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こんな映画は見ちゃいけない! 

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ヘイル、シーザー! こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/05/12

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/5/12 Vol.1749    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
                「ヘイル、シーザー!」  です。

勇壮なローマ軍、プールのマーメイド、そしてダンス満載のミュージ
カル。撮影所が夢の工場でスターが伝説だった時代、その神話を守る
ために男は夜明け前から深夜まで働き続ける。物語はハリウッド黄金
期が翳り始めた1950年代、繁栄を陰で支えた“何でも屋”のワーカホ
リックな日常を描く。時に現場の潤滑油、時に強面のフィクサー、硬
軟織り交ぜた交渉術であらゆる問題を解決する手腕は周囲から絶大な
信頼を得ている。うんざりしながらもこの仕事が辞められない主人公
の姿に、大いなる映画への愛が込められていた。

大手スタジオの管理職・エディは、撮影中の大作の主役・ベアードが
誘拐されたと知らされる。早速身代金を用意し受け渡し場所に持ち込
むが、カネの行方を新進俳優・ホビーが追跡する。

ベアードを拉致したのはハリウッドに巣食う共産主義者たち。赤狩り
で地下に潜ったのだろう、海岸の豪邸を隠れ家に組織の結束は固い。
ローマ風の鎧をつけたままのベアードは、そこでいかに映画界の人々
がプロデューサーに搾取されているかを説かれ共感してしまう。

一方、話題作りのために女優とデートしたホビーは得意の投げ縄でウ
ケを狙う。さらにハリボテの潜水艦まで登場する。このあたり、スタ
ジオの外が虚構のように表現され、映画人にとってはステージこそが
現実であると強調する。エディは虚実皮膜の間を行き来できる撮影所
随一の人間として重宝されているのだ。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                  「ヘイル、シーザー!」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160316
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
                    「64-ロクヨン- 前編」  です。

怒号が飛び交い罵声が響く中、皮肉と沈黙に行く手を阻まれる主人公。
経歴に傷をつけたくないキャリア組・同期のライバル・かつての同僚
らとのパワーゲームに翻弄され、家庭内の不和に気持ちを乱され、犯
罪や交通事故被害者に深く同情し、記者の突き上げをのらりくらりか
わす。物語は県警の広報官という、権限は小さく責任は重い中間管理
職の奮闘を描く。理解者は妻と3人の部下だけ、次々と起きる無理難題
に苦悩しながらも、とにかく当事者との直接対話で突破口を見つけよ
うとする姿は悲壮感すら漂わせ、ノンキャリアの悲哀を味合わせてく
れる。

警視総監視察時の記者クラブ対応を一任された三上は、それを機に未
解決誘拐事件・ロクヨンを見直す。当時捜査を担当した関係者を訪ね
歩くうちに、重大なミスが隠蔽されていたと知る。

問題をひとりで抱え込み、周囲に相談しない三上。部下の婦警に、も
っと心の窓を開いてある程度は部下に任せ、新聞記者の理性を信用し
ろと意見される。刑事部出身の三上にとって他人を頼るのは弱みを見
せるのと同じことなのだろう、常に競争しつつ情報をコントロールし
ながらもチームで動く職業の矛盾した心情が浮き彫りにされる。

特に、三上がつい最近まで所属していた刑事部に顔を出しても警務部
のスパイ扱いされてまともに相手にされないシーンは、何事も疑って
かかる刑事たちの人間不信を象徴していた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

               「64-ロクヨン- 前編」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160225
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「ヒーローマニア 生活」  です。

道徳は廃れ善意や良心も忘れられた地方都市、チンピラが通りを闊歩
しホームレスがあちこちにたむろしている。その状況を苦々しく思い
ながらも行動を起こせない男は、妄想の中で彼らに天誅を加え精神の
バランスを保っている。そんな彼の前に現れた運動神経抜群の若者。
物語は2人が街の治安を守る活動中に同志を増やし、チームが町の救世
主になっていく過程を描く。市民には歓迎され、ニュースにも取り上
げられるようになった。だが、小さな悪しか相手にできない自分たち
に限界も感じている。そこに持ち込まれた驚きの提案。通常のヒーロ
ーものとは一線を画す展開は、戸惑い立ちすくみながらも闘うしか道
が残されていない主人公の、等身大の苦悩が凝縮されていた。

コンビニ店員の中津は、インネンをつけてきた客をぶちのめした土志
田に共闘を持ちかける。そして初めての不良狩りの夜、金槌を手にし
た日下が加勢、現場を目撃した女子高生のカオリもメンバーに加わる。

