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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo

映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。

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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo Vol.5 2004.1.15

2004/01/15


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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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  ┗━┛ ☆━┛ ┗━☆    5号  2004.1.15


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 †01 新年大特集「わが一押しのドキュメンタリー映画2003」のアンケート発表!
     小西晴子・本田孝義・松江哲明・安井喜雄・村上賢司・岡田秀則・
     田中誠一・西川陽子・丸谷肇・清水浩之・脇阪亮・越後谷卓司・土本典昭
     大谷桃子・阿部嘉昭・桝谷秀一・藤原敏史・佐藤真・春田実・村山匡一郎
     加藤孝信・佐藤寛朗・香取勇進・水野祥子・伏屋博雄
 †02 広場
     投稿  岡田 秀則「アーカイヴ上映の現場から (3)」より
        “すべてのフィルムは等価である”によせて  林 和秀
 †03 編集後記 伏屋 博雄

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新春に際し、今年もneoneoをよろしくお願い致します。
さて、本誌では新年特集としてアンケートを募集しました。設問は下記の3問でした。
皆様のご協力に感謝し、到着順に発表します。 伏屋 博雄(本誌編集長)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー映画2003」
    昨年ご覧になった作品のうち、これこそドキュメンタリー!と思う作品は?
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
    どう思うか、どうしたいか、どうなるといいと思いますか?
(3)「私の2003年」
    印象に残った出来事、取っておきの話、あるいは問題提起など、新たにする
    ことは?

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†01┃ 新年大特集「わが一押しのドキュメンタリー映画2003」のアンケート発表!
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●小西 晴子(So-net チャンネル749 プロデューサー)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『送還日記』(キム・ドンウォン)
北朝鮮のスパイとして、韓国で長期刑囚として収監されていた、今は老人となった人
達が、刑務所を出てから、北朝鮮に送還されるまでの10年を、丁寧に、監督の視点か
ら描いている。スパイという先入観が、人間としてのつきあいを通じて、人間と人間
としての真摯な関係に変容する様は、だからこそ、重い、思想の違い、戦争の非人間
性を浮き彫りにしている。声高に主張することのない、こういう人間を描く作品こそ、
ドキュメンタリーの持つ力であると思った。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
ドキュメンタリーの作品、番組の放送する枠がTVからどんどんなくなっていく中、CS
放送の弱小チャンネルであるが、「ドキュメンタリスト」という枠をつくった。ひと
えに、いいドキュメンタリーを制作者とともにつくり、制作者とともに、チャンネル
も成長したいと思ったからである。つくる人が継続することで力を蓄えるのと同様、
長く、いい作品を提供していく枠にしたいと強く思う。若手の人とコラボし、また、
劇場ともコラボできる空間、広がりを作っていきたい。

(3)「私の2003年」
今年は、本当に、日本はこれでいいのかと考えて年だった。日米安保の枠組みの中で
経済成長を遂げ、気がつくと、世界の中で、孤立している日本。情報という面でも、
USの情報が圧倒的であり、バイアスの中で暮らしている現状が、イラク戦争で、露呈
した年と思う。
では、どうすればいいのか、個人を守っていくことと国を守っていくことは、一致し
ないとは思うが、国家に個人が飲み込まれてしまうことだけは阻止したいと思ってい
る。


●本田 孝義(映画監督、 http://www12.plala.or.jp/toyama-honda/ )

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『太陽の塔乗っ取り計画』(企画・出演:ヤノベケンジ、制作:青木兼治)
アーティスト・ヤノベケンジさんのドキュメント。タイトル通り、大阪の万博公園に
今も佇む“太陽の塔”に潜入し、てっぺんの目玉(左目)に座るのだ。そこで想起さ
れているのは、かつて起きた太陽の塔占拠事件。目玉男こと元赤軍の佐藤英夫さんの
現在のインタビューも挿入されている。未来/過去、進歩/停滞、革命/反革命、冗
談/本気など相反する要素が凝縮されている。「バカだなあ」と思って見ていたら、
最後には感動していた。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
立場上、製作者になるわけですが、時としていろんな要素も抱えているものです。ド
キュメンタリー映画を見る機会は確実に増えていると思いますが、どうも繋がってい
かない、という印象を持っています。「良いドキュメンタリー映画」を称揚すること
も必要ですが、「なんでも見てやろう」という人は意外に少ない気がします。願わく
ばneoneoが制作・上映・批評・宣伝・観客を繋ぐ場であって欲しい、と思います。

(3)「私の2003年」
自分にとっては『ニュータウン物語』が完成したことが一番大きかった。少しずつ映
画を見てもらったり、劇場公開に向けて動き出したりしながら感じていたのは、水面
に顔を上げてパクパクしている自分の姿でした。なんだかんだ言っても、製作中は水
面下にあるようなもので、「自分の作品」と呼べるようなものがあってやっと世間の
空気を吸うことが出来る、そんな気がした1年でした。2004年はもっと大きく息を吸
うことが出来るか、津波に襲われるか、はたまた再び水面下に潜るか、自分でも楽し
みです。


●松江 哲明(映画監督)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『jackass the movie』(監督: jeff tremaine)
「元気が出るテレビ」世代必見の爆笑記録映画。「90分、体を張ってバカをやるだ
け」という青春モノでもある。アメリカにも素敵なバカがいるという、当たり前のこ
とを忘れていた自分に気付き、本気で反省。ラストの60年後も変わらない一同の姿に
思わず泣いてしまった。他に、アフリカの大地で呆然とするAV女優が凄い『毒虫』
(インジャン古河)。深夜バスで日本中を回る『水曜どうでしょう』(藤村忠寿・嬉
野雅道)に感動。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
映画を見逃したことを自慢する映画ファン、ウンチクで終わる批評、手法のみに重き
を置く作品…そんなモノにうんざりしていた僕にとって(1)の3本は衝撃的でした。
今、DV、セルフ、もしくはドキュメンタリーという枠さえ超越しかねない作品が、と
てつもない速度で生まれています。そして何よりも嬉しいのがこれらがちゃんと話題
になっていることです。いよいよポストダイレクトシネマが面白くなってきました。
負けてられないです!

