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こんな映画は見ちゃいけない! 

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シチズンフォー こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/06/09

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/6/9 Vol.1757     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
           「シチズンフォー スノーデンの暴露」  です。

メールやウェブ閲覧履歴だけではない、IC乗車券からクレジットカー
ド、IP電話まで、デジタル化されたあらゆるデータを収集する米国政
府機関。点と点の足跡をつなぎ合わせれば人々の行動が丸裸にされる。
最初はテロリスト対策だった、いつしかターゲットは国民全体、いや
世界中の人々の個人情報に拡大された。やがてVIPのみならず要注意人
物と判断された人は徹底的にマークされるようになる。あまねく通信
記録にアクセスすることで活動を監視する世の中になるのを恐れたひ
とりの若者の告発はすべて真実、映画は行きすぎたネット社会の現在
と未来に警鐘を鳴らす。“自由とはプライバシー”という言葉が、我
々がいま守るべきものは何かを問いかける。

ドキュメンタリー作家・ローラにシチズンフォーと名乗る人物からメ
ッセージが届く。ジャーナリストのグリーンウォルドと共に取材に向
かったローラの前に現れたのは元情報機関職員・スノーデンだった。

スノーデンのリークは周知だが、この作品はその実名顔出し告白の瞬
間を撮影した一大スクープ映像でもある。安全保障を揺るがす暴露は
国家に対する反逆、通信は必ず暗号化し、接触は香港のホテルを選ぶ
など、慎重に慎重を重ねて当局の尾行がないかを確かめる。インタビ
ュー中も火災報知機や部屋の電話に神経質になるなど警戒は怠らない。

その過程は並のスパイ映画をはるかに上回るスリル、アクションはな
くてもフィクションにはない圧倒的なテンションが伝わってくる。

       お勧め度=★★★★*(★★★★★が最高)

             「シチズンフォー スノーデンの暴露」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160416
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
               「高台家の人々」  です。

口下手ゆえに妄想にふけってしまう女。人々の本音を見通せるゆえに、
対人距離を測りかねている男。女は男のイケメン&ハイソなプロフィル
に幸せな想像を膨らませ、男は女の邪心のなさに興味を持つ。物語は
テレパスのエリート社員に恋をした平凡なOLの葛藤を描く。願望を察
知して先回りしてくれるやさしさが最初のうちはうれしかった。でも、
隠しておきたいことも知られてしまうもどかしさに、彼女は心を閉ざ
してしまう。映画は、思考という究極のプライバシーをのぞき見され
る不快さをコミカルに再現するが、それはビッグデータの解析で個人
を丸裸にしようとする現代の情報化社会を暗喩しているようだった。

名門・高台家の長男で海外事業部の光正から声をかけられた木絵は、
つい突飛な空想をしてしまう。木絵のイマジネーションに思わず笑う
光正は彼女の純粋さに惹かれていくが、母に交際を反対される。

光正の妹、弟もテレパスだが、やはりどこかで他人の本性が見えてし
まう現実とうまく折り合えず苦しんでいる。こんな能力を持つのは果
たしてラッキーなのか、好きな人の内面まで見通せてしまう悲しみ、
そして相手の恋愛感情に影響を与える力はない無力感。彼等もまた人
間関係に疲れ、結局3兄妹弟で過ごす時間が長い。

過去は変えられない、生まれつき備わった能力も分離できない。なら
ば、それらをすべて受け入れよう。誰かの幸福を願えばきっと自分に
返ってくる、そう教えてくれる作品だった。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                   「高台家の人々」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160606
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
                「団地」  です。

口先ばかりの自治会長とごみの分別にうるさい妻。継子に暴力をふる
う男と自意識過剰な妻、ひたすら歌って耐える息子。井戸端会議に余
念のないおばはん連中。そんな団地に引っ越してきた熟年夫婦は空気
になじめず、少し距離を置いている。物語は、隠棲宣言した夫と、周
囲から殺人犯の疑いかけられる妻の秘密を描く。ボケてはツッコミを
入れるディテール豊かなテンポの速い会話。あらぬ想像を事実と信じ
てしまう妄想力。理解できない者を排除しようとする排他性。「団地
は噂のコインロッカー」という言葉に象徴される人間関係の濃さとい
びつさが、この小宇宙に生きる人々の偏狭な性格を表している。21世
紀の都会の片隅にも、まだまだ村社会は健在なのだ。

漢方薬局を廃業して転居してきたヒナ子と清治は、たまに訪ねてくる
真城のためにだけ丸薬を作って売っている。ある日、自治会長選に敗
れた清治は収納スパースに引きこもってしまう。

2か月も見かけなくなった清治が殺されたと言い出すおばはん4人組。
ほどなくヒナ子は得体のしれない女として遠巻きに観察されるように
なる。“ありえへんことがありえるのが団地”とばかり、いつしか清
治は細切れにされ捨てられたことになっている。

さらにワイドショーのレポーターから警官まで巻き込んで、団地の人
々のイマジネーションは膨らんでいく。日常が異常に支配されていく、
そのプロセスにおける登場人物の心の変化がリアルだった。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                     「団地」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160607

               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
              「或る終焉」  です。

患者に寄り添い要望にはできるだけ応えてきた。患者が亡くなっても
悲しみを出さないように努めてきた。物語は終末期の患者のケアをす
る派遣看護師の孤独を描く。骨と皮だけなったエイズ患者、リビドー
旺盛な老人、下着を汚してしまうガン患者。命が尽きかけた人々は家
族より彼を頼りにしている。きれいごとではない、リアルな介護の現
場をカメラは静謐な視線で見つめ続ける。患者に信頼されなければな
らないが友情を抱かせてはいけない。少しでも快適に過ごせるように
気を使うが、患者の気持ちを考えてあくまでビジネスライクに接する。
一方で、決して消えない胸中のしこり。複雑な過去を抱えながらも死
と対峙する主人公を、ティム・ロスが繊細に演じ切る。

サラを看取ったデイヴィッドはジョンの介護を請け負う。デイヴィッ
ドは、元建築家でエロ動画好きのジョンを理解しようとするが、無断
で夜勤シフトを変わったためセクハラの疑いをかけられる。

抗議しようとしても立場が弱く泣き寝入りするしかないデイヴィッド。
それでも、医大に通う娘・ナディアに再会すると落ち着きを取り戻す。
だが、息子に先立たれたデイヴィッドの心は完全に晴れることはない。

患者とは日常的に身体接触しているのにトレーニング中のジムでは袋
入りのタオルを要求するあたり、仕事以外では潔癖症になるというデ
ヴィッドの歪んだ性格が象徴されていた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                   「或る終焉」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160608
               
          を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

The Greatestと自他ともに認める男が亡くなった。ザイール(現コンゴ)
のキンシャサで見せた奇跡は、まさに神の力が働いているとしか思え
ませんでした。

彼の名は、日本語表記ではモハメド・アリとして1970年代に確定して
いるのに、死亡記事ではムハマド・アリと書く新聞が多くて閉口。執
筆した記者は、原語発音に近い表記をしたつもりなのでしょう。

アリの現役時代を知らない知識の乏しい記者に違いありません、なん
か神話を踏みにじられた気がします。

マホメッドはムハンマド、イスラムはイスラームと表記される時代な
ので仕方ないのかもしれませんが、モハメド・アリだけは変えないで
ほしい。。。

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      次回配信予定は6/10作品は
         
             「エクス・マキナ」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
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