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こんな映画は見ちゃいけない! 

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花戦さ こんな映画は見ちゃいけない! 

2017/06/03

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2017/6/3  Vol.1852     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
           「花戦さ」  です。

一輪の花で生命の息吹を表現し、大きくうねった松を昇龍に見立てる。
極限までそぎ落としたミニマリズムにも、過剰に装飾した大作にも、
躍動感が秘められている。それらは静止しているからこそ、内在する
エネルギーの爆発する瞬間が強調され、見る者を身構えさせるのだ。
物語は天正文禄年間の京都、秀吉と正面から渡り合った男の半生を描
く。河原で野垂れ死にした百姓に手向ける野花も、天下人に披露する
渾身作も、相手の心に沿って生ける思いは変わらない。腕力はなくて
も智恵はある、独裁者に屈せず受け流す。そんな主人公の喜怒哀楽を
野村萬斎は飄々と演じ分ける。狂言の所作を基にした優雅な動きと映
画とはまったく志向の違うアプローチ、華道を究め権力に背を向けた
生き方を体現した演技スタイルは、ある種の様式美に昇華されていた。

寺で花を生ける専好のもとに利休が訪ねてくる。利休は専好を茶室に
招き、茶道と華道それぞれの世界観を語り合いお互いを理解する。だ
が、秀吉の天下になると、彼らには生きづらい世の中になっていく。 

その間、捨てられていた娘を拾い、蓮と名付けて面倒を見る専好。蓮
が描く蓮の花はまさに専好の思想と一致している。大胆かつ繊細、素
材の本質を正確に見抜いた彼女の写生には魂が宿っているよう。身上
を知ってさらに彼女に親近感を覚えていく。

やがて利休は切腹、京都の町にあふれていた闊達な空気は重苦しいも
のになり、友人知人を処刑された専好は秀吉に命懸けの勝負を挑む。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                  「花戦さ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170316
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
          「20センチュリー・ウーマン」  です。

3人の女と価値観の合わない男。シングルマザーと暮らす少年は多感な
年ごろを迎えても生き方の手本となる“父”がおらず、どんな男にな
りたいかイメージが浮かばない。女たちが“家庭の主婦”ではなく個
を確立した1979年、物語はリベラルな環境で人生について悩む主人公
のひと夏の成長を描く。上昇志向の母。触らせてくれない幼馴染の少
女。ガンと闘うNY帰りの写真家。強烈な個性の彼女たちの間で、彼は
女の生態を学んでいく。それは主張を叫ぶのではなく相手の言い分に
耳を傾ける共感力。争うのではなく話し合う、奪い合うのではなく分
かち合う。そんな、他人に対するやさしさにあふれた作品だった。

15歳のジェイミーは、母・ドロシアと家の間借り人・アビー、ウィリ
アム、隣人・ジュリーに囲まれた生活が物足りない。ある日、ドロシ
アはジュリーとアビーにジェイミーの“教育”を依頼する。

それを耳にしたジェイミーは、不愉快でも身近に頼れる大人の男がい
ない。ヒッピー崩れのウィリアムはあてにならず一緒につるむ友達も
なく、基本的に会話は女とばかり。フェミニズム本を読み漁るドロシ
アはジェイミーを見守りつつも突き放し、結局アビーとジュリーが面
倒を見ることになる。

当然、ティーンエージャー特有の気持ちはわかってもらえず、ジェイ
ミーのいら立ちは募っていく。それでも女の快感はクリトリスにある
と教えられ、セックスとは丁寧な愛撫だと知る。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

              「20センチュリー・ウーマン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170520

          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
          「武曲 MUKOKU」  です。

父が定めた道から逃げるのが許されなかった男は、憎しみを抱きなが
らも腕を磨いていく。臨死体験を持つ少年は、生死の境で綱渡りする
感覚が忘れられない。物語はそんな2人が出会い、互いに理想とする剣
の道を究めようとする姿を描く。父を倒した男は呵責に苦しみ酒で紛
らわせている。だが、少年の純粋な気持ちは男の闘争心にもう一度火
をつける。その過程は、努力・友情・勝利といった青春スポーツもの
の定石とは明確に一線を画し、求道者のごとき彼らの精神性は真剣に
剣道と向き合うことは真剣に生きることであると教えてくれる。“言
葉より心”、己の中にある弱さを見つめ、克服するにはどうすべきか。
稽古で答えが出ると信じ無心に木刀を振り続ける彼らの背中が美しい。

剣道部の顧問・光邑から素質を見込まれた融は、かつて有名な剣士だ
った研吾から一本を取り、剣道にのめりこむ。融の真剣勝負にこだわ
るスタイルは研吾と通じるものがあり、2人は運命に導かれていく。

父の頭をカチ割って昏睡状態にした研吾は昼間から泥酔しては現実逃
避している。自堕落な生活を更生させるために、光邑は融を送り込む
が、研吾の態度は改まらない。一方で、融は剣道部の稽古では飽き足
らず、命のやり取りをするような緊張感を求めている。

素人だった融が短期間で上達するのも、負けたら死ぬという覚悟で稽
古に臨んでいたからだろう。肉体的な鍛錬以上に自身の内面を磨く、
研ぎ澄まされた瞳はまさしく剣豪の光を放っていた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

              「武曲 MUKOKU」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170330

          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
          「ちょっと今から仕事やめてくる」  です。

ふと意識が“死”に傾いたとき、突然現れて現実につれ戻した男。古
いクラスメートと名乗る彼は異常とも思えるハイテンションで絶望の
淵から引き戻してくれた。物語は、ブラック企業に勤務する若者が見
知らぬ青年と交流するうちに、うつ病から抜け出していく過程を描く。
意味のない社訓と体操。怒鳴りまくる上司に人格を全否定され、他の
社員の前で土下座させられる。営業成績が良くてもノルマ達成のため
には同僚の足を引っ張る。残業手当も有給休暇もなく早朝から深夜ま
でこき使われる毎日。逃げ場がない、いやあるのに気づかないフリを
して精神をすり減らし自身を追い込んでいく主人公の心境がリアルに
再現される。そして彼に近づいてきた青年の本当の目的。“命は自分
だけのものちゃうんや”という言葉が胸に突き刺さる。

なかなか契約が取れず、日々部長から暴力的な叱責を受けている隆は、
ホームから落ちかけたところをヤマモトに腕をつかまれる。ヤマモト
の明るさで生気を回復させた隆は少しずつ余裕を見せるようになる。

ところが、ヤマモトは同級生などではなく、実は3年前に自殺していた
事実が判明する。彼は幽霊なのか、霊園行きのバスに乗るヤマモトを
見かけた隆はますます疑念を深めていく。それでも友達になったのを
喜び真剣に心配してくれるヤマモトに隆は心を開いていく。

過労死、パワハラ、賃金不払いetc. 一人で悩むのではなく、誰かに
相談するだけで重荷は軽くなるとヤマモトの行動は教えてくれる。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

              「ちょっと今から仕事やめてくる」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170602

          を参考にしてください。

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号をもって休刊とさせていただきます。

約15年、最初のころは週3回、後半は週2回と定期的に発行した結果、
1852回を迎えるまでになりました。

しかし、今やSNSで情報を発信する時代、メルマガはもはや過去の遺物
と言ってもいいでしょう。

これからもブログのほうは続けていきますので、最新の映画情報だけ
でなく過去の作品評も参照にしてください。

本当に長い間ご愛読ありがとうございました。

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創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
発行周期:週3回  
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