(3)「私の2003年」
『カレーライスの女たち』『2002年の夏休み』同時編集後、初AV『前略、大沢遥様』。
(気持ち的に)童貞に還り、ピンク映画『花井さちこの華麗なる生涯』に出演。カン
パニー松尾兄貴に構成を任せて頂いた『裸のオーディション10』。司会&監督として
ヤマガタに参加後、『ほんとにいた!呪いのビデオ刑事』。年始は『アイデン/ティ
ティ(仮題)』を編集しながら在日韓国籍のAV女優のキャラクターに圧倒されていま
す。


●安井 喜雄(プラネット映画資料図書館)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『同胞の光と影』(2003年、57分) 
大阪芸術大学大学院の韓国からの留学生、申尚氣(シン・サンキ)君による卒業制作
作品。自分たちの親の世代がベトナム戦で虐殺に加担した現場を訪ね、若者たちによ
る被害者へのボランティア活動を追う。作者はすでに帰国し、母国の映画祭に応募す
るそうだが、親の世代の過ちを率直に認め、自分の問題として捉え直そうとする姿勢
に感動した。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
映画はフィルムだとばかり思っていたが、最近はビデオも映画と言うらしい。映画と
書いてあるからフィルムと思って見に行ったらビデオでがっかりすることが多い。ビ
デオ撮りキネコ起こしのフィルムもあるが、観客を騙してるのかと腹が立ってくる。
フィルムで撮らなあかんで。ええかげんにせい!

(3)「私の2003年」
大内田圭彌監督から『風の景色』(主演・土方巽)のビデオ化を依頼され完成間近に
監督が入院し中断。土方夫人でアスベスト館の元藤暁子さんが亡くなり寂しくなっ
た。
映像文化製作者連盟設立50周年記念として紀伊國屋書店から発売されるDVD「日本
アートアニメーション映画選集」に多くの素材を提供。海外からも古い日本アニメの
上映希望が多くなった。


●村上 賢司(映画監督)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
テレビ朝日『いきなり黄金伝説』より「いきなり!汚宅訪問シリーズ〜ババアの腰が
伸びた瞬間(とき)〜」
いわゆるゴミ屋敷を芸能人がリホームするシリーズの一本。よゐこの濱口が都内の超
有名ゴミ屋敷に住む半裸の婆さんと腐った生ゴミを食べたり、添い寝をして親睦を深
め、数トンのゴミをすべて片付けることに成功する。美しくなった我が家を見る婆さ
んの今まで直角に曲っていた腰が突然、真直ぐに伸びるという奇跡まであり、汚物ば
かりの映像なのに爽やかな印象が残る良作。とにかく婆さんのキャラが最強!未見の
人は後悔すべし。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
DVによる映画制作が主流になり従来の撮影の段取りとか、スタッフ編成とか、編集法
がどんどん無効になり、個人それぞれの手順で制作された、個性的な作品が沢山生れ
ている。それらの作品について語るためには、従来の論法では不可能。より広い視野
と想像力が必要となっている。

(3)「私の2003年」
年明けにホラー映画を完成、春にアイドルといわれる女の子達と一緒に舞台挨拶、梅
雨の季節に自分の結婚生活を題材にしたテレビ番組を完成、夏に自主制作でまたホ
ラー映画を作り、秋の山形で自作の上映&司会業で冷や汗をかき、晩秋の東京で「刑
事まつり」作品を撮影しておりました。2004年はどうなるか、まったく不明です。自
営業者はいつでも五里霧中なのです!


●岡田 秀則(東京国立近代美術館フィルムセンター研究員)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
新しいドキュメンタリーはあまり観ていませんが、やはり『延安の娘』でしょうか。
撮りたい人間と語りたい人間が遭遇した幸運がしっかり刻まれた一本でした。あとは
『ドメスティック・ヴァイオレンス2』。ワイズマン作品がこんなに笑えるとは。壮
大なる実験国家アメリカの最新の実験結果報告、といったところ。『土本典昭
 ニューヨークの旅』。旅をするならあんな生産的な旅がしたいものです。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
新旧問わず、「ドキュメンタリーを観たい」という世の中の欲望は高まっていると感
じます。それだからこそ、撮影メディアの選択についての議論を共有し、より深めた
いと思います。例えばいま、35mmを必要とするドキュメンタリーは存在するのでしょ
うか?

(3)「私の2003年」
戦前の日本をカラーフィルムだけで綴ったNHKの8月の番組は力作でした。歴史映像を
観る自分の“眼”自体に反省を迫ったと思います。仕事で印象に残っているのは、
まったくの白紙から立ち上げたトルコ映画特集が一応成功したことと、無声映画伴奏
という新しい世界を五里霧中で探索したことでしょうか。


●田中 誠一
(CINEMA ENCOUNTER SPACE  http://www.geocities.jp/positionwest3/ )

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
新作は不勉強であまり観ていません。今年に観た、ということでいえば、手前味噌で
すが、自分のところで上映したマキノ正博の『野戦軍楽隊』。それと、これも企画し
て上映した井土紀州の『ヴェンダースの友人』。全くタイプの違う2作であるが、
『野戦〜』は外界の未知、『ヴェンダース〜』は内面の既知に向けられた鋭い批評性
に撃たれた。来場者が少ないということにもめげず毎月一回というペースで上映企画
ができるのも、こうした作品に出会えるからかも知れません。

 (2)「ドキュメンタリーの現状について」
多くの上映と、宣伝、そして並みの観客とすこしの制作(≒批評)、としての意見。
特に現在の日本のドキュメンタリーは小規模化、拡散傾向が飽和状態に達しているよ
うに思いますが、そろそろ方向転換を謀るべきではないでしょうか。
時代が高速で回転しまくっている現今、今年のヤマガタの「ニューズ・リール」特集
は、方法論として何かの示唆を与えられるべきものであったように思います。

(3)「私の2003年」
『鉄西区』の唐突な出現に驚愕した方は少なくないでしょうが、それがなぜ日本では
なく中国から出てきたのかということに言及されたのは私が知っている限りでは鈴木
一誌氏だけでした(もっとも、公式な場での発言ではありませんでしたが)。それは、
現在の日本におけるドキュメンタリー作品や作家に対する痛烈な批判でもあり、私自
身、上映活動と制作を今後同一軌道上に設定して展開して行こうと考えていた矢先で
あったために、とても大きくのしかかってきた批判でもありました。


●西川 陽子(湯布院映画祭実行委員/大分在住)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『記憶が失われた時…』(1996年、NHKスペシャル、構成:是枝裕和)
胃の全摘出手術後の治療・高カロリー輸液(ビタミンの入っていない)の投与が原因
となり、ウェルニッケ脳症となった父とその家族の2年半にわたる記録である。「記
憶が積み重ならない」という1点を除き、理性、感情、行為に統一を保たれた父。1時
間ごとに繰り返されるであろう会話にも動じることなく、夫を子供たちを慈しむ母。
「記憶」というメカニズムとその先を見つめながら、作り手と家族との距離感に安堵
させられる。


