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創作小説サイト【SKIPJack】お知らせメール2/19号

2005/02/19

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創作小説サイト【SKIPJack】お知らせメール1/4号

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こんばんは、創作小説サイト【SKIPJack】の古川です。
ようやく更新しました!

・創作小説『ハルメキアの王』第二部 1話
・小説裏話的雑記
・裏をちまちまと再開

よろしければ、お読みください。
ちなみに、『小説裏話的雑記』は、『ハルメキアの王』『砂上回廊』『創作小説』の
ページから
移動することが出来ます。

遅くなりましたが、2月の小説掌編をお送りします。
一応、幻想SF?です。


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     I  C  E

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 僕は空港に降り立った。広々としたロビーには、僕しかいなかった。
 この星はいまだ整備されておらず、宇宙船から座席ごとの移動がきかない。とはい
え慣れていたので、荷物を持ち上げて僕は空港の中をうろつき回ることにした。ふら
ふらとしていれば、誰かが見つけてくれることだろう。そう決めた時、
「あの、」
 背後からのっそりとした声が聞こえ、振り向くと白クマがいた。とはいっても本物
ではない。
「ガイドの方ですか?」
 僕が聞くと、白クマはにっこりとして(だと思う)頷いた。
「そうです。ようこそ、‐‐‐星へ」
 星の名前の部分は聞き取れなかった。おそらく、僕には発音もできない言葉なのだ
ろう。
 正式な名称があるのだが、僕らはこの星を白クマ星と呼んでいた。僕らの故郷とも
いえる、地球にいるような白クマが住んでいるわけではない。
 ここの住民は、数少ない旅行者のためにそれぞれの星の生物を模した姿で出迎えて
くれる。僕らには、白クマの姿が主だった。
 寒い星なので、白クマというのも分かるのだが、なぜペンギンなどではないのかは
不思議だった。
 白クマ星の人々の本当の姿は見たことが無かったし、話にも聞いたことが無い。興
味はあるのだが、身体的特徴をとやかく言うのはマナー違反だ。
 僕は白クマに名前を聞いたが、到底僕には発音できない言葉ばかりだった。断って
から白クマをガイド氏と呼ぶことにした。
「まずはホテルへ行きましょう」
 言うと、白クマは歩き出した。



 僕が、一度も使ったことの無い有給と、妻の嫌味を我慢してまで白クマ星に来たの
は、ここで作られるオーロラを見るためだった。
 僕は旅行会社で働いている。
 人は時折、不便さを恋しがるものだ。いくら指一本で全てが済む時代とはいえ、
キャンプをすることに喜びを、自ら魚や貝を取ることに価値を見出す。
 僕はそういった人々に不便さを提供するのが仕事だった。プランの一つとして考え
た事がオーロラとの出会いだったのだが、僕は次第に仕事抜きでその現象に惹かれて
いった。
 年末年始に夏休み。連休のほとんどを、オーロラを見に行くことに使った。妻の小
言はしょっちゅうだったが、彼女も諦めたようだ。
 だが、実際に見られたのはほんの数回だけだ。自然のものだし、人間の都合でどう
にかならないと分かっているのだが、休暇のぎりぎりまでねばって見られない時は落
胆する。
 話は元に戻すが、この白クマ星が人口のオーロラを作っているという話を耳にした
のは、次の不便さを調べまわっているときのことだった。
 この白クマ星は、未開という点は僕のお墨付きといってもいいのだが、如何せん寒
いだけで何も無い星だった。
 僕の会社のプランを使うような旅行者は、無闇に寒いのと無闇に暑いのは嫌う傾向
にある(子供のいる家庭が多いからなのかもしれない)。
 それで、白クマ星は観光の目玉にと人口のオーロラに着目したという。
 昔から、理論上ではオーロラを作ることが出来ると証明はされていたのだが、誰も
実践しようとは思わなかったらしい。
 装置に金がかかるというのもあったのだろうが、環境が整わないことの方がネック
だったようだ。それに関しては、この白クマ星は十分適していた。
 僕は仕事のコネをひたすら使って、試運転中の見学ができるように取り付けた。
 ホテルは、普通のビジネスホテルのような仕様で僕でも使えるものだった。荷物を
降ろし、ベッドに腰をかける。ようやく少し落ち着いた。
 ふと、背後に視線を感じて振り向いた。当たり前だが、何も無い。ただ、壁がある
だけだ。
 残してきた妻や同僚たちへの後ろめたい気持ちが、意識を過剰にさせているのか。
 そんなふうに考えて、僕は気にしないことにした。細かいことに煩っていると身が
入らない。
 荷物を解いて、部屋の中の居心地を良くしたくらいに、ガイドがやってきた。
「お食事はどうしましょうか」
「何が食べられますか?」
 聞くと、ガイドは困ったような顔をした。メニューはやっぱり一つしかないよう
だ。
「サプリをお願いします」
 こちらから言うと、ガイドは安堵して笑みを浮かべた。
「では、ご案内します。こちらへどうぞ」
 ここは、僕のような人間が滅多に訪れないような星なのだ。ステーキとか新鮮なサ
ラダとか焼きたてのパンとかワインやビールとか大福とか、過度の期待をしてはいけ
ない。長期間の保存も簡単なサプリメントくらいしか用意はできないのだ。ただ、こ
こを観光地とするのならば食事の点でも改善が必要だとは思った。
 僕とガイドは連れ立って部屋を出た。
 レストランは地下にあった。僕らの感覚では最上階の見晴らしの良い場所にあるも
のなのだが、地の底というのが白クマ星の慣習なのだろうか。
 レストランには人っ子一人いなかった。他の旅行者も見当たらない。そういえば、
部屋からここに来るまでも誰とも会わなかった。
 なんだか居心地の悪さを感じて、僕はもぞもぞと居住まいを正した。
 注文する前に、自動的にミネラルウォーターとサプリメントが数粒出てきた。ガイ
ド氏は何も食べないのか、その前には何も置かれていなかった。
 僕は、サプリメントを水で流し込む。空腹を押さえる効果のあるものが胃の中で膨
れ、満腹にさせたが、味気ないのは確かだ。やはり、消化に不便でも味のついた食べ
物の方がおいしい。
 その後は他愛も無いことをガイド氏と話し、お開きになった。
 僕は部屋に戻った。風呂に入った後、持ってきたワインの小瓶を空けた(アルコー
ルに関しては、何の規制も無かった)。ほろ酔い気分のまま、ベッドに横になる。
 つけっぱなしの星間放送から、ニュースキャスターの声が聞こえる。
 次第に僕は興奮していった。
 明日には、オーロラが見られるのだ。しかも、人工の珍しいオーロラが。僕は、数
度しか見たことの無いオーロラをまぶたの裏に思い浮かべた。
 明日夜空に映し出されるオーロラが紛い物ということは、僕自身も分かっている。
だが、それでも見られることは確実なのだ。待ちぼうけもされず、結局目に出来な
かったということも無い。
 気分がとても良かった。僕の中で投影されるオーロラの姿は美しく、僕を魅了し
た。
 そのまま、ゆったりと眠りについた。

