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こんな映画は見ちゃいけない! 

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八重子のハミング こんな映画は見ちゃいけない! 

2017/05/11

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2017/5/11  Vol.1845    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
               「八重子のハミング」  です。

妻が壊れていく。最初はちょっとした物忘れだった。心の疲労が重な
ったからだと思っていた。ところが、その後も徐々に認知能力は衰え、
いつしか目を離すと徘徊するようになっている。物語は若年性アルツ
ハイマー症を患った妻を持つ男が彼女を看取るまでの12年間を追う。
発症したのは自分が心配をかけたからと思い込む夫は、介護を人任せ
にせず最期まで面倒を見ようとする。症状がすすむにつれ仕事との両
立ができなくなり娘一家の手を借りるが、いやな顔一つせず食事から
睡眠、排泄まで、妻のあらゆる生活シーンに寄り添う夫の姿は「愛」
そのもの。“優しさには限界がない”と肝に銘じ行動を律する夫の背
中はまさしく教育者、己に厳しい彼の頑固な生き方がにじみ出ていた。

食道がん手術で入院した誠吾は、献身的に看護してくれる妻・八重子
の様子がおかしいのに気づく。誠吾が腸の癒着で入院する頃には、八
重子は見舞いに来た次女の顔が思い出せなくなるほどに進行していた。

脳の働きが弱まるにつれ身だしなみにも気を遣わなくなり、ほどなく
誠吾と長女の千鶴子以外は認識しなくなる。ただ子供に戻っていく八
重子を見守る以外になすすべのない誠吾。特にトイレの世話は、それ
なりに体重のある八重子にいうことを聞かせなければならない。

映画は、八重子と誠吾のキレイ事ではすまない日常を感傷的にならず
に淡々と描写する。それは、ふたりの問題は今や超高齢化社会を迎え
つつある日本全体の未来像になりつつあるという警告でもある。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                  「八重子のハミング」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170301
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
         「ノー・エスケープ」  です。

ライフルの照準器をのぞき、狙いを定めてトリガーを引く。獲物は不
法入国者の群れ、ほとんどの者は一撃で仕留め、死なずにもがいてい
る者には頭にとどめの一発をぶち込む。物語は、密入国者を排除しよ
うとするハンターと彼に追跡される男女の逃走を追う。メキシコ人に
とっては見知らぬ荒野、地図もコンパスもないまま、身を隠す場所が
ない平原から険しい崖、固い棘が皮膚に食い込むサボテン樹林をあて
もなく走り回り、疲労や渇きとも戦わなければならない。ハンターは
優秀な猟犬とともに徐々に距離を詰めていく。極限までそぎ落とした
シンプルな構成は緊張感とスピード感に満ち、ギリギリの感情をむき
出しにする。このハンターに誰もがトランプ大統領を連想するだろう。

乗っていたトラックが故障し、モイセスらメキシコ人十数人が徒歩で
越境する。広大な砂漠をさまよううちに、彼らを嫌う米国人・サムが
狙撃を始めるが、モイセスはアデラとともに岩場に潜み難を逃れる。

保安官=政府の密入国者への弱腰対応に憤懣やるかたないサム。国境
付近は自分がルールと、まるで動物を狩るように無慈悲にメキシコ人
を殺す。何が彼を狂わせ、何ゆえ彼らを憎むのか理由は明かされない。

だが、情けにすがっても無駄、助けを請うても一顧だにしない冷酷さ
は、祖国を荒らす移民たちに甘い顔は見せないという、“狂気のアメ
リカ・ファースト”宣言でもある。一方で猟犬の死に泣き叫ぶ姿が、
サムもまた愛情深い一面があることを示す。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

              「ノー・エスケープ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170509

          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
         「カフェ・ソサエティ」  です。

大都会の片隅から夢の都にやってきた若者は、見た目も性格も素晴ら
しい美女と出会う。恋人がいるとわかっていても、いつか振り返って
くれると信じ思いを伝え続ける。物語は、大物エージェントの秘書に
恋した雑用係の青年が真実を知って成長する姿を描く。ハリウッドの
黄金期、セレブたちの暮らしを間近に体験した主人公がカネと欲望こ
そが人を動かす原動力であると学び故郷に戻って実践していく過程は、
来世を否定するユダヤ人の経済哲学が色濃く反映されている。やがて
つかんだ成功。結婚に対する考えかたが、相手を我がモノにしたい自
己満足が中心の男たちと、自分を少しでも高く見積もってもらいたい
女たち。その違いがコミカルな装いでテンポよく繰り広げられる。

ブルックリンからハリウッドに出てきたボビーは叔父のフィルから付
け人の仕事を与えられる。フィルのオフィスで働くヴォニーから恋人
と別れたと告げられ、ボビーは思い切って彼女にプロポーズする。

スターのゴシップに興味を示さず身の丈に合った人生を送ろうとする
ヴォニーに、ハリウッド人種にはない魅力を覚えたボビーは、積極的
に彼女を誘い悩みの聞き役になる。一方で、妻と離婚して愛人と一緒
になるかどうか迷っているフィルもボビーに愚痴を垂れる。

ヴォニーの恋人とフィルの愛人、ひとり気づいていない状況で結婚を
宣言するボビーの間抜けぶり。40年前ならアレン自身が扮したキャラ
をジェシー・アイゼンバーグがけれん味豊かに演じていた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

