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[GEN 776] 宮崎口蹄疫騒動を検証する 【第23回】

2010/10/01

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 776号 10年10月1日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第23回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明


第23回 欧州畜産協会の提言書

農水省が国際獣疫事務局(OIE)に提出したフォローアップ レポートの作成者
は、川島俊郎・農林水産省消費・安全局動物衛生課国際衛生対策室長でした。
その川島室長宛に欧州畜産協会(ELA)は6月7日に「できるだけ家畜を殺さ
ないやり方がある」との提言書を送付しています。これに対し、農水省はどう
対応したのでしょうか?

「できるだけ家畜を殺さないやり方」は山内一也・東大名誉教授が朝日新聞の
インタビューで答えていましたが、残念なことに、新聞に掲載されたのは 7月
23日で、薦田さんの種牛が殺された後でしたので、すべてが終わったという喪
失感の中では、国民の間で議論になることはありませんでした。私はこの掲載
日に疑問をもっていて、国民の間で議論にならないように掲載のタイミングを
見計らっていたのではないかと考えています。(第14回 GEN767)

それは疑惑の段階に留まっていたわけですが、欧州畜産協会から出された6月7
日付の提言書が見つかったことで、農水省は「できるだけ家畜を殺さないやり
方がある」ことを知りながら、それを無視して全頭殺処分の道を突き進んだこ
とが明らかになりました。

欧州 畜産協会(ELA)のホームページ(http://www.ela-europe.org/)のトッ
プに、川島俊郎医師宛に送付したELAの提言書がPDFファイルの形で掲示されて
います。(以下引用)

 2010年6月7日
 農林水産省(消費・安全局)動物衛生課(国際衛生対策室長)川島俊郎医師へ
 (写)OIE Bernard Vallat医師
 EU消費・安全委員会(欧州議会議員)John Dalli,

 欧州家畜協会(ELA)は、畜産システムを永続させることを目的としていて、
 口蹄疫の分野で著名な科学者がいます。日本でとられている口蹄疫対策につ
 いて、ELAメンバーは、次に掲げる緊急提言を行ないます。

 ワクチン接種で口蹄疫は根絶できないという日本の専門家の声明は正確では
 ありません。
 日本が2001年にイギリスとオランダで起きた口蹄病の管理における間違いを
 繰り返し、日本の畜産業や地域社会が経済的社会的に似たような帰結に終わ
 るとしたら、それは最も不運なことです。

 日本の当局の主たる目的は、病気の蔓延を抑制し、流行を制御して、できる
 だけ早く口蹄疫のない状態に戻すことです。ELAは、次の Q&A をよく検討さ
 れることを重ねて助言します。

 上記の目的(できるだけ早く口蹄疫のない状態に戻す)は達成できますか?
 答:はい。ワクチン接種と殺処分によって達成できるでしょう。しかし、そ
 れではイギリスのように、感染している家畜が(ほとんど)淘汰された後、
 ただ単に目的を達成したというだけにすぎません。
 この政策の問題点は次の通り。
 ・ウイルスの拡散を止めるために相当数の動物が虐殺される。
 ・社会経済的、実際上の影響。
 ・虐殺に起因する人間と動物の、広範囲にわたる福祉問題。

 より効果的な別の選択肢がありますか?
 答:はい。殺すためのワクチン接種から生かすためのワクチン接種に置き換
 えるべきです。

 ・殺処分を前提とした正確な診断は困難。
 ・バイオセキュリティを維持するのは困難。獣医や殺処分担当チームの不足、
 たまに非協力的で、どうしようもない家畜のオーナーとディーラーの存在。
 ・価値ある遺伝子その他の損失。
 ・消費にはまったく問題のない家畜の殺戮を受け入れるという倫理問題。

 感染をすばやく確かめることができ、前駆・臨床前段階であっても、即座に
 診断できるような、より新しい診断テストを用いてできるだけ速く病気を追
 跡すること。

 感染した家畜はただちに殺処分。
 同心円状のワクチン接種(感染してない地域から、感染が確認されている地
 域に向かって)。
 口蹄疫を発症しているか、潜伏期にある動物が、不注意でワクチン接種を受
 けたとしても、ウイルスの排出量は減るだろう。これがワクチン接種の明ら
 かな長所。
 農場のバイオセキュリティの維持と、家畜の移動制限。

 上記を考慮して、以下のように提言したいと思います。
 ワクチン接種する地域の広さは、一般的な非常事態計画に基づいてではなく、
 口蹄疫が勃発した時のタイプに基づいて見積もらなければならない。すなわ
 ち(2001年に英国で大流行した口蹄疫のように)はじめは口蹄疫かどうか分
 からなかった多地点発生型か、それとも(2007年に英国で発生した口蹄疫の
 ように)すぐに口蹄疫と分かった一地点発生型か、の違いである。

 前者の場合、ゾーンは広くとらなければならないが、後者の場合は比較的狭
 くてもかまわない。
 ・非常に効果的で、ほんの数日で抗体ができる、最新の高性能な緊急用ワク
 チンを活用する。
 ・予防接種の後は、適切なテストを行なって、ワクチン接種をした農場の血
 清学的ふるい分けにより、感染した家畜と、ワクチンを接種した家畜を区別
 する。(DIVA戦略)

 家畜類を飼育する地域社会の幸福のためにも、人々にとてもよく奉仕してく
 れる家畜類のためにも、21世紀の先端科学のツールにふさわしい家畜健康管
 理のより優れた方法を確立するのに貢献したいと思います。日本の皆さんが
 口蹄疫の発生を速やかに制御できるよう、成功を祈ります。
 敬具
 (引用終わり)

提言は、「日本はイギリスの失敗を繰り返すべきではない」とはっきり指摘し
ています。農水省はそれを無視して29万頭あまりの家畜を殺戮したことになり
ます。

ELAはオランダのNPOのようですから、もちろん、農水省が必ずしもその提言に
従わなければならないわけではありません。しかし、宮崎の畜産農家に対する
補償の財源が十分にないという状況(第12回 GEN765)なのですから、本来な
らば、かなり有望な選択肢として検討されるべきではなかったかと思います。
しかし、農水省はまったく逆の対応をしたのはなぜでしょうか?

