第193号 イタリア人はみな「貧乏」?
発行日:2/3
♪ Salve. お元気ですか。
◆《イタリア私的百景》
イタリア人はみな「貧乏」?
レオナルド・ダ・ヴィンチのデザイン素描がバッグに
◆『イタリア語(迷)辞典』 “Fiorentini mangia fagioli, lecca…”
◆『イタリア猫日記』 (187)
◆ あとがき
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★″……………………… 《イタリア私的百景》 ……………………★°
イタリア人はみな「貧乏」?
このごろ、貧乏という言葉は日本ではあまり使わない感じがするが、イ
タリアでは多くの人が自分を「貧乏」とランク付けしているという。
これは電子版にあった記事だ。
労働組合の一つ、UILの調査によると、年間所得を20万ユーロ(約2千
万円)以上と申告している裕福な人たちは、納税者の1%にもならない
0.17%(71,989人)しかいないのだ。
残りの90.2%は年間所得が35,000ユーロ(約350万円)以下だと申告し
ている。しかも、全納税者の約半数の人の申告額は15,000ユーロ(150
万円)以下だという。
これではたしかに、「貧乏」という自己ランク付けになるわけだ。
ほんとうにこの申告は正しいの?
労働組合UILの調査は、そうした申告にしてはぜいたく品が出回りすぎ
ていないか、と問うている。たとえば、フェラーリ、ランボルギーニ、
メルセデス、BMW,アウディなどの高級車が街中を走り回っている。2010
年には平均価格が10万3千ユーロ(約1千30万円)のこうした高級車
が20万6千台も売れた。
これを所得申告から考えると、所得額を20万ユーロ以上と申告している
71,989人(0.17%)はこうした車を買えるが、残りの13万7千11人の
フェラーリやランボルギーニなどの所有者はそんな所得額ではないのだ
から、いったいどうやって買えたのか?ということになる。ほんとうに
申告は正しいの?
ほかにも平均所得の分析がされている。2008年(可能な最新データ)に
申告された雇用されている人の平均所得額は1万9千640ユーロ(約196
万円)。
ところが、衣類や靴の店の所得はかなり低くて、8千ユーロ(約80万円)
ぽっきり。バールの最高所得額でさえ1万6千200ユーロ、宝飾業の最
高額が1万6千300ユーロという申告なのだ。雇用されている人の所得
よりも低いなんてことがあるだろうか、という問いだ。
さらに、ディスコやスパやエステティックサロンの所有者たちは、赤字
とまで申告している。これは驚ろ以外でなくて、矛盾とまで判断されて
いる。
イタリアの納税システムがいかに不正と無効さを生んでいるのかがわか
る、とこの調査はいいたいよう。
これを裏書きするかのようなことが起きた。
昨年末、12月30日から大晦日にかけて、裕福な人たちやVIPが集合する
北イタリアのリゾート地、コルティーナ(ダンペッツォ)に80人の収入
吏事務所の検査官がいっせいに脱税取締りに押しかけて話題になったの
だ。
調べにあったのは何十件というホテル、宝飾店、毛皮店など、お金の集
まるところ。ホテルは早朝から夜中まで検査官にはりつかれて売り上げ
を調べられ、宝飾店も骨董店も高級ブティックもレストランも、全ての
売り上げに対してきちんとレシートが発行されているか(発行されてい
ないと脱税)をチェックされた。リゾート客たちが駐車しているSubな
どの高級車もしっかりとメモされた。
そして年頭には、パドヴァで、五つ星のスパホテルに宿泊して2,000ユ
ーロ(20万円)以上を消費した客たちの名前がリストアップされたとい
う。
今や国が、欧州圏が、危機と背中合わせにある。経済成長の最悪の足か
せが脱税と認識された以上、これから巨大な脱税も発覚するだろうけれ
ど、庶民にもしわ寄せがきている。現金の支払いは1,000ユーロ(10万
円)以下と規定された!日本では50万円まで現金が引き出せるのだから、
この制限額にはおどろいた。
銀行口座の金銭の動向もいつでも国税庁は調べられる。そのデータを扱
う会社はこれから大いに活躍するのだろう。
つまり、ますます、監視社会になっていくようだ。
レオナルド・ダ・ヴィンチのデザイン素描がバッグに
Gのロゴの入ったバッグで知られるゲラルディーニがダ・ヴィンチのデザ
インの素描画を使ったバッグを、ピッティ・イマージネ・ウオモ展で発
表した。
バッグの写真:
http://firenze.repubblica.it/cronaca/2012/01/10/foto/da_un_disegno_di_leonardo_la_borsa_di_gherardini-27864375/1/ (イタリア語)
素描画はヴィンチ村にあるレオナルド研究家アレッサンドロ・ヴェッツ
ォージ氏の博物館所蔵という。
古風な茶系の皮にダ・ヴィンチの素描デザインが型押しされ、ユニーク
な取っ手の留め金には「プレツィオーザ (La Pretios)」と刻印されてい
る。わずか99個の限定バッグという。
ゲラルディーニはフィレンツェ発祥のブランドということは知っていた
が、上記のレプッブリカ紙サイトによると、ダ・ヴィンチの「ラ・ジョ
コンダ(モナ・リザ)」のモデルといわれるリーザ・ゲラルディーニと縁
戚関係があるというので、びっくりしている。
と、昨日、この「ラ・ジョコンダ」の模写で、二人の弟子のうち、アン
ドレア・サラーリかフランチェスコ・メルツィのどちらかが描いたもの
とプラド美術館が発表したレプリカのニュースがあった。
今までは幾つもあるレプリカの一つとプラド美術館ではみなされていた
が、何カ月もかけて表面を暗く覆っていたニスを取り除いたところ、ダ・
ヴィンチが描いたのと同じ時代の模写と判定された。
プラド美術館の専門家は、弟子はダ・ヴィンチが描くのとほとんど同時
に模写していったのだろうといっている。
背景もほとんど同じこのレプリカをTVで観たが、ダ・ヴィンチのオリジ
ナルとは目のあたりが違うなという印象だ。
★PAROLE,PAROLE………… イタリア語(迷)辞典 ……………………★
“Fiorentini mangia fagioli, lecca piatti e romaioli”
フィオレンティーニ マンジャ ファジョーリ レッカ ピアッティ
エ ロマイオーリ
種類: 豆とフィレンツェ人
この一文、「インゲン豆を食べ、お皿とひしゃくまで舐めるフィレンツ
ェ人」。
大好物なら、食べたあとのお皿まで、それをよそうお玉までなめる、と
いう表現は世界共通かも。
Fiorentini「フィレンツェ人」は複数になっているが、動詞はすべて3
人称単数で、mangiaは「食べる」、 lecca は「舐める」で、形容詞的な
働きをする。fagioliは「インゲンマメ」、piatti e romaioliは複数で
「皿とひしゃく」。
フィレンツェ人のインゲン豆好みは有名で、名物料理でもある。とくに
白インゲン豆を、ニンニクを効かせて、トマト味で煮たファジョーリ・
アルッチェレットが大好物だ。
栄養からいっても、カリウム、カルシウム、鉄分からビタミンB1/B2、
食物繊維も多く含まれているとか。
この表現の出典は、義妹からクリスマスプレゼントでもらった「2012年
フィレンツェ日めくり」(I’Tirabaralla 2012)という暦の1月8日の
一枚。
毎日、一つ載っている格言や言い回しを読んでは剥がしている。今年も
その早いこと。
*…< 連載 >…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*
DIARIO 『イタリア猫日記』 (187)
*…< 連載 >…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*
1月★日
わりに平穏な一日を過ごした。
お昼はサン・ポーロ・イン・キアンティまで遠出するつもりが、レスト
ランの電話番号が通じない。もしかしたら経営が変わったのかもしれな
いと夫。
携帯に義妹がSMSで新年のあいさつを送ってきた。家の電話の受話器が
外れていたかららしい。それで大晦日の夜に誰からも電話がなかったの
か。
午後、カンヌ映画祭参加作品だという12歳の男の子を巡るフランス映画
「自転車少年」(The Kid with a Bike)を観た。最初からは観てないの
だが、好きな父親から拒絶されている少年やかれを預かる人物の描き方
がクールで、イタリア映画ではほとんどありえないとさえ思わせられる。
正当に理性的で、そうした現実観察が優れていて納得がいく。
日が暮れる前に散歩に出た。1時間以上歩いたあとでもブーツが全く足
を痛めないのに満足。夫が買い換えようとしている車種を路上で探して
歩いたら、帰宅寸前に近くに駐車されているのを見つけた。私も気に入
った。
年賀メールが着いたが、甥や姪以外に、Uさんが初めて家族の写真入りの
賀状を送ってくれた。私は日本式に喪中で失礼させてもらった。
1月□日
今日こそは、と運動もあってチェントロの図書館に本の返却に行く。
