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こんな映画は見ちゃいけない! 

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手紙は憶えている こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/10/27

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/10/27  Vol.1796   ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
              「手紙は憶えている」  です。

残された時間はわずか、覚束ない脳の働きと衰えた足腰に発破をかけ、
男は人生最期の思いを遂げようとする。物語は、アウシュヴィッツ生
存者が70年の時を経て収容所の殺戮者を探し出す姿を追う。目覚める
たびに前日の出来事を忘れている、いちいちメモを確認しなければ自
分が何をしているのか思い出せない。そんな状態で与えられた住所を
頼りに仇敵を訪ね歩く行程はいつ破綻してもおかしくない。それでも
己に課せられた使命を果たすまで死ぬわけにはいかない。元軍人、元
囚人、ネオナチ、元SS……。欧州から遠く離れた北米で身分を偽り、
息を潜めて生きてきたナチスの痕跡が生々しい言葉で再現される過程
は、彼らにとっての第二次世界大戦は終わっていないことを訴える。

老人ホームで暮らすゼブはかつての囚人仲間・マックスから、強制収
容所の指揮官・オットーがルディと名乗って潜伏中と知らされる。認
知症が進行中のゼブはマックスの手紙を手に出発する。

同名の容疑者は4人、ひとりずつ面会しては拳銃を突きつけ、大戦時の
所在を白状させる。ある者は陸軍である者は収容所で、いまだナチス
に対して複雑な感情を捨てきれない。ゼブは彼らの証言の中に自身と
の共通点を見つけ、オットーへの憎悪と怨嗟を増幅させていく。

同時に、繰り返される健忘に危うさを滲み出させ、旅の行く末に不安
を抱かせる。マックスとは連絡は取れても支援は期待できない、孤軍
奮闘のなかでゼブの苦悩だけが膨らんでいく。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

               「手紙は憶えている」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160825
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「ジェーン」です。

夫は撃たれて瀕死状態、幼い娘を連れて逃げるには荷が重すぎる。な
らば背水の陣を敷くのみ。そう覚悟した妻は、かつての婚約者に助力
を求める。しかし、彼の留守中に他の男と結婚した事実が重くのしか
かってくる。物語は悪党集団に追い詰められたヒロインが平和な暮ら
しを守るために銃を手に立ち上がる姿を描く。味方は気まずい関係の
男ひとり、わだかまりを抱えながらも目の前の敵を倒さねばならない。
二人の男と一つの決意、そして語られなかった真実が彼らの運命に決
着を促す。岩がむき出しの乾いた大地、砂漠に拓かれた小さな街、先
に銃口を向けた者が勝つフロンティアの掟。それら古典的なシチュエ
ーションに彩られた映像は、正統派西部劇の香りを濃厚に醸し出す。

ビショップ一味を迎え撃つために、ジェーンは娘を知人に預け、街に
弾薬の買い出しに出る。その帰りにビショップの手下に襲われたとこ
ろをダンに救われるが、ダンはジェーンの裏切りを許していなかった。

自分を捨てた女のために命を張るのはバカげているが、後に引けなく
なったダン。黙々と準備を進めるが、やはり割り切れない。それでも
ジェーンと言葉を交わすうちに己の不在中に何が起きたかを知る。愛
していたから言い訳になると思って口にしなかったつらい事情、お互
いに話し合おうとしなかったからこそのすれ違いが明らかになる。

あの時どうしてもう少しジェーンを理解しようとしなかったのか、そ
んな不器用なダンの後悔とやせ我慢が切ない。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                 「ジェーン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20161025
 
         を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「ダゲレオタイプの女」です。

巨大なカメラの前にモデルを立たせ、等身大の銀板に鏡影を焼き付け
る。露光は長時間に及び、その間モデルは身動きできない。それはま
るで、生きた人間の魂を吸い取り永遠に保存しているかのよう。物語
は、そんな撮影技法にこだわる写真家のアシスタントになった男が美
しいモデルと恋に落ち、欲望と狂気にとらわれていく過程を描く。死
の気配が濃密に漂う古い屋敷、いつしか現実と彼岸の境界はあいまい
になり、リアルな肖像を残した女たちは自己中心的な男たちにまとわ
りついていく。愛なのか憎しみなのか、希望なのか怒りなのか。緻密
なライティングはレンブラントのごとき効果をもたらし、身近な者を
傷つけた罪悪感が生む後悔と悲しみを象徴させていた。

ダゲレオタイプ写真家・ステファンの自宅兼スタジオに出入りするジ
ャンは、ステファンの娘・マリーに惹かれていく。モデルをしている
マリーは自由を求めて旅立とうとしていた。

自殺した妻の幻覚に苦しめられていたステファンはマリーと口論、マ
リーは階段から転落する。ジャンは病院に運ぶ途中息を吹き返したマ
リーをそのままアパートに引き取る。一方で開発業者と結託しひと儲
けを企んでいたジャンはステファンに屋敷の売却を持ちかけるが、思
惑通りに進まず苛立ちを募らせていく。

このあたり夢と現を行き来する浮遊感に覆われ、次第にやつれていく
面差しはジャンが後戻りできないところに足を踏み入れたと暗示する。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

               「ダゲレオタイプの女」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20161024
 
         を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

某大学院の文学研究科博士課程で出題された国語の入試問題を手に入
れたのですが、すごく簡単で驚きました。

そこは旧帝大のひとつの難関大の大学院で、受験者もかなり優秀な人
が多いはずなのに、なんか高校受験に出てきそうなレベルの設問ばか
り。

さすがに選択式はなくすべて記述式でしたが、漢字の書き取りや読み
を問う問題も進学校の生徒なら解けるはず。

大学入試より易しい大学院入試、やっぱり論文が決め手なのでしょう
か。。。

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      次回配信予定は10/29 作品は
         
           「湯を沸かすほどの熱い愛」
         
              です。

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