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こんな映画は見ちゃいけない! 

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殿、利息でござる こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/05/14

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/5/14 Vol.1750    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
                「殿、利息でござる」  です。

口外せず、名も出さず、日常生活では慎みを身上とする。世のため人
のために生きると決めた者は損得勘定を一切捨て、恩に着せず報いを
求めず、その善行を他人に知られてはならない。物語は江戸時代中期、
産業の乏しい宿場町の百姓町人が知恵を絞り力を合わせて重税と課役
の軽減策に粉骨砕身する姿を描く。誰もが武士の理不尽な支配に不満
を募らせているのに口に出せずにいた。でも勇気ある主人公が無謀だ
と思える計画に一歩踏み出したとき、あきらめていた人々も彼に希望
を託し共に走り出す。頑張るしかない、同志を増やし上位者を説得し
決定権を握る者に決断を促す、決して暴力的にはならず言葉で理解を
求める彼らの姿勢は、強烈な意思こそが人を動かすと訴える。

代官への直訴を諫められた十三郎は、千両を藩に貸し利息を町に還元
するアイデアに光明を見出す。篤平治らと共に村長格の肝煎、村々を
束ねる大肝煎に打ち明けると皆賛同、早速資金集めに奔走する。

だが、簡単に作れる金額ではなく、質素倹約に努め家財を売り払って
もまだまだ足りない。ところが十三郎の弟・浅野屋が出資を申し出る
と急に十三郎がへそを曲げる。その間、十三郎と浅野屋の因縁、先代
浅野屋と夜逃げ男の秘話などのエピソードが盛り込まれ、生真面目だ
がコンプレックスに悩む十三郎のキャラが浮き彫りにされる。

俗物の塊のような両替屋を一枚かませ、きれいごとだけでは済まない
人間の本質を代弁させるという構成が映画に奥行きを持たせていた。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                  「殿、利息でござる」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160215
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
                    「ふたりの桃源郷」  です。

燃料は薪、電気は自家発電、湧き水を利用し、電話はないが手紙は受
け取る。住居はバラック小屋、夜は廃バスに置いたダブルベッドで寝
る。米以外の食料は小さな畑で採れる野菜と山菜で補っている。カメ
ラはそんな老カップルの、ほぼ自給自足の日常にフォーカスし、夫婦
とは、家族とは、日々の生活とは、そして老いとは何かを問う。軽ト
ラックや耕耘機はあるが基本は手作業、80歳を超えると体が思い通り
に動かなくなる。ずっと馴染んだ暮らしを捨て老人ホームに越すべき
か。娘たちの世話になるべきか。だが彼らはそれらを潔しとせず、体
力が続く限り畑を耕そうとする。ただ山が好きな気持ちがふたりを支
えている。その押しつけがましさのないところに好感が持てた。

復員後、麓の集落から離れた山間を開墾した寅夫は妻・フサコと移り
住み3人の娘を育てる。一度は現金収入を得るために都会に出るが、娘
たちの独立後、山で余生を過ごそうとフサコとふたりで戻る。

オーガニック作物しか食べないといった“食”へのこだわりでも、環
境を守らなければといった使命感でもない。寅夫とフサコが桃源郷を
作ろうとしたのは、国・行政への不信感だったのではないだろうか。

決して旧日本軍での体験や戦後の食糧難に対する不満を口にしたりは
しないが、自分たちの食い扶持は自分たちで賄えば、少なくとも空腹
にならないという考えが根底にある。彼らの働く姿は、食べることは
生きることだと教えてくれる。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

               「ふたりの桃源郷」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160405
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「LISTEN リッスン」  です。

音は一切ない。ところがリズムに乗って体をくねらし手を交差させ流
麗なステップを踏む彼らのダンスに、様々な曲が頭の中で響きだす。
そして手指の細かい動きは具体的なメッセージを伝える。それは恋の
喜び、四季の移ろい、愛や苦悩といった、健聴者が思わず歌い出した
くなる心の衝動。耳で聞くのではなく目で視る、五体を使ったパフォ
ーマンスが彼らにとっての“音楽”なのだ。聾者に音楽の概念が正し
く理解できるのか、リズムは感じられてもメロディは分からないはず。
そういった健聴者の疑問をよそに全身で喜怒哀楽を表現する過程は、
“音のない音楽”が確かに彼らの中に存在すると訴える。

素人レベルからプロレベルまで、カメラはただ、聾者のダンサーたち
が、ビーチやスタジオや河原や街角で踊る姿を追う。そこでは寄せて
は引く波も、木々の枝を揺らす風も、川のせせらぎも、人々が行き交
う雑踏の生活音も、激しく踊るダンサーの息遣いすら無視される。

聾者は普段こんな状態で暮らしているのだろうか。配られた耳栓で聴
覚を遮断され、初めて体験する沈黙の世界。だが健聴者は記憶を探り、
撮影現場で聞こえていた音を想像してしまう。結局、生まれつきの聾
者の感覚を共有することは不可能。

それでも、ダンサーの技量が洗練されるほど“音楽”が見えてくる。
聾者たちがどんな思考回路で彼らなりの“音楽”を楽しんでいるのか
はわずかながら共鳴できた気がした。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「LISTEN リッスン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160311
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
     「ヴィクトリア」  です。     

登場人物が体感する時間と同じ長さを観客も共有する。女に寄り添う
カメラは未明から早朝の街を駆けずり回り、夢に破れ未来を見失った
彼女の心を代弁するかのように、共に運命に流されていく。劇中次々
と起きる事件やハプニングはすべて入念なリハーサルを重ねたうえで
本番に臨んだはず。NGを出せば翌日を待って撮り直さなければならな
い。そんな、わずかなミスが命取りになるワンショット撮影はフィク
ションとして描かれる彼女の冒険以上に緊張感を孕んでいた。その、
時間と空間を自由に切り張りできる映画表現に一石を投じる試みは俳
優たちからリアルな感情を引きだしていた。物語はチンピラ4人組の犯
罪に加担する羽目になったヒロインが、逡巡しながらも行動を共にす
る姿を追う。ひとりになるのを恐れるあまり気を使いすぎる彼女の笑
顔が切ない。

ゾンネらに声を掛けられたヴィクトリアは、酔いつぶれた男の代役を
引き受ける。ゾンネたちは銀行で現金を強奪、ヴィクトリアの運転す
る盗難車で逃げるが、乗り捨てたところを警察に見つかる。

前半はユルユルの会話が続き、強盗も直前に詳細を聞かされる。おま
けに4人とも素人同然の手際の悪さで、逃走経路すら用意していないな
ど杜撰極まりない。その上カネを奪った後クラブで騒ぎを起こす始末。

無軌道な青春の一コマと言うには余りにも甘い展開、だが全編ロケで
撮りきったチャレンジ精神は今後の作家たちに影響を与えるはずだ。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「ヴィクトリア」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160512
               
          を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

大谷、藤浪、松井といった球界を代表する投手はみな、子供の時水泳
を習っていたそうです。関節の可動域が広がり、野球に役立っている
とのこと。

他にもテニスの錦織、女子サッカーの澤らも水泳経験者。やはり手足
とも左右同じ負荷をかけるから体幹のバランスがよくります。

あと、肺活量が上がるので持久力も向上、膝に負担がかからないので
ケガの心配も少なくてくみます。

でも、やっぱり最大の理由は、初期投資が水着・ゴーグル・キャップ
など数千円で済むことでしょう。親にとってはこれがいちばんありが
たいかも。。。

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      次回配信予定は5/20作品は
         
         「マクベス」
         
              です。

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