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[GEN 773] 宮崎口蹄疫騒動を検証する【第20回】

2010/09/10

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 773号 10年9月10日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第20回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第20回 宮崎で初めての「陰性」判定にも疑惑あり

8月27日に宮崎県が口蹄疫の終息を宣言しました。ところが その直後の9月2日、
宮崎県えびの市の畜産農家で家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)に似た症状
を示している牛がいることが判明、開催予定だった「競り市」も急遽中止とな
りました。しかし、その夜には、動物衛生研究所が「いずれも陰性」との検査
結果を発表、「競り市」も再開されました。関係者はホッと胸をなでおろした
ことでしょう。

心配したけどよかったね、という内容のニュースですが、ここにも注目点があ
ります。なにしろ、宮崎の検体はすべてクロ、他府県の検体はすべてシロとい
う極端な検査結果が続いていましたので、突然のシロ判定にも何かウラがあり
はしないかとつい疑ってしまいます。「宮崎県内で今年発症が見られた牧場で
は初めて検査結果が『陰性』だった」わけですが、「農水省の写真判定」につ
いて報道が何かを隠そうとしている形跡があります。経過が最も詳しく報じら
れていた西日本新聞(2010/09/02付)夕刊より以下全文引用します。

 口蹄疫 えびの市で疑い 牛1頭 今夜にも判明 

 宮崎県は2日、同県えびの市の乳用牛肥育農場で家畜伝染病「口蹄疫(こう
 ていえき)」の感染を否定できない牛1頭が見つかった、と発表した。この
 牛を含む5頭分の検体を同日午前、動物衛生研究所(東京)に送り、遺伝子
 検査を実施する。これを受け、県は同日から小林市と都城市で予定していた
 牛競り市を一時中止した。

 検査結果は2日夜にも判明する見込み。感染疑いが確認されれば、7月4日
 に宮崎市の肉用牛で確認されて以来、約2カ月ぶり。8月27日に「口蹄疫終
 息」を宣言し、畜産再興に向けて同月29日から県内での競りを順次再開した
 ばかりだった。

 農林水産省動物衛生課の担当者は「口蹄疫の典型的な症状は確認されていな
 い。念のため、動物衛生研究所で遺伝子検査を行う。検査の結果を見て適切
 な対応を取りたい」と語った。

 同県口蹄疫防疫対策本部によると、感染を否定できない牛が見つかった農場
 では乳牛など約400頭を飼育。牛は1日に発熱し、舌の粘膜がはがれる症状が
 見つかったが、口蹄疫の症状の水疱(すいほう)は見られない。2日は熱が
 下がる一方、舌の異常は広がり、よだれも出るようになったという。

 同県の口蹄疫は、4月20日に国内で10年ぶりに都農(つの)町で発生が確認
 されて以来、隣接する川南(かわみなみ)町など県東部で爆発的に拡大。感
 染拡大のためにワクチン接種後に殺処分した家畜を含め、県内で飼育する牛、
 豚の約4分の1に当たる約29万頭が殺処分された。えびの市でも4件発生した。

 農林水産省の篠原孝副大臣は2日の定例記者会見で、宮崎県えびの市で口蹄
 (こうてい)疫感染の可能性がある牛が見つかったことについて「牛の写真
 を見る限り、感染の可能性は低い」と述べた。(引用終わり)

農林水産省動物衛生課の担当者のコメントからは、

 (1)「写真判定」をやってみた。
 (2)その結果、感染の可能性は低いと判断した。
 (3)しかし、一応、念のため、遺伝子検査をやってみる。

ということです。ただそれだけのことですが、なぜか次の4紙は、「写真判定」
には一切触れていません。特に読売新聞は「県の家畜防疫員が判定し、農家が
PCR 検査を希望した」ことになっていて、いかにも農水省の関与を隠したいみ
たいです。 (以下引用)

