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[GEN 780] 宮崎口蹄疫騒動を検証する【第27回】

2010/12/10

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 780号 10年12月10日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第27回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第27回 口蹄疫対策検証委員会の「最終報告書」

11月24日、農林水産省が設置した「口蹄疫対策検証委員会」が最終報告書を発
表。同日、農水省の「口蹄疫疫学調査チーム」も「中間とりまとめ」を発表し
ました。

毎日新聞(2010年11月24日 20時58分)より以下引用。

 口蹄疫:検証委が最終報告書 「特例」容認を批判
 宮崎県で発生した家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)への行政の対応など
 を検証するために農林水産省が設置した外部有識者による「口蹄疫対策検証
 委員会」は24日、最終報告書をまとめた。種牛など一部の家畜に特例的な扱
 いをすることを一切認めるべきでなく、人や物品、車両の出入り記録を畜産
 農家に義務づけるべきだなどと提言した。

 最終報告書は、中間報告や関係者へのヒアリングなどを基に、問題点と改善
 への提言などを記載。宮崎県所有の種牛を移動制限区域から移動させるなど
 の特例を容認した点について、「多くの混乱をもたらし、県と国に対する畜
 産農家の不信感を深めることになった」と批判した。

 5月19日に実施を決めた 健康な家畜へのワクチン接種については、既に発生
 件数が増加していたことなどから「結果的に決定のタイミングは遅かった」
 と指摘した。1例目の検体の検査機関への送付が遅かった県の対応も問題視
 した。

 一方、農水省の「口蹄疫疫学調査チーム」も24日、初期の発生農家へのウイ
 ルス侵入・伝播(でんぱ)経路などを示した「中間とりまとめ」を発表した。
 初発農家(6例目)へのウイルス侵入日と家畜の発症日をそれぞれ3月19、26
 日と推定。「外部からの人の移動で侵入した可能性は否定できない」とした
 が、訪問者の記録がなく「これ以上調査、検証は困難」と結論づけた。

 2番目に発生したのは1例目の農家と推定し、初発農家から人によって伝播
 した可能性を指摘した。【佐藤浩】(引用終わり)

6例目の水牛農家を初発とするには 矛盾が多すぎ、疫学調査チームの行動も不
可解であることを前回述べましたので、今回は「最終報告書」について検証し
ます。

内容を検証する前に確認しておきたいことがあります。山田正彦農相は 7月20
日の会見で、「疫学調査チーム、第三者委員会で国、県などの責任を含めて検
証しなければならず、作業に取りかかった」と述べ、第三者委員会の人選に入
ったことを報告しています。(7.21宮崎日日新聞)国や県の責任を検証するな
らば、国や県の関係者はこの委員会から排除されていなければなりません。そ
のための「第三者」なのですから。農水省HP「口蹄疫対策検証委員会」(更新
日:平成22年11月1日)には、「口蹄疫対策検証委員会は、9名の第三者委員に
よって構成されています」と書かれていますが、委員は本当に第三者なのでし
ょうか? もし関係者が含まれていては、農水省や動物衛生研究所に甘い検証
結果となることは最初から予想されることです。委員は次の通り。

  NHK解説委員 合瀬 宏毅   (おおせ ひろき)   
  全国消費者団体連絡会前事務局長 神田 敏子   (かんだ としこ)   
  弁護士 郷原 信郎   (ごうはら のぶお)   
  (独)農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所研究管理監
 (OIE科学委員会委員)  坂本 研一   (さかもと けんいち)    
  北海道農政部食の安全推進局畜産振興課長 塚田 善也   (つかだ よしや)   
  自治医科大学教授 中村 好一   (なかむら よしかず)   
  東京大学大学院農学生命科学研究科教授 眞鍋 昇   (まなべ のぼる)   
  帝京科学大学生命環境学部教授 村上 洋介   (むらかみ ようすけ)   
  日本獣医師会会長 山根 義久   (やまね よしひさ)

このうち、坂本研一氏は現役の動物衛生研究所幹部ですから第三者でなく、当
事者であることは一目瞭然です。それを「第三者委員」と呼ぶということは、
農水省も動物衛生研究所も当事者(検証対象)ではなく、「口蹄疫対策検証委
員会の俎上にあるのは(農水省にたてついた)宮崎県や赤松大臣という農水省
の意図がとてもわかりやすい人選であると言えそうです。

