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[GEN 601] 枯葉剤機密カルテル【第16回】

2006/08/22

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 601号 05年08月22日
     発行:別処珠樹【転載歓迎】意見・投稿 → ende23@msn.com      
           枯葉剤機密カルテル(第16回)     
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 枯葉剤機密カルテル                    原田 和明

第16回 PCPの正体

このシリーズ第1回でとりあげた楢崎弥之助(社会党)の枯葉剤国産疑惑告発の
1年前に、既に朝日新聞が三井化学(当時、後に三井東圧化学を経て現・三井化
学)の枯葉剤製造疑惑をスクープしていました。(1968.7.12朝日新聞夕刊)記事
によると、

 「三井化学大牟田工業所(福岡県大牟田市)で枯葉剤245Tと同種の除草剤
 245TCP(トリクロロフェノール)の 製造工程で 皮膚疾患患者が大量に
 発生、『他の職場に移りたい』と訴える 作業員が 続出している。同工業所が
 245TCPを作り始めたのは1967年10月で、BHCやリンデンなどの殺虫剤
 の残りカスが原料。日本では 三井化学だけがつくっており、現在月産50-55ト
 ン。出荷先については一部の労働組合は「ベトナムの枯葉作戦用に輸出してい
 る。」というビラをつい最近まいたが、これについて会社側は「とんでもない
 誤解だ。うちでは全部オーストラリアやニュージーランドなどに牧場用として
 輸出している。」と言っている。」

この記事では「245TCP は枯葉剤と 同種の 除草剤で、BHC やリンデン
(BHCの一種)などの残りカスが原料」となっていますが、「245TCPは
BHCの残りカス」どころではなく、「目的物が245TCPで、BHCはその
残りカス」であると考えられます。その理由を枯葉剤の主成分のひとつ245T
の製造工程で示します。

ベンゼン+塩素 → 塩化ベンゼン類 → 四塩化ベンゼン → 245TCP → 245T (A)

      蒸留で分離 ↓

四塩化ベンゼンを除く塩化ベンゼン類 → 塩化フェノール類(PCP もどき) (B)
     (BHC もどき)      (本来の PCP は五塩化フェノール)

この式で紛らわしいのは数字の意味が異なる点です。「245TCP」の245
は 塩素がついている位置を 表していて、塩素の 付加数としては3です。一方、
「四塩化ベンゼン」の四(4)は 塩素の付加数を 表します。塩素がついている
位置は表記していませんが、表記すると「1245」となります。今回は塩素の
位置表記と付加数を区別するために、位置表記をアラビア数字、付加数表記を漢
数字としました。

ルートBが主反応と考えれば新聞記事通り「245TCPはBHCの残りカス」
となりますが、BHCを作るためなら四塩化ベンゼンを抜き取る必要はありませ
ん。一方、245Tを作るには塩化ベンゼン類から四塩化ベンゼンのみを抜き取
らなければなりませんから、主反応はルートAでなければならず、「残りカス」
はBHCであって、245TCPではないのです。

上の245T製造工程から、不純物はクロロベンゼン類であり、これを加工して
「PCPもどき」とするか、クロロベンゼン類をそのまま「BHCもどき」とし
て処分するかの選択となります。従って、245Tの需要が増せば、それに比例
して「BHCもどき」あるいは「PCPもどき」も大量に発生することになり、
処分方法としての「BHCおよびPCPの商品化」が必要になります。

三井東圧化学(福岡県大牟田市)の子会社・三光化学では操業開始から1964年ま
での間は上の反応式の末端にあるPCPとBHCの2種類の農薬を生産していま
した。そして、その一方のPCPは本来の5塩化フェノールではなく、塩素数の
異なる塩化フェノール類の混合物「PCPもどき」であったことがわかっていま
す。

1960年代前半から「PCPもどき」を「除草剤PCP」として農林省の全面的バ
ックアップの下、需要拡大政策がとられたということは、既にその時点には日本
政府と三井東圧化学とが一体となって枯葉剤生産に関与していたことを意味する
ものと思われます。枯葉剤原料の245TCPの生産開始時期は、冒頭の朝日新
聞の記事にあるような「1967年10月」ではなくて、少なくとも肥料取締法改正案
が上程された1962年6月には既に始まっていたと考えられます。

「1967年10月」はおそらく枯葉剤の一成分245Tそのものを生産し始めた時期
をさしているのではないかと思われます。

オーストラリアやニュージーランドに運ばれた三井化学(または三井東圧化学)
の245TCPが輸出先で加工されて、ベトナムに運ばれたことは既に説明した
とおりです。

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