●丸谷 肇(映画美学校休学中?/監督作『人生 紙芝居』2月レイトショー)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『サシングヮー』(1973年)『オキナワン ドリーム ショー』(1974年)、
監督:高嶺剛、見た場所:山形ドキュメンタリー映画祭・蔵オビハチ。
今年の山形を振り返ってみて、一番印象に残っている作品というか、イベントという
とこれ。自分にしかこの上映は出来ないと言って、高嶺さん自ら廻す2台の8mm映写機
と島唄とのコラボ。映写スピードの変化するまだ右側通行の頃の沖縄と即興のライブ、
幸せな時間がそこには流れていました。


●清水 浩之(ゆふいん文化・記録映画祭/今年も5月末開催予定!)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『ニュータウン物語』(2003年、監督:本田孝義)
『眠る右手を』『恋する幼虫』『815』など無茶な劇映画に圧倒されつつ、『土
徳』『中江兆民』『熊笹の遺言』などの面白いドキュメンタリーにも出会えました。
中でも『ニュータウン物語』は、文字通りふるさとを”開拓”してきた親たちの時代
を見つめ直し、一見平凡な町も齢をとっていく”生き物”であるという、映画で描く
には難しいことを丁寧に炙り出し、どんどん視界が広がっていく展開にひきこまれま
した。一見の価値あり!

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
一方にはフィルムセンターで見た1960年のPR映画『潤滑油』の美しさ。もう一方には
高校生から70代までの作家が同居したビデオアクト『ニッポン・戦争・私』の不思議
なバラエティ性。そうした、今までの映画観や映画論では絶対に!捉えきれない面白
さが出現しやすいのがドキュメンタリーの良さだと思うので、もっともっと探して、
見つけて、オススメしていきたいと思いますし、ぜひ教えていただきたいと思います。

(3)「私の2003年」
某女性誌の中吊り広告に「おしゃれドキュメンタリー」と書いてあったのには目を疑
いました!決して合体しないと思っていた二つの単語が通勤電車で仲良く並んでいる
インパクト。そこまで世間は寛容になったんでしょうか。これもひとえに『ボウリン
グ』効果?でもマイケル・ムーアの実体は「アメリカ版・渡辺文樹さん」だと思うの
で応援してます!


●脇阪 亮(行政書士&ファイナンシャル・プランナー)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
月並みかもしれませんが、マイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバ
イン』が面白かったです。この映画に対する小説家の辺見庸氏、映画批評家の大寺眞
輔氏、弁護士の三上雅通氏の批判は理解できますが、この映画を観た後、励まされた
ような、高揚した気分になったことは否定できません。

(3)「私の2003年」
母方の祖父が永眠したこと。それからCFP(R)認定者に認定されたことと1級ファイナ
ンシャル・プランニング技能検定の実技試験に合格したことでしょうか。人生におけ
る終わりと始まりということで。


●越後谷 卓司(愛知芸術文化センター学芸員)

(1)わが一押しのドキュメンタリー
果たしてこの作品をドキュメンタリーというカテゴリーの中で評価していいのか、正
直、迷うところだが、2003年に観た中で最も印象に残ったという点では、匿名の作家
K.K.によるビデオ作品『ワラッテイイトモ、』を挙げざるを得ない。お昼のテレビ・
バラエティ番組「笑っていいとも!」の映像を引用しつつ、1980年代以降の映像およ
び文化状況を批判的に検証するという側面は、ドキュメンタリーとして刺激を受けた
ことは間違いない。

(2)ドキュメンタリーの現状について
『ワラッテイイトモ、』は、H・アール・カオスやヤノベケンジ、束芋らを輩出した
ノン・ジャンルの公募展「キリン・アート・アワード」の受賞作だったが、公式には
オリジナル版は上映されなかった。これは以前から指摘されていることだが、結果と
して日本においては、マイケル・ムーアの『ロジャー&ミー』(1989)のような、ファ
ンド・フッテージの手法を用いたドキュメンタリーが生れ難いという状況を、改めて
照らし出したといえる。

(3)私の2003年
数年がかりで検討、準備がされてきた企画「ブラッケージ・アイズ2003−2004」が、
高知、横浜、愛知で実現した(2004年以降は、神戸等を巡回)。ドキュメンタリーの
文脈で『窓のしずくと動く赤ん坊』(1959)から『自分自身の眼で見る行為』(1971)ま
での振幅を持つ作家の、最初期作品にあるヌーヴェル・ヴァーグ的息吹きから、晩年
の純粋抽象映像までの展開を、実作を通して知ることが出来たのは、何物にも代え
難い出来事といえた。


●土本 典昭(記録映画作家)

(1)わが一押しのドキュメンタリー
韓国のキム・ドンウォン監督の長編『返還日記』(2003年作品)に深く感動した。分
断国家の悲劇によって韓国に30年余投獄され、さらに苦節10年、故郷の“北朝鮮”に
帰国する(返還される)までの非転向者たちの10年余を追いかけた記録である。はじ
めはおそるおそるかれらに接触したキム監督が、北の老人たちの志操の堅さに敬慕を
抱き、終章には民族統一への展望をかれらとの関係性の中に見出している。北のひと
びとへの深い思いが圧倒的、あわせて韓国80年代の民主化運動が生んだ前衛的作家の
登場に脱帽した。いまこそその公開を強く待ちたい。それにしても日本の全共闘運動
はなにを生んだのか?

(2)ドキュメンタリーの現状について
現代は、作家にとってはモチーフ(課題)を見付け得る、またとない時代では…と思
う。アフガニスタン、イラクへの日本の戦争荷担の今は、何事を描くにせよ、これが
大カッコとして存在している。世界の米国主導のグローバリズムに対し、民衆の“戦
いのグローバリズム”をいかに描くか問われている時代とみていいだろう。反政治主
義にはリキがない。
去年のフラハティセミナーで“ポリティックス”という、日本では疎ましいとされる
言葉が、平和へのキーワード、そしてあるプラス評価になっているような映画青年た
ちに接した。かれらは数十万の反戦デモを実現し、その渦中に生きる市民でもあった
のだ。

(3)私の2003年
かって小川紳介は作家の条件にその“志”を挙げた。あえて付け加えるなら、胸に抱
える“課題”の存否(あるなし)であろう。最近、黒木和雄監督の新作の『父と暮ら
せば』(原作・井上ひさし、撮影・鈴木達夫)にはそれがあった。傑作である。氏の
課題は、戦争に生き残ったものとしてのトラウマである。この作品に氏の記憶との格
闘を見た。…『TOMORROW 明日』、そして10年後の『美しい夏 キリシマ』と『父と暮
らせば』は氏の青春の“戦争三部作”になった感がある。古希を越えてなお黒木の作
家としての貫徹性に改めて脱帽である。


●大谷 桃子(日本映画衛星放送(株) 編成企画部)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
すいません、2003年は新作を1本しか観られてません…。
『≒会田誠』なんですが、親しい友人が監督しただけに、被写体が緊張したり飾った
りすること無く、自然体で作品制作に臨む姿を捉えられたのはかなり貴重なのではな
いでしょうか。
来年はもっと新作をたくさん観る予定です!

