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[GEN 784] 宮崎口蹄疫騒動を検証する【第31回】

2011/01/28

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 784号 11年1月27日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第31回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第31回 韓国で壮大なワクチン実証試験か?

昨年11月に再発した韓国での口蹄疫禍が「宮崎」の被害をはるかに超えても、
収まる気配がありません。対策に窮した韓国政府は、地域別に複数のワクチン
接種方法を採用、さらには牛だけを対象にするという不可解な対策を打ち出し
ました。この奇妙な口蹄疫対策は、感染拡大を食い止めるというよりも、ワク
チンの効果を確認するための実験手法(対照実験)そのものです。「宮崎」で
ワクチン接種が想定外の結果に終わったため?、急遽韓国でその原因を確認し
ようとしているようにも見えます。「対岸の火事」では すまされない はずの
日本政府やマスコミが隣国韓国の口蹄疫禍に無関心なのも不自然です。

韓国口蹄疫発生の日本での第1報(農水省2010.11.30発表)を引用します。

 昨日、韓国政府は、同国の養豚農家において口蹄疫の発生が確認されたこと
 を公表しました。 
 【発生の概要】
 異常確認日:11月26日、28日
 確定診断日:11月29日
 発生場所:韓国南東部慶尚北道(けいしょうほくどう)安東(アントン)市。
 飼養状況:養豚農家2戸(それぞれ5,500頭、3,500頭飼養)
 防疫措置:発生農家の飼養豚の殺処分、発生農家から半径3km 以内に所在す
 る偶蹄類家畜の予防的殺処分、車両及び人等に関する移動制限等を実施しま
 した。
 その他:ウイルスの血清型等については、現在確認中です。(引用終わり)

口蹄疫ウイルスの確認システムは日本と同じで、「初期対応に問題があった」
との指摘が多いのも「宮崎」と同じです。(日本農業新聞2010.12.10より以下
引用)

 慶尚北道家畜衛生試験所は11月26日、「疑わしい」との申告を受けた。その
 時点で 抗原対の検査が可能で、確診判定が早まれば、11月29日以前に 防疫
 システムを稼動し、拡大を未然に防ぐことができたかもしれない。

 しかし、伝染性が強い口蹄疫の抗原体検査は、地域の家畜 衛生 試験所では
 できない。ソウル近郊の国立獣医科学検疫院の確定を待つのが実態だ。今回
 の口蹄疫拡大には、申告を受けてから確定までの時間が長く、対応が遅れた
 ことも一因と考えられる。(引用終わり)

韓国の口蹄疫禍は、日本にもいつ飛び火するかわからないため、特に隣接する
九州で「宮崎」を経験した ばかりの 日本では重大関心事であるはずなのに、
韓国への旅行自粛要請もなく、報道も日本農業新聞を除いてごくわずかです。
日本農業新聞(2010.12.8)より以下引用。

 韓国は今年9月、国際獣疫事務局(OIE)から口蹄疫の清浄国として認められた
 が、11月29日に安東市の豚農場で再発を確認。発生農場を中心に、半径3キロ
 以内の132農家の2万3000頭を殺処分した。さらに、発生農場から同3キロ以内
 を「危険区域」、同 3〜10キロ以内を「警戒 区域」、同 10〜20キロ以内を
 「(移動)制限区域」に設定し封じ込めを図ってきた。

 当初の発生は安東市内に集中していたが、5日には移動制限区域外の西隣の
 醴泉郡で28例目、7日には東隣の英陽郡でも31例目が確認された。

 1例目のほか、9、19、30例目が豚農場。そのほかは牛農場。殺処分の対象頭
 数は7日現在で10万4000頭に達しているという。

 韓国政府によると、感染の原因は不明。ただ、日本で4月に発生した時と共通
 するところがある。口蹄疫のタイプは両国ともO型で、牛、ぶたに感染して
 いる。(引用終わり)

日本の大手紙は事件を無視しているわけではないのでしょうが、口蹄疫再発か
ら一ヶ月で「宮崎」の殺処分総数を超えそうというのに実に簡単に伝えています。
(日本経済新聞2010.12.22 19:57より以下引用)

 韓国で口蹄疫(こうていえき)の感染が拡大している。先月末に南東部、慶
 尚北道の安東(アンドン)市で確認された後、22日午後までに首都圏の京畿
 道や東部の江原道の約20地域でも感染例が見つかった。聯合ニュースによると、
 韓国政府は同日、感染予防のためにワクチン接種を実施する方針を決めた。