 ■朝日新聞(2010年9月2日12時51分)
 県によると、えびの市の肥育農家の農場で1日、1頭の牛に舌のただれやよ
 だれ、発熱の症状が見つかり、農家がかかりつけの獣医師に連絡。同日、獣
 医師から県家畜保健衛生所に通報があったため、県が競りを中止するよう市
 場側に指導したという。県は2日、その牛と近くの牛計5頭の検体を動物衛生
 研究所海外病研究施設(東京都小平市)に送った。 

 ■時事通信(2010年9月2日(木)12:03)
 1日昼までに牛1頭に発熱や舌の裏側の粘膜がはがれているのを確認し、経過
 観察としていたが、2日早朝には舌の表側の粘膜もはがれるなど症状が治ま
 らなかったため、遺伝子検査を行うことを決めた。

 ■読売新聞((2010年9月2日12時16分)
 県の家畜防疫員が調べたところ、口蹄疫の可能性は低いと判断したが、農家
 が「念のため、検体を調べてほしい」と求めたため、2日早朝、動物衛生研
 究所に送った。

 ■宮崎日日新聞(9.3付朝刊)
 県口蹄疫防疫対策本部によると、農場は400頭を飼育する乳用牛肥育農場。1
 日、かかりつけの獣医師から通報を受けた都城家畜保健衛生所(家保)の獣
 医師が立ち入り検査し、1頭に舌の裏の潰瘍や発熱、上あごの赤い腫れなど
 口蹄疫に似た症状を確認。この際、水ほうや舌のただれなど口蹄疫の典型的
 な症状は確認されなかった。

 2日早朝、診察経験が豊富な宮崎家保の職員とともに再度農場に立ち入りし
 たところ、潰瘍が舌の表面にも広がるなど症状の進行が見られたため、症状
 のあった牛を含む5頭から検体を採取し、動物衛生研究所海外病研究施設
 (東京)に送付。遺伝子検査の結果、同日夜に陰性を確認した。(引用終わり)

一方、毎日新聞は農水省が写真判定をしたことを認めていますが、PCR 検査に
はノータッチ(宮崎県が勝手に動物衛生研究所へ検体を送った。農水省は検体
を送れとは指示していない。)だったという報道です。それにしても西日本新
聞が伝える農水省担当者のコメントが違いすぎるし、「陽性」判定も覚悟して
いるような、えびの市の課長とも意識が違いすぎます。(以下引用)

 ■毎日新聞(2010年9月2日 13時19分)
 えびの市畜産農林課の吉留伸也課長は「これまでの感染例との関連性は考え
 にくい。新たな発生との疑いもあり、念のため検査に出した。埋却地の確保
 などに備えたい」と話している。農林水産省の担当者は「写真でははっきり
 判定できなかった。念のため(県が検体を)送ったと聞いている。市場を中
 止したと聞いてびっくりしている」と話した。(引用終わり)

なぜ、こんなにも「写真判定」に農水省は関与していないかのような報道が多
いのでしょうか? ちなみに次の2紙も「写真判定」だけでは判定できなかっ
たことを認めていますが、誰が PCR検査をすると言ったのかわからないように
なっています。(以下引用)

 ■産経新聞(2010.9.2 12:16)
 県などによると、この牛は写真判定で感染疑いを確認できる明らかな症状は
 ないが、疑いが否定できないという。このため、県は動物衛生研究所(東京
 都小平市)に検体を送付。検査結果は同日夜、判明する見通し。

 ■共同通信(2010/09/02 13:28 )
 都城家畜保健衛生所に通報。早期判定のため農林水産省に症状の写真を送っ
 たが、水膨れなど口蹄疫の典型的な症状は確認できず、感染の有無を判断で
 きなかったという。(引用終わり)

PCR 検査にしろ、抗体検査にしろ、動物衛生研究所でしか検査はできず、薦田
さんの種牛のときにはっきりしましたが、農水省がOKを出さないと検査はして
もらえないのです。それなのに、農水省が PCR検査に関与していないかのよう
な報道をするのはなぜでしょうか?

