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小笠原昭治のマーケティング&ストローク

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3冊のマーケティング書と、1冊の自己啓発書を上梓した、現場たたき上げの著者が、マーケティングとストロークをテーマに贈るメールマガジン。経済的な満足を得るためのマーケティング編と、人間関係の仕組みを知って精神的な満足を得るためのストローク編の二部構成



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最終発行日:
2017-01-18
発行部数:
468
総発行部数:
132597
創刊日:
2003-08-04
発行周期:
週刊
Score!:
100点

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



■ 商品を売らずに本質を売るのじゃ ■



───────────────────────────────────



 山のふもとに、小さな寺がありました。

 お寺の住職が、竹ぼうきで、山門を掃いていると、

「和尚さん」

と、スーツ姿の男性が声をかけてきました。

「誰かと思うたら、細川の倅(せがれ)じゃな」

「去年も、同じ会話、した」

 細川は、ため息まじりに、

「いい加減、下の名前も憶えて下さいよ。中興ですよ、なかおき」

「おぬしの名は、難しゅうて、覚えられんのじゃ」

「去年も、同じこと言ってた」

「そうじゃったかのう」

 和尚さんは、知らん顔して、

「ふぉふぉふぉ」

と笑い飛ばしました。

 この時の、とぼけた老僧との短い会話が、一年後の細川の運命を、大〜きく
変えることになろうとは、細川自身、まったく気づいていませんでした。

「ところで、何じゃ?」

「和尚さんの予言、的中しましたよ。まんまと、シテやられた」

「ほっほう?面白そうな話じゃのう。他人の不幸は蜜の味じゃ」

 住職は、竹ぼうきをカラリと捨てて、

「寺務所で聞こうかの。茶でも進ぜよう」

と、本堂へ向かって歩き出しました。


───────────────────────────────────


細川も後に続きながら、

「いつまで経っても、俺は、細川の息子なんですね」

「一時代を築いた先代を超えるのは、並大抵のことではないからのう」

「でも、親父が創業した頃と、俺が継いだ今とでは、時代が違いますよ」

「ほんに、のう。50年前は、高度経済成長期じゃった」

「生まれる前の時代ですよ」

「人口も、企業数も、右肩あがりに増えておったもんじゃ」

「人が増える。企業が増える。でも、モノは足りない。道理でモノが売れる
はずです」

「自然と、景気が良くなるわけじゃ」

「今とは逆ですねえ。人口が減る。企業が減る。しかし、モノは満ち溢れて
いる」

「自然と、モノは売れなくなる。景気が悪くなるわけじゃ」

「景気がいい時代は、飛び込んで、商品を説明するだけで、売れたそうじゃ
ないですか」

「あながち、それほど単純ではなかったが、のう」

「初会で売れなかったら、パンフレットを置いて帰って、ま〜た飛び込んで、
買うまで勧める売り方でしょう?」

「ふむ。高度経済成長時代の企業戦士たちが作り上げた営業じゃな」

「それが、営業のお手本の型として定着したのは確かです」

「二十世紀型の営業じゃな」

「時代は変わったのに」

「モノが無い時代じゃったからのう。根性で売れば、売れたんじゃよ」

「その根性営業を、当社は、今も引きずっているんですよ。営業マンの根性と、
経験と、勘と、才能と、適性で売る、組織力で戦うのではなく、個人技で戦う
営業スタイルです」

「それで、営業改革しようと、営業戦略を取り入れたんじゃったな」


───────────────────────────────────


 本堂脇にある寺務所は、小さな寺らしく、事務室と、応接室と、住職の書斎
を兼ねた和室で、中央に、囲炉裏が切られてありました。

 囲炉裏ばたに座った住職が、奥へ向かって、

「おーい。茶碗を二つ持ってきてくれい」

と呼ばわると、しばらくして、盆の上に茶碗を載せた老婆が入ってきました。

「あら!細川の息子さん」

「ご無沙汰しております、大黒さま」(大黒=住職の奥様)

