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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo

映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。

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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo Vol.20-2 2004.9.1

2004/09/01


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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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 †01 日本のドキュメンタリー映画のかたち
      対極のドキュメンタリー
         ―小川紳介と土本典昭(2)  大津 幸四郎
 †02 自作を解剖する
      『にがい涙の大地から』
       〜終わらぬ被害・旧日本軍の遺棄兵器〜  海南 友子
 †03 ワールドワイドNOW ≪サンパウロ発≫
      ブラジルの塀の中から    岡村 淳
 †04 ドキュメンタリー時評
       百聞は一見にしかず、でもそれが正しいとは限らない
      『フォッグ・オブ・ウォー』とエロール・モリスの映画世界
                  水原 文人
 †05 ドキュメンタルな人々 続・幻のフィルムを求めて(8)
       映画復元の謎  安井 喜雄
 †06 neoneo坐通信(6)
      9月の上映プログラム「科学映画特捜隊」
      10月から小川紳介全作品を順次上映!
      neoneo坐・企画会議を開催します

※20-1号より

     ◇────────────────────────◆◇◆    

 †07 広場
      投稿:『Cuba/Okinawa サルサとチャンプルー』(9)
         「局所」としてのキューバと沖縄  波多野 哲朗
      投稿コーナー「クチコミ200字評!」(18)提案者:清水 浩之
      投稿:今こそ見る『ありし日のカーブル美術館』と
          『もうひとつのアフガニスタン』  中村 のり子
 †08 編集後記  伏屋 博雄


    ★バックナンバー閲覧はこちらまで

   まぐまぐ配信   http://www.mag2.com/m/0000116642.htm 
   melma!配信    http://www.melma.com/mag/39/m00098339/ 


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┃07┃□広場
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■投稿

□投稿:『Cuba/Okinawa サルサとチャンプルー』(9)
■「局所」としてのキューバと沖縄  
■波多野 哲朗

●昔も今も

かつてキューバの国民的詩人であったニコラス・ギジェンは、「キューバの精神は混
血である」と書いた。この言葉は、キューバ人が人種的に混血であるという意味を含
みつつ、キューバ人の精神の在りようこそが混血的であることを強調している。この
思想は19世紀の終わりに、ホセ・マルティが叫んだ「われわれのアメリカ」を引き継
ぐものだろう。なぜならマルティの言う「アメリカ」とは、あの米国のことではなく、
米国を含むアメリカ大陸全体を指しているのだから。そのとき、両大陸の中間に位置
し、両大陸の掛け橋となるのが、カリブの文化であり、そのクレオール的、混血的文
化にほかならない。

しかし20世紀の支配的な文化は、この混血的な文化をつねに異端のものと見なして抑
圧し続けてきた。カリブ海諸国は19世紀後半からつぎつぎと独立をはたすが、実質的
にはイギリス、フランス、オランダ、スペインなどヨーロッパ旧宗主国の世界経済戦
略が強いるモノカルチャーに閉じ込められ、カリブの文化的アイデンティティは分断
された。そして20世紀に入ると、ヨーロッパ諸国に代わって、米国の覇権主義がカリ
ブの混血的文化を抑圧する。

キューバは、1898年の米西戦争における米国の圧倒的な勝利を機にスペインの支配を
逃れ、1902年に遅れた独立をはたす。しかしすでにキューバの基幹産業であった砂糖
農業は、輸出の9割以上が米国向けという状態にあり、間もなくキューバ全体が「米
国の砂糖農場」と化していく。旧宗主国スペインに代わって、こんどは米国が経済植
民地キューバの新しい宗主となったのである。鉄道、鉱山などあらゆる領域に米国の
投資が進み、とくに砂糖産業には米国資本が集中し、1926年には砂糖産業の60%が米
国資本となる。ちなみに、私たちの映画の中心人物である上間清の父上間利清が、沖
縄からキューバに渡ったのも1926年であった。時はまさに米国資本による巨大生産複
合体「セントラル」の全盛期であった。