それは、山田大臣が大臣就任記者会見で「写真で 100%判定が可能だ」と言っ
ていた(6月9日、第9回GEN762)ことと矛盾するからではないかと思われます。
「念のため」とはいえ、PCR 検査で確認するということは、早くも写真判定の
限界(100%ではない)を認めた ということになるからです。そのことを知ら
れたくなかったのでしょう。

恐らく、山田大臣が「100%」と言ったのは、ワクチンを 打たれた、つまり口
蹄疫ウイルスをもっていることがわかっている家畜が発症した場合の「陽性」
判定率に限った話なのです。だから 100%なのは当然で、山田大臣は体よく、
農水省の官僚に騙されていると考えられます。そのインチキ写真判定法を、ワ
クチンを打たれていない家畜にまで拡張することには土台無理があり、PCR 検
査の併用は常識的な判断だと思われます。

従って、「念のため PCR検査をする」と判断したのは山田大臣とは考えられま
せん。恐らく PCR検査を指示したのは篠原孝副大臣ではないかと思われます。
この日は、山田大臣は不在だったようで、篠原が 記者会見を 開いています。
(副大臣記者会見9月2日午後1時30分=農水省ホームページから以下引用)

 篠原副大臣「私の方からは、一つ報告がありまして、皆さん、もうご存じだ
 と思いますけれど、えびの市で、口蹄疫の疑いのある事例があることです。
 自主的に市場の方で、ちょっと競りを中止しております。今、この分は、も
 う宮崎空港は発っておりますけれど、動物衛生研究所の方に検体が送られて
 おりまして、今日の夜、夕方ではなくて夜ですね、8時か9時頃には結果が判
 明することになっております。
 写真判定というのを、ずっと、写真で見るというのを行ってきましたけれど
 も、それ見る限りでは、可能性はそんなに高くないそうですけれども、念の
 ために検査しております。以上、私からは一つだけ。あとは、ご質問をどう
 ぞ。」(引用終わり)

山田大臣の記者会見は翌3日です。(9月3日10時15分=農水省ホームページより
以下引用)

 山田大臣「昨日の件は、写真では、私も、まあ大丈夫だろうというお話だっ
 たので、「シロ」だとは思っておったのですが、念のため、PCR 検査して、
 陰性だったことを確認して、ほっとしておりますが、何日かに 1回は、未だ
 にそういう話はいろいろありまして、今のところ全て陰性ですので、『口蹄
 疫は一応終息した』と、『終息した』と、そう言っていいと思っております」
 「まあ、私ども、ほぼ写真でもって、これは大丈夫だろう、これは危ないと
 かというのは、判定できるようになっておりますので・・」(引用終わり)

山田大臣は相変わらず写真判定に自信をもっているようですが、前日の篠原副
大臣は「写真判定の信頼性は 必ずしも100%ではない」という意味の発言をし
ています。(農水省ホームページ「9月2日副大臣記者会見」より以下引用)

 記者「写真判定だと、結構、すぐ一目で分かるというふうに言われていたと
 思うのですけれども、それで、可能性が低いということですか。」
 副大臣「そうですね。今も、ちょっとその話をしてきたところなのですが、
 いろいろ起きたりしていて、間違いないというような時は、それで、すぐ殺
 処分したりしますけれど、疑いがある場合は、それをしない。まあ、可能性
 としては、非常に低いということです。」(引用終わり)

新聞各紙が、PCR 検査は農水省の指示だったことを隠したがるのは、篠原副大
臣の指示(念のため PCR検査 実施)が 農水省の官僚の意思(写真判定だけで
「陰性」だったことにしたかった?)に反するものだったことを意味している
と推測されます。「写真判定は完璧」との神話を作っておけば、農水省の思い
のままに口蹄疫の流行を作り出せることになるからでしょうか?

