[GEN 724] 豚インフルエンザ報道を検証する【第13回】
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世界の環境ホットニュース[GEN] 724号 09年08月21日
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豚インフルエンザ報道を検証する(第13回)
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第13回 インフルエンザワクチンビジネス
6千人規模の臨床実験は 様々な課題を抱えたまま、専門家会議で簡単に承認さ
れ、実行に移されました。その効果、副作用はどのようなものだったのでしょ
うか?
豚インフルエンザ騒動がもちあがる直前の今年4月6日、厚労省はプレパンデミ
ック(大流行前)ワクチン(こちらはトリインフルエンザ)の効果や安全性に
関する大規模臨床研究の結果を発表しました。(2009.4.16日経ネット)
厚生労働省研究班(研究代表者=庵原俊昭・国立病院機構三重病院長)の発表
によると、「1種類のワクチンを接種した場合と比べ、1種類目と間隔を置いて
別の種類のワクチンを接種(追加接種)した場合に幅広いタイプのウイルスへ
の免疫が得られることが分かった」というのですが、これって、「1種類目(=
プレパンデミックワクチン)の効果が小さかったので、他のワクチンも接種し
てみた。すると、そちらは効果があった」との結論のようなのですが・・・。
それを「新型インフルワクチン、追加接種で幅広い免疫効果」(2009.4.16 日
経ネット)というタイトルで紹介するのはひどすぎませんか?
そもそも、有効期限切れ直前のワクチンを使っているのですから、「原液のワ
クチンは劣化をしていき、三年で多分効能がなくなるだろうと言われています」
(2007.2.5 参院予算委員会)ということからしても、効果がないか、あっても
小さいことは最初から予想がつきます。
ワクチンの効果が小さかったことを裏付ける証言があります。医学書院2812号
(2009.1.15)には、「新型インフルエンザ発生前の プレパンデミックワクチ
ン接種は妥当か? 1976年の豚型インフルエンザ騒動に学ぶ 」と題して、西村
秀一氏(国立病院機構仙台医療センター 臨床研究部病因研究室長・ウイルス
センター長)のインタビュー記事が掲載されています。
西村氏は2008年7月に、プレパンデミックワクチン接種の 推進派と慎重派、両
者を演者として招聘したプレパンデミックワクチンをテーマとしたシンポジウ
ムを企画しています。(第11回 GEN722)会員には「近々パンデミックが起き
る蓋然性はどれほどか」「H5型がパンデミックとなった場合,どれだけの致死
率が予想されるか」などについて、その場で答えてもらったとのことですが、
専門家の回答でさえも、非常にぶれていたそうです。このようなことはマスコ
ミが報道していませんので、一般国民はワクチン接種に関して専門家でも意見
が割れているという現状をまったく知りません。さて、記事中、西村氏の発言
に、実験中のプレパンデミックワクチンの効果に関する記述があります。(以
下引用)
――国産のプレパンデミックワクチンの有効性についてはいかがでしょう。
西村 これも疑問符がつきます。治験で接種した人のデータを見る限り,HI
抗体価は十分に上がっていません。通常のワクチンでは,HI抗体価40倍とい
う値が「効果あり」と みなされる下限ですが,国産ワクチンの HI抗体価は
15.9倍で,まったく基準に達していません。中和抗体価は確かに上がってい
ますが,上がった人が何%いたという話のみで,それがワクチンの有効性を
担保できる程度のものかどうかは十分に検討されていない。欧米のワクチン
と比べると,現段階の国産ワクチンの性能は明らかに劣ります。
――ただ一方で,「多少なりとも抗体価が上がるなら,接種して悪いことは
何もない」という考え方もできます。現在の治験段階では,大きな副作用も
報告されていません。
西村 現在は数千人規模の治験ですが,接種対象者が何千万人ということに
なると,重大な副作用が出てくる可能性は否定できません。
もしH5N1が本当に新型インフルエンザの流行を引き起こし,WHOのフェー