夕食の支度をしてから、ちょっと青山二郎の本を読む。
年末にベルリンに行った姪マルゲが今朝戻ったが、朝6時出発の便が急
になくなり、間一髪でほかの便に乗れたそう。
夜、プーリアに住んでいるTさんから思いがけない賀状メールが来てう
れしい。返信をしたら、またすぐ自身の健康についても率直なことを書
いてきた。
昨日も本を読まず、スクラップの整理をした。
1月♭日
いつもは女医さんのアポに遅刻なんかしないのに、今朝は出かけるまで1
時間半あると思って髪も洗ったりして、時計を見たら、急いで歩いても
遅刻するとわかる。
女医さんには予約を取った検査の話をして、処方箋を作成してもらい、
薬局へ寄る。
広場の市場でカルチョーフィ、平たいインゲン、オレンジを買う。
午後から雨が降り始め、夕方までスクラップや地図や仕事のメモ帳を整
理したり、捨てたり。
なんだか新年とは思えない毎日だ。
1月▲日
弟にスカイプするつもりが、昨夜、2本も映画を観てしまって就寝した
のが真夜中を過ぎていた。そのせいかどうも調子がよくはない。
気になっていた雑誌の整理に午前中に取り掛かり、結局スカイプしそこ
なった。
午後、動かなくてはいけないと遠いほうのコープのスーパーまでわざわ
ざ長めの散歩に出る。重い買い物を下げて家の近くまで来ると、家に招
きたいといわれていたオーストラリア人のマリーが女児連れでやって
きた。彼女は同じコンドミニアムの隣の棟に住んでいて、旦那さんが週
日はボローニャで仕事をしていると夫から聞いていた。これからボロー
ニャに行くところというので、車で行くの?と聞くと、電車で行くのだ
そう。
ただそれだけの会話をして別れた。彼女に会うのはこれで2度目でしか
ないのだ。
夜は疲れない程度に少し本を読もうと、谷崎潤一郎のエッセイ「東京を
思う」を読んだ。
1月@日
捨てる作業を続けているが、雑誌でも捨てられるのは3分の2くらいの
もの。なにしろ、義母が使っていた自動で背や足の部分を上下できる、
巨大といっていい椅子を明後日には運び込むので、必要ない物を捨てな
いと入らない。
今朝は最良の数値。こうなると体調の感覚は数値とあまり関係がない場
合もあることになる。以前のように何もかもを思う存分できれば、体調
がいいのだと心のほうが思いたいのだろう。
お昼過ぎ、カリタスの箱に捨てる服の袋を下げて出る。今朝は冷えこん
だはずだけど寒くはなく、歩いていると汗ばんできた。アルノ川沿いに
出ると、対岸にテントが並んでいて、そういえば火曜市と気づき、シク
ラメンでも買って、空になった袋に入れて戻ろう、ちょうどいい距離だ
から、と人用の橋を渡る。屋台は後片付けをしていて、なんとなく侘し
い。植木の屋台はすでに店じまいして、なかった。
そこからトラムの走る橋を渡って戻る。川面はコケに覆われたところが
白く凍り、ときどき鵜が羽ばたきをして水面をかすめるように飛び立っ
ていくのが見える。今朝見た夫の写真の通りだ。
夜はチンヅィアで夕食。隣の席が近いのでわずらわしいが、ピッツァを
買いに来る人も多いし、子供連れのグループもいて盛況のため、文句は
いえない。
こんな雰囲気だと、日ごろは出ない話題にのめりこむ。夫はこの間から
父親の秘密を誰にもいわない、といっていたので、それをからかい半分
で攻めたりしたが、攻略できず。
1月○日
義母の家に残った家具を貸倉庫に運ぶ日。
この間から運搬を手伝ってくれている、マンションの清掃担当の男子と
その父親がトラックを借りて来てくれた。朝の9時から暗くなるまでか
かり、夫はかれらと貸倉庫へ行ったり、わが家に円形のテーブルや椅子
を運び込んだ。
私は朝から両瞼が何かにかぶれたのか赤くなり、メイクもしないでいた
ら、Iさんから電話があって、本を一冊持って来たいというので待った。
年末に彼女からメールに返信もなかったが、やはり日本に行っていたそ
うで、いろいろと話し込む。その合間に義母の家から運んだ振り子時計
が半時間ごとに鳴り、彼女は興味深そうに眺めていた。
来週の月曜に彼女の女友だち4人と昼食会をやるので、来ないかと誘わ
れる。それぞれが料理を持ち寄ってということなので喜んで参加を決め
る。お寿司や韓国寄せ鍋、ドルチなどを用意する人がいるとわかり、私
はアンティパストにしようと思い、お昼過ぎの買い物の時にライ麦パン、
トリュフパテに、サーモン、スペックを買った。
明日はバスルームの水道の蛇口を交換する工事の日。
1月▼日
こんなに日本の女子は韓国料理が好きなのか。つくづく思った。
Iさんと4人の友だちの全員が嬉々として食べたのが、韓国風海苔巻や
