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[GEN ]

2010/06/24

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 758号 10年6月24日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第6回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第6回 狙い撃ちされた?スーパー種牛「忠富士」

宮崎県家畜改良事業団(高鍋町)のエース級種牛「忠富士(ただふじ)」は、
特例措置で口蹄疫の流行を避けて他のエース級種牛5頭とともに疎開していた
にも関わらず、5月20日に感染の疑いが浮上、5月22日には殺処分されてしまい
ました。種牛を失うことは畜産業の崩壊を意味し、地元宮崎だけでなく、宮崎
から子牛の提供を受けるブランド牛の地元にも動揺が広がりました。ところが
この感染発見の経緯がヘンなのです。

殺処分された「忠富士」は、働き盛りとされる7歳。5〜13歳のエース級6頭の
なかでも今年、最も多くの精液の採取が計画されていた種牛でした。そして、
「残る5頭にも感染の疑いが出ると、宮崎で子牛の生産そのものが困難になる。
宮崎の子牛を仕入れて肥育してきた各地のブランド牛の産地への影響は大きく、
高級牛肉の生産システムが変わる可能性もある」(朝日新聞 2010.5.22 19:09)
というほど、スーパー種牛の殺処分は影響が甚大です。

「本来、疑い例と同じ場所で飼育中の牛や豚はすべて処分することになってい
る」のですから、「忠富士」の感染が確認された時点で、他の5頭も殺処分に
なるところでしたが、「宮崎牛ブランドを支える種牛を守るために農林水産省
と協議の上、例外措置として、約1週間、経過観察することを決めた」(産経
ニュース 2010.5.22 8:03)とのことです。

それでも、5月16日には 県が所有する49頭の種牛も殺処分が決定されています
から、「5頭も今後発症するなどして殺処分となった場合、宮崎県は計55頭い
た種牛すべてを失うことになり、畜産王国は大きな危機を迎える」(産経ニュ
ース 2010.5.22 08:03)という非常事態です。

ところで、スーパー種牛6頭は疎開先でどのように肥育されていたのでしょう
か?

「農林水産省と同県によると、忠富士を含む6頭は同じ牛舎にいたが、それぞ
れ約2メートルの間隔をあけたうえ、高さ約3メートルの板で壁をつくって隔
離していた。管理する担当者は1頭につき1人に限定させていた。」しかも、
「(疎開先の)同県西都市の畜舎は周囲にほとんど農場がない環境」(朝日新
聞 2010.5.22 19:09)ですので、疎開後に感染したとは考えらず、「忠富士
は事業団にいる間に感染した疑いが強いとみられている。」(朝日新聞同上)
とのことです。

さて、「忠富士」の感染はどのような経緯で発見されたのでしょうか? 主要
紙を比較してみます。

 「宮崎県産の種牛1頭が口蹄疫(こうていえき)に感染した問題で、感染した
 種牛によだれなどの口蹄疫特有の症状が出ていることが22日、分かった。」
 「同省などによると、感染が判明したのは「忠富士(ただふじ)」という7歳
 の種牛。動物衛生研究所(東京都)で行った4回の遺伝子検査で、直近の19、
 20日に採取した検体に陽性反応が出た」(読売新聞 2010年5月22日14時22分)

 「忠富士については、19日に採取した検体での遺伝子検査で陽性が出たが、
 発熱や口内のただれなどの症状が見られないとして、翌20日に再度検査を実
 施。再び陽性となった。現在も目立った症状はないが、食欲がないという」
 (朝日新聞2010年5月22日19時9分)

 「関係者によると、感染が疑われるのは「忠富士」。県は6頭の経過観察と
 して15〜20日、計4回にわたり検体を採取し、動物衛生研究所海外病研究施
 設(東京)が遺伝子検査していた。今回、陽性反応が確認されたのは20日に
 採取した検体だという」(宮崎日日新聞 2010年5月22日0:55)