それに、研究管理監帝京科学大学の村上洋介教授は一見第三者のように見えま
すが、動物衛生研究所の前所長ですから、彼も第三者とは言いがたい御仁です。
そして、ワクチン接種を答申した牛豚等疾病小委員会の寺門誠致委員長代理は
動物衛生研究所の元所長ですから、二人は元部下だということになります。
(「農と島のありんくりん」さんのご指摘の通り)すると、牛豚等疾病小委員
会の答申も検証の対象外、もしくは非常に甘い評価になりそうです。

彼らは「同じ穴のムジナ」で、被告人が裁判官をやっているというのが口蹄疫
対策検証委員会の実態だと考えられます。こういうあからさまに偏った人選を
するということは、農水省にはよほど再三者に検証されては困ることが色いろ
とあるらしい。そう疑わざるをえません。では、報告書の中身を眺めていきま
しょう。

まず上記、「種牛など一部の家畜に特例的な扱いをすることを一切認めるべき
でなく」の部分を委員会報告書から引用します。(p.7 より以下引用)本文は
こちら↓
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/kensyo_hokoku_sho.pdf

 宮崎県が所有する種雄牛をめぐっては、宮崎県や国は特例措置を繰り返し、
 現場に多くの混乱をもたらした。宮崎県では種雄牛55頭を宮崎県家畜改良事
 業団1ヶ所で飼育し、宮崎県内の繁殖農家に精液を提供してきた。ところが、
 近隣で口蹄疫が発生し、事業団が移動制限区域内に含まれているにも関わら
 ず、宮崎県は牛を移動させた。さらに、移動先でうち 1頭に感染の疑いがあ
 ることが明らかになると、口蹄疫の防疫指針が「患畜と同じ農場において飼
 育されている偶蹄類の家畜の全部」の殺処分を求めているにも関わらず、宮
 崎県は残り5頭の殺処分も再び見送った。
 種雄牛の重要性を考えると、あらかじめ種雄牛を分散しておくか、必要量の
 精液をストックしておくべきであった。宮崎県の要請を認めた国も問題であ
 る。口蹄疫の拡大を防ぐためには、何よりもルールに従って対策を確実に行
 なう必要がある。(引用終わり)

委員会が問題だとした点は、
 (1)事業団が移動制限区域内に含まれているにも関わらず 牛を移動させた。
 (2)移動先でうち1頭に感染の疑いがあったのに、宮崎県は残り 5頭の殺処
 分も再び見送った。
ということのようです。

報告書では宮崎県が勝手に移動させたり、殺処分をしなかったかのような印象
を受けますが、移動は国の許可を得ており、延命は経過観察を続け、科学的に
感染していないことが確認されたからです。

  (朝日新聞2010年5月13日12時46分より以下引用)
  (事業団の農場は)発生農場に近いため移動が規制されているが、国が特例
  措置を認めた。「特例措置をとることは耐え難いが、宮崎牛ブランドを何と
  か維持しないといけない」。13日の記者会見で、県農政水産部の押川延夫次
  長はこう語り、牛や豚の殺処分対象が約7万9千頭となる中での特例措置につ
  いて、被害農家や県民の理解を求めた。 

 宮崎県産の子牛は、松阪牛(三重県)や佐賀牛の産地など全国各地に出荷さ
 れている。種牛の保護については、「日本一に輝いた名牛が失われることは
 全国の損失」と各産地からも宮崎県に要望が寄せられていたという。赤松広
 隆農林水産相が県庁を訪れた10日には、同県の東国原英夫知事が種牛の避難
 を認めるよう訴えていた。 (引用終わり)

 (共同通信2010/05/22 01:19より以下引用)
 口蹄疫拡大を受け、宮崎県が県家畜改良事業団(同県高鍋町)から避難させ
 ていた種牛6頭のうち1頭が、遺伝子検査で感染疑いと確認されたことが21日、
 関係者への取材で分かった。県はこの1頭を殺処分するが、ほかの5頭は農林
 水産省と協議の上、経過観察としている。同省幹部は 5頭の取り扱いについ
 て「22日中にも決めたい」と述べた。(引用終わり)