お餅とさつま揚げの炒め物、キムチを入れた寄せ鍋などだった。イタリ
ア風を持参したのは私のみ。日本式に料理をいっせいに食べたから、ア
ンティパストはほとんど手付かずで残った。
フィレンツェ暮らしをしていても、旦那さんがイタリア人とは限らない。
旦那さんはイランの人というK子さんは仕事の上でも旦那さんの右腕だ
そうだし、私がフィレンツェ暮らしを始めた年に生まれたという。これ
はお互いにちょっとショック。
それぞれ、家族や仕事の問題もかかえながら、30〜40代の若さを発散し
ている彼女たちに、昔コーディネートした仕事で、重複して持っている
雑誌を提供した。
[本]のメルマガの朝日山さんから原稿受領のメールが来た。年末の休載
のあとに原稿が送れてホッとしている。
1月▽日
もう新年もひと月が終わる。今までなら何となく悔いのようなものが浮
かぶのだろうけれど、さすがにそんなことはなく、やっとひと月がたっ
たという思い。
Mさんが久しぶりにまたフィレンツェ滞在でやってきた。今日は午後に
なっても雪が降りそうな灰色の空だった。二人でおしゃべりするキアロ
スクーロのティールームも久しぶり。滞在中にはあちこち旅するようで、
なんだか前よりも若くなって元気そうなMさんに力づけられる。
来週はついに売買契約の日が来る。週半ばから雪が降るかもというので、
運ぶのが難しくて最後まで残っていたシャンデリアを、電気装置に詳し
いフランコの手助けをえて、昨日わが家に運んだ。
これで義母の家はほんとうに空っぽで、なんだか不思議な気分になる。
鍵を渡してしまえば、もう中を見ることもなくなるのだ。
本も読まない、PCにも向かわないときは何をしたらいいのか。今まで何
度となく聴いてしまった音楽のCDをまた選んで聴き返すことにした。
ノートに向かう時はとくに聴きたい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
@あとがき
お待たせいたしました。
アダージョ(ゆっくり)、ポコ・ア・ポコ(少しずつ)でいきますので、
本年もよろしくお願いいたします。
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴お元気で A presto! ∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[本]のメルマガの25日発行号に連載中:
「Italia dolce e amara:甘くて苦いイタリア」
第28回「すぐに船上に戻りなさい!」はこちらです:
http://archive.mag2.com/0000013315/index.html
http://back.honmaga.net/(バックナンバー)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご意見、ご指摘、励ましなど……
このメルマガに「返信」してください。
登録もこちらです。
http://www.melma.com/backnumber_86333/
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●バックナンバーご案内●
http://www.melma.com/backnumber_86333/
〜〜最近号〜
2011/11/19発行 N.190「金融市場不安の荒海に乗り出して」
2011/12/07発行 N.191「進展あり、<アンギアーリの戦い>捜し」
2011/12/30発行 N.192「マキャヴェッリが映画になる」
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エッセイふうイタリア案内『イタリア猫の小言と夢』
発行日: 隔週
発行人: 雨宮紀子(ガッタ・イタリアーナ Gatta Italiana)
ご意見、ご感想など: my-dreams@libero.it
Copyright(C)2003-2011 Noriko Amamiya All Rights Reserved
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発行者プロフィール
雨宮紀子( ガッタ・イタリアーナ Gatta Italiana )
http://www.melma.com/mag/33/m00086333/『メディチ家 ルネサンス・美の遺産を旅する』(世界文化社)刊行。[本]のメルマガ、25日号に<甘くて苦いイタリア>を連載中。



