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[GEN 755] 宮崎口蹄疫騒動を検証する【第3回】

2010/06/08

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 755号 10年6月8日
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         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第3回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する                原田 和明

第3回 偽装工作のルーツ

2000年(平成12年)に「口蹄疫の患畜」と診断された牛は宮崎でも北海道でも
症状はまったく見られませんでした。当時の診断根拠をたどっていくと、この
ときの騒動は、宮崎県の場合が誤診、その 1か月後に見つかった北海道の場合
は、宮崎での誤診を隠すための捏造の疑いがあります。そして、北海道での捏
造の手口が今回の騒動と同一であり、今度の官製パニックの原型が10年前の北
海道にあったと推測されます。

2000年に宮崎で「口蹄疫の患畜」と診断された牛について、動物衛生研究所九
州支所 臨床ウイルス研究室長である津田知幸は「わが国に発生した口蹄疫の
特徴と防疫の問題点」の中で、次のように報告しています。(以下引用)

 「宮崎県で最初に発生した口蹄疫は、従来の口蹄疫についての概念からも、
 近年アジア諸国で発生が認められていた口蹄疫とも大きく異なるものであっ
 た。臨床的には歯齦および鼻腔のびらんが認められ、一部の牛で舌下面にも
 小さなびらんが認められたものの、これらの部位に水疱形成は確認されてお
 らず,蹄部での病変形成は全く認められなかった。」(引用終わり)

従って、2000年に宮崎県で発生したとされる口蹄疫はウイルスが検出されてい
ない上に、症状も口蹄疫とはまったく異なることから、事実誤認(誤診)だっ
た可能性が高いといわざるをえません。

家畜衛生試験所(「家畜衛試」と略す。2001年より動物衛生研究所と改称)は、
家畜衛試ニュースで検査結果を改ざんしていることから、宮崎で「口蹄疫発生」
を宣言してしまったことは事実誤認だったことをその後まもなく認識したもの
と思われます。しかし、農家の保護よりも組織防衛を優先、「口蹄疫ではなか
った」と訂正の発表をすることをせず、隠蔽工作に走ったと考えられます。

このとき、家畜衛試が行ないそうな隠蔽工作は2つあります。宮崎での検査結
果を偽装すること、もうひとつは、新たな口蹄疫発生箇所を捏造して、なぜ宮
崎だけ?との不自然さを解消することです。「検査結果の偽装」は前回説明し
た通り、家畜衛試ニュースでエライザ検査とPCR検査を「陽性」と書き換え
たことがわかっています。

そして、「新たな口蹄疫発生箇所」に指名されたのは北海道本別町でした。北
海道で口蹄疫 発見の経緯は「家畜衛試ニュース(2000年)No.103 P2〜7」に
よると次の通りです。(以下引用)

 「一方、宮崎県の調査と並行して全国の疫学関連農家(宮崎県からの導入牛
 のいる農家、中国産輸入粗飼料を用いている農家など)について同様な調査
 が行われた。その結果、北海道本別町のD農場が農場隔離検査プログラムの
 対象となり、5月11日には抗体陽性牛2頭のプロバング材料から RT-PCR で
 O/JPN/2000株と同じ塩基配列を有する遺伝子断片を検出した。」(引用終わ
 り)

北海道の事例が捏造であることは、宮崎県の場合と同じ4つの検査を行なわず、
わずかにPCR検査だけ(しかも1回だけ)しかしていないという診断手順の
あからさまな手抜きが証拠です。こんな手抜きをすればバレてしまうではない
かと思われますが、相互に矛盾しないデータを複数捏造するのはけっこう大変
なのでしょう。ちなみに、北海道で「患畜」とされた牛も2頭ともまったく発
症はしていませんでしたし、その後感染ルートも感染源も未解明のままです。
(2000.11.15衆院・農林水産委員会 山口わか子発言)

こうしてみると、今、宮崎県で発生している「口蹄疫騒動」の原型(PCR検
査だけで口蹄疫と断定)が、この北海道の捏造事案で生まれていたことがわか
ります。ただし、2000年の北海道と2010年の宮崎とで、異なる点もあります。
2000年には「RT-PCRでO/JPN/2000株と同じ塩基配列を有する遺伝子断片を検出
した。」(家畜衛試ニュース 2000年No.103)とあるように、PCR検査でウ
イルスの型が特定されているにも関わらず、2010年では、PCR検査で一件も
ウイルスの型が特定されていません。o型と唯一判定された最初の牛も「エラ
イザ検査」の結果で、PCR検査ではありませんでした。このことは、今年の
騒動ではPCR検査さえ行なわれていないのではないか?と私が考えている根
拠となっています。

もうひとつの相違点は、2000年のときは、PCR検査「陽性」だけで、当該牛
は「患畜」と診断されていることです。(200.5.18参院・農林水産委員会)そ
れに対し、今年の宮崎では同じPCR検査「陽性」でも「疑似患畜」との診断
ですから、一貫性がありません。