「お檀家会にも、お見えにならないから、心配していたんですよ?」

「申し訳ありません。ここ一年、忙しかったもので」

「あ、細川の息子さんが大好きなプリンありますから、今、持ってきますね」

 そう言って去っていく老婆の後姿を眺めつつ、細川は頭をかいて、

「大黒さまにとっても、俺は、いつまで経っても、細川の息子なんですね」

「おぬしが鼻たれ小僧の頃から知っておるでのう。幾つになっても、檀家総代
の細川さんちの鼻たれ小僧なんじゃよ」

 そう言いながら住職は、茶を点てて「ほれ」と勧めました。

「それで?営業戦略とやらは、うまくいっとるのかな?」

「それが……」

「なんとかコンサルタントに頼んだんじゃろ?」

「その営業コンサルタントが、飛び込み営業すら経験したことのないコンサル
タントだったんです」

「おもしろいのう。飛び込み営業の苦労さえ知らずに営業戦略を教えとるとは」

「何ヵ月か経ってから、わかったことなんだけど。一年契約だったんで」

「そりゃ笑えるのう。ふぉふぉふぉふぉ」


───────────────────────────────────


「どこかの会社で、営業組織に属した経歴もないそうで」

「ということは、営業部長から怒鳴られた経験もなければ……」

「営業会議で吊し上げられたこともない」

「日報を書いたこともなければ……」

「お昼休みを移動時間に使うこともない」

「どこで営業術を身につけたんじゃろう?のう」

「今ですって。フリーになって、独立してから、営業し始めたんですって」

「それじゃ何か?経理畑の出身か?総務か?」

「技術だって」

「技術者か!技術者が、営業コンサルタントやっとるのか!」

「プログラマーだって」

「ふぉっふぉふぉ。営業のシロウトに、営業を教わるとは、のう」

「しかも、その営業戦略ってのが、独自に開発し、検証した理論じゃなかった
んです」

「なんじゃ、パクリか?」

「何を教えてくれるのかと思いきや、ターゲットとか、セグメントとか、色々
なサイトや本に載っていることを又聞きしたに過ぎません」

「たいしたもんじゃ。それで、よく、営業コンサルタントを名乗っておるのう」

「狙いは、営業戦略を教えるよりも他にあったようです」

「ほほう?」

「自分が作った営業管理システムを売り込むことだったんです」

「もともと、技術屋じゃからのう」

「だからといって、システム要りませんか〜?と売り歩いたって、誰も買って
くれない」

「そりゃ〜そうじゃ。そう都合よくポンポン売れる商品じゃあるまいて」


───────────────────────────────────


「そこで、コンサルタントを名乗り、営業を教える先生の立場で、システムを
売り込む作戦だったようです」

「こりゃ愉快じゃ。なかなかの知恵者じゃのう」

「営業の痛みも喜びも、経験していくうちに身についていく交渉術という寝技
も、何も知らないプログラマーから、営業戦略を教わっていたとは、ね」

「笑い過ぎて、腹がよじれる。あほうな話じゃ」

「結局、コンサル代は三十万くらいで済みましたけど、システム代に三百万円
かかりました」

「合計、三百三十万円かいな」

「去年、和尚さんが言ってた通りでしたよ。安もののコンサルタントは、安く
仕入れた知恵を、安く売る」

「いやあ、おかしい。おぬしの言う通りじゃ。まんまと、シテやられたのう」

「でも、まあ、おかげで、顧客管理システムを導入できましたから」

「たいそう立派なシステムなのか知らんがの、顧客管理システムなら、三万円
くらいで市販されておるぞ?うちの寺でも、檀家管理に使うておる」

「ほ、本当ですか?」

「ふぉ〜。おかし過ぎて死ぬ。無知にも程があるわい」

「なんとも、高い授業料でした」

「おぬし、そのコンサルタントを、どこで知りなさった?」

「インターネットで検索しました」

「そのコンサル先生は、システムを売らずに、コンサルタントを売っておった
のじゃ」

「ははあ。なるほど。システム開発だと、ライバルが多すぎて、営業しづらい
から、ライバルの少ない営業コンサルタントを名乗ってシステムを売っていた
んですね」

「それに引っかかっただけの話じゃ」


───────────────────────────────────


「やられたなあ」

「しかし、ウソはついておらんぞ。コンサルタントとしての技量に乏しかった
だけの話じゃ」

「でも、技量なんて、頼んでみなけりゃ、見抜けませんよ」

「そのコンサル先生のう、営業マンとして経験を積んだら、優秀な営業マンに
なれそうじゃ」

「そうですね。独自の理論もないのに、コンサルを名乗る度胸がいい」

「適性と才能があるんじゃな」

「適性は、ありますね。開けっぴろげというか」

「売る才能も、ありそうじゃ」

「残るは、勘と、根性と、経験ですか」

「それを、ただ今、身につけておるところじゃろう」

「ふっ。システムを売るために、コンサルタントで集客して、ね」

「おぬしの会社でも、商品を売らずに、本質を売る作戦は、使えるんじゃよ?」

「当社の商品は、コピー機ですよ?コピー機を売らずに、何を売るんです?」

「おぬし、なぜ、コピー機を売っておるのじゃ?」

「売り上げが欲しいから」

「ふぉふぉふぉ。正直で宜しい。その答え、お客様にも言えるかのう?」

「我が社の売上が欲しいから、コピー機を買って下さいなんて、口が裂けても
言えませんよ」

「ならば、何と答えるのじゃ?」

「うーん。シンプルだけど難しい質問ですねえ」

「商品の本質を突き詰めるんじゃ」

「本質?」


───────────────────────────────────


「おぬし、どうしてコンサルタントに頼んだのじゃ?」

「えーっと、俺は、コンサルタントが欲しかったんじゃない」

「何が欲しかったんじゃ?」

「売上を伸ばしたかったんです」

「それが本質じゃ。売上を伸ばす」

「売上を伸ばしたかったから、営業改革しようと思った」

「それで、営業戦略を取り入れようとしたんじゃろ?」

「営業改革するには、今後こうしていくという戦略を示さなければなりません」

「コピー機の営業は、スパルタンで有名じゃからのう。それを変えたかった」

「よく、ご存じで。売れるまで帰って来るんじゃねえとか、毎日、罵声が飛び
交っていますよ」

「南無阿弥陀仏」

「それで、営業戦略を立てようと思ったんですが、インターネットで調べても、
クロージングがどうとか、顧客の絞り込みがどうとか、戦術がどうとか、戦略
らしい戦略は、ありませんでした」

