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[GEN 775] 宮崎口蹄疫騒動を検証する(第22回)

2010/09/26

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 775号 10年9月25日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第22回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第22回 農水省がOIEに国内発表とは異なる報告

農水省が OIE(国際獣疫事務局)に提出していた口蹄疫フォローアップレポー
トには興味深い記述が見られます。5月初旬の第3報で 早くも「初発は6例目の
水牛農家」を前提とした報告をしているのですが、この結論は国内では 7月に
中間概要として発表したものの、地元農家から疫学調査のいい加減さを指摘さ
れて 8月の中間報告では削除されるというお粗末な経過をたどっています。な
ぜ、農水省は国内発表よりも2か月も前に、検証もしていない結論をOIEに報告
したのでしょうか?

農水省が OIEに提出したフォローアップレポートで示した「初発日(感染が始
まった日)」は次の通りです。(日付は OIEが受理した日)

速報(4月20日)  4月7日
第1報(4月23日) 3月31日
第2報(4月28日) 3月31日
第3報(5月5日)  3月26日
第4報(5月12日)以降 3月26日

発症リストでは感染が始まったのは 4月7日となっていますが、経過説明には4
月7日に何があったのかの記載はありません。(以下引用)

 A private veterinarian first found a suspicious case in the affected 
 farm and reported it to the local government’s veterinary service 
 on 9 April 2010. An official veterinarian observed that a cow had 
 fever, anorexia, salivation and erosions in the oral cavity on the 
 same day but the others had no clinical signs. 

 (訳)「民間の獣医が、最初の疑い例を発見し、2010年4月9日に家畜保健衛
 生所(家保)に報告した。家保の獣医はその日、1頭の牛に発熱、食欲不振、
 流涎を認めたが、それ以外の臨床徴候は確認できなかった。」

農水省の国内向けプレスリリースには 1例目の発見について経過説明はありま
せん。宮崎県のプレスリリース(4月20日)では次のように発表されています。

1. 平成22年4月9日(金曜)、開業獣医師から宮崎家畜保健衛生所に、口腔内に
び爛(軽度な潰瘍)のある牛がいるため、病性鑑定の依頼があった。 

2. 同日、宮崎家畜 保健衛生所の家畜防疫員(獣医師)が当該農場の立入検査
を実施したところ、症状がある牛が 1頭のみで、現時点では感染力が強いとい
われている口蹄疫とは考えにくいため、経過観察とした。 

3. 4月16日(金曜)夕方、同じ症状の 牛がみられる という報告があり、17日
(土曜)、再度、立入検査を実施したところ、別の 2頭に同様の症状があるこ
とを確認。同日、病性鑑定を開始。
 
4. 4月19日(月曜)午前、イバラキ病等の類似疾病について、全て陰性を確認。
このため、口蹄疫も疑われるので、同日20時00分、検査材料を動物衛生研究所
海外病部(東京都小平市)に送付した。 

5. 4月20日(火曜)早朝、農林水産省から PCR検査(遺伝子検査)で陽性との
連絡。なお、当該農場については、感染が疑われるとの報告があった時点から
飼養牛の移動を自粛している。 

ここにも、「4月7日」は出てきません。1例目の経過は朝日新聞(2010年8月18
日19時9分)によると(以下引用)

 「最初に感染が確認された同県都農町の牛を診察した青木淳一獣医師(38)
 によると、4月7日の初診では1頭に発熱と食欲不振、わずかな流涎(りゅうぜ
 ん=よだれ)があったが、口の中や蹄(ひづめ)に水疱は認められなかった。
 2日後には、口の中に軽い潰瘍(かいよう)が見られたが、周囲の 牛への広
 がりがないことから、当初は感染力の強い口蹄疫を疑わなかった。 

 その後、他の牛にも症状が現れ、青木獣医師は家畜保健衛生所に届けたが、
 検査に来た衛生所も当初は口蹄疫ではないと判断していた。他の感染症の検
 査がすべて陰性だったため、念のために動物衛生研究所に 遺伝子(PCR)検
 査を依頼。結局、口蹄疫と判明したのは、初診から約2週間後の4月20日だっ
 た。」(引用終わり)