 江原道は高級品が多い韓牛の産地で、畜産農家への影響が懸念されている。
 感染が確認された地域ではこれまでに牛や豚などの家畜計22万頭を処分。
 感染の疑いがあるとの申告も各地で増えており、防疫当局は感染拡大の阻止
 に全力をあげている。(引用終わり)

口蹄疫そのものはありふれた病気との前提に立てば、そもそも「封じ込め政策」
がうまくいくはずがないのは当然です。韓国政府はついに12月25日からワクチ
ン接種開始を決断しました。ところが、その接種範囲が一律ではなく、地域ご
とに異なるという奇策に出たのです。日本農業新聞2010.12.24と12.26 付によ
れば、

 【A区分:全域】慶尚北道・安東市 
 【B区分:発生農場を中心に半径10キロ以内】
         慶尚北道の醴泉、京畿道の坡州、高陽、漣川地域    
 【C区分:ワクチン未使用。新たに感染が確認されれば ワクチン接種(範囲
  未定)】    江原道
 【D区分:ワクチン未使用。従来どおり発生農場から500m以内の全殺処分】
         その他の地域(ただし、状況に応じてワクチン使用もあり)

B区分が「宮崎」と同じで、A区分はそれ以上、CとD区分は当面ワクチンを使わ
ないというわけですが、なぜ、こんなカテゴリーが設定されたのでしょうか?
実はこの方法、「対照実験」と 呼ばれる 手法そのもの なのです。Wikipedia
「対照実験」より以下引用します。

 対照実験(たいしょうじっけん)とは、科学研究において、結果を検証する
 ための比較対象を設定した実験。コントロール実験とも呼ばれる。条件の差
 による結果の差から、実験区の結果を推し量る基準となり、実験の基礎となる。

 【方法】
 薬の臨床試験であれば、効果のない偽薬と、新たに開発した薬剤とを投与す
 る 2つの実験群をおくが、偽薬を 与えられた方が 対照実験となる。また、
 対照実験には陰性対照(ネガティブコントロール)と陽性対照(ポジティブ
 コントロール)の二種類ある。いずれも結果があらかじめわかっている対照
 群であるが、前者は結果に影響を及ぼさないものであり、先の例では偽薬が
 あてはまる。一方、陽性対照は効果があることがわかっている対照群であり、
 薬剤の例で言えば、既に臨床試験をクリアしたものがあてはまる。

 【意義】
 対照実験を行うことによる意義として、結果の差を推計統計学的に考慮して、
 有意差があったかどうかを判断できるという点がある。また、その差の大きさ
 によって、効果がどれほどあったのかという点についても知ることもできる。
 (引用終わり)

この説明で、韓国のワクチン接種の目的が「感染拡大の阻止」ではなく、「宮
崎」で強引に行なわれたワクチン接種の結果についての検証になっていること
がおわかりいただけるでしょうか? B区分が「宮崎」で、A区分が「ポジティブ
コントロール」、C・D区分が「ネガティブコントロール」というわけです。
C区分(江原道)で新たな感染が見つかれば、A区分ないしB区分に分類される
ことになります。

この「検証実験」により、宮崎でのワクチン接種がどの程度効果があったのか
を推定できるのです。さらに、牛だけに接種することで、ワクチンで発症した
場合に牛から豚への感染がどの程度起きるのかも確認できることでしょう。
牛だけが接種対象とする理由はそれ以外には思いつきません。つまり、韓国
農民のための防疫対策ではなく、製薬メーカーのための臨床試験である疑いが
濃厚です。

次なる問題は誰がこのような「実験」をやろうと考えたかということです。
当然、製薬メーカーの関与が疑われます。日本でもワクチン接種を提言したのは
ワクチン輸入代理店に天下った元動物衛生研究所長でした。韓国で使用されて
いるワクチンのメーカーは不明ですが、宮崎で使用されたワクチンはメリアル
社製「Aftopor」でした。(農水省HP)

メリアル社(米国ジョージア州)は「世界の動物用医薬品市場の14パーセント
以上のマーケットシェアを有する、世界をリードする動物用医薬品企業」で、
「従業員数約5,700名、150カ国以上で販売され、2009年販売高はおよそ26億
ドル」(メリアル・ジャパンのHP)という大企業です。

同社の親会社はサノフィ-アベンティス(世界第4位の医薬品大手企業、フラン
ス・パリ)、元 親会社はメルク(世界第 2位の医薬品 大手企業、米国ニュー
ジャジー州1891年創業)で、設立は台湾口蹄疫事件が起きた1997年。この年、
日本の農水省は20万頭分の口蹄疫ワクチンを購入しています。(第3回、
2000.5.18 参院・農林水産委員会)そして、日本法人であるメリアル・ジャパ
ンの設立は1997年9月2日。2000年の宮崎・北海道口蹄疫事件(捏造の疑いあり)
以降、農水省は毎年400万頭分(40億円)の口蹄疫ワクチンを購入しています。
(第3回、2000.5.10衆院・農林水産委員会)

