映画

こんな映画は見ちゃいけない! 

映画批評系メルマガで読者数No.1! プロの編集者が簡潔な文章と的確な表現で書き下ろす「1分で読める新作映画批評」です。映画紹介だけのメルマガにはない「本物の批評」を堪能したい方だけご登録ください。

全て表示する >

アズミ・ハルコは行方不明 こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/12/08

■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/12/8  Vol.1809    ☆
   
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
             「アズミ・ハルコは行方不明」  です。

いつの間にか20代後半になっている。家でも会社でも楽しいことはな
く、声をかけてきた幼馴染とは恋人にもなれず中途半端なまま。映画
はさえない日常を送っているOLが失踪し、彼女の“尋ね人ポスター”
をグラフィティにした若者たちが世間にさざ波を起こしていく過程を
追う。夜な夜な街を徘徊する若者らのテンションは高いが、実は鬱屈
した日々に刺激を求めているだけ。そして歓喜雀躍しながら男を襲う
JK軍団。安月給の正社員か単純労働のバイトくらいしか仕事のない地
方都市、尊敬できない親世代にうんざりしている彼らの閉塞感がリア
ルに再現されていた。もはや「青春」が死語になった現代、途方に暮
れた人々の停滞した生き方が切ない。

成人式でユキオと再会した愛菜は、同級生だった学も加えて、行方不
明のままの春子のステンシル画を街中に印す。一方でJK軍団によるオ
ヤジ狩りが頻発、春子の隣人や学も暴行を受ける。

暴力の高揚感に打ち震えるJKたちは漲るエナジーを発散させている。
学校を卒業した愛菜は、社会という馴染みたくない現実と折り合いを
つけつつも心の老化と戦っている。春子は男にすがりついまで、まだ
“女”であるのを確認するまでに自己評価を落としている。

十代と二十歳とアラサー、時は残酷なまでに女たちから存在価値を奪
っていくばかりだ。資格も学歴も美貌もない、持っている財産は若さ
のみ。そんな女たちが未来に抱く不安に胸が締め付けられる。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

              「アズミ・ハルコは行方不明」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/201601206
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」  です。

財布を開けばカネをばらまくお大尽、口を開けば耳をふさぎたくなる
超絶音痴。自分には天賦の歌唱力があると疑わない彼女は、取り巻き
に囲まれて確信する。“私の美声はカーネギーホールに値する”と。
物語は、大金持ちで篤志家の老婦人と、秘書も兼ねる内縁の夫の深い
信頼を描く。世界的指揮者もオペラハウスの指導者も彼女の前では腰
を低くする。内縁の夫は彼女を守るために奔走する。資金力ゆえ誰も
がご機嫌を取ろうとし、過剰に装飾された彼女の評判はNY社交界の伝
説になる。感染症で正気を失ったヒロインの感情をメリル・ストリー
プが繊細に再現、愛された彼女の最晩年をチャーミングに演じる。

フローレンスの身辺を長年取り仕切ってきたシンクレアは彼女のリサ
イタルのピアノ伴奏者を募集、やわらかな曲を弾くコズメを採用。フ
ローレンスの技量に疑念を抱くコズメにシンクレアは忠誠を誓わせる。

満席のホールで自慢ののどを披露するフローレンス。だが、ほとんど
の招待客は我慢して聞いている。こらえきれなくなった金髪女が笑い
転げてもシンクレアは冷静に対処して、フローレンスが傷つかないよ
うに差配する。シンクレアにとっても最初は金蔓だったのだろう。と
ころが彼女に仕えるうちに純粋さと思いやりと真剣な生き方に魅了さ
れ、いつしか自らの結婚生活を犠牲にして彼女に人生を捧げている。

愛というには生臭い、仕事というには濃厚すぎる。善意で結ばれたふ
たりの関係が心地よい。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

            「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20161207
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
             「母の残像」  です。

時が悲しみを癒してくれた。出会いが喪失感を埋めてくれた。それで
も残された父と息子の感情は冷めたまま元に戻らない。物語は、交通
事故死した女性カメラマンの遺品を整理中に、夫と息子たちが彼女の
不在に苦悩させられる姿を描く。銃弾飛び交う戦場を駆け巡った彼女
は多くの死に直面するたび無力感に襲われていた。一方で、現場を優
先したために家族の中に居場所がなく、すぐにまた旅立ってしまう。
そんな彼女に、夫として息子としての気持ちを押し付けていたのでは
ないか、そのストレスに耐えきれず自殺したのではないかと、理解し
てやれなかった男たちは何度も自問する。散文的な映像は、家庭を顧
みない女と結婚した男とその息子たちの複雑な思いを繊細に再現する。

報道カメラマン・イザベルの回顧展が準備され、息子のジョナは彼女
の写真を選別するために父・ジーンと弟・コンラッドが住む実家を訪
れる。ところが、ジーンとコンラッドの関係はぎくしゃくしていた。

イザベルの死から3年が経っている。ジョナは赤ちゃんが生まれ、コン
ラッドはクラスの女子に片思い中、ジーンはコンラッドの先生と交際
している。それぞれがイザベルのいない日常に慣れ、己の人生を歩ん
でいる。だからこそイザベルを意識させる回顧展に積極的ではない。

確かに彼女の作品には戦争の真実を伝える力がある。だがそれは彼女
が一番愛したものが自分たちではなかったことの裏返し。そこに気づ
き誰も信じられなくなったコンラッドの心が切ない。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

           「母の残像」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20161205
               
          を参考にしてください。

==============================================================

        余|談|
        ━┛━┛

安部首相がハワイの真珠湾を訪問するそうです。でも、外国の固有名
詞を日本語に訳すのはちょっと違和感を覚えます。

1941年の奇襲以来歴史的に定着しているとはいえ、やはりパールハー
バーと呼ぶべきでしょう。サンフランシスコの金門橋やNYの自由の女
神も言語に近いカタカナ表記に統一すべきです。

もし米国人が青森を"Blue forest"、六本木を"Six trees"、東大寺を
"Great Eastern Templ"などと呼んだら意味が通じないはず。

誰も言い出さないところを見ると、そんなしょーもないことにこだわ
っているのは自分だけなのか。。。

==============================================================

      次回配信予定は12/10作品は
         
            「ミス・シェパードをお手本に」
         
              です。

---------------------------------------------------------------

このメルマガは、週2回発行です。

皆様からのご意見、ご要望、感想をお待ちしています。

            otello.com.ua@gmail.com

                         までお願いします。

いただいたメールはこのメルマガで紹介させていただくことがあり
ます。

なお、相互紹介の依頼は受け付けておりません。

最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、よい一日を!

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
発行周期:週3回  
Score!: 98 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。