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こんな映画は見ちゃいけない! 

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セトウツミ こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/07/02

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/7/2 Vol.1764     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
               「セトウツミ」  です。

放課後、部活もバイトもするでもなく、ただ無為に過ごす少年たち。
他愛ない話題は尽きす、愚痴でも噂でも自慢でもない与太話が延々と
繰り広げられる。だがそのテンポは、漫才になる一歩寸前のボケとツ
ッコミ、絶妙の間合いの言葉のキャッチボール。くだらないと分かっ
ていてながらコミュニケーションを大切にしているのだ。映画は、男
子高校生2人の変わりばえしない春夏秋冬を描く。もちろん恋をしたり、
両親が離婚の危機になったり、誕生日を迎えたりと、些細な変化はあ
る。それでも、まったりと気が緩められるこの時間が永遠に続いてほ
しいと思っている。線香花火に“夏休みが終わらなければいい”と願
いを掛ける優等生の気持ちが、平和で平凡な日常の幸せを象徴する。

放課後時間を持て余している内海と瀬戸は、運河沿いの階段でいつも
だべっている。その日は遊歩道でじっと空を見つめる中年男の不審な
空気に興味を持つが、声をかけるほどの勇気はない。

内海にしょーもないネタを大げさに振り、反応が薄いと言ってはすね
る瀬戸。クールな秀才の内海は仕方なく付き合っているが、彼の応答
はシニカルで瀬戸の心に突き刺さる。吉本文化圏で育ったノリの瀬戸
を上から目線で見つつ内海は自分の中の別の一面を発見していく。

ひとりでいる方が好きだった内海が瀬戸とつるんでいるうちに友達の
ありがたさがわかっていく過程は、意味のある時間だけが人生ではな
いと教えてくれる。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                  「セトウツミ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160312
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
          「フラワーショウ!」  です。

自然と人間が共生できる場所を作るのが使命と悟った少女は、造園を
通じて実現しようとする。強く願えば夢は叶う。物語はそう信じるヒ
ロインが英国随一のコンテストに出場し、理想の庭園を竣功するまで
を描く。カネなしコネなし経験なし、さらにアイデアをスケッチした
デッサン帳まで盗まれる最悪の状況からひとつひとつ難題を解決して
いく過程は、手垢のついたサクセスストーリーとは一線を画し、彼女
の純粋な思いはスピリチュアルな趣すら漂わせる。失敗した時のこと
など考えても時間の無駄、落ち込んでいては前進できない、一方でガ
ツガツとしたところは少なく控えめなのに芯は強い。エマ・グリーン
ウェルが演じる、ハリウッドにはいないタイプの女性像が新鮮だった。

田園地帯で育ったメアリーは、ガーデンニングを学んだ後有名な園芸
家に弟子入りするが、デザイン画を奪われた挙句追い出される。一念
発起したメアリーはチェルシーフラワーショーでの金メダルを目指す。

エントリーを受け付けてもらうために電話を繰り返して事務局の秘書
を味方にする。職人探しも持ち前の粘りでカルト教団風の環境保護団
体に依頼する。そして運命の必然のごとく何度も顔を合わせる植物学
者の青年には、エチオピアにまで足を運んで理解してもらおうとする。

家賃が払えず食費も切り詰める生活から這い上がり、ショーへの出展
を果たすまでは行動あるのみ、まっすぐに突き進む彼女の姿は自分の
意志というよりも神に背中を押されているように見えた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

               「フラワーショウ!」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160519

          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
          「ふきげんな過去」  です。

変わり映えのしない日常はこの先もずっと続き普通に年を取っていく。
未来が見えると言う女子高生はそんな言い訳をして怠惰な毎日を貪っ
ている。それでも運河でワニを探したり喫茶店で見かける男を尾行し
たりと、少しは現状に刺激を与えようと工夫はしている。そこに現れ
た、死んだはずの伯母。物語は退屈だが平和な家庭に入り込んだ異分
子とヒロインの葛藤と交流、そして理解し合うまでを描く。下町の風
情色濃い商店街と林立する大規模マンション群が隣り合う町、そこは
カコとミライという2人の女のねじれた関係を象徴しているかのよう。
かつては“未来”だった建物が今では“過去”として風景に馴染んで
いる皮肉が、時間は一方向にしか流れないことを再認識させてくれる。

学校に行かずブラブラしている果子の家に、爆弾犯の未来子が帰って
くる。警察やヤクザを避け潜伏生活をしていたと語る未来子を家族は
腫物に触るがごとく扱うが、果子は自室に居ついた未来子が許せない。

未来子のおかげで単調な生活にさざ波が立ったのに、果子はときめき
を覚えるどころか面倒くさそうにするだけ。一応、周囲から未来子の
情報を仕入れようとするが言葉を濁す人の方が多い。やがて、果子は
未来子に誘われて廃屋から硝石を掘り出し、爆弾作りを手伝わされる。

本当ならワクワクする冒険なのに、果子はここでもふくれっ面のまま。
十代の少女特有の“自分が何者かわからずイライラする”気持ちはわ
かるのだが、伏線の回収も感情の爆発も控えめで、共感とも程遠い。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

               「ふきげんな過去」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160630

          を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

姉妹・母娘・親友……。とても近しい関係の女同士が相手に隠してい
た本音を吐露していく、湊かなえの直木賞候補作「ポイズンドーター
・ホーリーマザー」を読みました。

肉親だからこそずっと抑えてきた感情がある、その遠慮がいつしか大
きな不満・怒りになって爆発する。そのドロドロとした心の動きが6編
の短編の中でディテール豊かに再現されます。

特に“毒親”に苦しめられてきた娘の逆襲を描いた「ポイズンドータ
ー」は、子育てとは何かを考えさせられます。

誰もが相手に不満を持っている、だが視点を移すと不満を持つ本人こ
そが不幸の原因というオチも秀逸。げんなりした気分にさせてくれま
す。

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      次回配信予定は7/7 作品は
         
         「ブルックリン」
         
              です。

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