それにしても、「患畜」とされた牛の飼い主はとんだとばっちりを受けたもの
です。たまたま指名されてしまった北海道の農場では2頭が患畜、同居牛703頭
が疑似患畜とされ、家畜衛試の判定ミスの尻拭いをさせられ、あわれにもすべ
て殺処分されてしまいました。しかも、この当時は殺処分、埋却費用がすべて
農家の負担でした。(2000.11.15衆院・農林水産委員会 山口わか子発言)

農水省も少しは申し訳ないとの気持ちがあったのでしょうか? 家畜伝染病予
防法改正案では、殺処分は家畜防疫員が担当、埋却費用も国が負担するように
改められました。(2000.11.15衆院・農林水産委員会)ただし、「口蹄疫」を
診断するための検査方法についての取り決めはなく、家畜伝染病予防法第5条
((監視伝染病の発生の状況等を把握するための検査等)に、「都道府県知事
が農林水産省令で定める手続に従い、実施10日前までに公示する」とあるだけ
です。

ところで、家畜衛試が偽装工作を繰り返している間に、新たなビジネスが立ち
上がろうとしていました。口蹄疫ワクチンの国家備蓄です。農水省はワクチン
接種には否定的ながら、備蓄は推進するという立場だったようです。家畜伝染
病の騒動のたびに、国会議員は「ワクチンを打て」と要求、それに対し、農水
省は「ワクチン接種には問題あり」と拒否するというやりとりが続いています
が、いつのまにか備蓄量が急増しています。

農林水産省畜産局長・樋口久俊「農家の皆さんは、万一発生した場合の影響が
心配だからワクチンを打つというお話がございますけれども、その反対側に、
我慢をしないといけないことがあるわけでございます。一つは経済的負担でご
ざいます。これは、ワクチンを打つことによりまして、毎年毎年四十億円の負
担をすることになるわけでございます。それから、国際的には、使用していな
い国、つまり、清浄国に対して輸入制限を主張できないということがあるわけ
でございます。(中略)ワクチンを使用しないでできるだけ蔓延を食いとめた
いという形で私どもが努力しているということも、ひとつ御理解をちょうだい
したいと思います。」(2000.5.10衆院・農林水産委員会)

樋口久俊はワクチンに否定的な立場かと思っていたら、その翌週の 2000年5月
18日の参院・農林水産委員会で、ワクチンは極力使わないことが前提としなが
らも、400万ドーズ(400万頭分)の口蹄疫ワクチンをオランダ、ドイツ、フラ
ンスに発注したことを公表しています。400 万頭というのは、当時九州地区で
飼育されていた牛、豚の総数で、それ以前にも20万頭分の口蹄疫ワクチンを備
蓄していたことを認めています。

口蹄疫ワクチンの備蓄が 始まったのは、平成9年(1997年)に台湾で口蹄疫騒
動があってからで、このとき緊急輸入したのが始まりでした。(2000.5.22 参
院・行政監視委員会)

この時期には、脳梗塞で意識不明のまま入院中の小渕恵三(前首相)が 5月14
日に順天堂病院で亡くなっています。小渕内閣に続き森喜郎内閣でも、膨大な
補正予算が組まれましたから、使わないワクチンの大量購入といった無駄遣い
はやりやすかったかもしれません。2000年の口蹄疫の型が「O/JPN/2000」と命
名されていることから、このとき大量発注されたワクチンはO型だったのでは
ないかと推測されますが、「O/JPN/2000」の名称からわかるように、宮崎のウ
イルスは 2000年に日本(JPN)で発見された「新型」のはずです。従来のワクチ
ンで効果があるのでしょうか?

口蹄疫ウイルスには7つのタイプ(O,A,C,Sat-1, Sat-2,Sat-3, Asia-1)
があり、これら7つのタイプはさらに65以上のサブタイプに分けられています。
ウイルスに複数の型があるのはインフルエンザと同じです。昨年の豚インフル
エンザでは「新型」は従来の「季節性ワクチン」では効かないと言われていま
した。口蹄疫でもワクチンの問題点は共通のようです。(以下引用)

 「現在のワクチンには次のようないくつかの問題があります。口蹄疫ウイル
 スには7つの血清型があり、さらに多くのサブタイプがあるため、ワクチン
 は流行株に適合しなければ効果がありません。時折、これまでのワクチンが
 効果を示さない新しいタイプのウイルスが出現することがあります。流行株
 に合致しないとワクチン効果が期待できない点はインフルエンザの場合と同
 様です。」(山内一也「霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第116回)
 4/24/01」日本獣医師会ホームページ)

効果を確認しないままに、400 万ドーズも発注してしまうとは驚きです。もと
もと使う気がなければ、効こうが効くまいが関心はないでしょうし、そもそも
口蹄疫が発生していなかったならば、すべては虚構なわけですからどうでもい
いことではありましょう。「新型インフルエンザワクチン」は保存期間 3年と
されていましたが、口蹄疫ワクチンの保存可能期間はどのくらいなのでしょう
か? 2010年の騒動で国内では初めて「ワクチン接種」が実行されましたが、
実施前の備蓄量は70万ドーズと公表されています。これまで一体どれほどの口
蹄疫ワクチンが捨てられてきたことでしょう。

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