ヘタレな中津に対し、驚異的な身体能力で敵を圧倒する土志田、巧み
に金槌を操る日下。この2人が繰り広げる格闘シーンは、スピードとテ
クニックの中にもコミカルな動作がまぶされる。さらに日下の知人・
宇野の発案で自警団として法人化、中津らは幹部に迎えられる。

宇野の方針に違和感を覚える中津は徐々に仲間と距離を取る。中津の
葛藤は、一般市民が警察機構に代わって暴力を行使するというのは、
一つ間違えれば自己満足の凶器になりかねないと警鐘を鳴らしていた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「ヒーローマニア 生活」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160415
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
     「サンマとカタール 女川つながる人々」  です。     

見渡す限り整地された土地に冷蔵倉庫ができると加工場が周りを取り
囲み、モダンな駅舎が新設されると洗練された商店街が整備されてい
く。東日本大震災で市街地がほぼ壊滅した町、住民は高台に移り住み、
主産業である水産業や商業地区を海に近い平地に集約させる。ある意
味、津波に根こそぎにされたからこそまとまった大胆な再生案だ。映
画は、東北の小さな町が中年以下の有志によって再建されていく過程
を追う。「20年後のことに責任は持てない」と、あっさり権限を委譲
しサポート役に徹する長老たちの潔さは、老害に苦しむ組織の良いお
手本になっている。確かに多くの命が奪われた、しかしそこから希望
を見出すのは未来を生きる世代の責務であるとこの作品は訴える。

中心部の8割が津波で流されてしまった宮城県女川町。まず水産業を立
て直そうと、カタール政府の援助を受けて巨大冷蔵倉庫を建設に着手
する。そして4年目の追悼式に向けて「復幸祭」の準備に入る。

昼夜を問わず奔走する町長をはじめ、復興の中心メンバーは30〜40代。
みな本業をこなしながらも手弁当で打ち合わせに参加し、意見を戦わ
せる。家族を亡くした人もいる、家や職場を失った人もいる。それで
も、いつまでも悲しみの中で立ち止まっていてはいけないという思い
が、行政を刺激し大企業を動かすのだ。

ただ、その陰で繰り広げられたであろう、カネや利権を巡る生臭い話
やドロドロとした人間模様も覗いてみたい気もするが。。。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「サンマとカタール 女川つながる人々」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160510
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「緑はよみがえる」  です。     

来る日も来る日も積もった雪を掘り返し、銃弾と砲弾におびえながら
過ごす。前線の兵士にとっては仲間が次々と死んでいくのが日常であ
り、自分の意思でそこから離れるわけにはいかない。やがて現状を知
らない司令部からは到底成功の見込みがない命令が届けられる。物語
は第一次世界大戦の伊墺戦線、山岳地帯に陣取る塹壕で銃を構えるイ
タリア軍兵士たちのある一夜を描く。休戦中は自慢の声で味方のみな
らずオーストリア兵からも喝采を浴びるのに、戦闘が再開すると砲弾
を浴びる。装備の差か地理的要因か、単発の反撃しかできない。指揮
官は軍務を投げ出し、部隊は行き場を失う。そして雪に埋めた戦友の
死体ばかりが増えていく。戦う意味を見失い戦争にうんざりしながら
も、故郷の家族からの郵便を楽しみに銃を握る兵士たちの姿が切ない。

極寒の中、食料も不足しがちでインフルエンザまで蔓延する塹壕に、
少佐と中尉が新たに通信ケーブルを敷けという命令書を持ってくる。
それは狙撃兵の餌食になるだけの無謀な作戦だった。

当然塹壕の司令官である大尉は反発、従わない上に軍位を返上してま
う。当時は理不尽な命令に背いても許されたのか、少佐は特に反対も
せず、年若い中尉に指揮を託す。だが、中尉はうろたえ、人を殺すの
が戦争の本質であることをきちんと把握していない。

彼が母に書いた手紙の一文に、人間のあるべき理想とそうなれない哀
しさが凝縮されていた。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                     「緑はよみがえる」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160429
               
          を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

米国の高校で、学校のアルバムに載せるイスラム教徒の女子生徒の名
前を「Isis」と誤表記し問題になったとニュースで報じられました。

確かに女子生徒にとってはイスラム系過激派組織のメンバーと誤解さ
れるような記載で迷惑な話です。

トヨタにも「Isis」という名のミニバンが発売されていますが、近頃
すっかりCMを見なくなりました。

そういえばトヨタは過去に「カリーナED」というクルマも生産してい
ました。バイアグラを飲まないと運転できないような。。。

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      次回配信予定は5/14作品は
         
         「殿、利息でござる」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
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