラクの少女の最後の言葉から始まる、世界のヒバクシャたちと出会う旅。

15:30〜『六ヶ所村通信 No.1』(2004/Japan/45min)
鎌仲ひとみ監督の最新レポート。青森県・六ヶ所村の核燃料リサイクル施設を追う。

会場:新宿御苑インフォメーションセンター(新宿門の隣にある建物です。新宿駅南
口から徒歩10分・新宿御苑前駅から徒歩5分)
(東京都新宿区内藤町11 tel.03-3350-4143)
 http://www.shinjukugyoen.go.jp/access/img/map.gif 
 http://www.shinjukugyoen.go.jp/access/img/gyoenmap.gif 

協力費:1000円 ※事前予約不要 

主催・問い合わせ:アース・ビジョン事務局 
 festival@earth-vision.jp  TEL : 03-5362-0525



●呉乙峰(ウー・イフォン)監督作品
『生命(いのち)―希望の贈り物』
新潟県中越地震チャリティ試写会 緊急開催!

昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭2003で優秀賞を受賞した、台湾を代表するド
キュメンタリー作家、呉乙峰(ウー・イフォン)の『生命(いのち)―希望の贈り
物』が阪神淡路大震災10年に合わせて劇場公開されることになりました。新潟県中越
地震のこれから始まる復興につなげたいと思い、劇場公開にさきがけてこのチャリテ
ィ試写を企画しました。ぜひ、チャリティ試写会にご参加ください。

2005年1月14日(金)開場:18:00 開映:18:30
(上映後、呉乙峰(ウー・イフォン)監督によるトークを予定)
会場:紀伊國屋サザンシアター(〒151-0051 渋谷区千駄ヶ谷5-24-2タカシマヤ
タイムズスクエアビル、紀伊國屋新宿南口店7F)
入場料金:1500円(税込)、前売券はチケットぴあ(Pコード:550-956)にて、当日
券は会場にて発売予定。
※ この試写会の売上げは朝日新聞厚生文化事業団を通じて新潟の復興活動に寄付さ
れます

お問い合わせ:シネマトリックス
 TEL:03-5362-0671   http://www.cinematrix.jp/ 

『生命(いのち)―希望の贈り物』
 2005年1月下旬 ポレポレ東中野にて“静かな感動”のロードショー



●京都 ドキュメンタリー・フィルム・ライブラリー 2005年1月の上映会

『ぬちどぅ 魂の声』(2004年、カラー、97分)遊花ゆい工房/西山正啓監督
 公式サイト: http://www.coara.or.jp/~yufukiri/tamasinokoe/ 

混迷する時代だからこそ“命生き”“ぬちどぅ”の魂を伝えたい。
                       監督 西山正啓

春頃から韓国・沖縄・日出生台で折々に撮影していた平和運動の記録をまとめる作業
を始めていました。折々というのは、特に2001年9月11日に起きた同時多発テロ以後
のこと。きっかけはたまに撮影した少ない映像とはいえ、5年も経つとそれらの映像
が貴重な記録となっていることに気づいたからです。

2001年5月、第4回湯布院文化・記録映画祭で映画『梅香里メヒャンニ』(78分)を発
表しました。この映画は大分県日出生台演習場で毎年行なわれている米海兵隊実弾砲
撃演習に反対する「ローカルNET大分・日出生台」の人たちと一緒につくった作品で、
広大な干潟と田畑を駐韓米空軍の射爆場にされ、生活基盤を奪われた梅香里住民の長
年にわたる闘争と、米軍人による殺人、強盗、レイプなどの凶悪犯罪に立ち向かった
女性たちの不屈の闘いを記録しています。
日出生台の演習反対運動にかかわる人たちが沖縄、韓国の人々と交流するなかで映画
『梅香里』が生まれ、上映によって全国各地住民との交流の輪がさらに広がりました。
沖縄では何ひとつ進まない普天間ヘリ基地返還。名護市辺野古沖のジュゴンが生息す
る美ら海を広大な軍事基地にしようとする政治的な策動。干潟の埋め立てなど本島東
海岸で進行する乱開発と環境破壊。狭い沖縄に日本の矛盾が凝縮して見えます。