「そうじゃろう。百人いれば百通りの営業戦略があるもんじゃ。組み合せじゃ」

「だから、営業戦略の基本を、営業コンサルタントに教えてもらおうと思った
んです」

「そして、営業コンサルタントの皮をかぶったプログラマーに教えてもらった
わけじゃ」

「面目ない」


───────────────────────────────────


「その例を当てはめると、コピー機が欲しいお客様はコピー機が欲しいんじゃ
なくて、何が欲しいんじゃろう?のう」

「わかりません」

「ふぉ。面白いのう。おぬしの会社では、コピー機を売っておるんじゃろ?」

「はい」

「どうして、お客様が、コピー機を買うのか、その理由を、知らずに、売って
おるのか?」

「だって、企業や事務所には、コピー機があって、当然でしょう」

「誰が決めたんじゃ?お釈迦さまか?総理大臣か?」

「社会の常識ですよ」

「そんな常識に囚われておるから、お客様が、コピー機を買う理由を、知らん
のじゃ」

「知って、どうするんです?」

「そこに本質があるんじゃ」

「お客様はコピー機が欲しくてコピー機を買うんじゃない、〇〇が欲しいんだ
ということですか?」

「そうじゃ」

「でも、そんなの知らなくたって、今まで、何十年も、売ってきましたよ」

「一理ある。コピー機が売れて、代金が入ればいい時代じゃったからのう」

「そうです。誰でもいいから、商品を知らせて、勧めて、売る。売れなければ、
誰でもいいから、売れる先を探して、知らせて、勧めて、売る。その繰り返し
です」

「それを林業型の営業戦略というのじゃ」

「林業型?」

「これが林業型じゃよ」
http://ogasawarashoji.blog45.fc2.com/blog-entry-239.html


「当社の営業戦略も、これですね」

「ほとんどの中小企業が、これじゃ。一部の大企業も、な」

「このままではないにしても、この林業型が骨子になっていることだけは確か
です」

「林業型は、今日明日の売上、来月さ来月の利益を得るのに適しておるのじゃ」

「来年の事を言えば鬼が笑いますからね」

「来年の今月も、売上が欲しいのに、のう」

「みんな、目先の売上に汲々としているんです」

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「営業の現場は、それで良かろう。しかし、経営陣も、そうだとしたら、どう
かの?」