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
“ドキュメンタリー”というだけで敬遠してしまい、内容も確かめずに始めから興味
を持つこと自体を放棄している人が結構いるのではないでしょうか。
そんな私自身も仕事でドキュメンタリー枠を任されたことによって、初めて様々なド
キュメンタリーを観るようになりました。
そんなシロウト感覚を活かすべく、小川プロ作品からBBCの女性監督作品まで、新旧
・硬軟織り交ぜたラインナップで新しい観客を掴もうと取り組んでいます!

(3)「私の2003年」
憎しみと暴力の連鎖の果ての、“アメリカのイラク侵攻”でしょうか。日本では凶悪
殺人が続き、もう取り返しが付かないところまで来ている気がします。ゆったりと景
色を眺めたり、読書や映画・音楽鑑賞…、そんな生活からは憎しみは生まれないと思
うのです。素晴らしい作品を放送することにより、少しでもそんなお手伝いができれ
ばと思っています。「人生に必要なものは、勇気と想像力とほんの少しのお金だ。
(チャップリン)」


●阿部 嘉昭(評論家 http://abecasio.s23.xrea.com )

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『延安の娘』(池谷薫)。日本国内に「主題」が見出せないとき海外にそれ(=かつ
ては禁忌題材だった「文革の爪痕」)を求めたのだろうが、この点で作り手の苦境を
感じさせなかった。NHKエンタープライズ制作という枠組が可能にした長期取材体制
ゆえ、対象が自然化してしまう刻々に瞠目した(同じ条件の『味』にもそれがあっ
た)。『延安の娘』でみるべきは登場者の顔の物質性、貧困の印、空間の戦慄的な翳、
煙の夢幻性などだろう。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
映画美学校の生徒の作品など、若い世代の作品が観られなかったので、最近顕著にな
ってきたセルフ・ドキュメンタリーの猖獗、その後の動向がわからなかった。『秋聲
旅日記』等、最近の青山真治の一連の作品は文学的映像エッセイとしてドキュメンタ
リーとは峻別すべきではないのか。その青山の『あじまぁのウタ』は音楽ドキュメン
タリーの傑作で、中江裕司『白百合クラブ・東京へ行く』とは大きな懸隔があった。
要は音楽性の有無だ。

(3)「私の2003年」
映画分析の逸材は長谷正人、中村秀之だった。歴史性と社会性の双方に亙りスタンス
が精確。ほか四方田犬彦の爆発的な活躍も特筆されるだろう。自分自身の事――
(1)立教大学での映画講義では「68年の女」が日本映画にどのように現れ消えてい
ったかを分析した。(2)発売早々の『椎名林檎vsJポップ』まで自著が出せなかっ
た。(3)自分のベスト評論は「ユリイカ」の黒沢清論では。(4)個人サイトでは
瀬々敬久のTVドキュ2本についての原稿を掲載。


●桝谷 秀一(山形国際ドキュメンタリー映画祭ネットワーク)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『時の愛撫』(Fuente Alamo--The Caress of Time/スペイン/2001/スペイン語/カ
ラー/35mm(撮影16mm)/72分/監督:パブロ・ガルシア、山形国際ドキュメンタリー
映画祭2003インターナショナル・コンペティション)
今年の山形映画祭では、賞をとることもなく、地味な作品ではあった。しかし、何か
新しいということだけではなく、こういう職人的なフィルム撮影の作品への評価も、
忘れてはならないのではないか、と思う。上映フォーマットは35mmだが、スクリーン
で観ると、少し粗い16mmの映像と、若い監督の優しい眼差しが、清々しい。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
今年も、映画祭の選考のため、数百本の作品を観ることができた。15年前に比べ、全
般的にレベル・アップして、ますます、選ぶ側の悩みは(苦しみ)は大きい。ただ、
日本の作品の多くが、あまりに、自分、家族、しかも内側にだけ向かっているのが、
とても気になる。切り口はパーソナルでも、何か外に向かって欲しい気がする。日本
の閉塞感そのものといえば、それまでだが、それを突き破るエネルギーが感じられる
作品に、もっと出会いたいと思う。

(3)「私の2003年」
2003年も、なんとか無事映画祭を開催出来たこと。多くの作家と、観客のみなさまの
おかげだと思っています。この場をお借りして、お礼を申し上げます。
現在、期間中にデイリー・ニュースとメディア班(記録)のスタッフによる取材記事
を含むYIDFF2003記録集の編集中です。春までには完成予定です。お楽しみに。


●藤原 敏史(ドキュメンタリー作家)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
土本典昭さんについてのドキュメンタリー(第一部は今年、フラハティ・セミナーに
参加されたのを中心に構成した『土本典昭 ニューヨークの旅』として完成)を手掛
け始めた関係で、土本さんのこれまでの作品を見直したり、見ていなかったものを初
めて見る機会に恵まれた。初めて見れたなかでは『実録 公調委』と『水俣一揆』に、
今でも共通する日本のお役所や大企業のあり方の問題が適確にあぶり出されているこ
とに驚愕した。だが一本挙げるとしたら、土本基子さんにテープを頂いた『水俣 患
者さんとその世界』完全版。慈しみを持って映し出されつつも、患者さんとその運動
の抱える矛盾や問題の複雑さが鮮明にあぶり出されていた。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
早稲田大学芸術学校というところで教えていて授業でイヴェンス=ロリダンの『北緯
17度』や土本典昭の『水俣 患者さんとその世界』(二時間版)『ドキュメント路
上』などのドキュメンタリーを見せ、ハルトムート・ビトムスキーのワークショップ
を開催したり、また今撮影中の『原一男』で原さんの「CINEMA塾」の人たちに接した
りで、なにかのきっかけでドキュメンタリーという映画のあり方にふれたとたんに若
い人たちがそのおもしろさに情熱を注ぎ、ドキュメンタリーを作ることからいろいろ
新しい発見をしてそれを楽しんでいることを見て来た1年だった。機材の入手が容易
になって作るチャンスが広がってもいることだし、これからどんどん可能性が広がっ
て行くように思える。問題は、見せる機会が増えるかどうかと、ドキュメンタリーに
接したり学んだりする機会をどう確保していくのかではないか?

