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こんな映画は見ちゃいけない! 

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MERU こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/12/27

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/12/27  Vol.1814   ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
             「MERU」  です。

荘厳な美しさを持ったほぼ垂直に切り立った壁。シャークスフィンと
呼ばれる鋭く尖った峰は、張り付いた氷雪となめらかな岩肌ゆえに指
先をこじ入れる余地はなくつま先を支える広さもない。荷物を運んで
くれるシェルパはいない。ベースキャンプも設営できない。体を休め
られるのは吊りテントだけ。丸一日かかって数十メートルしか登れな
い日もある。身に着けた金具だけでかなりの重量になるのに、少し登
ってはテントや食料・装備を引き上げる。映画は、ある意味エベレス
トより過酷な頂を目指す男たちの苦難に密着する。そしてカメラは、
選ばれし者のみがたどり着ける場所からの風景を圧倒的な迫力で再現
する。このあくなきチャレンジ精神に、人間の可能性を再認識した。

登山家のコンラッドはカメラマンのジミー、命知らずのクライマー・
レナンと共に、インドのメルー山の未踏峰ルートに挑む。ところが、
想定外の困難の連続に見舞われ、残りあと100メートルで撤退する。

風雪で足止めを食った一行は狭いテントで天候の回復を待つ。4日間、
身動きが取れず食料が減っていく。その間、彼らは何を考え何を話し
たのか。映像にはない様々な葛藤があったはずだが、衰えない熱意は
命を懸けても達成しなければならないという使命感すら感じた。

その後帰国したレナンは重傷を負うが、精神力とハードトレーニング
で克服、メルー再挑戦に備える。平地に安住した人生には耐えられな
い、そんなレナンの性は生まれつきの本能、誰も止めらえない。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

              「MERU」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/201601022
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
             「聖杯たちの騎士」  です。

名声は得た。美しい妻と豪邸も手に入れた。パーティ三昧の毎日、取
り巻き女を侍らせている。次の仕事のオファーもある。だが、常に正
体のわからない物足りなさに付きまとわれている。映画はそんな、脚
本家として成功した男の女遍歴を描く。愛では不十分、セックスは一
時しのぎに過ぎない。大都会の喧騒から壮大な自然の風景、人々のざ
わめきから波や風のささやきまで、映像は写真集のごとく洗練された
構図。登場人物の心情をモノローグで表現し、ストーリーを語るので
はなく感じさせる独特の手法はここでも健在だ。抒情詩的なスタイル
が貫かれた主人公の魂の彷徨は人生の真実とは何かを問いかける。

ハリウッドセレブの世界を上手に泳ぎ回るリックは、享楽的な日々を
送っている。ところが、胸の奥ではいつも不安を抱え、次々と出会う
女たちに癒しを期待するが、思いを満たしてくれる者はない。

アパートはモノトーンで統一されている。高級な服を身に着けている
がこれ見よがしな装飾はない。リックが欲しいのは物質的な豊かさで
はないのは確か。日本庭園を訪れたリックがシンプルな生き方のほう
が不自由はないと諭され、“足るを知る”ことこそ邪念を除き精神を
研ぎ澄ますと教えられる。それでも苦悩から解放されないリックは教
会に救いを求めるが、そこでも“苦難は神の愛”といなされる。

結局、人生の真実など聖杯伝説と同じ、決して見つからないもののメ
タファーだとリックの旅が象徴する。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                  「聖杯たちの騎士」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20161226
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
  
               「ピートと秘密の友達」  です。

森の奥深く、ひとりぼっちで途方に暮れていた幼児を救ったのは巨大
な生物。物語は伝説のドラゴンに育てられた少年が社会に連れ戻され、
戸惑いながらも町の暮らしに順応していく姿を描く。両親はいないけ
れどドラゴンが守ってくれるから大丈夫、人間の友達はいないけれど
動物たちが遊んでくれるから寂しくない。ところが強欲な男たちは豊
かな森林資源を破壊するだけでなく、ドラゴンでひと儲けを企む。孤
児を保護する人々も、彼の気持ちを汲み取る以前に、自分たちの善意
が正義と信じている。もはや平和な子供時代は終わった、野生の生活
を続けるか人間として生きるか、選択を迫られた主人公の驚きと哀し
みに満ちた表情が切ない。

