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[GEN 777] 宮崎口蹄疫騒動を検証する【第24回】

2010/10/02

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 777号 10年1月2日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第24回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第24回 仙谷「指示書」

ところで、「何とか早く感染源を取り除く必要がある」という言葉、どこかで
見たような気がしていましたら、第13回(GEN766)で紹介した仙谷官房長官名
の「指示書」(以下、「仙谷指示書」と略す)の一文です。欧州家畜協会から
の提言書を見つけたことで、「仙谷指示書」の謎が解けそうです。「指示書」
は、2010年6月13日付 宮崎日日新聞に現物のコピーが掲載されていますので、
引用します。

 1.今回の口蹄疫問題は、今や国の責任による危機管理のステージに入ったと
 の認識に立って、臨むこと。

 2. 県や町の瑕疵(かし)等の問題は 脇に置いて、汚染源の解消に注力する
 こと

 3. 川南地域の全頭殺処分・埋却を遅くとも 6月20日を目途に 終えることが
 できるよう、実質責任者を定め、具体的な状況分析と解決策のロードマップ
 を早急にまとめること (その経過報告を13日夜に求める) 
 (引用終わり)

「指示書」を要約すれば、「これからは国の権限をもって強制的に家畜の全頭
殺処分を推進するからそのつもりで。遅くとも 6月20日までに作業を終わらせ
るように。6月13日の夜には 状況を報告せよ」ということになります。みごと
に欧州畜産協会の提言に対する回答になっています。

「指示書」の内容は、この時点で、農水省が置かれていた立場とよく符合しま
す。欧州畜産協会の提言が国民の間で話題にのぼる前にというよりも、提言に
対する検討状況について ELAから問い合わせが来る前になんとしても全頭殺処
分して、証拠隠滅を図らなければならない、というわけです。

第13回を配信した時点(7月27日)では、「遅くとも6月20日まで」という期限
の意味がわからず、参院選の公示(6月24日)前に 実績のアピールをしようと
したのだろうかと推測していました。しかし、「6月20日」は ELA の提言書の
日付からちょうど 2週間というわけですから、その日までに全頭殺処分を終え
て、ELA には涼しい顔で「せっかくアドバイスいただきましたが、処分の作業
に追われて検討する余裕がありませんでした。一件落着しましたのであしから
ず」とでも返答するつもりだったのではないでしょうか?

興味深いのは、農水省がOIEに対しては、「家畜の殺処分と埋却に支障はなく、
作業が順調に進んでいる」ことを毎回データ付きで報告していることです。

フォローアップレポート 発症数 牛  豚 その他 殺処分数(食肉加工)
 (No.1=4月23日)   5   326    2 42  同左 (0)
 (No.2=4月28日)   4   2021   486    同左 (0)
 (No.3=5月5日)   13      515  31839        同左 (0)
 (No.4=5月12日)   53   3375  46237  3  同左 (0)
 (No.5=5月19日)   55     2879  39040   5  同左 (0)
 (No.6=5月26日)   87  13661  22920 12  同左 (0)
 (No.7=6月2日)    35   8628  9210    同左 (0)
 (No.8=6月10日)   26   1404  15072    同左 (0)
 (No.9=6月15日)   10   3708  9908    同左 (0)

ところが、国内の報道はまったく異なります。

 「仙谷由人官房長官は6月14日午前、首相官邸で開かれた口蹄疫(こうてい
 えき)対策本部の会合で、宮崎県内で感染が確認されたり、感染の疑いの
 ある牛や豚(感畜・疑似感畜)について、20日までに処分を終えるめどが
 立ったと報告した。内閣官房によると、感畜と疑似感畜計20万頭のうち、
 これまで約17万頭を処分したが、3万頭は 処分の見通しが立っていなかっ
 た。」(毎日新聞 6月14日11時43分配信)

フォローアップレポート との違いに驚きますが、殺処分待ちは「3万頭」と
は別に「7万頭」残っているというのは朝日新聞です。

 「県によると、14日未明での感染疑い・確定例は 289例で、殺処分対象は
 19万77718頭。うち処分されたのは16万7840頭にとどまる。これとは別に、
 ワクチン接種後の処分対象も 7万8050頭いるが、こちらも処分が終わった
 のは9167頭だけだ。」(朝日新聞2010年6月14日0時54分配信)

「殺処分要員の獣医も足りないし、埋却場所の確保もままならず、現場は大
混乱している」という国内報道とはまったく異なる虚偽のレポートを農水
省(作成者は川島室長)は OIEに送り続けていたことになります。その動機
は、「処分に困っているのなら、なおさら殺す必要はないではないか。」と
ELA から指摘されたくなかったということでしょう。すなわち、「仙谷指示
書」の目的は2つあると考えられます。