(3)「私の2003年」
4月初旬、アメリカがイラクを攻撃し始めたときにちょうどニューヨークにいた。
グラウンド・ゼロ(旧世界貿易センター跡地)の見物客などを撮った映像を中心に構
成した『da Speech』という短編を、友人の作曲家ジーモン・シュトックハウゼンの
音楽に基づいて完成させた。これはすでに2月にベルリンに行った機会に何人かに声
をかけて国際共同プロジェクトとしてスタートさせており、同じ音楽に映像をつける
趣向で現在8バージョンが完成している< http://www.dragons.vg/daSpeech/ >。
前述の『土本典昭 ニューヨークの旅』の完成後すぐに『原一男』にとりかかり、ま
たアモス・ギタイの依頼で新作『アリラ』のメイキングの構成/編集もやっていて、
この二つは年を越して継続して取り組むことになる。


●佐藤 真(ドキュメンタリー作家)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『東洋のイメージ』(ジャニキアン=リッチルッキ)
『南極から赤道へ』などのアーカイブ発掘フィルムを彩色したり回転を変えたりで、
有名なジャニキアン=リッチルッキの最新作。イギリス人の無邪気なインド観光の記
録フィルムを素材に、イギリス植民者の無意識の差別構造を明らかにした作品。見て
いるうちに、背景に過ぎなかったインド人の視線が、徐々に前景化してきて見るもの
の心に刺さる。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
ドキュメンタリーの現在を考えるとき、『鉄西区』の登場とその衝撃をぬきには語れ
ないであろう。なぜならたった一人でデジタルカメラを片手に、小川プロの集団制作
と同じ高みに到達するような作品世界を作り上げてしまったからだ。デジタルハンデ
イカムは万民に表現の可能性を拡げたなどと、のんびり物見遊山をしているときでは
ないのかもしれない。カメラを持つ思想がこれほど問われているときはない。
どう撮るかなどの技術論ではなく、この世界をどうとらえるかの哲学が問われている。

(3)「私の2003年」
私の2003年は、イギリスで暇に任せて映画館通いの日々。ところが映画が始まるとつ
いウトウトと眠くなって居眠りばかり。その夢見心地の脳裏に跋扈した妄想を「眠れ
るシネマ 〜ロンドン妄想ノート〜」(凱風社 2004年3月刊行)にまとめた。
Photographer's galleryのホームページに「ロンドン 光と影」と題した写真エッセ
イをまとめなおしたものである。9月に帰国して再開した『阿賀の記憶』の撮影は
2004年3月には完成するはず。相変わらずどんな映画になるのか、自分でも見当がつ
かない。


●春田 実(アジア・ミニコミ誌発行)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『一瞬の時』(中国・沙青)
言わゆる難病モノだが、安っぽいヒューマニズムを観客に強要はしてこない。
この作品で描かれるのは、父親の子供への”執着”である。それは同情でも庇護でも
責任でも宿命でもない。ましてや愛でもない。人の関係の、あるがままの姿が、描か
れていた。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
『ニュータウン物語』(本田孝義)を見た。この作品は重要な何かが欠けている。
よく整理された作品だが、1点、作者が作者自身を問う客観性がストンと抜けている。
考察されていないわけではない。ニュータウンの申し子である作者自身の過去のエピ
ソード、両親の個人的な状況などは描かれている。しかし作者の肉声が聞こえてこな
い。後半、とってつけたような野外美術展が描かれるが、このような催事で、ニュー
タウンが蘇生すると考えるなら、作者自身の個性が、とってつけたようなのであり、
違うだろ、と言いたくなるのである。もっと、ぐいぐいと自身を掘り下げて欲しい。
作品に即して言えば、今は別に暮らす父母を会わせて、そこで出てくる会話は絶対に
必要である。そういう非情な仕掛けの向こうに作者自身は立ち現われてくる。
ここ数年、日本のドキュメンタリーは非常に面白くなっている。「私」ドキュメンタ
リーがどうの、こうの、と言われているが、要は、面白ければ、それが「私」だろう
と、「公」だろうと、どうでもいいことである。ドキュメンタリーが面白くなってい
るのは、作る側の姿勢が若く挑戦的だからである。作る方法より、作りたい気持ちが
先にある。
そういう勢いが「個性」をほとばしらせ、作品は野趣に満ちた面白いものとなってい
る。
そうした潮流の中で『ニュータウン物語』は行儀が良すぎ、ひとつのステップの手本
ではあるが、ここで留まってはいけない、と本田氏をはじめ多くの作家には言いたい。

(3)「私の2003年」
ヤマガタ国際ドキュメンタリー映画祭で9時間の大作『鉄西区』を見逃したのは残念
だ。見た人間は、その肉体的労苦への労(ねぎら)いか、良かった!と必ず言うが、
本当か? 確かめたい。


●村山 匡一郎(映画評論家)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
昨年は山形国際ドキュメンタリー映画祭の予備選考をやったため、多くのドキュメン
タリー映画を見た。一押しということなら、やはり『鉄西区』だろうか。9時間とい
う長さ、3部構成という構造には、ある種の歪みが露呈していることは否めないが、
それでもそれらを埋め合わせるに足る素材の凄みが生きている。歴史と環境から立ち
のぼる錆びついた鉄の匂いが漂うような、今そこにある現実の重みがずしんと響きわ
たってくる。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
「私的ドキュメンタリー」の論争は興味深かった。これに関して一言触れるなら、
「私」を最も前面化した場合、「私」が画面に登場することだろう。このことは劇映
画では一般にタブー視されるものであり、それが許されるなら、ドキュメンタリー映
画の特権ともなり得る。ドキュメンタリー映画が映画である以上、「私」の問題は、
「公」に対立するというより、映画の自由と不自由という本質的なものにかかわる可
能性を孕んでいる。       


●加藤 孝信(撮影 & Macintoshオペレータ?)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
クメール・ルージュによる虐殺を描いた『S-21 クメール・ルージュの虐殺者たち』。
これがDVカメラによる撮影であることに注目したい。昨今ややもすると苛々するほど
目立つ、DV撮影であることを(無意識的にせよ)言い訳に使うような“甘えた”荒れ
た映像はここには無い。ドキュメンタリー撮影の現場という観点に限定しても、カメ
ラと演出の関係といったスタッフ論も含め、その気になればこの作品から多くの示唆
を得ることは可能だろう。刮目して観るべし。