ズ5〜6の段階に達したならば,メリットとデメリットの比較の問題になり,
副作用の出現もある程度は許容されるかもしれません。しかし,新型インフ
ルエンザが発生していないこの段階で副作用あるいは副作用“もどき”が起
きたら,ワクチンに対する信頼が一気に失墜し,伝家の宝刀として備蓄され
ているプレパンデミックワクチンが,肝心なときに使えなくなってしまう恐
れがあります。
――海外で,日本のようにワクチンの事前接種を検討している国はあるので
しょうか。
西村 私が知る限りでは,備蓄はするにしても,フェーズ3 の現時点での接
種を検討している国はありません。諸外国は,奇異な目で日本の動向を見て
いることでしょう。(引用終わり)
副作用についても、途中経過ですが、8人が 発熱などで入院したと発表されて
います。厚労省はこれがワクチンの副作用によるものかどうか判定するために、
追加調査に乗り出す方針を決めた。(2008.12.18日本経済新聞 朝刊)「研究
班によると、調査するのは、8月からの 臨床研究に参加した医療従事者と同じ
医療機関の職員で接種を受けなかった人の入院頻度。接種を受けた人の入院頻
度と比較する。」ということですが、比較するための対照群を準備していなか
ったということを告白しているのと同じです。そんな杜撰な実験だったという
ことになります。
なお、繰り返しになりますが、これまでの話はすべてトリインフルエンザを想
定したプレパンデミックワクチンの話です。これが弱毒性の豚インフルエンザ
騒動でも、厚労省は強毒性のトリインフルエンザと同じ「新型インフルエンザ」
と呼んだために、一般国民には混同して話が進んでいくのです。
さて、日本での実験は厚労省だけではありませんでした。
厚労省の世界最大規模の実験がうまくいってなさそうな雰囲気の中、バイオベ
ンチャーのUMNファーマ(金指秀一社長)が「新型インフルエンザワクチン
の初期段階の臨床試験(治験)で安全性と有効性を示す結果が出た」と発表し
ました。
こちらは規模が小さく、「2008年6月から125人を対象に治験を実施した結果、
重い副作用がみられなかったほか、ウイルスに対する免疫応答を引き起こす効
果がみられた。」(2009.1.16日本経済新聞)とのことですが、HI 抗体価や中
和抗体価が、西村氏が指摘していたように「効果あり」と認められる基準に達
していたのかどうかは不明です。
UMNファーマ社のホームページによれば、同社は 平成16年4月に設立、「経
営戦略上コアとなる事業はBEVS技術により製造する新型インフルエンザワクチ
ン「UMN-0501」及び季節性インフルエンザワクチン「UMN-0502」で、BEVS技術
の強みを生かすため自社製造施設の建設を進めております。」とのことです。
BEVS技術とは、BEVSという昆虫細胞でのタンパク質生産技術を用いて、孵化鶏
卵を用いる従来のワクチン製造法に比べ、ワクチンを迅速に大量生産する技術
とのことです。(H21.5.20財団法人ヒューマンサイエンス振興財団でのUMN
ファーマ・金指秀一社長の講演より)
UMNファーマのワクチンは細胞培養による遺伝子組み換え技術を使って製造
される点に特徴があり、従来の鶏卵を使った手法では ワクチン製造に約6カ月
かかるが、同社のワクチンは約8週間で製造できる利点が あります。厚労省が
昨年4月に発表した、プレパンデミックワクチンに関する骨子のうち、「(3)パ
ンデミックワクチンの製造体制の期間短縮」は、同社のために加えられたよう
な項目です。
なお、同社の金指秀一社長は、同社のホームページによると、「舞鶴市民病院
小児科医長として臨床医学の最前線に立った後、日本ロシュ株式会社(現中外
製薬株式会社)臨床開発本部にてインフルエンザ治療薬タミフルの日本上市プ
ロジェクトを担当。」との経歴があります。同社の取締役には、日本ロシュで
タミフルの日本上市プロジェクトリーダーだった方、ファイザー製薬(本社ア
メリカ)でバイアグラの臨床試験を担当されていた方などがおられることから、
同社は欧米製薬メーカー連合の機動部隊といった趣があります。
さて、インフルエンザワクチンビジネスについて、2006(平成18)年11月10日
の衆院厚生労働委員会で、次の質疑が行なわれています。
高橋千鶴子(共産党) 「新型インフルエンザワクチンについては、欧米の