ワクチン接種開始時期は豚が5月22日、牛は翌23日ですが、早くも5月26日には
ワクチン接種を受けた農場で発症例が見つかり、5月28日以降に 見つかった発
症例はすべてワクチン接種を受けた農場でした。「ワクチンが感染源」という、
農水省にとっては想定外?の事態が発生していたのですから、何とか早く「感
染源を取り除く」必要があります。もし、騒動が宮崎県外に出ることになれば、
全国各地でパニックが起こり、その未来は誰にも予想不可能でしょう。農水省
にとって、この時期に「できるだけ家畜を殺さないやり方」など受け入れられ
るわけがありませんでした。

農水省が「自らまいた種は、自ら刈らねばならない」というわけです。そうい
う意味では農水省は責任を果たした? ただし、責めは宮崎県に、負担は宮崎
県の各農家にという極めて官僚的ご都合主義の割り振り方ではありますが。と
にかく、農水省にとって、この時点で全頭殺処分以外の選択肢はなかったと言
えるでしょう。そんなときに、「できるだけ家畜を殺さないやり方がある」と
アドバイスされても、迷惑以外の何者でもなかったと思われます。

【ELA 提言書原文】

7 June 2010 
To: Dr. Toshiro Kawashima, CVO 
Animal Health Division, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, 
Tokyo, Japan 
CC: Dr. Bernard Vallat, OIE 
John Dalli, EU Commisioner Health and Consumer Policy 
Members of European Parliament

The European Livestock Association (ELA) is aiming towards enduring 
systems of animal husbandry. It has some well-known scientists 
specialised in Foot and Mouth Disease (FMD) among their members. 
In relation to the FMD measures taken in Japan, the ELA members feel 
the urgency to state the following:

The statement of the Japanese Authorities that FMD cannot be eradicated 
by vaccination is incorrect. 
It would be most unfortunate if Japan repeated the mistakes made in 
the management of control of FMD in the United Kingdom and in the 
Netherlands in 2001 and if Japan would suffer similar economic and 
social consequences for the livestock industry and the wider rural 
community. 

The main objective of the Japanese authorities is to stop the spread 
of disease, bring the epidemic under control and return to an 
FMD-free status as quickly as possible. 
ELA strongly advises to give careful consideration to the following 
questions and answers:

  Can the above objective be achieved? 
Answer: By stamping out/vaccinate-to-kill. Yes, however - like in the 
UK - that becomes only successful when hosts to be infected are 
(almost) no more available. 
The disadvantages of this policy include: 
- the considerable numbers of animals slaughtered in order to 'kill' 
the virus and stop its spread; 
- the socio-economic and practical implications; 
- the welfare problems in humans and animals caused by widespread 
slaughter; 

- the impossibility of ensuring accurate diagnosis when the emphasis 
is on slaughter; 
- the impossibility of maintaining bio-security (shortage of 
veterinary surgeons, slaughter teams - and occasional 
non-co-operative/rogue livestock owners and dealers); 
- the loss of valuable genetic lines etc.; 
the ethical problem to accept the destruction of livestock that are 
perfectly safe to eat.

  Are there more effective alternatives?
Yes. Vaccination to live should replace stamping out/vaccination to 
slaughter, in combination with:

tracing the disease as fast as possible by using newer diagnostic tests 
with which one can quickly confirm infection, even in the 
prodromal/preclinical phase, giving almost immediate ensurance;
- immediate slaughter of animals on infected premises;
- utilising ring vaccination (from uninfected areas towards the areas 
where there is the confirmed infection);
- even if animals incubating FMDV or animals with FMD are inadvertently 
vaccinated, they will subsequently shed less virus; an obvious 
advantage of vaccination.
maintaining bio-security on farms and a ban on animal transports;

In consideration of the above we would like to advise the following: 
- the size of the vaccination zones should not be based on a generic 
contingency plan, but must be estimated according to the type of 
outbreak: e.g.a multiple loci situation because FMD was initially 
unrecognised, (like the UK FMD epidemic of 2001), versus a single FMD 
locus that was quickly identified, (like the UK FMD outbreak of 2007).
In the first case the zones must be large, in the last case the zones 
can be kept relatively small; 
- to apply modern purified high potency emergency vaccines that are 
very effective and provide protective immunity in a matter of days; 
after vaccination, to differentiate infected animals from vaccinated 
animals (DIVA strategy), by serological screening of vaccinated farms 
using the appropriate tests;

We hope to contribute to a better way of animal health control, 
appropriate to the scientifically advanced tools of the 21st Century, 
both for the well-being of the rural societies and their livestock 
that serve humanity so well. 

We wish you every success in bringing the outbreaks rapidly under 
control. 
With kind regards,

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