 朝になって、僕は起きた。危惧していた二日酔いは無く、少しだるいくらいだった
(僕は酒に弱いのだ)。朝も何かちくちくとした視線を感じた。
 目覚めのシャワーを浴びて着替え、ガイド氏を待った。ガイド氏はまたタイミング
良く現れた。
「お待たせしました」
「いえ、丁度いいですよ」
 律儀に頭を下げるガイド氏に、僕は恐縮する。こんな具合では、変な視線について
聞き辛い(監視線がありますかと聞く自体が失礼なことだが)。
 二人で連れだって歩き出す。ホテルを出ると、送迎のタクシーがいた。無人の小型
車で、僕と大柄なガイド氏で車の中はいっぱいになった。
「オーロラ発生装置についてはご存知ですか?」
「えぇ、ここに来る前に少し勉強しました」
 嘘だ。少しなんかじゃない。星間ネットで検索もしたし、サイトに設置した私立図
書館に流れてきた本も読んだ。この装置を作った博士の誕生日も没年もそらで言える
くらい読み込んだ(確か、博士は僕と同じ地球を母星とする人種だ)。
「構造も知ってますか」
「いえ、それは……」
 どこを探しても設計図はネットに浮かんで来なかった。滅多なものが閲覧できない
のは当たり前だが、なんとか理論を使っているとかこんな具合だという断片すら無い
のだ。数年前に施行された法律によって、百年近く昔のものは特許が切れているはず
なのだが。
 あまりの鉄壁さに、僕は違和感を覚えていた。
「そうですよね」
 言って、ガイド氏は外を見た。何かあるのかと思って僕もそちらを向いたが、何も
無かった。
 しばらく気まずい沈黙が続き、居心地の悪さに僕が何かしゃべろうとした時に、よ
うやくタクシーは止まった。
 着いたのは、平べったい一階建ての建物だった。男にしては身長の低い僕が頭をつ
かえずようやく歩けるくらいの高さだ。ガイド氏なんて常に中腰で歩くしか無いだろ
う。
「ここが発生所になります」
 ガイド氏を見ると、腰をかがめて建物に入る準備をしていた。それでも難渋そう
に、建物に入る。僕はその後に続いた。
 中に通されると、応接間と思しき部屋に通された。椅子だけが置かれていて、ガイ
ド氏に座るように勧められた。
 大人しく待つ。
 しばらくすると、ガイド氏と同じような白クマが現れた。その白クマは、ちらりと
こちらを見て、名前を(僕の発音できない言葉で)名乗った。ここの管理をしている
人物だという。
 もらったパンフレットにも書いてあるお決まりの文句を説明された後、僕とガイド
氏と管理人氏は装置のある部屋へ向かった。
 道すがら、ガイド氏はあれこれ話しかけてくれるが、管理人氏は無口だった。ガイ
ド氏が話しかけても、あまり言葉を返さなかった。なんだかよそよそしいのは僕の気
のせいだろうか。
「ここが装置のある部屋です」
 一つの部屋の手前で止まり、管理人氏がようやく自らしゃべった。
 部屋はさらに天井が低かった。僕でも中腰になるくらいだし、白クマ姿の二人は膝
をつかなくてはならないだろう。もしかすると、本当の白クマ星の人々はこの部屋の
サイズが合うくらいの小ささなのかもしれない。
 本来ならオートメイション化が進んでいるようなものなのだろうが、配管やら機械
やらがところ狭しと設置されていた。単科大学卒の、機械には疎い僕には何が何やら
全く分からなかったのだが。
 腰の痛さに身動きすると、
「あっ」
 しまった。装置の何かにぶつかってしまう。
 はっとしたように、管理人氏が振り向いた。
「すみません……」
 管理人氏はこちらに首を振ってまた進み出した。
 見学の後に一通り説明を受けて、またホテルに戻った。オーロラが見られるのは明
日らしい。
 その日の食事は僕一人で、部屋でとった。発生所での居心地の悪さは、明日のこと
を考えるだけで消え去ってしまった。
 早めにベッドに入ったためか、すぐには寝られない。また酒の力でも借りようかと
鞄の中を漁ったのだが、昨日の小瓶で尽きていたようだ。
 少しの失望と、明日への期待を抱えて僕はベッドに寝転がる。なぜだかまた視線を
感じはしたのだが、神経が昂ぶっているせいだと片付けた。何せ、明日で望みが叶う
のだから。