森林保護管のグレースはピートという半裸の少年を発見、町に連れて
帰る。一方、ドラゴンに脅され命からがら逃げ帰った製材業者のギャ
ビンは、捕獲部隊を組織しドラゴンの住む洞窟を目指す。

5歳で両親と死に別れたピートはわずかに言葉を話す。グレースに従う
が、ベッドやパジャマや点滴に面喰い、収容先の病院から脱走してし
まう。裸足で通りを駆け抜け、バスの屋根に上り、保安官を振り切ろ
うとする。彼にとって町や住人との接触こそ危険がいっぱいの冒険、
パパが教えてくれた勇気を振り絞って走る。

それでも、大人たちの前では無力、追い詰められたピートは、人間に
屈服させられる自然の弱さを象徴していた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                「ピートと秘密の友達」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20161227
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
              「皆さま、ごきげんよう」  です。

落とされた貴族の首をエプロンに包むフランス革命時の娘、略奪の後
で洗礼を受ける戦場の兵士、そして犯罪と事件と人情が絡みあう中で
生きる現代の市民。時にほのかなユーモアを漂わせ時に鋭い文明批評
をにじませる筆致は熟達の域に達している。映画はそれらの断片的な
エピソードをつなぎ合わせ、1枚のモザイク画にまとめる。根底にある
のは権力に対する強烈な揶揄と市井の人々への応援歌、一棟のアパー
トを中心に描かれた様々な老若男女の人間模様は人生の機微に触れ、
ゲームのようにひったくりを楽しむローラースケート姉妹をはじめと
する窃盗団の連携が躍動感を味あわせてくれる。計算されたロングシ
ョットを多用した構成は、話の先が読めない不安定さに満ちていた。

頭蓋骨を修復する学者と武器密売をするアパートの管理人は親友同士。
公園のベンチで知り合った男の恋愛相談に乗ったりもする。ところが、
娼婦を巡って意見が対立、友情にひびが入る。

2人の老人の他にも、ガミガミ女と職人、盗み見をする警察署長、棲家
を追われたホームレス、石造りの家に住む男、数等の犬を散歩させる
男など多彩なキャラクターが思い思いの日常を送っている。彼らは隣
人として繋がってはいるが、お互いの事情に踏み込むわけではない。

ヴァイオリニストに恋をする男に老人たちがアドバイスする例外はあ
るが、パリという大都会の人間同士の心地よい距離感が保たれていた。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

        「皆さま、ごきげんよう」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20161222
               
          を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

今年も1年間ご愛読ありがとうございました。本年の配信はこれで最後
です。というわけで2016年のベスト10です。

1:レヴェナント 蘇えりし者
http://d.hatena.ne.jp/otello/20160130

2:シチズンフォー スノーデンの暴露
http://d.hatena.ne.jp/otello/20160416

3:サウルの息子
http://d.hatena.ne.jp/otello/20151214

4:湯を沸かすほどの熱い愛
http://d.hatena.ne.jp/otello/20160718

5:手紙は憶えている
http://d.hatena.ne.jp/otello/20160825

6:殿、利息でござる!
http://d.hatena.ne.jp/otello/20160215

7:オマールの壁
http://d.hatena.ne.jp/otello/20160331

8:pk
http://d.hatena.ne.jp/otello/20160806

9:ニーゼと光のアトリエ
http://d.hatena.ne.jp/otello/20161122

10:ディストラクション・ベイビーズ
http://d.hatena.ne.jp/otello/20160524

それでは、よいお年を!

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      次回配信予定は1/7作品は
         
            「アイヒマンを追え!」
         
              です。

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最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、よい一日を!

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創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
発行周期:週3回  
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