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[GEN 757] 宮崎口蹄疫騒動を検証する【第5回】

2010/06/18

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 757号 10年6月18日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第5回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第5回 わずか3日でシナリオ崩壊?

「口蹄疫発生」発表からわずか3日、予想外に次々と舞い込む検査依頼で早く
も動物衛生研究所は自ら仕掛けた口蹄疫騒動をコントロールできなくなってい
たと思われます。さらに追い討ちをかけたのが、パニックに陥った現場の暴走
です。前回、この騒動は「農水省と専門家委員会が画策」と書きましたが、今
回の検証で、PCR検査を行なっている「動物衛生研究所と専門家委員会が主導」
に変更したいと思います。

最初に「口蹄疫」の疑いをかけられた水牛が「患畜」と判定された経緯は次の
通りです。

 4月20日早朝に動物衛生研究所のPCR検査で「陽性」→「疑似患畜」と診断
 4月23日に同所のエライザ検査でO型と判定→「患畜」と確定
 5月2日にO/JPN/2010と確定(※)

※「動物衛生研究所が実施したウイルス遺伝子の解析データを同研究所及び英
 国家畜衛生研究所(英国、パーブライト)が分析しました。この結果、当該
 ウイルスが アジア地域で確認されている 口蹄疫ウイルスと近縁のウイルス
 (O/JPN/2010)であることが確認されました」(2010年5月2日 農水省プレスリ
 リース)

この例から、農水省は当初、ウイルスの型が特定できるかどうかで「疑似患畜」
と「患畜」を区別するという考え方だったようです。しかし、そんな区別は国
際標準や2000年の宮崎口蹄疫騒動をもちだすまでもなく、言葉の意味からして
もおかしいと言わざるをえません。「疑似」とは、「本物によく似ていてまぎ
らわしいこと」(大辞泉)ですから、「疑似患畜」とは、

(1)症状が口蹄疫によく似ているが、感染が確認できない。
(2)口蹄疫ウイルスが検出されたが、症状がみられない。
(3)過去に感染した形跡があるが、ウイルスが検出されず症状もみられない。

のいずれかであるはずです。ウイルスの型が特定できるかどうかは関係ありま
せん。

国際標準の判定方法では、言葉の意味通りの区分になります。口蹄疫の症状が
見られることが前提ですが、PCR 検査ならびにエライザ検査、抗体検査で「陽
性」ならば、口蹄疫ウイルスに現在感染していることになるので「患畜」。一
方、症状がなく、抗体検査だけが陽性ならば、過去に感染したことがあるもの
の、検査時にはウイルスは検出されなかったということになりますが、ウイル
スを放出する可能性があるということで、「疑似患畜」とするという考え方で
す。(第2回、第4回)

農水省の判定基準が このように国際標準から 外れたのは、捏造の疑いがある
2000年の北海道口蹄疫騒動がきっかけでした。ところで、今年、宮崎県川南町
で見つかったとされる2例目、3例目(ともに 4月21日)、4例目(4月22日)の「疑
似患畜」に関する農水省のプレスリリースでは、「現在、ウイルス分離による
確定診断を実施しており、ウイルスが分離されれば、家畜伝染病予防法に基づ
く患畜となります。」と説明されています。従って、ウイルスが分離されて、
その型が特定されれば「患畜」、分離できなければ「疑似患畜」という北海道
での騒動時に突然持ち出された区別が、今回は最初から 4例目まで踏襲されて
いることになります。

ところが、この農水省方針は、早くも4月23日には消滅しています。4例目を最
後に、5例目、6例目の「陽性」確認を伝えるプレスリリース以降、「ウイルス
分離による確定診断」に関する説明が一切なくなりました。「確定診断」は、
農水省の判定基準からいえば「患畜」と「疑似患畜」を分ける重要な作業のは
ずです。

農水省が最初から、「確定診断」は途中で放棄する予定だったのか、あるいは
想定外の検査依頼の多さに対応が追いつかず、「確定診断」まで手がまわらな
くなったのでしょうか?