ところで、このときの遺伝子 検査(PCR検査)の結果は「陰性」だったという
ことで、宮崎県内の競り市はすぐに再開されました。実はこの「陰性」判定、
宮崎県で口蹄疫が疑われた牧場では初めてのことだったのですが、PCR 検査結
果にも疑念があります。というのは、宮崎県が送った検体数と、動物衛生研究
所が検査した検体数が食い違っているのです。

西日本新聞は、検体を発症牛1頭を含む5頭分と報じていますが、検体数を報じ
ているのは他に時事通信くらいで、朝日、毎日、読売、産経の中央紙と地元・
宮崎日日新聞は、送付した検体数には触れていません。宮崎県のプレスリリー
スは西日本新聞の報道の通り検体は5頭分です。(以下引用)

 ■宮崎県プレスリリース2010.9.2「乳肥素牛競り市の再開について」
 えびの市の肉用牛肥育農場において確認された口蹄疫を否定できない牛1頭
 を含む5頭から採取した5検体について、本日夜、農林水産省より全て陰性との
 連絡を受けた。(引用終わり)

ここまでなら、マスコミが「検体数を意図的に隠した」とは言えません。とこ
ろが、篠原孝農水副大臣は9月2日(木曜日)の記者会見で「検体は発症した1
頭だけ」と答えています。(農水省ホームページ「副大臣記者会見」より以下
引用)

 記者「症状が出ているのは1頭だけですか。」
 副大臣「はい、1頭だけなのです。」
 記者「ほかの同居牛とかの検体も動衛研に送ったのですか。」
 副大臣「その1頭だけ、症状ある1頭だけです。はい。」(引用終わり)

宮崎県は5検体送ったといい、農水副大臣は1検体だけ受け取ったと言う。この
食い違いはもちろん、篠原副大臣の勘違いという可能性もあります。しかし、
勘違いならホームページに掲載された時点でも訂正されないものなのでしょう
か? 新聞各紙が検体数を明記しないのもこのあたりの事情と関係があるので
しょうか? 農水省のホームページにはこの件に関するプレスリリースはあり
ませんので、篠原副大臣の記者会見だけが農水省の正式コメントと考えざるを
えません。実際に農水省の官僚は篠原副大臣に「検体は1つだけだった。」と
報告したのではないかと思われます。

なぜ、農水省の官僚は、篠原副大臣に偽りの検体数を報告したのでしょうか?
これでは、宮崎県は5頭分の検体を動物衛生研究所に送付したが、農水省はそ
の中から1頭分だけを発表したことになります。農水省がそのような対応をし
なければならないケースはいくつか考えられます。

 (1) 篠原副大臣の指示を無視して、検査しなかった。
 (写真判定と同じ結論を発表するだけだから、検査するだけ無駄。)
 (2)指示通り検査して、一部「写真判定」と異なる結果が出た。

ちなみに、山田大臣は9月3日の記者会見で「何日かに1回は、未だにそうい
う話は いろいろ ありまして(検査依頼がくるが)今のところ全て陰性ですの
で・・」と言っています。ところが、それらの結果はまったく農水省のホーム
ページでは発表されていません。

動物衛生研究所のホームページも口蹄疫については、「独立行政法人 農業・
食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所では、『口蹄疫に関する特定家畜
伝染病防疫指針』に基づき、農林水産省からの依頼を受けて口蹄疫の診断を緊
急病性鑑定として実施しています。検査結果はすべて農林水産省に報告してお
りますので、対応も含めてそちらをご覧ください。」とまったく情報を開示し
ていません。

従って、農水省はそれらの検体について、日常的に検査せずに「陰性」と発表
しているのではないかと思われてなりません。今回はたまたま、山田大臣の不
在中に、宮崎で疑い例が発生したために、篠原副大臣が「念のため」検査する
よう指示を出し、またそれが報道されてしまったということではないかと思わ
れます。

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