 (朝日新聞(2010年6月6日1時38分)より以下引用)
 農林水産省と宮崎県は5日、感染の中心地から特例で避難させ、経過観察と
 していた特に優秀な「エース級」種牛5頭について、4日に採取した検体の遺
 伝子検査の結果が陰性だったと発表した。一緒に避難して口蹄疫に感染した
 疑いが判明した種牛「忠富士(ただふじ)」が殺処分されてから 2週間、陰
 性が続いたことで、宮崎牛ブランドを支える5頭の延命がほぼ決まった。 

 農水省と県は再確認のため、4日に採取した5頭の血液の抗体検査をする。
 6日夜にも結果が判明する予定で、5頭が感染を免れたと判断したら、生存を
 認める見通し。(引用終わり)

なお、以下の記事から、特例措置を認めた「国」とは赤松大臣のことだったと
推測されます。報告書は「特例」を容認した国を批判して、中立の第三者であ
るかのような体裁をとっていますが、官僚に逆らった赤松大臣を糾弾している
にすぎません。

 (5月23日宮崎日日新聞より以下引用)
 県庁で記者団の質問に答えた東国原知事は「種雄牛が1頭もいなくなると い
 うことは、本県だけでなく、九州、日本の畜産にとって大きな損失。49頭に
 ついても検査をきちんとするので経過観察にしてもらえないか。何とか協議
 の余地はないかと考えている」と話し、国に早急に要望する考えを示した。
 (中略)山田正彦農林水産副大臣は22日、「認めていいとは思っていない。
 大臣と相談して結論を出したい」と否定的な考えを記者団に示した。(引用
 終わり)

 (5月24日宮崎日日新聞より以下引用)
 政府の口蹄疫現地対策チーム本部長・山田正彦農水副大臣は23日、県庁で記
 者会見し、県家畜改良事業団(高鍋町)の種雄牛49頭の救済措置について、
 「殺処分しなければおかしい。相談する余地はない」として、認めない考え
 を示した。西都市尾八重に避難している主力 5頭については、「大臣と協議
 する」としている。(引用終わり)

大臣が特例措置を認めたのは、「個人の財産を国が勝手に処分できない」(憲
法29条)との憲法規定を尊重したからです。つまり、家畜伝染病予防法の規定
と憲法とが対立する問題を孕んでいるわけですが、報告書は赤松大臣を一方的
に断罪しているだけで、家畜伝染病予防法の規定と憲法との整合性については
何ら言及していません。その上で「人や物品、車両の出入り記録を畜産農家に
義務づけるべき」と無理難題を農家に押し付けています。

報告書は、科学的に「陰性(患畜でも疑似患畜でもない)」だと確認されてい
る事実を意図的に伏せて、「防疫指針の定義(同じ農場にいた)に従えば感染
してなくても疑似患畜なんだから殺せ」と言っています。感染の疑いが残るな
ら「疑似患畜」の扱いでも仕方ありませんが、科学的に感染の疑いがないと確
認されたのなら殊更に殺す必要はないでしょう。これらの記事を読んで改めて
報告書は読み返すと、赤松大臣が農水官僚の意図を踏みにじって(山田副大臣
は従順だったのに)種牛の救済を認めたのが気に入らないと報告書は言ってい
るようでもあります。科学的な裏づけはどうでもよいようです。

それにしても、感染力が強いとされる口蹄疫ウイルスがなぜ仕切り板一枚で隔
てられた程度の同じ牛舎で、なぜ5頭は感染しなかったのか? という疑問が新
たに出てきます。第6回(GEN758)でも述べましたが、実は 忠富士も感染して
いなかったのではないかという疑惑があるのです。朝日新聞は「症状はなかっ
た」といい、毎日、産経、共同通信は症状について何も言っていません。感染
していたというのは読売新聞だけなのです。農水省、宮崎県のプレスリリース
にも症状に関する記述がありませんから、やはり、「忠富士」に症状はなかっ
たと考えられます。

