環境

世界の環境ホット!ニュース

国内で報道されない海外の環境情報をだれにでも分りやすく編集して、週3回お届けします。

全て表示する >

[GEN ]

2010/10/23

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
     世界の環境ホットニュース[GEN] 778号 10年10月23日
         ご意見・ご投稿 → このメールに返信

         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第25回)

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第25回 農水省の内外発表に齟齬

農水省がOIEに提出した報告書には、国内向けの発表と異なる点が3つありまし
た。(1)初発の時期、(2)殺処分の進行状況、(3)ウイルスの型の特定、
の3点です。このことを 手がかりに、農水省が想定していたと思われる宮崎口
蹄疫騒動を検証してみます。

(1) 初発の時期
   OIE:第1報(農水省が4月23日に提出)から「初発は6例目の水牛農家」
   国内:7月23日の中間概要で「初発は6例目の水牛農家」に初めて言及。
   その後、「感染源は不明」と修正。

(2)殺処分の進行状況
   OIE:遅滞なく殺処分遂行。
   国内:6月10日時点で10万頭が待機状態

(3)ウイルスの型の特定
   OIE:「すべてO型」と報告
   国内:5例目まで「O型」と発表。その後は未発表のまま。


第22回で、農水省が初発のタイミングを国内と国外向けとで異なる発表をして
いたことを指摘しました。すなわち、農水省は国内では7月下旬に初めて6例目
の水牛農家が初発だったと発表したにも関わらず、OIE には口蹄疫発生当初か
ら、初発の時期を6例目の水牛農家を前提とした3月末として報告していました。

国内外で異なる発表をしていること自体怪しいのに、農水省の疫学調査チーム
は当該農家を まったく調査していません。疫学調査を しないまま 7月下旬に
「6例目の水牛農家が初発だった」と発表したところ、たちまち 地元農家から
の反論にあい、あえなく結論を取り下げるという醜態をさらしています。(第
15、16回)

6例目の水牛農家を 宮崎県の家畜保健衛生所(家保)の職員が訪ねる経緯も不
自然でした。宮崎県の発表(プレスリリース)では「1例目の農場と 利用して
いる飼料会社が共通である疫学関連農場として、宮崎県が当該農場の立入調査
を実施」と記されていますが、口蹄疫発生直後に家保の職員が立入調査したの
は、この「6例目の水牛農家」だけなのです。

しかも、当該農家の担当獣医師は、家保の職員が「近くで口蹄疫が発生したか
ら」(1例目の農家から600mの距離)と訪問目的を告げたと記憶しています。
(文藝春秋 2010年8月号)訪問理由が異なるというだけでも怪しいのですが、
どちらの理由であっても、「6 例目の水牛農家」だけに立入調査するのはいか
にも不自然で、この水牛農家が最初からスケープゴートに選定されていたので
はないかとの疑念が払拭されません。

農水省はOIEへの報告書で、このわざとらしい「6例目の水牛農家」の発見の経
緯には触れず、「6例目の水牛農家が初発」を前提とした「初発は3月31日」と
だけ報告しています。のちに「初発は 3月26日」に変更されるのですが、この
日が「6例目の水牛農家」が 水牛の異変に気付いて、獣医師に相談した日であ
ることは OIEへの報告書にも説明されていません。

ですから、OIE は「3月31日」や「3月26日」に何があったのか知る由もないま
ま、農水省の報告を鵜呑みにせざるをえなかったと考えられます。問題は、な
ぜ農水省がそんな不自然なことを積み重ねてでも、「初発は 3月」ということ
にしたかったのだろうか? という疑問です。しかもその報告は 海外に対して
のみであって、国内向けにはなぜか「6例目の水牛農家」のことは 放置された
ままでした。つまり、農水省には国内はいざ知らず、「国際的には初発は3月」
でなければならない別の思惑があったのではないかと推測されるわけですが、
その理由がわかりません。

そして、第23、24回で農水省は初発の時期だけでなく、殺処分状況について
も、OIE に虚偽の報告を続けていたことを指摘しました。すなわち、殺処分が
大幅に遅延しているのに、OIE には遅滞なく殺処分が遂行されているかのよう
に報告していたのです。この時点で、農水省のOIEへの報告書には1つの未確認
情報(初発の時期)だけでなく、明らかに虚偽の報告(殺処分の進行状況)が
あったことになります。

日本事務所をもつ国連 食糧農業機関(FAO)は、農水省の虚偽報告に気付いた
のか、それとも農水省がマーカーワクチンの利点を活かそうとせず全頭殺処分
との方針を打ち出したことに驚いたのか、理由は わかりませんが、5月中旬に
は FAO の専門家チームの派遣を農水省に申し出ています。

鳩山内閣は、家畜をできるだけ殺さない方針であったのですから、FAO が専門
家の派遣を申し出てくれたのは歓迎すべきことだったはずです。ところが、日
本政府は FAO の派遣を拒否しています。これは鳩山首相 あるいは赤松農水大
臣の判断とは考えられず、全頭殺処分に拘る農水省の官僚が大臣には無断で行
なったことだと推測されます。そして、鳩山首相が普天間問題で辞任すると、
菅内閣の官房長官となった仙谷由人に取り入って全頭殺処分を急がせる「指示
書」を出してもらうことに成功しました。