「確定診断」を途中で放棄した理由を農水省と宮崎県の発表から探ってみます。
すると、農水省の発表は、「?」だらけであることがわかりました。まず、15
例目までの発症家畜数と PCR 検査での「陽性」数を列挙します。

1〜15例目(※PCR「陽性」頭数/発症頭数)

      農水省発表  宮崎県発表    備考(発表日、農場所在地)

 1例目  ?/?     ?/?     (4/20 都農町)異常は3頭
 2例目  ?/?     ?/6     (4/20 都農町)
 3例目  3/3(検体) ?/4(検体=頭)(4/21 川南町)
 4例目  2/3(検体) 2/3(検体=頭)(4/22 川南町)
 5例目  1/?     1/3     (4/23 川南町)
 6例目  1/?     1/8(検体) (4/23 都農町)
 ※疫学調査のため、発症家畜はナシ。4/22に任意の血液採取5体、3/31 にス
 ワブ(のどの粘膜)採取3体。陽性は3/31採取のスワブ1体より。
 7例目  4/?     4/5     (4/25 川南町)
 8例目  5/?     5/5     (4/28 川南町)
 9例目  4/?     複数/9    (4/28 えびの市)
●10例目  5/?     5/5     (4/28 川南町)
 11例目  2/?     2/4     (4/29 川南町)
 (※3検体/5検体)
●12例目  4/?     4/4     (4/30 川南町)
 13例目  1/?     1/2     (5/1 川南町)

一見して、農水省発表資料の「?」の多さにビックリです。3, 4例目を除いて、
検査数が不明なのです。そして、宮崎県発表でも、3 例目までいくつの検体が
PCR検査で陽性だったのかが明記されていないのもヘンです。これは、2例目ま
で動物衛生研究所が農水省に対しても、宮崎県に対しても、検査数、陽性数の
両方を報告していない(つまり、検査の内容を明らかにしていない)ことを意
味し、3例目からはやっと、陽性数だけは報告するように なったものの、相変
わらず検体数はどちらにも報告しなかったことによると推測されます。宮崎県
のプレスリリースに検体数があるのは、動物衛生研究所に検体を送った数を公
表しているためであって、動物衛生研究所が宮崎県だけに検体数を報告してい
るというわけではありません。

私は動物衛生研究所では PCR検査そのものが行なわれていないのではないかと
疑っていますが、この報告状況からは、その疑惑は払拭されていないばかりか、
ますます疑惑が深まったと言わざるをえません。

動物衛生研究所では3例目から検査内容を報告しようと した形跡があります。
しかし、3例目でさっそく、報告した検査数と、宮崎県が送付した 検体数が合
わないというドジを踏んでしまったために、早くも4例目までで、検査数を報
告することを止めてしまったと推測されます。ところが、検査数の報告だけ止
めるつもりが、「ウイルス分離による確定診断」まで止めてしまったところに、
舞台裏のドタバタぶりが垣間見えるようです。

家畜伝染病予防法では、「患畜」も「疑似患畜」も区別なく殺処分の対象です
から、動物衛生研究所は区別する必要はない(「ウイルス分離による確定診断」
をしなくてもよい)と考えていたのかもしれません。しかし、「確定診断」を
放棄するということは、どんなウイルスがどのように分布しているかが把握で
きないことを意味します。つまり、感染源や感染ルートがまったくわからない
という事態に陥るということには気がつかなかったのでしょうか?

そのため、感染ルートを捏造しようといた痕跡が次の記事です。(2010年 6月
7日21時25分  読売新聞より以下引用)

 宮崎県の口蹄疫(こうていえき)問題で、農林水産省の口蹄疫疫学調査チーム
 (チーム長=津田知幸・動物衛生研究所企画管理部長)は7日、川南町の発
 生農場と、えびの市で発生した1例目の農場で同じトラックが使われていた
 ことを明らかにし、同町からえびの市に感染が広がった可能性を示唆した。

 発表によると、川南町川南で4月24日に発生した農場と、えびの市島内で4
 月27日に発生した農場。二つの農場は同じ会社が運営しているという。津田
 部長は「二つの農場では、飼料の運搬車、動物を出荷するときの車両が同じ
 だった。時期的にもそこが一番疑われるので調査した」と説明している。こ
 れらの車両は、口蹄疫が発生した4月20日以前に何度も両農場で使われてい
 たという。

 ただ、川南町の農場の牛を、えびの市の農場に移したかどうかは確認されて
 いない。(引用終わり)