「それでいいと思いますが?」

「ふむ。来年の今頃は、会社が潰れているかも知れんのじゃから、来年の売上
を追っても、詮ないことじゃと?」

「逆です。潰さないために、来月さ来月の売上を追っているんです」

「ならば、なぜ、一緒に、来年の売上も、追わんのじゃ?」

「鬼が笑うからですよ」

「今日明日のことさえ分からないのに、来年のことなど、予測できようもない
という…」

「そういう、ことわざです」

「ということは、来年、会社は、無いかも知れんのじゃろ?」

「ですから、無くさないために……」

「ある予定ならば、なぜ、並行して、来年の売上も、追わんのじゃ?」

「来年のことなど、予測できないからです」

「来年の今日どうなっているか、予測つかないなんて、経営者として、心もと
ないのう」

「どうしてですか?」

「十か月後に、潰れとるかも知れんのじゃろ?頼りない経営陣じゃ思わんか?」

───────────────────────────────────

「ですから、会社を潰さないために、先月も今月も、今すぐに売ってくるよう
号令をかけているんです」

「号令といえば、聞こえはいいが、そうして、社内に罵声が飛び交うんじゃろ?」

「少なくとも、古株連中は、それが営業だと信じています」

「いわしの頭も信心から、じゃな。人は、成功体験を信じて捨てられんからの」

「それで何十年も売ってきましたからね」

「ならば、新しい営業戦略なんぞ、考えないことじゃ。変えれば、必ず、摩擦が
起きる」

「しかし、それでは、何も変わりません」

「ふぉ〜。良いではないか。社長のおぬしが、来年、どうなっているか、予測
できないと言うんじゃから、このまま、来年は来年の風にまかせて、吹かれて
おくことじゃ」

「来年がどうなるか、予測できないといっても、コピー機の市場は、縮小して
いますから、このままでは、ますます熾烈な競争になります」

「事業者数が減っているんじゃから、当然じゃのう」

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「コピー機は、ひと通り、いき渡りましたから」

「縮んでゆくパイの奪い合いじゃな」

「飽和、いえ、もはや、衰退市場です」

「南無阿弥陀仏」

「このままでは、小さな販社から先に、潰れていくでしょう」

「そうやって、毎年、一万社が潰れておるのじゃ」

「当社は大丈夫です。売上ゼロでも、一年間は、持ちこたえられる流動資産が
あります」

「ふぉふぉ。いきなりゼロには、ならんでのう。じわ〜り、じわ〜り減って
いって、気付いた頃には倒産」

「いやだなあ。おどかさないで下さいよ」

「おどかしちゃおらんぞ?そうやって、毎日毎日、二十〜三十社が、潰れて
おるのじゃ」

「毎日、二十〜三十人の社長が、無職になっていることは知っています」

「多額の借金を背負う者も、おる。誰も、守っちゃくれん」

「社員は、労働法に守られていますが、ね」

「おぬしだって、いつ、借金取りに追われる身になるかも知れんのじゃぞ?」

「そこが、社員との大きな違いです」

「それが、経営者の定めじゃよ」

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「営業戦略を変えれば、摩擦が起きる。かといって、変えなければ、先細り」

「ふむ」

「これじゃあ、行くも地獄、引くも地獄です」

「延岑(えんしん)いわく、男子たれば死中に生を求むべし」

「どういう意味ですか?」

「絶望的な状況であっても、活路を見い出しなされという意味じゃ。死中に活
を求めよ、ということざわになっておる」

「死中に活を」

「よいか?コピー機が一通り行き渡っておるということは、ライバルの顧客を
ブン捕るしかあるまい?」

「あまり、やり過ぎると、同業者団体から、クレームが来ますよ」

「確かに、同業者団体からの反発は強烈じゃ。しかし、同業者団体はライバル
の集まりじゃ」

「そうなりますね」

「ライバルと、手を取りあって、チーチーパッパ踊っておるうちに、どんどん
パイは小さくなって、いずれ、共倒れ。業界の縮小じゃ」

「これまた、行くも地獄、引くも地獄ですね」

「右手で握手して、背中に回した左手には、剣を握っておく。それが戦術じゃ」

「戦術……」

「武器は、剣」

「それは分かります」

「一方、戦略は、月や週で終わる戦術ではなく、一年、二年先を見こした作戦
じゃ」

「戦略、戦術。そして、武器。なんとなく、わかります」

「戦略は、戦術へ落ちる。戦術は、武器と、使い方。すなわち、戦法へ落ちる
のじゃ」

「階層になっているんですね」

「今のうちに、支社か、別会社を作って、古株連中の横やりが入らない環境を
作って、農業型の営業戦略を布くことじゃ」

「農業型?」

「これが農業型じゃ」
http://ogasawarashoji.blog45.fc2.com/blog-entry-240.html

───────────────────────────────────

「農業型は、商品を売る前に、信用を売る型じゃ」

「信用とは?」

「三つある。まずは、会社の信用じゃ」

「会社の信用って、財務諸表のことですか?」

「それは、ヒト・モノ・カネの経営戦略のうちの、カネ、つまり、財務戦略上
のことじゃ」

「よく分かりませんが?」

「財務諸表は、お客様に見せるものではなく、銀行や株主に見せるものじゃろ?」

「そうですね」

「お客さまへ見せる会社の信用も、あるじゃろう?」

「会社の信用を、どうやってお客さまへ見せるんですか?」

「いろいろあるが、一つだけ取り上げるとしたら、お客様へ対する約束じゃ」

「なにを約束しろと?」

 住職は、筆を執って、紙にサラサラと書き始めました。

・お約束します。弊社の社員は、アポイントを取らずに、飛び込みます

・お約束します。買ってくれるまで、何度でも、何度でも、飛び込みます

・お約束します。お客様の都合よりも、弊社の都合で飛び込みます

・お約束します。お買い上げになったら、もう顔を出しません。メンテナンス
はサービス係まで

───────────────────────────────────

「ほれ、どうじゃ?」

「これって、当社の営業スタイルじゃないですか」

「ふぉふぉふぉ」

「こんなの、見せられませんよ」

「これは、したり。お客様に見せられないことを、お客様にしておるわけじゃ?」

「うっ」

「よいのじゃ。それはそれで、それが正しいと思っている営業マンに、任せて
おけばええ」

「それが、真の営業の姿だと思い込んでいますから、もう変えられません」

「バイアスという思い込みは、怖いのう。それを変えようというのじゃろ?」

「いいえ。和尚さんが言う通り、かけ離れたエリアに、支社か別会社を作って、
そこへ導入します」

「それは、ヒト・モノ・カネを采配する経営戦略じゃろ」

「いくら資金を投じるか、いつまでに返済できるか、銀行や税理士さんへ相談
しなければなりません。これは、経営者が決めることです」

「その通り。営業戦略は、経営戦略と、密接に、つながっておるんじゃよ」

「人事を異動するのも、営業拠点を決めるのも、経営者が決めることですから
ね」

「給料を決めるのも、な」

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「新しい人も採用しなければ」

「採用する前に、おぬしが決めておくことは、これから作る組織の心じゃ」

「心?」

「信や義と言い換えても良い。ひっくるめて言えば、理念じゃな」

「理念とは?」

「考えのことじゃ」

「私の考えですか?」

「組織が出来上がるまでは、そうじゃ。組織が出来たから、組織の考えじゃ」

「それを作って、どうするんです?」

「面接の前に、入社希望者に見せるんじゃよ」

「どうして?」

「理念に共感する人材のみ集めるためじゃ。採用してしまったらクビにできん
からの」

「整理解雇の四要件がありますからね」

「それから、価値観が近くて、心の通じやすい組織にするためじゃ」

「なるほど」

「まだ、ある。思い込みであれ、宗教であれ、人は、信じるものにより、動く
からの」

「信じるもの、それが理念になるんですね」

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「とりわけ、新規の営業は、精神的にも、肉体的にも、きつい」