1. 農水省のワクチン政策失敗に関する証拠隠滅作業の推進
2.「OIEに対して農水省が虚偽の報告をしている」という状況の早期解消

常識的に考えても、2 週間以内に返答すれば、まあ許容範囲かなという感じ
はします。だから「6月20日」がめど だったのでしょう。「指示書」だけで
なく、口頭でも何度も催促されていました。(7月22日、篠原孝 農水副大臣
記者会見より以下引用)

 「例えば、何日までに、例えば、6月20日までに埋却を終えるとか、6月30
 日までだとか、勝手に決めてくることに対して、現地で汗水垂らして、実
 は雨降っちゃって3日できないわけです。そんなの無視している。(中略)
 『もうちょい早くやれ、早くやれ、早くやれ』と言って、現場を無視して
 言ってくるのです。」(引用終わり)

そのため、実際には、仙谷が公表した「6月20日」には処分は終わらず、6月
30日までかかっています。(山田正彦のウイークリーブログ)厚労省の医系
技官・木村盛世氏によると、農水省は ELAに対し返事を出していないそうで
すが、6月20日に処分が終わらなかったので、返答できなかった ということ
だと思われます。

「仙谷指示書」には他にも興味深いことがあります。ひとつは差出人が、農
水官僚ではなく、菅内閣発足で官房長官に就任したばかりの仙谷由人だとい
うことです。仙谷は、欧州家畜協会の提言書が明るみに出る前にケリをつけ
たいという農水官僚の言い分を聞き入れたと考えられます。

鳩山内閣では、赤松農水大臣は種牛の疎開を認めたり、ワクチン接種に慎重
だったり、と国家権力が個人の財産を奪い去ることに慎重(憲法29条「私有
財産権」)で、鳩山首相もそれを支持していました。つまり、内閣として農
水省の思惑とは異なる判断をしていたのです。ところが、菅内閣となってか
らすぐに官房長官名で「速やかな全頭殺処分」との指示書を出したというこ
とは、「政治主導」を掲げていた民主党政権を、仙谷が農水官僚の思惑通り
に動いてくれる自民党と変わらぬ「官僚主導」政権に大変身させたことを意
味します。

菅首相は、仙谷・農水官僚ラインにすっかり乗せられて、威勢のよい発言を
しています。(毎日新聞 6月14日11時43分配信より以下引用)

菅直人首相は14日午前、首相官邸であった口蹄疫(こうていえき)対策本部
の会合で 「九州全土に広がるか広がらないかの瀬戸際だ。 多少余り気味で
あってもいいから、どーんと人を派遣したい」と述べ、防疫や牛・豚の埋却
処分に携わる警察官や自衛隊員の増派を検討する考えを示した。現地には、
既に警察官、自衛隊員がそれぞれ約300人規模で派遣されているが、首相
は12日の宮崎県視察を踏まえ「現地からすると『何でもっと来てくれないん
だ』とやり場のないいらだちを、 強く国に向けて言われた」と説明した。
【青木純】 (引用終わり)

菅首相は、殺さなくてもよい という方法があるとは 知る由もなく、単純に
「瀬戸際」との 農水官僚の口車に乗せられて、農水省の 尻拭いに過ぎない
「全頭殺処分」を自分の点数稼ぎになると信じ込んでいたのでしょうか。家
畜の殺処分・埋却のために、警察官や自衛隊員を「どーんと」宮崎に派遣し
よう というわけですが、鳩山内閣が 重視した「私有財産の侵害」問題には
まったく触れられていません。鳩山内閣では副総理だった菅首相は、その点
何も考えていなかったのではないかと思われます。

山田大臣同様、菅首相も官僚の操り人形だったと推測されます。仙谷の「指
示書」は、責任問題は棚上げにしてでも殺処分を急げとの通達で、それを菅
首相の宮崎入り前日に現地の政府対策本部に指示しているのですから、官僚
と結託した仙谷官房長官が 実質的に 内閣を動かしていたように見えます。
「どーんと」も農水官僚の提案をそのまま語っただけかもしれません。

なお、「仙谷指示書」のあて先は、政府の現地対策本部長の篠原孝・農水副
大臣ではなく、小川勝也首相補佐官でした。(宮崎日日新聞6月14日より 以
下引用)

 「口蹄疫問題に絡み仙谷由人官房長官名で出されていた『指示書』で、国
 の責任を回避するかのような表現があったことに対し、政府現地対策チー
 ムの小川勝也首相補佐官は13日、県庁での会見で『内閣官房や官邸の対策
 本部に向けたメッセージ』と説明。内部の非公式文書であり、責任回避の
 意味合いはないと釈明した。(中略)小川補佐官は会見で「私どもが正式
 に受け取ったという事実は全くない」と、非公式であることを強調した。
 (引用終わり)

篠原孝本部長(副大臣)は、6月10日に宮崎に赴任した ばかりですから(篠
原孝のブログ6月23日)、小川勝也に指示したということかもしれませんが、
篠原は7月22日の記者会見で「例えば、『6月20日』は怒りました、直接、怒
ってますよ。」と言っていますので、仙谷は扱いにくい篠原を避けたのでし
ょう。

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