●佐藤 寛朗(フリー)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
『ドキュメント路上(ニュープリント版)』(土本典昭監督)。
第一回土本セミナーにて拝見。40年前の作品とは思えないほど、スタイリッシュで、
映像的な刺激と遊び心に満ちている。それでいて、高度経済成長期の激変する東京に
潜む危険と労働者の疎外、というテーマが明確に伝わってくる。これは監督のしっか
りしたコンセプトと、それを充分に理解し撮影したキャメラマンの共同作業の賜物な
んでしょうか。何本かの新作にも刺激を受けたが、あえて一本、といえばこれ。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
うまく言えないのですが、同世代の作品に「人と向き合い、関係を作る」という人間
として基本的な行為それ自体をテーマにした作品が増えているような気がします。
もちろんまずそれをきちんとできるかという我々なりの課題はあるのですが、その辺
を比較的簡単にクリアしてスケールの大きな作品を作る海外のドキュメンタリーに出
会うと、「関係性の構築」の先にあるものを見据えた作品作りが求められる気がしま
す。

(3)「私の2003年」
やっぱり山形映画祭での数々の出会いでしょうか。9時間も劇場に座って見続けると
いう労苦に耐えなければならない『鉄西区』を、なぜ皆口々に傑作というのかが気に
なる今日この頃です。


●香取 勇進(学生)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
土本監督の『水俣患者さんとその世界』。これほどすばらしい白黒映画が日本にあっ
たことを誇りに思いました。そして、土本監督の患者さんたちとの関係がよく伝わっ
てきました。僕にとって映画を選んで本当によかったと思わせてくれた作品です。特
に大好きなシーンは土本監督が患者さんのインタビューの際に「君は本当に賢いね」
と言った後の患者さんの顔といったら素晴らしすぎでした。見るたびに涙が止まらな
いです。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
あまり多くの作品を見ていないですが、最近感じるのは人としてきちんと被写体と接
するべきだと思いました。必ず被写体が存在するドキュメンタリーで被写体の事前調
査は重要です。しかし、人として筋を通さないやり方はいけないと思います。そして、
被写体を愛するべきだと思いました。それが映画に技術以上の強さを画面にもたらす
と思うからです。

(3)「私の2003年」
2003年一番の出来事はたくさんの素晴らしい人たちに出会えた事です。そして、その
人たちに出会えたおかげでたくさんの事を学びました。その学んだ事までたどり着け
たのは、今まで知り合った人たちがここまで支えてくれたからだと思います。これか
らもたくさんの人たちに出会い、いつか素晴らしい映画を作りたいです。


●水野 祥子(ロサンゼルス在住、映画文化史研究)
「3つの問いに纏めてお答えすることにします。」

2003年前半は土本典昭氏との出会いが様々な問題提起を促してくれる機会となりまし
た。初めて見せていただいたすべての土本作品が私の2003年の最大の収穫です。そし
て後半はニューヨークからロサンゼルスへという大きな環境の変化がありました。豊
富な選択肢に囲まれた、ドキュメンタリー映画三昧という嬉しい悲鳴をあげていた環
境から、しっかりアンテナをたてて自分で環境を構築しなければいけない状態にかな
り戸惑いました。もちろんこの都市の新参者で情報収集に手間取ったせいでもあるん
でしょうけれど、neoneoのような情報満載のオンラインジャーナルの価値を痛感して
います。この環境の変化が都市と文化とドキュメンタリー映画の場所を深く考える大
きな転換期をもたらしてくれました。このテーマをさらに追求してみようと思ってい
ます。最後に、そんな環境の中、忙しさもあって、テレビやDVDに頼ることも増えて、
DVDという家庭用(研究用)の流通と鑑賞の形態が定着してきた今日、所謂ボーナス
トラックとかスペシャルフィーチャーの「おまけ」の部分がドキュメンタリーの様相
を整えてきているような気がしています。映画作家やアーキヴィスト、研究者の中に
は戦略的にDVD製作過程に携わる方も多くいるようです。
その効果、可能性、知的価値について考えてみたいと思っています。


●伏屋 博雄(プロデューサー)

(1)「わが一押しのドキュメンタリー」
王兵(ワン・ビン、中国)の『鉄西区』は私にとって事件だった。現代中国のひずみ
を工場の労働者と家族に的を絞り3部構成で描く本作は、デジタルカメラ時代の映画
術をとことん見せてくれた。ドキュメンタリー映画とは何か、この課題に様々な問題
提起を投げかけてくる。最近の中国のドキュメンタリー映画の台頭は何故なのか、
『鉄西区』に限らず一考を要する。

(2)「ドキュメンタリーの現状について」
私的ドキュメンタリーや障害者を描く作品に、対象と撮り手にのみ通用する(安住し
ている)作品が目立つ。市民社会の根幹を揺さぶるような作品がほしい。
例外は『かけがえの前進』(長岡野亜)。『鉄西区』には、今の日本のドキュメンタ
リーに欠落している構想力と哲学がある。その他の問題としては、ドキュメンタリー
映画を育てる映画館が欲しい。

(3)「私の2003年」
土本典昭監督の映画術をテーマとする撮影は今なお継続中。スポンサーの都合で
「neo」廃刊のやむなきに到った悔しさから、山形での「読者交流会」をバネに、
11月に「neoneo」を創刊。『ニュータウン物語』(本田孝義)は今年パルテノン多摩
(2月21日〜)とポレポレ東中野(2月28日〜)での上映が決定。『土本典昭 ニュー
ヨークの旅』に続いて、藤原敏史君を抜擢して今は『原一男』(仮題)を製作中
(So-netチャンネルで3月に放送)。



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┃02┃□広場
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●投稿

neoneo3号、岡田 秀則「アーカイヴ上映の現場から (3)」より
    “すべてのフィルムは等価である”によせて  林 和秀

日々、様々なかたちで出会う様々な出自をもった作品に、そのような心持ちで接した
いと常々思う。
著名な演出家やキャメラマンが関わった、というような情報によって、肝心の私自身
がどう感じたのかということさえ歪めてしまう、これまでの人生で染みついた、ほと
んど習慣といえる権威主義的なものの見方はぬぐい去り難い。ものを作ることを生業
としている者として(私はブックデザインを生業としています)致命的とさえ思う。

映画美学校在籍時、私達のクラスでの初めての16mm実習課題に対する講師の方々の、
素人の作品であることにまったく頓着していないかのような、ただ画面に現れるもの
だけに心を開いているかのような講評に接し、やはり違うなあと得心させられたもの
だった(プロが熟練の過程で切り捨ててしまう、あるいは忘れてしまう何かをそこに
期待しているかのようにも感じられた)。また一方で、そのような批評のしかたも学
習によるスタイルではないか、という思いを抱く。

人は世界を自分の見たいようにしか見ない。権威に依ったものの見方をするのも、そ
れが悦びであるからだ。気のきいたことを言ってみたい欲望からか、あるいはものを
みる眼がないことをごまかすためか、それでは何の意味もないだろう。現在の自分は
これだけのものでしかない、と開き直ることだ、と自分に言い聞かせる。ある映像を
観て何を感じるかは、その人がそれまでの人生で何を見、どのように考え生きてきた
かということの現出にほかならない。いいカッコをしても仕方がないのだ。.