1958年の革命までの半世紀あまり、キューバは実質的に米国の完全な支配下に置かれ
ていた。そもそも1902年の独立のとき、米国はキューバに対して独立の承認と引き換
えに「プラット修正条項」なる不平等条約を強要している。それは、キューバが外国
から資金を借りることを禁止し、また外国に軍事基地を提供することを禁止するもの
であった。にもかかわらずこのとき米国は、キューバに対して米国への基地提供を義
務づけた。

いま裁判もなく連行された多数のアフガン人が拘束され続けているグアンタナモ基地
は、このとき作られたものである。一方では排他的に自国の軍事基地のプレゼンスを
強要しつつ、他方ではその同じ国に対して苛酷な経済封鎖を続ける米国の理不尽極ま
りない横暴な態度は、さすがにカリブ海以外ではあまり観られない。それは明らかに、
カリブ海を自国の中庭と見なす認識から発している。そこでは、マルティの「汎アメ
リカ」もギジェンの「混血的精神」も、抑圧すべき対象以外の何ものでもない。誰の
眼にも明白な矛盾を、限りなく局所化することによって隠蔽し、それによって成り立
つ覇権的なグローバリズム。いまその極度の矛盾が集中する「局所」としてキューバ
が在る。.

その意味で、沖縄もまたこの国の矛盾が限りなく集約する「局所」である。隷属的な
地位協定も、米軍ヘリが東京のど真ん中にでも落ちてこないかぎり、その矛盾が真に
顕在化することなく、この国のグローバリズムへの加担のプロセスでたちまち忘れ去
られることだろう。そう、われわれはこうやってずっと忘れ続けてきたのだから。あ
の島が、かつてこの国の唯一の「戦場」であったことも。

●上野英信の無念

私たちの映画が追っている沖縄からキューバへと渡った移民たちは、ここでいう「局
所」から「局所」へと移り住んだ人びとである。そのかれらの姿がいまはひどく見え
難い。未だ十分に照らし出されているとは言えないさまざまな移民像と比較しても、
かれらの像の輪郭ははるかにあいまいである。そしていまでは、その存在の痕跡さえ
が歴史の闇に消えつつあるかのようだ。かつて上野英信が「眉屋私記」によって、沖
縄からキューバへと渡った人びとを追おうとしたのも、かれらの姿が歴史の闇へと永
遠に消えていくことへの危機感からではなかったか、と私は思う。そして上野英信は、
キューバへの入国することさえ果たせずにこの世を去った。.

キューバ移民の姿が、他に例を見ないほどに希薄な像しか残していないのは何故か。
その理由をあえて一言で語るとすれば、キューバへの移民が、世界の動向に対して終
始「裏目を張りつづけた」という不運に尽きるだろう。すくなくと、かれらは3度の
不運に見舞われたのあった。(つづく)


■波多野 哲朗(はたの・てつろう)
恐れていた失敗をやってしまいました。昨夜、深夜に原稿を送ろうとして、うっかり
原稿の「×」をクリックしてしまい、一瞬にして書き上げたばかりの原稿が消えてし
まいました。落胆このうえなく、今回は休ませていただこうかとも思ったのですが、
気を取り直し、いまやっと書き終えました。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■投稿コーナー「クチコミ200字評!」 第18回
提案者:清水浩之(ゆふいん文化・記録映画祭)

「オススメの作品を200字以内の短評で紹介してください!」というコーナーです。
映画・ビデオ・テレビなど皆さんがノンフィクションだと思う作品だったらなんでも
OK!「知られざる傑作」を発掘したり、おなじみの名作の今までにない見方を指摘し
たり…もちろん「オススメしない映画とその理由!」も歓迎です。

200字以内の本文とは別に「あなたのお名前(ペンネーム可)/掲載確認のご連絡先
(メールアドレスor電話)/題名/制作年/監督/見た場所」を付記して清水まで
お送りください。(あなたのプロフィールや近況もご紹介いただけると有難いです)
清水浩之 → E-mail: shimizu@ad-ult.co.jp /ファクス:03-3703-0839