一部のベンチャー企業に特許が押さえられて、緊急対応時の障害となるので
はないかという指摘が各界から出されているところです。これに対してWH
Oが仲介となって調整が進んでいるという話も聞いております。実際、どう
なっているのか、伺います。」
厚生労働省医薬食品局長・高橋直人「日本側には知的財産権はない。製造に
関わる一部のプロセスにアメリカの企業の特許が設定されている。今回の製
造関連でもそれについてのシェアが当然生じる」、「第二点目のお尋ねの、
何かWHOが仲介に入って事が進んでいるというようなお話ございましたが、
その点については私どもは承知をいたしておりません。」
これに対し、高橋千鶴子は納得しませんでした。
「今、承知をしていませんというのはちょっと意外な答弁でございました。
各種論文や新聞にも書かれているので、当然問題意識を持っていると思うん
ですね。緊急対応のとき、国民の命、世界的な人命がかかっているときに、
いわゆる知的財産権が障害となって遅れたり緩められたりということがあっ
てはならない。この点で問題意識を持っているということでは確認をさせて
いただいてよろしいのかどうか。」
高橋千鶴子の質疑は、ワクチンの大量生産に関する重要関連特許を米国のバイ
オベンチャー企業・メディミューン社が所有していて、プレパンデミックワク
チンについては特許料が決まったが、パンデミックワクチンについては価格交
渉が難航していることを言っているようです。(乃木生薬研究所・健康と医療
のニュース2004.2.23「鳥インフルエンザ・ワクチンの製造に障害?」)WHOの
ストール博士が仲介に入ろうとしていたようですが、その後 3年近く過ぎても
決着していなかったことになります。
メディミューン社(MedImmune, Inc. Gaithersburg, Md.)は、アメリカ 陸軍
のウォルター・リード研究所(免疫部門)に1966〜1986年の間在籍したホック
メイヤー博士によって 1988年に 設立されています。この会社はインフルエン
ザ・ワクチン市場の独占を狙い、ベンチャー企業の開発する関連技術を精力的
に買収しているそうです。特許使用料の交渉が難航している背景には、同社が
2003年秋に販売開始した、鼻への噴霧式インフルエンザワクチン「フルー・ミ
スト」の業績不振があると見られています。世界最大の流通企業ウォルマート
社が販売に協力したにも関わらず、売れなかったのは、注射タイプの従来ワク
チンに比べ7〜10倍の価格にあったと言われています。
WHO・FAO(国連食糧農業機関)・OIE(国際獣疫事務局)が、アジアでの鳥イン
フルエンザについて「世界的な流行を引き起こす、非常に危険な人間の伝染病
に変異する可能性がある」と警告する共同声明を発表したのが 2004年1月27日
ですが(ウィキペディア「トリインフルエンザ」)、WHOが 特許料交渉の仲
介役を果たすということからも、「フルー・ミスト」の販売とタイミングが一
致しているのはできすぎています。
特許料がなかなか決まらないのは、「フルー・ミスト」の販売不振の穴をトリ
インフルエンザワクチンで埋めようという魂胆なのでしょうか? 社長のホッ
クメイヤー博士が、米国の陸軍基地で起きた豚インフルエンザ騒動(1976年)
のときに米国陸軍の生物兵器部門の研究所にいた、というのも気になるところ
です。
ウォルター・リード研究所は、1954年に米陸軍病理学研究所がワシントンDCに
あるウォルター・リード陸軍病院の敷地内にある核シャルターに移転したこと
から、そう呼ばれるようになり、米軍調査隊が広島、長崎で収集した被爆資料
もこの施設に移設されていました。これらの資料は1973年に日本政府へ返還さ
れるまで、被爆者の救済に使われることなく、軍事資料として研究所内に機密
扱いで保管されていました。(高橋博子「隠蔽されたアメリカの被爆資料」広
島リサーチ・ニュース9巻No.1 2006年7月)
なお、ウォルター・リード陸軍病院は陸軍最大級の医療施設で、250床の設
備があり、1日に数千人の外来患者を受け入れています。ところが、病院の本
館でも一部の建物で壁のカビや穴が放置されているという状況のところへ、イ
ラク戦争で首の骨を折る重傷を負った陸軍兵士が、同病院で外来扱いとなり、