「わかります」

「売上が伸びない月、真夏の暑い日、真冬の寒い日なんぞ、何のために外回り
しているのか分からなくなる。そういう時に、心の支えになるのが、理念じゃ」

「わかりました。何を作ればいいんです?」

「い〜っぱいあるぞ。社訓、行動指針、行動規範、行動基準、社是、創業理念、
企業理念、経営理念、経営思想、経営哲学、企業憲章、社章、それから……」

「そんなに、あるんですか!」

「お客さまへの約束も、理念じゃ」

「これは大変だなあ。外注すれば、いくらくらいかかります?」

「まあ、二〜三百万ってトコじゃろう」

「それで社内が一つにまとまるなら、安いものです」

「人事で苦労した経験がある二代目社長らしい感想じゃのう」

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「人を動かすのが、一番、大変ですからねえ。で?誰に頼めばいいんです?」

「安直に考えれば社労士の分野じゃが、かっこいいだけの理念にならんように
な」

「仏作って魂入れずってやつですね。よく見かけますよ、そういう理念を」

「言葉へ、魂を吹き込むには、何十時間もの考える時間がいるもんじゃ」

「コピーライターとか、そうらしいですね」

「才能もいる。経験もいる。適性もある。おぬしのオーダーを的確につかむ勘
もいる」

「はははは。まるで、営業マンじゃありませんか」

「そういう意味ではコピーライターへ頼むのも有りじゃ。引き受けてくれるか
どうか別にして、文才がある営業マンに頼むのも良かろうな」

「小説家や作家もアリですね」

「文章家であれば、誰に頼んでもいいのじゃ。社労士と決まっておるわけでは
ない」

「よ〜くわかりました。もう二度と、安く仕入れたクズを、安く売る偽物には、
ひっかかりませんよ」

───────────────────────────────────


「理念が出来上がったら、それらを広報して伝えるのじゃ」

「広報やったって、一円も儲かりませんよ」

「そうじゃ。広報単体では、のう」

「だから、やりません」

「ところが、広報を戦略に組み込むと、林業型との決定的な違いになるのじゃよ」

「どう違うんです?」

「林業型は、誰でもいいから売るのが特徴じゃったの?」

「そうでした」

「農業型は、違う。個人を特定して、その個人へ宛てて、接触を繰り返すのじゃ」

「個人へ接触を繰り返す?」

「たとえば、あいさつなら、何回したって良かろう?」

「挨拶は、礼儀であり、人の道ですからね」

───────────────────────────────────

「挨拶なら、初めて売り込んで、断られても、また接触できるじゃろう?」

「なるほど。お客さま個人へ宛てて、年賀状を出すような感じですか」

「そんな感じ」

「なーんだ。年賀状かあ」

「ふぉふぉ。年賀状を、戦術の武器として考えないから、見くびるのじゃ」

「戦術の武器?しょせんは、年賀状でしょう?」

「そう軽々しく考えると、年賀状に、商品と、セールスコピーを載せることに
なるぞ?」

「いけませんか?」

「そりゃ、年賀状の皮をかぶった、ダイレクトメールじゃ」

「確かに、そういうの多いですね。年賀状のふりして売り込まれても、興ざめ」

「それに、年賀状なんざライバルもやっとる。ライバルとは違うことをせねば
のう」

「ライバルとは違うこと?」

「身近なところでは、おぬし、名刺を持っておるかの?」

 細川は、名刺を差し出しました。

───────────────────────────────────

「よくある名刺じゃの」

「よくある名刺です」

「新規の営業先でも、この名刺を出しておるんじゃろ?」

「それが何か?」

「ライバルも、似たような名刺を配っておるはずじゃ」

「名刺なんて、こんなもんでしょ」

「おぬし、これから、ライバルの顧客をブン取るのじゃろ?」

「ブン取るといえば聞こえは悪いけど、これからどんなエリアで売るにしても、
そこの事業所には、もう既に、コピー機が、100%、入っているはずです」

「それを、ひっくり返して、こっちのものにするのじゃから、まるで、オセロ
ゲームじゃ」

「オセロゲーム。言い得て妙ですね」

「白を黒にする。黒の多いほうが勝ちじゃ」

「経営資金が底をついた白プレイヤーから次々に撤退」

───────────────────────────────────

「市場のパイを分け合える黒字プレイヤーの数だけが勝ち残る」

「シンプルな市場原理ですね」

「企業数が減っておるから、のう。ほんに、お客様の奪い合いじゃ」

「ですね」

「ということは、新規営業に力を入れる気じゃろう?」

「それしかありません」

「この名刺を使って、ライバルと同じ商品を、ライバルと同じ売り方で、売る
わけじゃな」

「たかが名刺じゃありませんか。名刺なんて、どうでもいいでしょう」

「もう忘れたようじゃのう。戦略は、戦術へ落ちる。戦術は、武器と、戦法へ
落ちる」

「戦法?」