「実際に『発掘』される映画は私たちの思いの深さで決まるのではない。存在さえ知
らなかった映画の断片が、ある日ヒョイと現れる。有名も無名もない。そこで出会っ
た映画が、いちばん愛しい映画なのだ。」
岡田さんはこのようにも述べておられたが、所詮、受け取る側の人生の記憶に依拠す
る“身びいき”でしかないのだとも思う。


     ◇────────────────────────◆◇◆     


●上映

●『ニッポン・戦争・私』
ついに自衛隊がイラクに派兵されてしまいました。こんな時代だからこそ、プロ・ア
マチュア関係なく、多彩な映像作家が一人3分で「戦争」に対する思いをぶつけた
『ニッポン・戦争・私』という作品を見て欲しいと思います。この度、『2002』と
『2003』が東京で連続上映されることになりました。まだ未見の方には、滅多にない
チャンスです。ぜひ、足をお運び下さい。(本田孝義)

日時:1月13日(火)〜18日(日) 『ニッポン・戦争・私 2003』
(火〜金19:15から、土・日17:15から)
会場:不思議地底窟・青の奇蹟 http://www.organvital.com/
(京王線下高井戸駅下車すぐ/新しく出来たアートスペース&飲み食い処です。)
料金:200円+1ドリンク代
問合せ:青の奇蹟(TEL03-3324-5834)
※『ニッポン・戦争・私 2002』はビデオ発売中
参考サイト:VIDEO ACT!  http://www1.jca.apc.org/videoact/


● 第4回土本典昭映画セミナー わが映画発見の旅(3)
『「青の会」という時代』
日時:2004年1月24日(土) 
会場:アテネ・フランセ文化センター

第4回土本典昭セミナーは「青の会」をテーマにとりあげる。「青の会」は当時岩波
映画製作所の社員でありながらPR映画の枠組に異議を唱えた若い映画人を中心に結成
した研究会。「昭和37年頃から、岩波映画に「青の会」ができましたが、そのきっか
けとなったのは、私と黒木和雄のテレビ映画が相次いで“暗い”との理由でオクラに
なり、ついで私の『ある機関助士』の改訂問題がおこったからです。助監督のあいだ
に危機感がみなぎり、ともすれば失意にひきこもりがちな私に対し、小川紳介、東陽
一、岩佐寿弥氏らが猛然と突き上げを喰わせ、自然発生的に話し合いの場が創られま
した。(中略)皆目、監督になるメドも立たない彼らにとって、「青の会」は次なる
“映画”を夢みるただひとつの場であり、そのコマのような自転力によって、(中
略)それぞれの道を歩みはじめることとなりました。(中略)今ふりかえれば私に
とっての映画学校でした」(土本典昭著「わが映画発見の旅」より)。メンバーは、
上記のほかに藤江孝、楠木徳男、鈴木達夫、大津幸四郎、奥村裕治、田村正毅、渡辺
重治、清水一彦、久保田幸雄、南映子等が参加した。

プログラム1 12:30〜14:25(2作品)『ある機関助士』 『あるマラソンランナーの
記録』
『ある機関助士』(37分・16mm・カラー・1963年・岩波映画製作所)
監督・脚本:土本典昭、撮影:根岸栄、録音:安田哲男、音楽:三木稔
機関士とその助手との共同作業を軸に、彼らの仕事ぶりを描く土本典昭の処女作。今
に至るもSL映画のベストワンとの呼び声も高い名作である。

『あるマラソンランナーの記録』(63分・35mm・カラー・1964年・東京シネマ)
監督:黒木和雄、撮影:江連高元、録音:加藤一郎、音楽:池野成
東京オリンピックのマラソン選手、君原健二の日常を追い、肉体の限界に挑む姿を長
回しでとらえた記録映画史に残る秀作。

プログラム2 14:40〜16:25 『ねじ式映画・わたしは女優?』

『ねじ式映画・わたしは女優?』(97分・35 mm・パートカラー・1969年・シネマ・
ネサンス)
監督:岩佐寿弥、撮影:佐藤利明・浅井隆夫、出演:吉田日出子・清水紘治・佐藤信
製作当時、若きアングラ女優と称された吉田日出子の演技表現と彼女の実生活との虚
実のせめぎ合いを追求した意欲的作品。

プログラム3 シンポジウム 16:40〜18:00 
『「青の会」という時代』黒木和雄×岩佐寿弥+土本典昭

料金:前売 1プログラム券1000円
(チケットぴあ TEL 0570-02-9999 Pコード【472-540】)
   当日券 1プログラム券1300円
   特別シンポジウム 当日のみ500円(※1プログラム券の半券提示の方無料)

会場:アテネ・フランセ文化センター TEL 03-3291-4339(13:00〜20:00)
千代田区神田駿河台2-11アテネ・フランセ4F(JR・地下鉄/お茶の水・水道橋駅下車
徒歩7分)
★ご飲食はアテネ・フランセ文化センター地下「リスナ・サンドウィッチ・カフェ」
をご利用できます

主催・お問い合せ:土本典昭フィルモグラフィー展実行委員会 
事務局(株式会社シグロ内)担当:代島治彦・佐々木正明
TEL:03-5343-3101 FAX:03-5343-3102 http://www.cine.co.jp/
〒164-0001東京都中野区中野5-24-16中野第二コーポ210号


●EARTH VISION 第12回地球環境映像祭
 The 12th Tokyo Global Environmental Film Festival
       「地球」の現在、を観る。
  2004.2.14 Sat. 2.15 Sun. (At Yotsuya Kumin Hall)
      http://www.earth-vision.jp