「仙谷指示書」の効果か、単に 作業効率が上がったのか、「1つの嘘(殺処分
の進行状況)」は6月末に解消されました。一方、「1つの未確認情報(初発の
時期)」は、農水省疫学調査チームが出した7月23日の中間概要で初めて「6例
目の水牛農家が初発」と明記して、OIE 報告書との調整を図りましたが、あま
りに杜撰な調査内容を 専門家にも地元農家にも指摘され、8月の中間報告では
「感染源、感染経路ともに不明」と修正せざるをえませんでした。(第16回)

「仙谷指示書」の目的は、全頭殺処分を急がせて、農水省の虚偽を「解消」す
ることにあったと考えられますが、口蹄疫の流行の際、できるだけ家畜を殺さ
ないという方向性を模索していた欧州に対し、殺処分が滞っているという現状
を隠してでも口出しを拒み、断固として全頭殺処分に拘った農水省のブレない
姿が極めて印象的です。

つまり、農水省にとって、主たる目的はワクチン接種の実験をすることではな
く、とにかく多数の家畜を虐殺することにあったのではないかと思われます。
ワクチン接種は健康な家畜までも殺してしまうための手段に過ぎなかったので
はないか。さて「多数の家畜を殺すこと」と「3 月中に口蹄疫が始まっていた
ことにする」の間にはどんな因果関係があるのでしょうか? 農水省が海外向
けに「3 月中に口蹄疫が始まっていた ことにする」に拘ったということは、
「多数の家畜を殺す」ための必要条件のひとつだった可能性が考えられるので
すが・・。

何度も書きますが、農水省が「初発は3月中(6例目の水牛農家)」に拘ったの
は、海外向けだけで、国内では7月下旬の中間概要発表まで まったく言及され
ていません。その中間概要の結論は根拠が希薄で、発表直後に地元の畜産農家
の反論にあって、あえなく 引っ込めています。以上の経緯から考えて、「6例
目の水牛農家が初発」というのは海外に対しては重要な意味があるが、国内に
対しては大した意味はないと農水省が考えていたと推測されるのです。

このように、「3月中に口蹄疫が始まっていた」との結論は 農水省によって描
かれていた、海外向けシナリオだった可能性が高いのですが、農水省にとって
どんなメリットがあるのでしょうか?

海外向け情報操作だったというわけですから、今年に入ってからの東アジアに
おける口蹄疫の流行状況をみてみます。以下に、農水省が公表した東アジア地
域の口蹄疫発生状況(2010年)が掲載されています。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/0901as.pdf

  【韓国】    【中国】
1月2日 牛(A型)
1月13日 牛(A型)
1月15日 牛(A型)
1月18日 牛(A型) 1月18日 牛(A型) 【台湾】     【香港】
1月19日 牛(A型) 2月22日 豚(O型) 2月12日 豚(O型) 2月 豚(O型)
3月9日 シカ(A型) 3月4日 豚(O型)           3月 豚(O型)
          3月25日 牛(O型)
          3月28日 豚(O型)
4月8日 牛(O型)
4月9日 牛(O型)
4月9日 豚(O型)
4月9日 牛(O型)
4月10日 牛(O型) 4月13日 牛・豚(O型)
4月19日 牛(O型)
4月21日 牛、ヤギ(O型)
4月21日 豚(O型)
4月27日 豚(O型)
4月30日 豚(O型)
5月6日 牛(O型)
5月30日 牛(O型)
6月4日 イノシシ(O型)        6月22日 豚(O型)
                   8月10日 豚(O型)

遺伝子解析では、「5月2日の農水省の発表では、宮崎で確認されたウイルスは
O型のウイルスであることが判明し、『O/JPN/2010』と名付けられた。さらに、
このウイルスの 遺伝情報は、10年2月に 香港で採取された ウイルスのものと
99.2%、韓国のウイルスとは98.6%一致していることがわかっている」(J-Cast
ニュース 2010/5/24 19:15)とのことです。遺伝子情報からは、「東アジア一
帯で流行し始めていた O型ウイルスが日本にも入ってきた」との説明が最も説
得力をもちそうな感じがします。

しかし、東アジアでは2月から O型が登場しており、日本での発生が3月末であ
ろうが、4月上旬であろうが、影響はなさそうです。

農水省は 7月23日に発表した中間概要では「最初の感染とみられるのは3月中
旬」「感染経路をめぐっては、韓国・香港などからの人や物の移動が考えられ
る」と述べています。(第15回 GEN768)しかし、韓国で O型の口蹄疫ウイル
スが見つかったのは4月8日です。3月中旬に宮崎で O型ウイルスの感染が始ま
っていたならば、O型では韓国より先に宮崎で感染が広がっていたことになり、
感染経路は中間概要の結論とは逆に、宮崎→韓国だった可能性が生じてしまい
ます。