「戦い方じゃな。ロールプレイングでトレーニングしているようなことじゃ」

「こう来たら、こう出る、みたいな?」

「そうじゃ。その、戦法の話は、置いといて、武器じゃ」

───────────────────────────────────

「名刺が武器になるとでも?」

「まあ、武器としては、果物ナイフ程度の威力じゃが、普通の名刺よりは効果
があるもんじゃ」

「どんな名刺ですか?」

「それを考えるのが、武器づくりじゃ」

「どんな名刺にするかを考えるう?名刺のことなんて、考えたことありません
でしたよ」

「細かい部分に神は宿る。神は細部に宿るのじゃ」

「あんまり興味わきませんねえ」

「たとえば、飛び込んで、名刺を渡すとしよう」

「はい」

「コピー機なんて、誰でも知っておるでのう。わかりやすい商品じゃ」

「そうですね。中学生でも知っています」

「コピー機を作っているのは、日本を代表するような大メーカーじゃ。商品の
信用は、既に、折り紙つきじゃ」

「そうですね」

「商品の信用は、ある」

「大メーカー製のコピー機ですから」

───────────────────────────────────

「それを売っている、おぬしのことを、お客様は、知った」

「AIDA法則の、最初のA 。マーケティングでいうところの、告知ですね」

「ふむ。コピー機を知って、コピー機に興味を持って、コピー機が欲しくなって、
買うわけじゃろ」

「AIDAの法則通りです」

「知った時点で、コピー機に興味を持つのは、コピー機を欲しがっているお客様
だけじゃろ」

「ちょうど良く、コピー機を買おうと思っていたお客様は、興味を持つでしょう」

「そういうお客様には、飛び込んで、初会30分で売れるはずじゃ」

「確かに、即決することは、あります」

「知ってから、興味を持って、欲しくなって、買うまで、時間の長さは無関係
じゃからのう」

「とはいえ、千社に飛び込んで、三社もありませんが、ね」

───────────────────────────────────

「ということは、99・7%のお客様は、コピー機を知ったとしても、コピー
機には、興味を示さんというわけじゃ」

「興味がなければ、欲しがらない」

「欲しがらなければ、売れない。そうして、今日も売れなかった〜とガックリ
うなだれて帰るわけじゃ」

「そういうメカニズムでしたか。道理で、初会の即決じゃ売れにくいわけです」

「利を追って、商品のみ売ると、そういう仕組みになるのう」

「いやはや。AIDA法則に則ったメカニズムだったとは、今の今まで気づき
ませんでした。AIDAの法則は、ずいぶん前から知っていたのに」

「AIDAの法則は、百年以上も前から語り継がれておるからの」

「どうして、売れないか?の答えは、商品を、知らせるだけ知らせて、興味を
持たせなかったから、なんですね」 

「知らせたら、次に、興味を持つ段階へ進めんことには、のう」

「興味の段階へ進まずに、告知だけで売ろうとしていた。だから、売れない」

───────────────────────────────────

「告知だけなら、広告のほうが費用対効果は高いはずじゃ」

「でも、コピー機に、興味がないんですよ?どうやって、興味を持ってもらう
んです?」

「それが営業マンの役割じゃ。おぬし、どうして、人件費を払って、営業マン
に売らせておるのじゃ?」

「広告で、告知するだけで、売れるなら、何の苦労もありませんもの」

「では、広告と、営業マンの違いは、何じゃ?」

「広告は、媒体です。新聞は、紙ですし、テレビは、家電」

「無機物じゃな?」

「はい。一方の営業マンは、人間です」

「人間は、家電や、新聞のように、どれをとっても一緒じゃなかろう?」

「一人ひとり、人間が違いますね」

「その、人間なるものに、興味を持ってもらうんじゃよ」

「あっ、それが三つ目の信用ですか。会社の信用、商品の信用、そして、営業
マンの信用」

 営業マンが売っているものは、代金と交換する有形物のみならず、

1)商品の信用

2)会社の信用

3)営業マンの信用

の三つの無形物であることを知った細川社長は、あわてました。


「ちょっと待って下さいよ。営業マンに顧客が付いたら、まずい」

「何故じゃ?」

「お客さんは会社のお客さんですよ?営業マン個人のお客さんじゃありません」

「そうじゃ」

「営業マンが独立したら、お客さんを取られてしまいます」

「優秀な営業マンに限って、独立したがるもんじゃ」

「そんな。優秀な営業マンにこそ、いてほしいのに」

「ならば、待遇を良くすることじゃ」

「できる限りのことは、しているんですけどねえ」

「いっそのこと、取締役にしたらどうじゃ?独立せんでも、経営者になれる」

「え?」

「人事戦略じゃ。経営戦略と、営業戦略は、密接につながっておるでのう」

「当社は同族経営です。細川以外の者が、経営に加わることは、できません」

「それは、社長さん、おぬしの経営判断じゃよ」