ネズミのふんやゴキブリの死骸が散乱する病院敷地外の宿泊施設に入れられた
実態などを暴露したため、世論が沸騰しました。世論の批判に抗し切れず、陸
軍長官に続き、軍医総監も退任しましたが(2007.3.13CNN)、それでも世論は
納得せず、ブッシュ大統領(当時)が謝罪する事態となったことがあります。
(2007.3.31 共同通信)そういうところに20年もいた人物がパンデミックワク
チンの鍵を握っているというのも恐ろしい話です。
さて、高橋千鶴子議員の質問に高橋直人局長の答弁はいかにもうろたえている
ような印象があります。米国企業が特許を抑えていると明言しておきながら、
ワクチンは自由に使えると矛盾した答弁をしています。
高橋局長 「先ほどは承知していないというふうに申し上げましたが、私、
質問趣旨をちょっと取り違えて、大変失礼いたしました。
プロセスとしては、新型インフルエンザワクチン、現在プレパンデミックで
ございますが、それをまず発生国のある患者さんから採取をいたします。こ
れは・・(高橋千鶴子委員「説明は要りません、時間がないですから」と叫
ぶ)現在、WHOの規約の中では、WHOのフレームの中で、WHOの依頼
を受けた人間がとってきて、それをWHOがその協力機関でありますアメリ
カのCDC、アメリカあるいはイギリスの研究所で弱毒化をいたします。W
HOの研究協力機関は各国で十一ございますが、その研究機関の間ではとら
れた後の、弱毒化をされたウイルス株については相互に利用が自由になって
おります。
そういった意味では、各国ともそこに対して自由にアクセスをできるという
ことでございまして、日本の感染研はそこから譲り受けてきて、後に日本の
国内メーカーに渡すというシステムでございまして、そういったシステムに
なっていることで、各国とも、日本から見ればきちんと自由にその利用がで
きるという状態になっております。」
このように、日本のインフルエンザワクチン市場は欧米の製薬企業にとって、
草刈り場になっているようです。ロシュ社がワクチンでも日本をターゲットに
しているとなると、当然、リレンザのグラクソ・スミスクライン社(英国)も
日本を狙うでしょう。2008年8月28日付日本経済新聞に次の記事があります。
(以下引用)
英系製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)は新型インフルエンザ
の流行に備えたプレパンデミック(大流行前)ワクチンを日本で開発する。
年内にも臨床試験(治験)を開始して有効性や安全性のデータを集め、早期
の承認申請を目指す。新型インフルエンザは日本でも大流行が懸念されてい
るため、「できるだけ早く日本で販売する」(同社)方針だ。
厚生労働省から「希少疾病用医薬品」の指定を受け、優先審査されることが
27日に決まった。審査対象はH5N1型の鳥インフルエンザウイルスを材料
に作ったプレパンデミック・ワクチン。(引用終わり)
「日本で開発する」とは、日本人で実験するという意味でしょうか? 専門家
の中でも意見が分かれる中、厚労省が世界最大規模のプレパンデミックワクチ
ンの実験を始めた陰で、2大抗ウイルス薬メーカーも厚労省の支援を受けて 日
本人を使った実験を始めていたのです。
そこへまったく別の豚インフルエンザ騒動がもちあがったのです。そして、こ
の夏、突然怪しげな「新型インフルエンザで死亡」との報告例が続きました。
舛添厚労相は8月19日の記者会見でワクチンについて、「これまでに3例、死者
が出ているが、致死率が増えていくと、みなさんが早く打ちたい、となると思
う」とした上で、「一般的には、予防接種のワクチンは副作用を伴う。今回の
ワクチンが(副作用を)伴うか、伴うとすればどのくらいの比率かは、まだ全く
分かっていない」と指摘しました。(8月19日16時14分配信 医療介護CBニュー
ス)
日本ではトリインフルエンザ用のプレパンデミックワクチンの治験しかしてい
ないのに、豚インフルエンザワクチンキャンペーンが本格的に始まったようで
す。
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創刊日:2003-05-12
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