 翌日の朝になると、ガイド氏が僕を迎えに来た。オーロラが見られる時間まで白ク
マ星の名所を案内してくれる約束だった。
 部屋の前で会ったガイド氏は、どことなく恐縮した雰囲気があった。
「おはようございます。実は、オーロラのことでお話がありまして」
「はぁ」
「装置が突然壊れてしまいまして、今日のオーロラの発生は難しくなってしまたんで
す」
「えぇっ!! そんな、だって……」
 頭に浮かんだのは、昨日僕が腰をぶつけた機械だ。
「もしかして、僕が、昨日の」
「はい……」
 一気に絶望の底に叩きつけられた気がした。ガイド氏に今日の観光を辞退し、僕は
部屋に引きこもった。迎えのシャトルが来るまではじっとしているつもりだった。
 ひたすら暗い気持ちで布団を被ってベッドの中で過ごしていると、またガイド氏が
部屋に来た。
「早く来てください!! オーロラが出ているんです」
「え!?」
 僕は意外に早いガイド氏の後をついて走った。このホテルの最上階へ向かっている
ようだ。
「でも、何でオーロラが? 装置は壊れたんじゃないですか?」
「今出ているのは、自然のもののようです」
 そうか。人口のオーロラが出せるのは、自然のものが発生する条件にも叶っている
ということか。
 エレベーターで最上階へ向かう。そこで僕は自分が寝巻き姿なのに気付いたが、今
さら着替えには戻れなかった。エレベーターはそのまま屋上へ繋がっていた。透明な
ドームの内側に出て、外気は入り込んでいなかった。
 空にはオーロラが広がっていた。壮大でとても美しかった。僕はじんわりと涙し
た。これこそ僕が求めていたものだ。だが――
「これは……本当に自然のものですか?」
「はい、そうですよ」
 でも、何だか本物とは思えない。僕は数回しかオーロラを見たことは無いのだが、
それでも違和感は分かる。どことなく何かが違う気がするのだ。
 ガイド氏をじっと見つめると、気まずげに視線をエレベーターにやっていた。作動
音がして、扉が開く。見ると、また別の白クマがいた。
「管理人さん?」
 僕には白クマの見分けなんてつかなかったのだが、そんな気がした。
「申し訳ありませんでした」
 いきなり、管理人氏は頭を下げた。
「私どもは貴方を試していました」
 何のことだと訝しむ僕に、ガイド氏が言いにくそうにしながら説明しだした。
「実は、貴方が他の星のスパイではないかと疑っていたんです」
「スパイ?」
 失礼ながら、この星に探るようなことがあるのか考えてしまった。
「オーロラの技術を盗みに来たのかと……」
「でも、あの装置の特許の有効期限は切れているじゃないですか」
「はぁ、それでも私たちの星ではオーロラが大規模な星興しなものでして」
 それで過敏になってしまったのだという。僕が感じた視線も監視線が部屋について
いたからだという(泥酔姿を見られたのは恥ずかしく思った)。
「それで、装置の故障というのは」
「嘘です」
 呆れた反面、僕は安堵した。
 そうか。装置は壊れていなかったのか。
 許しを請う、つぶらな目たちに苦笑いを見せて、僕はオーロラに見入った。
 これが見られれば良いというのはお人好しの証拠なのかもしれない。それでも、僕
は飽きることなく空を見上げていた。



(END)

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次号は来月に入ってからです。
ハルメキアの更新お知らせか、小説掌編がお送りできる……はずです。
では、乱文にて失礼します。



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創刊日:2003-04-27  
最終発行日:  
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