「確かに、人事は、私の判断ですが」

「子会社を作って、そこの社長に据えたって、ええのじゃぞ?」

「独立制度ですか」

───────────────────────────────────

「独立させてみて、本人が、経営者に向かないと思ったら、帰って来られる制
度を布いている企業もあるくらいじゃ」

「急成長した薬局のことですね。その制度ならば、優秀な人材が、ライバル企
業へ流出しなくて済みますね」

「そうすれば、たとえ、お客さんが付いていっても、最終的には、グループ全
体の利益になるという仕組みじゃ」

「円満に独立できますし、会社がヒト・モノ・カネをバックアップしますから、
業務の移行もスムーズに進みますね」

「それくらいの規模で戦略を考える経営者なのか、それとも、営業マンに顧客
が付いたら、まずいと考える経営者なのか?じゃな。ふぉふぉふぉ」

「ちぇ。やられたな。経営者、つまり、私が考える戦略の規模ですか」

「経営者も、しょせんは、人じゃ。どう考える人か?によって、経営する企業
も変わる」

「そう考えて、振り返ってみれば、これまで、何度か、目先の十万円ほしさに、
その後ろにある一千万円を逃してきたかも」

「しみったれた人間が経営する会社は、小利大損の経営になる定めなんじゃよ」

「しみったれは、ひどい」

「それでも、細川の同族経営にこだわるのかのう」

「そりゃあ、建前論としては、企業は公器ですからね。一族の支配はおかしい」

「しかし、現実には、資本金一億円未満の九十七%が、同族経営じゃよ」

「中小企業が多い証拠ですね」

───────────────────────────────────

「中小企業のままで行くのか、その上を目指すのか、まさに、経営戦略じゃな」

「その上を目指すにしても、優秀な営業マンあっての成長ですからね。優秀な
営業マンを採用するのは、困難ですし」

「優秀な営業マンを採用するのが難しいのは、地縁や血縁といった何らかの事
情でもない限り、もう既に、どこかの会社で優遇されているか、独立しておる
からじゃ」

「独立させない手段は、ないものでしょうか」

「せいぜい、就業規則とか、社内のルールを整備しておくことじゃ」

「就業規則なんかで防げますかねえ?」

「まあ、無理じゃろうな」

「でしたら、やっぱり、営業マンの信用を売るわけにはいきません」

「そう考えて、営業社員を歯車にするのも、おぬしの経営判断じゃよ」

「歯車?」

「営業マンならば、誰でもいいってコトじゃ」

「誰でもいいでしょう、売ってくるなら」

「ならば、営業マンを、歯車にしておくことじゃ。ぶっちゃけ、使い捨てじゃ
な」

「使い捨てとは言いませんが、営業マンに顧客が付くのは、やっぱり、まずい」

「歯車は、会社にとって、都合の良い営業マンじゃ」

「替えは幾らでもありますからね」

「他方、顧客が付いている営業マンを、会社は手放したくないもんじゃろ?」

「独立されたら、いや、ライバル会社に移籍されたら、たまったもんじゃあり
ませんもの」

「会社と、営業マンの、駆け引きじゃな」

「歯車の替えは幾らでもあるけど、優秀な営業マンの替えは、滅多ありません
からね」

───────────────────────────────────

「優秀な営業マンを採用するのは、難しいんじゃったな?」

「ええ。並の給料じゃ、至難の業です」

「じゃったら、育てるしか、あるまい?」

「それしか、ありませんな」

「優秀な営業マンへ育つには、年月が要る。育った頃にはハイさよ〜ならじゃ」

「それは困ります。何のために教育投資するんだか」

「じゃったら、離れていかんように、遇することじゃな。駆け引きじゃよ」

「取締役にするにしても、子会社化するにしても、優秀な人材を確保する人事
戦略が、営業戦略と結びついていたなんて、考えたこともなかったなあ」

「財務戦略とも結びついておるぞ?」

「給料や、福利厚生ですね。退職金は財蓄だし、財蓄のための長期投資も要る
し」

「そうじゃ。営業戦略は、経営戦略に、しばられるのじゃよ」

「営業戦略は、経営戦略の下に入るんでしたね」

「だから、これぞ営業戦略だと信じる社長のもとで、他の営業戦略は、通じん
のじゃ」

「ヒト・モノ・カネを動かす経営戦略と結びついているから、なんですね」

「そうじゃ。営業戦略を革命的に変えられるのは、経営者だけなんじゃよ」

「その経営者の俺が、営業戦略を変えようとしても、社内に摩擦が起きる」

「日本人は、革命を嫌うからのう。まっこと、珍しい民族じゃ」

「日本で革命と呼べるのは、明治維新くらいでしたか、ね」

「天皇制までは革めなかったという点で、革命と呼ぶならば、きわめて保守的
な革命じゃな」

「社長さえ、社内を革命できないなんて、経営とは、本当に、難しいものです」

「難しいゆえに、経営戦略という作戦図が要るのじゃよ」

「地図と言い換えて良いかも知れませんね。全体を見渡すための」

───────────────────────────────────