この記事をみると、読売新聞の記者が、「えびの市の感染源はトラック」とす
る口蹄疫疫学調査チームの見解に疑問をもち、「経営者が、川南町の牛を、感
染を知らずにえびの市に移動させた可能性はないのか?」と質問したであろう、
記者会見の様子が想像されます。経営者が家畜の一部を自分の別の農場に移動
させるということはいかにもありそうな状況ですが、調査チームはまったく想
定していなかったようで、「確認しておりません…。」としか答えられなかっ
たのでしょう。

ウィキペディア「疫学」によれば、「疫学とは生物集団における病気の流行状
態を研究する学問」がある。すなわち、ある一時点/一期間での、ある 一集団
において、ある特定の病気が流行した場合、その流行の原因を調べ、その原因
を除去することにより流行そのものを制御(終熄、予防)するための学問であ
る。」とあります。

農水省から派遣された疫学調査チームが、川南町の農場の牛を、えびの市の農
場に移したかどうかも確認していないとすれば、「疫学調査」はほとんど行な
われていないと推測せざるをえません。発症した家畜だけしか検査せず、しか
もウイルスの型も特定せず、周辺農場の立入調査をした様子もなく、それで疫
学調査をやろうというところにもともと無理があります。

同チームのリーダー・津田知幸は 今回の口蹄疫騒動を コントロールしている
(はずの)(独)動物衛生研究所・企画管理部長であり、かつ、口蹄疫判定権を
もつ、牛豚等疾病小委員会のメンバーでもあります。(第4回=GEN756)つ
まり、この騒動のキーマンの一人なのです。官製パニックの辻褄あわせのため
の調査だったのでしょうが、却って墓穴を掘った格好です。

ところで、6例目では、このあたりで騒動を打ち止めにしようと したのではな
いかと思わる形跡があります。(宮崎県4月23日プレスリリースより以下引用)

 平成22年4月22日、1例目の飼料関係の疫学関連農場として、立入調査を実施。

 調査の過程で、農場主からこれまでの臨床症状の聞き取りをもとに血液 5検
 体を採取すると共に、別の検査で3月31日に採取していた検体、スワブ3検体
 と併せて計8検体を動物衛生研究所 海外病 研究施設(東京都小平市)に送
 付した。

 4月23日夕刻、農林水産省からPCR検査(遺伝子検査)でスワブ3検体中1検体
 (1頭分)で陽性との連絡を受け、疑似患畜と決定した。(引用終わり)

この農場では、4月22日時点で家畜の異常はなく、採取サンプルも すべて「陰
性」でした。しかし、相変わらず、動物衛生研究所は検体数を報告していませ
んから、検査が行なわれたかどうかは不明です。ここで、宮崎からの検体送付
が一段落すれば、騒動はここで打ち止めの予定だったのではないかと思われま
す。ところが、パニックになった現場からは次々に検体が送られてきて、騒動
を打ち止めにできなかったと見られます。

想定以上のパニックの中、9例目でも、宮崎県から送付された検体数が わから
なくなったのでしょうか? 農水省には「陽性4」と報告しておきながら、宮崎
県には4月28日早朝、「PCR検査(遺伝子検査)で複数検体で陽性」とあいまい
な報告をしています。(4月28日宮崎県プレスリリース)

このとき、動物衛生研究所では緊急事態が起きていました。4月27日午前10時、
宮崎県畜産試験場川南支場では、当該施設の職員が飼養豚に鼻の水疱や口腔内
のび爛等口蹄疫様症状が確認されました。そして、5頭から採取した検査材料
5検体を動物衛生研究所 海外病研究施設(東京都小平市)に送付したのです
が、同畜産試験場ではその検査結果を待たずに、「症状を確認後、飼養豚全頭
の自主淘汰の実施を決定」、殺処分を始めてしまったのです。

「口蹄疫」判定の最終決定権をもつと考えていた動物衛生研究所は、このとき、
パニックになった現場をコントロールできなくなったことを知ったのではない
かと思われます。最初から PCR検査をやっていなかったとすると、殺処分を始
めた後に、「検査結果は陰性でした。」などと発表できるはずがありません。

口蹄疫でなくても、口蹄疫によく似た症状があることは知られていましたので、
これが官製パニックでなかったとしたら、動物衛生研究所は現場に検査結果を
待てと指示したのではないかと思われます。しかし、パニックになった現場を
沈静化させるような指示はなく、検査結果を待たずに殺処分はその後も続きま
した。
 
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