さて、このメリアル社は、米国 農務省に設置された世界 口蹄疫研究同盟の正
会員です。世界 口蹄疫 研究同盟(Global Foot-and-Mouth Disease Research 
Alliance)とは、「口蹄疫の漸進的制御と根絶を可能にする証拠と技術革新を
生み出す科学者が連携した世界同盟」(訳:鹿児島大学・岡本嘉六教授)です。
岡本教授が同同盟のホームページを翻訳してくださっていますので、以下引用
します。

 【世界口蹄疫研究同盟(GFRA)の使命】
 口蹄疫の予防、制御および根絶を成功させる科学知識を蓄え手法を発見する
 ために、世界的な研究連携を確立し維持する。

 【世界口蹄疫研究同盟の計画】
 世界口蹄疫研究同盟は、5つの戦略的目標(下記を参照)を達成するために、
 口蹄疫研究の連携を全世界に広げ、資源と専門的技術の活用を最大限にする
 ことを目指す。

 いくつかの研究計画が欧州、北米、南米および東南アジアで現在動いている。
 口蹄疫研究同盟の計画は、これらの地域で同盟を広げ続け、口蹄疫の漸進的
 制御と根絶に関心を寄せる世界の新しい地域に積極的に働きかけるつもりで
 ある。

 【世界口蹄疫研究同盟の戦略目標】
 目標1. 研究共同を推進し、世界の口蹄疫研究界の情報交換窓口として役立つ。
 目標2. 口蹄疫をより良く理解するための戦略的研究を行う。
 目標3. 次世代の制御措置を開発し、その適用戦略を考案する。
 目標4. 新たに開発された 改良された口蹄疫制御の社会的、経済的効果を
    判定する。
 目標5. 口蹄疫が風土病化した地域における動物と動物由来製品の安全な
       取引きのための政策の進展を周知する証拠を提供する。(引用終わり)

今回の韓国でのワクチン接種方式は、ワクチンの製造元は不明ながら世界口蹄
疫研究同盟を通じて米国の指導があって採用されたと考えるのが自然でしょう。
というのは、口蹄疫が再発する直前の2010年11月23日に、延坪島(ヨンピョンド)
近海で朝鮮人民軍と韓国軍の間で砲撃戦があり、両国の緊張が一気に高まった
時期です。かつ、米韓 FTA交渉が12月3日に合意に達したことからも、米国が
傍観していたとは考えられないのです。(この視点は「農と島のありんくりん」
さんが指摘されています。)

翻って、「宮崎」ではどうだったのでしょうか? FAO(国連食糧農業機関)
のファン・ルブロス首席獣医官が「世界の口蹄疫封じ込めの経験と知識を持つ
FAOが、助言や勧告のため日本に専門家チームを派遣する用意がある」との
提案をした(2010.05.21 共同通信)にも関わらず、日本の農水省は ワクチン
接種が答申されたタイミング(5月21日以前)でその申し出を断っています。
(第4回)日本での口蹄疫ワクチンの使用は初めてのことです。当然メーカー
の指導はあったことでしょう。だからFAOの指導は迷惑だった? ここにも、
世界口蹄疫研究同盟の影がちらつきます。

さて、韓国でのワクチンの効果はあったのでしょうか?

「韓国農林水産食品省によると、口蹄疫の検査で陽性と判定されたのは1月23日
午前現在で134カ所。殺処分された豚や牛は約240万頭で、韓国国内で飼育され
ている豚の約24%、牛の約4%にのぼる。本土全体でワクチン接種を進めており、
唯一除外されていた離島の済州島でも接種が検討されている。だが、口蹄疫の
猛威は広がり続けている。」(朝日新聞2011.1.24 2:04) 

早くも大混乱の中に「ネガティブコントロール」エリアを維持できなくなった
模様です。ワクチンに感染予防の効果は まったく なかっただけでなく、台湾
(1997年)、宮崎(2010年)に続いて韓国でもワクチンが「火に油を注ぐ」結果
につながっていることをうかがわせます。

それにしても、240万頭が殺処分とは驚くべき数字です。対照実験は失敗に終
わったと考えられますが、FTA 交渉をまとめた米国にとっては、またとない
食肉売り込みのチャンス到来でもあります。

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