「その地図の中に、営業戦略があるのじゃ」

「営業戦略の中に、商品の信用、会社の信用、人の信用があるんでしたね」

「三つの信用には、強弱があって、のう。業種業態によって異なるのじゃ」

「たとえば?」

「素材メーカーなら、会社と営業マンの信用よりも、商品の品質や信用が突出
しておるもんじゃ」

「素材にも因りますが、そこに、食品偽装の付け入る隙があったわけですね」

「その一方、大手の住宅メーカーならば、会社の信用も、商品の信用も、どこ
のメーカーも、大差あるまいて」

「どこのハウスメーカーも一流ですし、素晴らしい家ばかりです」

「では、お客さんは、どこで判別するのじゃ?」

「信用できる業者かどうかで決める人が多いようですね」

「信用できる業者かどうか伝えるのは誰じゃ?」

「営業マンや、設計や、工事です」

「それが、三つ目の信用、つまり、人の信用じゃよ」

「うーむ。どうしても、人間の信用を売らなければならないようですね」

───────────────────────────────────

「おぬしのことを、初めて知ったお客様は、コピー機に興味はない」

「うちの会社にも興味がない」

「残るは、おぬし自身に興味をもってもらうしか、あるまいて」

「三つの信用ですね。しかし、どうやって?」

「メリットじゃよ」

「メリット?」

「お客様は、自分のメリットに、興味があるんじゃ」

「人は、誰でも、自分自身に、最も興味がありますからね」

「ふむ。そこで、おぬしが、どのように役に立てる人か、名刺に載せるのじゃ」

「ふっ。名刺には、会社名と役職と氏名と連絡先と商品を載せるものです」

「誰が決めたのじゃ?」

「ビジネスルールみたいなものです」

「商品は、パンフレットに載っておろう?」

「はい」

「名刺も、パンフレットも、商品ばかりだと、商品に興味がない時点で、用済
みじゃ」

「うーん、それもそうですね」

「話のついでに、パンフレットは持っておるかの」

 細川はパンフレットを広げました。

───────────────────────────────────

「社長挨拶とか、オフィスOAをトータルで引き受けますとか、抽象的なこと
ばかり載っとるが、どことなく、会社説明会のパンフレットみたいじゃのう」

「会社説明会にも使いますよ」

「まるで、おぬしの名刺みたいじゃな。あれにも使う、これにも使う」

「そういうものですって」

「ほれ。ま〜た、そういうもんだというバイアスがかかっておる。ふぉふぉ」

「思い込み。でしたっけ?」

「思い込みじゃ。これでいいという思い込み。これ以上できないという思い込
み。どうせ無理だという思い込み。み〜んな、いつの間にか、勝手に、思い込
んで、足かせをはめるのじゃ」

「でも、できないものは、できませんよ」

「お天道様を、西から昇らせるわけには、いくまいて。できないものは、でき
ないもので、いいのじゃ。問題は、できるものをできなくしてしまうことじゃ」

「自分で、勝手に、壁を作ってしまうんですかね」

「そういうことじゃ。高い壁、低い壁、厚い壁、薄い壁、人それぞれ」

「自分で、自分の可能性の芽を摘むなんて、勿体ない話ですね」

「名刺もパンフレットも、そうじゃ。かくあるべしなんて常識は、ありゃせん
のじゃ」

「そう言われてみれば、そうかも」

───────────────────────────────────

「むしろ、常識に囚われておったら、クリエイティブ、つまり、創造にならん
じゃろ」

「パンフレットの作り方も、広告の作り方も、ダイレクトメールの作り方も、
なんとなく、みんな、そうしているから、同じように作っていましたよ」

「プロの名刺を持った専門家自身が、バイアスに、かかっておるからのう」

「なるほど。名刺は、こういうもの。パンフレットは、こういうもの。広告は、
こういうもの」

「プロの勧めに耳を傾けるのは良いのじゃが、なぜ、そうなるのか、理由も訊
きなされ」

「こういうものです!な〜んて答えが返ってきたりして。あははは」

「こういうものだと決めつけるバイアスは、こういうものだと決めつけられる
バイアスにも弱いもんじゃ」

「あ。だから、プロの名刺を持ったコンサル先生の言いなりになってしまった
のか。しまった」

「ふぉふぉふぉ」




            >>>>>> 山寺の和尚さん物語[最終話]へ続く

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おしょう

おしょう

https://0gasawara.blogspot.jp/1999/04/mailmag.html

3冊のマーケティング書と、1冊の自己啓発書を上梓した著者が、マーケティングとストロークをテーマに贈るメールマガジン。ビジネスの仕組みを知って、経済的な満足を得るためのマーケティング編と、人間関係の仕組みを知って精神的な満足を得るためのストローク編の二編構成