8月13日、沖縄宜野湾市の沖縄国際大学に米軍輸送ヘリコプターが墜落・炎上しまし
た。現場検証を拒否されたのにもかかわらず抗議もしない、沖縄県民の声に耳を傾け
ようとしない日本政府。辺野古では9月9日に那覇防衛施設局が海上ヘリ基地着工に向
けボーリング調査を強行した。しかし、伊波洋一宜野湾市長は9月12日「米軍ヘリ墜
落事故に抗議する宜野湾市民大会」で3万人の参加者を前に「辺野古移設を前提とし
ない普天間基地の早期返還を求めていく」ときっぱり宣言、沖縄の民意をはっきり示
したのです。あの美ら海を殺してはいけない。人を殺す軍事基地にしてはいけない。
米軍ヘリ墜落事故は沖縄の“ぬちどぅ魂”を激しく揺さぶっています。4月19日から
続けられてきた座り込み阻止行動がいっきに正念場を迎えました。

新作ドキュメンタリー『韓国・沖縄・日出生台/ぬちどぅ魂の声』は題名通り三地域
の<安全保障に名を借りた全ての軍事暴力に抗議する人々の記録>です。編集作業を
始めてから「草の根通信」の発行者で作家の松下竜一さんが亡くなられた。松下さん
は毎年、日出生台で行われる米海兵隊の実弾砲撃演習の抗議行動に参加されていまし
た。私たちは松下さんが現場で残した言葉を幸運にも映像で記録していました。その
言葉に参加者がいつも大きな励ましと勇気をもらっていたのはいうまでもありません。

この映画に記録した松下竜一さんや韓国・沖縄・日出生台の“命生きする”人たちの
思想と行動は混迷する時代だからこそさん然と輝くのです。ぜひ映画を見てください。
そして上映会を企画してください。沖縄で進行中の重大な出来事を一人でも多くの人
たちに伝えていただきたいのです。

※命生き(いのちき)は大分県地方の言葉で命の糧、生業などを意味するが、共に助
け合いながら生きるという民衆の共生観、共生思想でもある。ぬちどぅ宝(いのちこ
そ宝)。

2005年1月15日(土)
13:00(午後1時)   上映
15:30(午後3時30分) 上映
18:00(午後6時)   上映

料金:一般 1000円、ドフィル会員 700円
会場:「ひと・まち交流館 京都」第1・2会議室(河原町五条下る東側)
   (京阪「五条」駅下車徒歩8分 地下鉄烏丸線「五条」駅下車徒歩10分
   JR京都駅から市バス17,205号系統「河原町正面」下車 約5分)
   TEL:075-354-8711  FAX:075-354-8712
地図: http://www.hitomachi-kyoto.jp/access.html 

主催・問い合わせ:ドキュメンタリー・フィルム・ライブラリー
TEL&FAX:075-344-2371 E-mail: dofil87@infoseek.jp 
URL: http://dofil87.hp.infoseek.co.jp/ 


●毎月第一日曜よるは、日本映画専門チャンネル“ドキュメンタリー傑作選”

CSスカパー!&スカパー!2と全国のケーブルTVでお楽しみいただける日本映画専門
チャンネルでは、岩波映画の映像作家からCCDビデオカメラ世代の新映像作家まで、
時代と人間の真実を描いた秀作を特集し、ドキュメンタリーの魅力を検証します。

<1月放送作品> *今月は第三日曜深夜にお送りします。
1月16日(土)深夜1時30分(再放送あり)
『海は生きている』(1958年・カラー) TV初
監督:羽仁進 美術:勅使河原宏

詳細は公式サイトからどうぞ! http://www.nihon-eiga.com/documentary 


●『わたしの季節』(16mm、カラー、107分)完成記念上映会

「見つめてください。生きてゆく喜びと苦しみの間でめぐる
                    ひとつひとつの人生という季節を」

この映画は、人としての「存在感」と「こころの声」を拠り所に、深いところでいの
ちの根源を見つめた映画です。けっして障がいを持つ人びとが社会の中でどう処遇さ
れるべきか、ということを問うた映画ではありません。ただ、ひたすらに、映画に登
場する人びとと直(じか)に対面する。それはもう一人の自分を発見する旅のようで
した。(監督:小林茂)

重症心身障害児(者)施設びわこ学園は「この子らを世の光に」という理念のもと、
入所者・ご家族・職員が一体となって、重い障害をもつ方々の生活を40年間支えてき
ました。試行錯誤の繰り返しの中で生まれてきたびわこ学園の療育について、そのあ
りさまを見ていただき、彼らの「こころ」を感じ取っていただければと願っています。
『わたしの季節』製作委員会代表 山崎正策(びわこ学園理事長)