動物衛生研究所は忠富士の検体だけを要求して、「陽性」と発表していますが、
症状がなかったとしたら、なぜ別格エースだった忠富士だけが標的にされたの
か? 動物衛生研究所のとった行動こそ ヘンです。忠富士が血祭りにあげられ
たことで、ワクチン接種に対する宮崎県の農家の抵抗は急速にしぼんでしまい
ました。

症状はないのに、動物衛生研究所の遺伝子検査では「陽性」だった・・。そし
て、板一枚をはさんで同居していた5頭は発症もしなかったし、2週間検査を続
けても「陰性」だったということはどういうことなのか? これも再発防止に
は十分検証対象にしてよいテーマだと思われますが、報告書では当然ながら触
れられていません。

さて、報告書は「特例」容認を批判していますが、「ルールであっても、状況
に応じて柔軟に対応すべき、特に種牛の場合は慎重に」という専門家もいます。
(2010.5.29日経夕刊より以下引用)

 「種牛の殺処分慎重に」 

 国連食糧農業機関(FAO)の主席獣医官のファン・ルブロス氏は29日までに、
 日本経済新聞に対し、宮崎県で口蹄疫に感染した可能性がある種牛が全頭処
 分されることに関して「慎重に対応すべきだ」と述べた。
 
 理由について同氏は「殺処分は感染の初期段階では非常に効果的だが、拡大
 した今は長期的な視野を持つ必要がある」と説明。「殺処分は(畜産)資源
 に大きな損失をもたらす」とも語った。

 FAO で家畜感染症問題を統括する同氏は、宮崎県の口蹄疫は「先進国ではこ
 の10年間で最悪」と指摘。2001年の英国での大流行に次ぐ規模で、「中国な
 どで発生したウィルスとほぼ同一。いつ極東から世界各地に広がってもおか
 しくない」と警鐘を鳴らす。

 日本が開始したワクチンの接種については「メリットとデメリットがあると
 したうえで、「接種から効果がでるまで何日もかかるうえ、流行しているウ
 ィルスの型に合わないと十分は効き目はない」と指摘した。(引用終わり)

農水省は ワクチン接種を始める直前、FAOが専門家を派遣するという申し出を
断っていますが、なぜ断ったのか、そしてその判断の是非こそ、本当の第三者
委員会なら検証してもらいたいところでした。

ワクチン接種に関しては、接種を受けた家畜で次々と発症していることから、
ワクチンが新たな感染源になっていないかと指摘しましたが、もともとワクチ
ンが 流行しているウィルスの型に合ってなかったのではないか? との疑念を
FAO がもっていたことがファン・ルブロス氏のコメントから推察されます。そ
んな中で「結果的に決定のタイミングは遅かった。」と言われても、まったく
効果がなければタイミングの問題ではありません。

そのことを含めて、「偽装」第三者委員会なら予想通りではありますが、今回
ワクチンを使用したことの是非は検証の対象外だったようです。使用したワク
チンが自然感染による抗体かワクチンでできた抗体かを区別できるマーカーワ
クチンであったのかどうかは、とても重要な視点だと思われますが、その検証
も素通りでした。マーカーワクチンだったなら、これだけ多くの家畜を殺す必
要はなかったのです。それを農水省は区別できないと言って、全頭殺処分とし
たのですから、検証委は、農水省の備蓄していた口蹄疫ワクチンがマーカーワ
クチンではなかったかどうかを確認すべきです。それをやっていないのですか
ら、検証できない理由があるのでしょう。

検証委が、全頭殺処分した農水省の政策を容認するならば、今回使用したワク
チンはマーカーワクチンではなかったといわなければなりません。ところが、
そうなると欧州では主流となっているマーカーワクチンではないもの(売れ残
り?)を農水省はなぜ購入したのかという別の問題が露呈してしまいますから、
この点には触れられないのだと思われます。

日本が購入していたのはマーカーワクチンだったことは、FAO の顧問を務めて
いる山内一也東大名誉教授が証言していますし、農水省がワクチン接種を決断
した前後に、FAO が専門家を派遣するとの申し出をしていることからも間違い
ないでしょう。その発覚を恐れてか、農水省の官僚は FAOの申し出を多分、赤
松大臣の承認もとらずに勝手に断ったと考えられます。農水省が再三者に検証
を委ねられない理由はたくさん見つかりそうです。

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