A-027『頭突きと空手チョップ』
1957年・大映/監督:不明(編集:伊勢寅彦)
放映:2004年7月・チャンネルNECO http://www.necoweb.com/neco/ 

力道山&豊登ペア 対 白人&黒人ペア の一戦を記録。何パターンかあるカメラ位置
を駆使して、中にはリング床に張りつくようなローアングルも見させていただきまし
た。ゴングが鳴る時にわざわざゴングを映し出す真面目さや、たまに客席の表情を数
秒で切り返してくる律儀さが微笑ましかったです。アナウンサーの上品な言葉はこび
には感心。「空手!頭突き!空手!頭突き!」と連呼する解説とそれに合わせた力道
山と黒人のモンタージュが傑作でした。それでも声のトーンは乱れず。
(中村のり子/東京/20歳/炭酸特訓中)


A-028『グループの指導─話し合い劇を通して─』
1956年・岩波映画製作所/監督:羽仁進
放映:2004年7月・日本映画専門チャンネル http://www.nihon-eiga.com/ 

羽仁さん、『絵を描く子どもたち』と同じ年にこんなのも作っていたのですね!高学
年生の姿がまた新鮮です。やっぱり、子どものもつ雑然としたもの、乱暴さ、逸脱を
堂々ととらえていることにおどろきます。教室内のアップが多めのシーンと、開放的
なロングの野外シーンとの配分もきっと計算ずみ。それにしてもこのディベート顔負
けの試み…羽仁監督が見つけてくる学校は常にただものじゃないです。懸命なやりと
りが笑わせてもくれます。しかも青梅地区!そして明らかに方言がある!
(中村のり子/東京/20歳/目白の自由学園も好き)


A-029『長崎 映像の証言〜よみがえる115枚のネガ〜』
1995年・NHK/取材:御厨勝憲 構成:天川恵美子+山本雅士+皆木弘康
放映:2004年8月9日「NHKアーカイブス」 http://www.nhk.or.jp/archives/ 

山端庸介氏によって1945年8月10日の長崎、つまり原爆が投下された翌日の長崎で撮
影された115枚の写真のネガを使って原爆投下の翌日の風景を視覚的に再現し、さら
にそれらの写真の被写体となった人たちの50年後の姿と対比させたドキュメンタリー。
写真という動かない映像の方が、かえって動く映像以上に見る者に訴えかける場合が
あることを感じさせられる。また、どんな言葉も、これらの写真のようには原爆投下
の翌日という歴史の極限状態を伝えきれないだろう。
(脇阪亮/大阪/34歳/行政書士兼ファイナンシャル・プランナー)


B-059『にっぽんの"ゴミ"、大陸へ渡る〜中国式リサイクル錬金術〜』
2004年・NHK/構成:浅井健博
放映:2004年7月25日「NHKスペシャル」 http://www.nhk.or.jp/special/ 

身近な素材の下に驚くべきスケールの話が広がっていた…という企画の好例。古紙、
金属、PETボトル等の資源ゴミを買い付け、文字通り人海戦術でリサイクル→再輸出
してしまう中国の底力に圧倒されながら、自治体やメーカーの補助を得て高度な再生
技術を確立してきた日本の業者の苦戦、更には解体に危険を伴う廃棄パソコンの密輸
問題など、普段お世話になりながら殆ど知らないリサイクル産業の仕組みに惹き込ま
れます。再放送熱望!
(清水浩之/東京/37歳/“PET”はポリエチレンテレフタレートの略…50ヘぇ)


B-060『テントからの報告』
1966年・「テントからの報告」製作委員会(京都労映ほか)
スタッフ:愛川直人・村上進・黒田清己・岡本健一ほか
見た場所:日本記録映画作家協会・研究会