アジア・オセアニアの19の国と地域から応募された映像103作品の中から、2度の審査
を通じて、選ばれた入賞10作品(インドネシア1・オーストラリア2・韓国1・中国-香
港1・日本4・ネパール1)を上映します。

アジア・オセアニアからの入賞作品は、題材も、地球温暖化、砂漠化、核、野生生物、
森林、ゴミ、公害といった問題まで、そして、形式もドキュメンタリーから、アニ
メーションまで多岐にわたっています。
映像祭では、それぞれの作品の監督を招待、質疑応答や交流の場も設けます。
ぜひご参加下さい。


●EARTH VISION 第12回地球環境映像祭 入賞作品上映審査会<本祭>

日時:2004年
   2月14日(土)14:00〜20:30
   2月15日(日)10:00〜19:00(最長21:00まで)
会場:四谷区民ホール
  (Tel 03-3351-2118東京都新宿区内藤町87四谷区民センター9階)
   地下鉄丸の内線「新宿御苑前」大木戸門方面出口より徒歩5分
参加:協力費1日1000円(中学生以下無料) 事前予約不要。

2004年2月14日(土)●------------------------
14:00 『西表島−カエルを育むファイトテルマータ』
    (日本/32分/監督:寺社下 裕史、村上 貞雄)
    植物の中の水たまり、ファイトテルマータ。その中に広がる小宇宙。
14:50 『失われる森ーチベットへ』
    (ネパール/28分/監督:モハン・マイナリ)
    生きていくために、森林を伐採し、チベットに売りに行くネパール山岳地帯
    の人々。
16:00 『砂漠を救う緑のゆりかご−生物学者ゴードン・サトウの夢』
    (日本/23分/監督:田 容承)
    日系アメリカ人学者ゴードン・サトウを、エリトリアの砂漠へと立ち向かわ
    せる、ある記憶。
16:40 『ドリームランド』(インドネシア/30分/監督:トニー・トゥリマルサン
    ト)
    パルプ工場による深刻な環境破壊と人権侵害。住民たちの10年以上にわたる
    闘いを追う。
18:00 『知られざる巨大氷床に挑む』(日本/49分/監督:江川 寛)
    南極大陸全体を覆う、厚さ2000mにものぼる氷床。地球環境の命運を握ると
    もいう、その謎に迫る。
19:05 『濁りゆく海ーグレートバリアリーフの生と死』 
    (オーストラリア/52分/監督:サリー・イングルトン)
    グレートバリアリーフが死滅し始めている。その原因は?
20:30 終了予定

2004年2月15日(日)●------------------------
10:00 『ヒバクシャ−世界の終わりに』(日本/116分/監督:鎌仲 ひとみ)
    被ばくしたイラクの少女の最期の言葉から始まる、イラク、アメリカ、日本
    のヒバクシャと出会う旅。
13:30 『種の終わりの予感』(韓国/47分/監督:イ・ヨンギュ)
    希少動物が日本や韓国に密売されていく。その取引の赤裸々なレポート。
14:35 『やっかい払い』(オーストラリア/10分/監督:ニック・ヒリゴス)
    エコロジカルな害虫、害獣駆除はお任せ!のはずなのだが・・
    コミカルなクレイアニメーション。
15:00 『ITゴミのゆくえ』(中国・香港/20分/監督:シー・ジーワイ、ラム・
    ギッイン)
    使用済みパソコンは中国へ。IT社会の暗部を告発する。
16:00 特別プログラム『WATARIDORI』(フランス/99分/監督:ジャック・ペラ
    ン)
    世界の渡り鳥の壮大な空の旅。それは“必ず戻ってくる”という約束の物
    語。
18:00 表彰式
    アース・ビジョン大賞作品上映/交流会
15日(日)の終了時刻は、アース・ビジョン大賞受賞作品により異なります。

主催・問い合わせ先:アース・ビジョン組織委員会
【事務局】TEL:03-5362-0525 FAX: 03-5362-0575 
festival@earth-vision.jp http://www.earth-vision.jp
【本部】(財)地球・人間環境フォーラム TEL:03-3592-9735


●EARTH VISION 第12回地球環境映像祭<<プレイベント>>
    特別上映会&トークショー
日時:2004年1月29日(木)14時〜16時45分
会場:有楽町朝日ホール(有楽町マリオン11階)
共催:東京ガス
参加:一般公開/入場券1000円チケットぴあにて発売中
【上映作品】
・第12回地球環境映像祭 入賞作品『失われる森−チベットへ』
 『ITゴミのゆくえ』『西表島−カエルを育むファイトテルマータ』
・特別プログラム『地球の一日』



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┃03┃■編集後記 伏屋博雄
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●正月は休刊したので、1ヶ月ぶりの配信である。本年もよろしくお願いします。
今年も初心である執筆者と読者との交流を促し、ドキュメンタリー映画の明日を考え
る誌面にしたいと思う。

そう思っていたところ、林和秀さんという未知の方から、前号まで連載していた岡田
秀則の論考「すべてのフィルムは等価である」に対して投稿があった。さっそく岡田
さんに連絡したところ反響があったことを喜んでくださり、我が意を「次号に書きま
しょう」と約束してくださった。

こうした相互の交流こそ、私の望む誌面である。賛否や疑問があれば、率直に言うこ
とが、事態の解決につながり、前進させるものだと思う。

●アンケートに回答してくださった25名の方々には心から御礼申し上げます。その一
つ一つに含蓄があり興趣が尽きない。全体の傾向を纏める自信はないが、再度読み返
してみようと思わせる回答が次々とあらわれてくる。

「わが一押しのドキュメンタリー」では、数名の方が『鉄西区』を挙げている。私も
この作品に衝撃を受けたひとりである。また、山形映画祭で見過ごした方の中にも、
注目している方がいる。王兵の作品をつくる心構え、作品の骨格、確固たる視点はゆ
るぎない。一人で現場を取りしきってしまう腕力も並ではない。デジタルカメラ時代
を牽引する1本であると思う。

●土本典昭監督から、「次号から随時連載というかたちで、書いてみましょう」との
うれしい申し出があった。長年ドキュメンタリーと格闘してこられた大先輩だけに、
どんな言葉が飛び出すか、いまから楽しみだ。

また「ドキュメンタリー映画のかたち」欄では、かわなかのぶひろさんの連載が始ま
る。私は毎夜、「俺節!かわなかのぶひろ」
( http://muchan.net/diary/kawanak/ )
を愛読しているが、実験映像のオルガナイザーにして映像作家の、これまた含蓄のあ
る論が展開されることだろう。



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■責任編集 伏屋博雄
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