              「カフェ・ソサエティ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170508

          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
           「追憶」  です。

守りたかったのは現在なのか未来なのか。重大な秘密を抱えて生きる
男たちは、遠い昔に封印した事件と期せずして向き合う。それは彼ら
にとって忌まわしくも少しだけ懐かしい記憶。物語は、少年時代を共
に過ごした3人が、偶然の再会と1人の死によって呪われた過去に引き
戻される過程を描く。贖いのチャンスを見過ごしてきた自分には救い
はないと思っていた。隠し通そうとしてもほころぶのは時間の問題。
そして、疑いたくはないのに疑わざるを得ず、誰にも話せずひとりで
抱え込む。忘れてはいけないのに避けてきた自身を許せない刑事と、
決して忘れずに寄り添ってきた男の、深い思いゆえの苦悩がリアルに
再現される。センチメンタルな音楽の途切れぬ流れが感情を刺激する。

篤、啓太、悟の3人は涼子の世話になっていた。ある日、涼子を苦しめ
るやくざを殺そうとするが失敗、涼子が止めを刺しすべての罪を被る。
25年後、刑事になった篤は悟が被害者となった殺人事件の担当になる。

私生活がトラブルだらけの篤は終始浮かない顔。悟と飲んでも旧交を
温める気分になれず、啓太に借金に行くという悟に対しわずかなカネ
を与えるくらいしかしてやれることが思い浮かばない。捜査会議でも
悟と会っていた事実に触れようとしない。

このあたり、家族への思いやりに満ちた啓太や悟よりも己の気持ちを
優先してしまう篤の未熟さがより浮き彫りにされていく。それは身勝
手な母の血が流れていると自覚する篤の強烈な自己嫌悪でもある。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

              「追憶」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170510

          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
      「帝一の國」  です。

買収、裏切り、スキャンダル……。選挙に勝つためには手段を選ばず、
多数派工作に走り回る。現金が飛び交い恫喝まがいの違反行為が横行
する大人顔負けのパワーゲーム、物語は名門私立高校の生徒会会長選
に挑む高校生の奮闘を描く。将来は総理大臣になると言い切る高校生
がそのための修行とばかりに「政治」とは何かを学んでいく過程は、
時に生々しく時にデフォルメされている。軍隊のような規律の生徒集
会、ふんどし一丁での和太鼓乱舞、数人の輪が数十人に膨らむマイム
マイムetc. 細部まで洗練された集団シーンがこの作品独特の世界観を
構築し、生臭さと笑いが入り混じる映像が民主主義の在り方を問う。

名門高校に首席で入学した帝一は、次々期の生徒会長目指して、次期
会長選の候補者から仕えるべき先輩たちの鼎の軽重を問う。最初、氷
室派に志願するが、ライバル・菊馬の妨害を受け森園派に鞍替えする。

信念はなく勝ち馬に乗ることしか頭になかった帝一が、あらゆるしが
らみを嫌う弾と交流するうちに、弾にはあって己にはない“人望”に
ついて考え始める。頭脳明晰なだけではダメ、理想論より気配り。損
得勘定抜きで裏方を引き受け、困っている者に手を差し出しても見返
りは求めない者がリーダーとなりうるのだ。

言葉ではなく行動、努力ではなく結果。選挙期間中成長した帝一は、
人心をつかむにはくすぶっている不満をくみ上げ改革していく決意が
必要であると背中で訴える。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

              「帝一の國」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170424

          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
        「バーニング・オーシャン」  です。

海底から湧き出す気泡、異常な数値を示す計器、床から染み出す液体、
見ぬふりをする管理職。悪い予兆が限界まで膨らむと、圧力に耐えか
ねたビスが飛び、泥水が勢いよく噴出し、近くの作業員をなぎ倒す。
さらに漏れ出したガスにも引火、現場は瞬く間に炎に包まれる。物語
は洋上施設で起きた大規模火災と、その危機から脱出しようとする人
々を描く。工程を消化するためにこれ以上の遅滞は許されない。そこ
に安全確認を怠ったツケが壮大な悲劇となって襲い掛かってくる。作
業員だけでなく構造物まで吹き飛ばす高圧の水、支柱やフェンス・階
段などのむき出しの金属、人間の傲慢を戒めるかのように燃え盛る炎。
圧倒的なディテールで再現された大惨事は、焼きつく臨場感を覚えた。

海底油田掘削調査施設に出勤したマイクと主任のジョンは「セメント
テスト」の結果が適切に処理されていないと知る。ところが会社側の
幹部は安全基準を無視、ほどなく泥水が施設内にあふれだす。

狭い閉鎖空間、飛び散るドアや金属片に作業員が次々に負傷、命を落
とす者もいる。ガス爆発が加わるともはや手の施しようがない。そん
な中、マイクは電源回復のために火が回った部屋に突入したり、重傷
を負ったジョンを救出する。腹のたるんだ中年男、特殊な訓練を受け
ているわけでもない技師のマイクが思わぬ力を発揮する。

それは家族のもとに必ず帰るという意志のなせる業。愛する者の存在
が人間を強くすると彼の行動は教えてくれる。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

              「バーニング・オーシャン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20170424

          を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

韓国に新しい大統領が誕生しました。選挙戦中は「慰安婦像合意の見
直し」を主張していましたが、国の最高指導者になった以上、「見直
し」公約を見直さなければならないはず。

韓国にとって北朝鮮問題が最大の課題とは思いますが、日本としては
「慰安婦像問題」は日韓の協力の入り口とし、合意を守らなければ対
北で共同歩調は取れないという態度を明確にすべきです。

それは文大統領も分かっていると思いますが、厄介な韓国世論をどう
抑えていくかが腕の見せ所。

いずれにせよ、「困ったときの竹島上陸」という事態にならないこと
を祈るばかりです。。。

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      次回配信予定は5/13 作品は
         
            「アムール、愛の法廷」
         
              です。

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