京都・西陣の印刷会社首切り反対争議団によるテント生活の記録。映画のスタッフも
大映京都でレッドパージと闘った人々。印象に残ったのが、闘争が辛くて一旦離脱し
た女の子が母に言われた言葉「組合は石垣や。一人が欠けても崩れてしまう」…お母
はんええこと言わはる!この言葉が混成合唱(加藤泰の『真田風雲録』タイプ)の主
題歌になります。♪おーれたちはー石垣ー、独りじゃないぞー!「テーマソング」の
ある集団…いいなぁ。
(清水浩之/東京/37歳/参考文献は新藤兼人・著『追放者たち』です)

中村のり子さんも隊員の「科学映画特捜隊」(略称・科特隊)、いよいよ9月26日(日)
neoneo坐で“第一回捜査会議”開催!日本の科学映画の傑作4本を上映します。
こちらもテーマソングが欲しいところです…。ではまた次号!


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●今こそ見る『ありし日のカーブル美術館』と
『もうひとつのアフガニスタン』    中村のり子(学生)

先日「土本典昭フィルモグラフィ展」において『ありし日のカーブル美術館』『もう
ひとつのアフガニスタン』の二本を鑑賞した。1985年と88年とに撮影されていたフィ
ルムが、2003年になってそれぞれ編集されている。

映画が観客に見られることで完成してゆくのであれば、両作品は2004年の今の時点で
の表情を、静かにはっきりと私に見せてくれた。スクリーンの中で整えられた陳列棚
も、笑いあって集う人びとも、「もう今はなき」記録として訴えかけてくる。柔らか
い眼差しをたたえるこの仏像はどこへ行ってしまったか。書き取りに懸命なこの子ど
も、田植えするこの女性、レンガを積むこの男性のうちのどれほどが生き延びている
のか。カメラがとらえたひとときと未だ同じように過ごしている人がどれほどいるだ
ろうか。80年代の希望を託したはずの映像は、それが朗らかであればあるほど、今あ
りありと悲しい。ついに見つからなかったという音声テープのない状態がこの感想を
際立たせる。

ただし、二作品とも感傷に流されることを望んではいない。『ありし日のカーブル美
術館』で数々の高度な美術の行き着いた先としてあのブルーのモスクを目にすれば、
これが文化の異なる国によって爆破されることの悲痛をストレートに思い知ることが
できる。また『もうひとつのアフガニスタン』に映し出される、「東側」のみに支え
られた発展とためらいのない社会主義賛歌とにはほころびがあることを、2004年の私
達は省みさせられるだろう。

見る毎の気づき方ができるのは、無声の映像に合わせる土本監督のナレーションが素
直で主観を隠さず、啓蒙性からはなれたものだからかもしれない。監督が二つの作品
を編集されていた2003年春、前年のアフガニスタン空爆の後を追ってイラク攻撃がは
じまっていたという。そして翌年を迎えた今、私はスクリーンに改めてきびしい社会
の視点を重ねずにはいられない。「彼らの顔をよくご覧下さい」そう言って撮られた
ものを見極めさせてくれる、この監督に応えて観客が今考えるべきことは多くある。


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■上映

●ドキュメンタリー・ドリーム・ショー
 --山形in東京2004

2004年9月8日(水)〜10月11日(月・祝)
国際交流基金フォーラム/アテネ・フランセ文化センター/映画美学校

1989年から隔年で開催され、世界でも有数のドキュメンタリーの祭典「山形国際ド
キュメンタリー映画祭」。昨年上映された作品を中心に、東京独自のプログラムを加
え、約116作品を上映する、ドキュメンタリーの祭典を開催します。

[会場・期間]
第1会場:国際交流基金フォーラム
9月8日[水]−15日[水]
第2会場:アテネ・フランセ文化センター
9月18日[土]−10月11日[月・祝]
第3会場:映画美学校
9月19日[日]、23日[木・祝]、26日[日]

[上映プログラム]
・インターナショナル・コンペティション&アジア千波万波
・アメリカンドリーム?――アメリカの夢は悪夢かもしれない
・ニューズリール 1968――人はそれを弾丸映画と呼んだ
・沖縄特集 琉球電影列伝/境界のワンダーランド
・中国「作家主義」時代のスターたち!などなど