どうも、農水省のやっていることはチグハグです。韓国から O型ウイルスが来
た可能性をいうなら、宮崎の初発は 遅い方が 合理的です。従って、農水省が
「韓国からのウイルス侵入」を言うのなら「6 例目の水牛農家」を強引に持ち
出して初発を早い方へ工作しようとした理由が説明できません。このように、
農水省は初発の時期を早めたいとの思惑をもち続けているようですが、それに
よって結論の整合性がとれなくなっています。

農水省の思惑は「初発の時期を早めたい」のではなくて、単に、「OIE に報告
した内容と国内情報を一致させたい」ということではないかと考えられます。
すると、農水省は OIEへの報告を間違えたということなのかもしれません。強
引な「6例目の水牛農家」の登場のさせ方と、OIE には「6例目の水牛農家が初
発」を前提とした報告をしたことを考え併せると、次の仮説が導かれます。す
なわち、

 農水省は当初、6例目の水牛農家を 端緒とする口蹄疫 騒動を画策していた。
 しかし、最初のチャンスを逃してしまった。そこへ、600m しか離れていな
 い別の農家(1例目)から 検査依頼が先に来たので、順番を入れ替えること
 にした。2軒から口蹄疫が出れば それなりに騒動になるだろうと期待してい
 たが・・・。

動物衛生研究所の発表に驚いた農家が、家畜のちょっとした異変でもすべて家
保に連絡するパニック状態となった。慌てた家保も検体を採取して動物衛生研
究所へ次々と送る事態となり、早くも発表から 3日目で、ウイルスの型を特定
するという工程が止まってしまいました。

当初、初発の予定だった「6例目の水牛農家」へは形ばかりの立入調査をして、
検体を入手したものの、次々と舞い込む検体に影が薄くなってしまいました。
農水省も想定外の事態にパニックになっており、「初発予定だったのに、いき
がかり上 6例目となってしまった水牛農家」のことはすっかり忘れ去られてし
まったようです。

ところが、OIE への報告担当だった川島室長は、最初から騒動の外にいたのか、当初の予定通りに行動しており、「6例目の水牛農家」で3月31日に採取し
たスワブが陽性だったと発表されると、ただちにOIEへの報告書で「初発日 3
月31日」と明記したのです。

農水省の国内対応の担当者は、しばらく OIEへの報告書の内容に気付いていな
かったものと推測されます。疫学調査チームを 1例目の農家の調査に集中させ
ていて、600mしか離れていない「6例目の水牛農家」にはまったく関心を寄せ
ていません。「初発」から外れた時点で「6例目の水牛農家」は その他大勢の
中のひとつという認識になっていた国内対応の担当者(平尾豊!)・消費安全局
長ら)と、予定通り粛々と OIEへの報告書をまとめていた川島俊郎・消費安全
局動物衛生課国際衛生対策室長の認識の違いが露呈していたのではないかと考
えられます。

「6例目の水牛農家」の取り扱いについて、国内向けとOIE向けとで食い違いが
あることに農水省が気付いたのは、おそらく殺処分が一段落した 6月末ではな
いかと思われます。殺処分の進捗状況については、実情と OIE報告書の間で食
い違いがあるという認識は農水省の中でずっと共有化されていたはずで、その
ため「仙谷指示書」を出してもらって全頭殺処分を急いだという経緯がありま
す。

全頭殺処分が完了した6月末に、農水省幹部はOIE報告書との齟齬は解消したと
一安心したことでしょう。ところがそこへ、「初発時期のズレ」が見つかった。そこで、急遽、疫学調査チームが7月23日の中間概要で突然「初発は6例目
の水牛農家」と発表しなければならない事態となったと考えられます。

しかし、この結論には相当無理がありました。かつての同僚だった白井淳資・
東京農工大教授(獣医伝染病学)も「疫学調査チームは、なぜ初発を水牛農家
と発表できたのか不思議だ。あくまでも得られた検体のみを分析し、判断した
結果にすぎない」(毎日新聞2010年8月8日 第16回でも引用)と酷評されてい
ます。

農水省は民間種牛問題が決着したこともあり、国民の多くは「宮崎口蹄疫騒動」をすぐに忘れてくれると期待したのでしょうか?「初発は水牛農家」との
結論を 8月の中間発表ではあっさり撤回して、「感染経路は不明」で決着を
図っています。

さて、最後に残った「ウイルスの型の特定」ですが、「感染経路問題」で懲り
たのか、「感染経路問題」と違って、気付いている人が少ないことをいいこと
に、農水省は敢えて蒸し返さずそのまま意識の中からフェードアウトしてくれ
るのを待つという姿勢のようです。

----------------------------------------------------------------------
■登録・解除は次のところから                        発行部数約3000
 まぐまぐ  →  http://www.kcn.ne.jp/~gauss/a/mag2.html
 Melma!   →  http://www.melma.com/mag/15/m00090715/
----------------------------------------------------------------------

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-05-12  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
Score!: 97 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。