日時:2005年1月29日(土)午後1時15分開場
     午後2時 完成記念あいさつ
     午後2時30分 『わたしの季節』上映
場所:野洲文化ホール 大ホール (電話077−587−1950)
    JR野洲駅下車(南口)徒歩2分(ご来場は公共交通機関をご利用ください)
入場料:大人:前売 1300円 当日 1,500円
     小・中・高:前売 800円、 当日 1,000円
     障害・療育手帳をお持ちの方、介助の方:前売 800円 当日 1,000円
主催:『わたしの季節』製作委員会
連絡先 〒520−2321滋賀県野洲市北桜978-2 第二びわこ学園(金子・南)
      TEL:077-587-1144 FAX:077-587-4211



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃07┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●師走の風も慌しくなり、本誌は今年最後の配信である。

大津幸四郎さんの連載が完結した。私が元・小川プロのスタッフであり、現在、土本
典昭監督のインタビュー映画の仕上げに取りかかっている時期とも重なり、その「対
極のドキュメンタリー」論は、殊にほか関心があった。9回にわたる思索は、
ドキュメンタリーへの尽きせぬ魅力を伝え、私たちを鼓舞している。

原稿掲載にあたり、大津さんには多大な労を煩わした。講演のテープをもとに文字お
こしをした原稿を大津さんに渡す。数日後には校正が施され、原稿は余白が赤字で真
っ赤に染まって返却されてくる。そこには必ず、大量の加筆がびっしりと別紙に添え
られている。訂正し、再び送信すると、またもや真っ赤な文字で埋まった返信。こう
したことが何度繰り返されたことだろう。私は添削された原稿を見るたびに、大津さ
んの原稿に賭ける意気込みを嗅ぎ取っていた。大津さんには心より感謝します。

●波多野哲朗さんの制作と同時進行の制作レポートも、ひとまず完結を迎えることと
なった。作品が完成したら、追加報告をして頂きたい。キューバ移民を追って、キュ
ーバと沖縄を行き来する旅は、スリリングな展開に満ちていた。多忙な日々を厭わず
続けられたこのレポートによって、私たちは日本の歴史に潜む移民の大いなる行為を
考える契機となった。16回の連載をねぎらい、「ありがとうございました」と感謝し
たい。

同じく、ドイツの移民問題を扱った≪ベルリン発≫の梶村昌世さんは、ある飲み会で
知り合い、執筆者に加わってもらった。そのテーマは波多野さんの作品(原稿)に連
動する問題とも言える。現実問題として日本よりも遥かに切実な移民問題を抱えるド
イツにあって、「あるイメージを決めつけるとか、現実はこうだと宣言するよりは、
イメージも現実も問われ、変わることのできる余裕を持った社会に協力したい」と書
く末尾の言葉は重い。

さらに若い世代の投稿もうれしい。レビューリレーという形を取り、今回で3回目と
なった。 neoneo坐で連続上映される小川紳介作品を入れ替わり立ち代わり批評して
いく様(さま)に若者特有の生硬さは感じられるものの、意欲は大いに評価していい。
持続を期待し、これからも読者の声を誌面に反映していきたい。

●最後に皆さんにお願い。恒例の年末のアンケートを大募集します。内容は、本誌の
「告知」をご覧になって頂きたいが、奮って応募ください。設問は(1)「わが一押
しのドキュメンタリー」(2)「ドキュメンタリーの現状について」(3)「私の2004
年」の3問ですが、1問でも構いません。12月31日が締め切りです。1月15日号で発表
しますので、よろしくお願いします。本誌は元旦を休み、普段の誌面になるのは2月1
日号からです。

●今年も大勢の方に支えられてきた。とりわけ、執筆者の方々には心よりお礼を言い
たい。毎号この方々の熱気に押され、またそれが叱咤激励ともなり、続けてこられた。
本当にありがとうございました。読者の皆さん、これからもよろしく願いします。先
日、ある留学生の方がプリントアウトした最新号のneoneoを手にし、「これ、とても
いいですね」と言ってくださった。見れば、20ページ余に印刷された文章の所々には
アンダーラインが引かれて関心の行方を示しているではないか!このときの私の感動
の気持ちは、賢明な読者には分って頂けるものと思う。

では、来年もよろしく!(締め切りのタイムリミットを前にして記す。)



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■責任編集 伏屋博雄
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