 症状に関する記載ナシ 毎日新聞、産経新聞、共同通信

「忠富士」に口蹄疫の症状があったと報道しているのは読売新聞で、逆に朝日
新聞は「症状が見られない」と言っています。どちらがホントかは断定できま
せんが、宮崎日日新聞に よれば、発見の きっかけは「6頭の経過観察として
(疎開後の)15〜20日、計4回にわたり 検体を採取し」との ことですから、
「忠富士」には症状は出ていなかったのではないかと見られます。しかしなが
ら、疎開後連日マークされて検査を受けた結果、ついに22日未明に「陽性」と
の結果が出たということのようです。

「忠富士」が経過観察されていたいきさつは次の通りです。(5月16日 西日本
新聞より以下引用)

 宮崎県で家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の被害が拡大している問題
 で、県は16日未明、宮崎牛をはじめブランド牛の種牛などを飼育している県
 家畜改良事業団(高鍋町)の施設で、感染した疑いのある牛が見つかったと
 発表した。種牛49頭、肥育牛259頭の計308頭を処分する。先に特例で避難さ
 せた6頭の種牛は厳重な監視の下で経過観察する方針。県はこれまで、家畜
 伝染病予防法に基づく国の指針に沿って、同じ施設で飼育してきた牛や豚は
 すべて処分してきており異例の対応となる。(引用終わり)

農水省、宮崎県のプレスリリース(下記に引用)にも症状に関する記述があり
ませんから、やはり、「忠富士」に症状はなかったと考えられます。

しかし、症状だけでなく、検査内容も報道は一致していません。中央のマスコ
ミは毎日新聞を除いて、「19日と20日の検体両方で陽性」と伝えていますが、
地元紙は20日の検体だけ「陽性」とのことです。情報が混乱している原因は何
でしょうか? 農水省と宮崎県のプレスリリースを以下に併記します。(以下引
用)

 農水省(5月22日プレスリリース 171例目)
 確認場所=西都市尾八重、 飼育頭数=6頭(種雄牛6頭)、 陽性=1頭
 ・5月13日、高鍋町の宮崎県家畜改良事業団から現地に移動。現在、経過観
  察中。
 ・19日、及び20日に、検体を動物衛生研究所へ送付。

 宮崎県(5月22日プレスリリース 171例目)
 西都市尾八重尾八重牧場  黒毛和種 種雄牛 1頭「忠富士」
 5月13日家畜改良事業団より尾八重牧場へ移動
 ・家畜改良事業団の発生を受け、5月15日より経過観察となり、
 17日、19日、20日に検体を採取
 ・検体を動物衛生研究所 海外病研究施設へ送付
 ・19日及び20日に採取した検体において陽性が確認された。
 ※PCR検査結果=1/1 (1頭)
                           (引用終わり)

農水省の発表では19日と20日に検体を送付(計2回)となっているだけで、ど
ちらの検体が陽性だったのかははっきりしません。一方、宮崎県の発表では、
検体採取は3度で、19日と20日の検体で両方とも陽性だったとなっています。
マスコミが一致して報道している「検査は4回」とはどちらも異なります。し
かし、宮崎県が「2度陽性だった」と発表したのに、地元紙・宮崎日日新聞は
なぜ「今回、陽性反応が確認されたのは20日に採取した検体」、つまり陽性は
1度だったと報じたのでしょうか?

問題は※印の部分です。宮崎県は発表の際、PCR検査結果を、「陽性数/送
付した検体数」で、表記しています。「忠富士」の前後では次の発表例があり
ます。(以下引用)

 (83例目=5月13日発表)
 えびの市大字島内 母牛24頭 育成牛3頭 子牛19頭(計46頭)
 流涎や舌の水疱等を確認し、3頭から4検体を採材、
 PCR検査結果=4/4(3頭)

 (215例目=5月26日発表)
 児湯郡川南町、肥育豚 80頭
 鼻の水疱、蹄部の潰瘍等を確認し、3頭から4検体を採材、
 PCR検査結果=4/4(3頭)   (引用終わり)