4月7日から異常が見られていたことがわかり、農水省はこの日を初発としたの
だと理解できます。第1報で「初発:3月31日」となったのは「6例目」で、3月
31日に採取した検体から口蹄疫ウイルスが検出されたからだと推測されます。
(農水省プレスリリースより以下引用)

 平成22年4月22日、1例目の飼料関係の疫学関連農場として、立入調査を実施。 
 調査の過程で、農場主からこれまでの臨床症状の聞き取りをもとに血液 5検
 体を採取すると共に、別の検査で3月31日に採取していた検体、スワブ3検体
 と併せて計8検体を動物衛生研究所 海外病研究施設(東京都小平市)に送付
 した。 

 4月23日夕刻、農林水産省からPCR検査(遺伝子検査)でスワブ3検体中1検体
 (1頭分)で陽性との連絡を受け、疑似患畜と決定した。 (引用終わり)

ところが、フォローアップレポート第1報では、「3月31日」に関する説明はな
く、「6例目の水牛農家」で異常が始まった時期が3月26日と紹介されているだ
けです。ですから、フォローアップレポートでは、なぜ全体の初発日が 3月26
日ではなく、3月31日なのかさっぱりわかりません。

「3月26日」というのは、6 例目の水牛農家で 2頭に発熱が見つかった日です。
「そのまんま日記」(7月25日「初発 6例目」)より以下引用。

 6例目についてのこれまでの経緯・・・・・・・
 3月26日→2頭に発熱・乳量低下で開業獣医師が診察。このとき、開業獣医師
 に口蹄疫の可能性の認識は無かった。(引用終わり)

いずれにせよ、早くもこの時点で農水省は、国際的には「初発は 6例目」と認
定したことになります。ところが、国内で「初発は 6例目」と発表されたのは
7月23日(口蹄疫疫学調査チーム第4回検討会)で、3か月も遅かったことにな
ります。(農水省ホームページより以下引用)

 口蹄疫疫学調査チーム第4回検討会概要

 1 初発農場について
 (1)これまでの現地調査、抗体検査等の結果から、ウイルスの進入が最も
 早かった農場は3月31日の検査材料で PCR検査で陽性であった6例目の農場で
 あり、ウイルスの侵入時期は3月中旬頃と推察される。(引用終わり)

農水省はなぜ、国外向けには早期に「初発は 6例目」と認定しておきながら、
国内向けにはダンマリを決め込んでいたのでしょうか? 4月29日には、口蹄疫
疫学調査チームの現地調査があり、宮崎県農政事務所で 第1回の検討会が開か
れています。(宮崎県プレスリリース2010年4月27日)その日程は、

 10時00分〜 現地調査に先立った事前打ち合わせ
 その後   現地調査
 15時30分〜 検討会

検討会では、「現時点で明確な感染経路は見当たらなかったが『時系列を整理
することが大切だ』として、今月20日に初めて感染が確認された農家よりも早
い時期に感染していた施設がなかったかどうか確認していくことになりました」
(NHKニュースオンライン4月29日 19時11分)とのことです。OIE には既に
4月23日に「6例目が初発」を前提にした「初発:3月31日」との レポートを提
出しているのですから、農水省は確証があるなら「6例目の 水牛農家が初発の
可能性がある」ことを国内向けにも発表すべきでした。まだ確証がないという
なら、OIEへの報告は勇み足だという ことになります。そのことを確認するた
めにも、口蹄疫疫学調査チームによる第1回目の現地調査は、1例目と 6例目の
農家でなければならないはずです。

ところが、疫学調査チームはなぜか「6例目が初発」を確認するための 調査を
怠っています。「調査チームは、今回、宮崎県で最初に感染が確認された都農
町の畜産農家(1例目)を訪れ、飼育施設や道路の位置関係を 確認したり県の
担当者に飼育状況を聞き取ったりして、およそ3時間にわたって 現地を調べま
した」(NHKニュースオンライン4月29日 19時11分)と、現地調査は1例目の農
家を視察しただけで終わっており、なぜか、1例目の農家から600mしか離れて
いない6例目の水牛農家には立寄ってはいません。「現地調査に先立った 事前
打ち合わせ」までしておきながら、いったいどういうことでしょうか?