料金、詳しいスケジュールはお問い合わせください
[お問い合わせ]:シネマトリックス TEL 03-5362-0671
          http://www.cinematrix.jp/ 



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┃08┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
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●前号は「8.15」のアンケート特集だったから、今回から正規の状態に戻した誌面と
なった。巻頭の大津幸四郎さんの「対極のドキュメンタリー ―小川紳介と土本典
昭」は、昨年アテネフランセ文化センターで行われた講演に、大幅な加筆を加えたも
のだ。今回はその2回目にあたり、いよいよ話は核心に入っていることをうかがわせ
る。

ところで、これまで両監督の作品を見たくともたやすく見ることが出来ない状態が続
いていた。しかし、8月には待望の「土本典昭 フィルモグラフィ展2004」がアテネ
フランセ文化センターで行われ、多彩なゲストが参加したトークもあり、大いに盛り
上がった。今秋には大阪のシネ・ヌーヴォでの上映も企画されているようで、うれし
い限りである。また、小川作品は、大津さんの講演記録を掲載するのを契機に、私ど
もneoneo坐で上映しようとする気運が高まり、10月24日を皮切りに毎月1回、第1作か
ら順番に全作品のフィルム上映することを決定。

小川と土本。この対極のドキュメンタリストの気質の違いや方法論等の違いは、大津
さんの今後の連載によって、より明確になっていくことであろう。
しかしこの両者の違いは、ドキュメンタリーの表現の豊穣さの表明に他ならなく、論
の展開はスリリングなものになっていくので、大いに期待していただきたい。連載は
8回を予定しています。

●水原文人さんがエロール・モリスの『フォッグ・オブ・ウォー』について論じてい
る。予定紙数を大幅に越えた批評は、それだけに水原さんがこの作品に強い衝撃を受
けたことにほかならない。主人公はキューバ危機とヴェトナム戦争の時代にアメリカ
の国防長官の要職を務めたマクナマラである。

私がこの作品に興味を持つのは、一例を挙げれば、「北爆のきっかけになったトンキ
ン湾事件も、少なくともジョンソン大統領に北爆を決断させた二回目の、1964年8月4
日の攻撃は、実はなんと『なかった』、アメリカ側の思い込みから来る誤解だった」
というくだり。つまり、ヴェトナム北部のトンキンワンで米駆逐艦が北ヴェトナムの
魚雷艇に攻撃されたとする事件が、実は「思い込み」で、米軍機が北ヴェトナムを報
復爆撃を行ったたというのだ!

私たちの身のまわりに、「思い込み」からくる相互の誤解は多々あることだ。これが
政治の世界で行われれば、取り返しのつかない危機が起こりかねない。この「思い込
み」による相互の関係性を、水原さんはドキュメンタリーの本質にまで言及している。
監督エロール・モリスの意図したことと重なって、私はこの作品の公開が待ち遠しく
てならない。

●その他の原稿として、海南友子さんの「自作を解剖する」からは、中国黒竜江省で
旧日本軍による遺棄兵器いよって苦しめられている人々が語られていて、今なお、戦
争が終わっていないことを痛感。≪サンパウロ発≫の岡村淳さんからは、ブラジルの
ドキュメンタリーの近況が届けられ、未知のドキュメンタリストの活躍を知ることと
なった。安井喜雄さんの「続・幻のフィルムを求めて」は、「neo」時代から続いて
いるこの連載だが、いずれ出版したいと思っている。フィルム発掘という地道な作業
にエールを送りたい。

波多野哲朗さんの『Cuba/Okinawa サルサとチャンプルー』は、制作を同時進行にレ
ポートする試み。まるで大河ドラマのような構えに、作品のスケールを想像する。投
稿コーナー「クチコミ200字評!」は18回を数え、今回は3名の投稿者があった。皆様
の更なる投稿をお待ちしています。

というわけで、今号も強力な執筆者のおかげで、充実した誌面になったことと思う。
ご愛読の程、よろしくお願いします。



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■責任編集 伏屋博雄
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創刊日:2003-09-01  
最終発行日:  
発行周期:月/2回  
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