これらの例からいけば、「忠富士」の場合は4度検査を受けたのならば、「P
CR検査結果=2/4(1頭)」でなければなりません。なぜ、「PCR検査
結果=1/1(1頭)」なのでしょう? これでは、1回しか検査が行なわれ
ていなかったことを意味します。地元・宮崎日日新聞はこのことを報じたもの
と考えられます。

農水省と宮崎県のプレスリリース双方に表記ミスはなかったとの前提で考える
と、考えられる検査内容は次の場合のみです。

宮崎県は、「忠富士」から17、19、20日の3回検体を採取、東京の動物衛生研
究所へ送付した。ところが、動物衛生研究所は20日の検体だけを検査にかけて、
22日に「陽性」だと発表した。(宮崎県は口頭で19日分も陽性だったと聞かさ
れた。しかし、添付されたPCR検査結果の資料は1検体分だけだった。)

ただし、その場合でも大問題があります。「PCR検査結果=1/1(1頭)」
ということは、「忠富士」といっしょに避難していた他のエース級種牛につい
ては目視による経過観察のみで、検体をとられていなかったということになる
からです。つまり、「忠富士」だけが狙い撃ちされていたというわけです。

どのエース級種牛にも症状も出ていないのに、宮崎県側から「忠富士」だけの
検査を願い出るということは考えられません。動物衛生研究所から指示された
から、検体を差し出したのでしょう。この場合でも、動物衛生研究所からは、
抜き取り調査の名目で「どれか1頭の検体を送付せよ」というような指示では
なく、「忠富士」を指名してきたと考えられます。というのも、「忠富士」は
宮崎の畜産界にとって、エース級種牛の中でも別格の存在だからです。(以下
引用)

 「遺伝子検査で陽性となった「忠富士(ただふじ)」は、働き盛りとされる
 7歳。5〜13歳のエース級6頭のなかでも今年、最も多くの精液の採取が計画
 されていた種牛だ。」(朝日新聞 2010年5月22日19時9分)

 「6頭は県家畜改良事業団(高鍋町)が県内一円に供給している和牛の人工
 授精用精液ストローの9割を占める本県和牛ブランドの屋台骨。」(宮崎日
 日新聞2010年5月22日)

なぜ、その「忠富士」が標的になったのでしょうか? まさにこの時期、宮崎
口蹄疫騒動の企画者と思われる農水省の「牛豚等疾病小委員会」と宮崎県との
間でワクチン接種をめぐって一大闘争が起きていました。

 「宮崎県で猛威をふるう口蹄疫(こうていえき)について、今後の防疫対策
 などを審議する農林水産省の専門家委員会が18日開かれ、感染していない家
 畜に対し「ワクチンの使用を検討すべき時期に来たと考えられる」と提言し
 た。農水省はワクチンを使用する方向で検討に入った」(5月19日毎日新聞)

これに対し、「口蹄疫問題で、宮崎県内の9市町の首長が20日、山田正彦・農
林水産副大臣と面会し、農家への説明が不十分だとして、現時点では殺処分を
前提としたワクチン接種に同意できないと伝えた」(5月21日 1時30分配信 読
売新聞)というのです。

「農林水産省の専門家委員会」とは、「牛豚等疾病小委員会」のことと思われ
ます。

「委員会は非公開で開催され、終了後に寺門誠致(のぶゆき)委員長代理らが
記者会見した。」(5月19日 毎日新聞)との ことですが、寺門 誠致は 第4回
(GEN756)で紹介した ように、本来の肩書きは「共立製薬(株)取締役先
端技術開発センター長」であり、ワクチン供給側の人物です。

一連の流れをみていくと、宮崎の首長たちが共同して、国の方針(ワクチン接
種)に反旗を翻したとたんに、地元畜産業界の希望の星である「忠富士」の検
体を要求され、あやふやな検査報告の末に殺処分されてしまったという経過を
たどっているわけです。まるで、「忠富士」は、地方の反乱鎮圧のために中央
政府から血祭りにあげられたのではないかとの印象を受けてしまいます。「忠
富士」を失った宮崎の畜産農家はその後次々に落城、「ワクチン接種の後、殺
処分」との国の方針に従っていくことになりました。

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