国際ルールでは、口蹄疫と診断される(患畜と判定される)には、「ウイルス
分離による 確定診断」が必要ですが、4例目までは「ウイルス分離」が行われ
O型と発表されていますが、6例目が含まれる4月23日からは「ウイルス分離に
よる確定診断」が行われておらず、これ以降は農水省が勝手に判定した「疑似
患畜」に過ぎません。(第5回 GEN757)ところが、OIEへのフォローアップレ
ポートでは、O型と発表されています。どうも、農水省は「6例目の水牛農家」
の扱いがヘンです。

この直後のOIEへの報告書(第3報)で「初発は 3月26日」と変更されています
が、やっとフォローアップ レポートに「3月31日」の説明がないことに気付い
て訂正したのでしょうか。しかし、5月や6月に、このフォローアップレポート
を日本国内にいる人が見ると「初発が 3月26日って、何があった日?」という
感じだったはずです。

6月7日に開かれた口蹄疫疫学調査チームによる 現地調査及び 第2回検討会も、
宮崎県えびの市の4農家が調査対象で、6例目の水牛農家はこのときも対象にな
っていません。(6月5日農水省プレスリリース) 農水省は早い段階からOIEに
は「6例目の水牛農家が初発」を前提とする初発日を報告して おきながら、国
内には7月末までそのことを伏せていたし、疫学調査チームが「6例目の水牛農
家」をまったく調査しなかったというのはいかにも不自然です。
 
「6例目の水牛農家を初発」とするために怪しげな動きが4月上旬からあったこ
とは第15回「感染はどこから?」で指摘しました。国内向けには、この段階で
「6例目の水牛農家が初発」とするわけには いかなかった(証拠がない)けれ
ども、状況がわからない OIEには「初発が少しでも早い時期だったように報告
したい」という動機が働いているように思えます。そうなると、農水省が 5月
中旬に OIEが専門家を派遣するとの提案を拒否した理由も、変わってきそうで
す。

これまでは、農水省がマーカーワクチンの本来の使い方をせず、とにかく全部
殺してしまうことを邪魔されないようにしたのではないかと推測していました
が、さらに「農水省が国内外で発表している内容が違う」ことが露呈すること
を恐れたという理由も加わることになります。

なぜ農水省は水牛農家への現地調査を敢えて避けたまま「国際的には 3月中に
口蹄疫が発生していた」ことに執着したのでしょうか?  初発の時期が早まっ
ても、4月20日に農水省が口蹄疫の発生を発表、家畜の移動制限を かけた事実
は変わらないのですから、初発の時期が早まるということは移動制限がかかる
までの期間が長くなるということであり、宮崎県で感染した家畜が県外に出荷
される機会が増えることを意味します。それでは、口蹄疫が宮崎県限定だった
ことの不自然さが増すばかりで、農水省にとっては不都合なはずです。

宮崎県をワクチン接種の実験場にすることが農水省の当初の目的ならば、感染
は宮崎限定であった方が都合がよい。それならば、農水省は初発の時期をでき
るだけ遅らせて、感染した家畜が県外に搬出された可能性をできるだけ小さく
みせかけたいはずです。しかし、農水省はその逆の対応をしたということです。

農水省はこんなにたくさんの感染情報が寄せられるとは当初想定していなかっ
たと推測されます。(第5回「わずか3日でシナリオ崩壊」GEN757)29万頭もの
規模になったから、宮崎限定を専門家も奇跡だと評するわけですが、前回2000
年のときと同程度の規模ならば、感染が宮崎限定であっても誰も疑問に思わな
かったことでしょう。だから、農水省は「初発を早めること」と「宮崎限定」
が矛盾するとは考えていなかったと思われます。

それにしても、なぜ農水省は「国際的には 3月中に口蹄疫が発生していた」こ
とにする必要があったのでしょうか? 7月に公表された「6例目の 水牛農家が
初発」という中間概要の結論は、3月にOIEに報告した内容を国内情報と一致さ
せようとしたのでしょうが、その後あっさり否定される程度のお粗末なもので
した。(第16回「農水省疫学調査チームに不信感」GEN769)

そもそも、ワクチン接種が騒動を起こした目的ならば、口蹄疫の感染が始まっ
たのが、3月26日であろうと、4月7日であろうと、どっちでも 構わないはずで
す。にも関わらず「国際的には3月中に口蹄疫が発生していた」ことに 農水省
が拘ったということは、今回の騒動には、ワクチン接種以外にも何か別の狙い
があったことをうかがわせます。

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