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こんな映画は見ちゃいけない! 

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アイヒマン・ショー こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/04/23

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/4/23 Vol.1746    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
                「アイヒマン・ショー」  です。

狂気の殺人者なのか、命令に従っただけの軍人なのか。数百万人をガ
ス室に送り込んだ責任者として起訴された男は、厳しい告発にも生々
しい証言にも眉一つ動かさず、核心に迫る質問も巧みにはぐらかし、
無罪を主張する。物語は1961年イスラエルで行われたナチス重大戦犯
裁判をTV中継したスタッフの奮闘を追う。粘り強く交渉を続けるプロ
デューサー、被告に注視するディレクター、そして法廷で明らかにな
った収容所での出来事に沈黙していた人々が口を開き始める。第二次
世界大戦終結後15年以上もホロコーストの検証はされず、強制収容所
生還者の話が世間に信じてもらえず、なによりユダヤ人の間にも過去
を掘り起こしたくない空気が濃かったのが驚きだった。

アイヒマン裁判中継の準備に余念のないミルトンは、総合演出に米国
の監督・レオを迎える。法廷内の壁にカメラを隠すことで中継の許可
を得た撮影班は、防弾ガラスに守られたアイヒマンの登場を待つ。

アウシュビッツからの生還者が体験を語り出し、骨と皮になった収容
者やおびただしい死体の山といったフィルムが映し出されると、全世
界に衝撃が走る。被害に遭ったユダヤ人自身がアウシュビッツを忘れ
たがっていたという事実が人の心の繊細な働きを象徴していた。

視聴率を気にするミルトンに、レオがこの裁判を報道する者の使命を
教えるシーンは、人間はいかなる場合でも“理性の喪失”を防がなけ
ればならないと訴えていた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                  「アイヒマン・ショー」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160211
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
                    「太陽」  です。

鳴り響くサイレン、昇りはじめた太陽。夜明けとともに支配者たちは
去り、虐げられた人々の日常が始まる。だが、彼らの暮らしは電気も
水道も満足にはなく、人力で畑を耕す20世紀前半の農村のよう。物語
は人間の属性が2種類に分けられた近未来、下層階級に生まれた若者た
ちの苦悩と葛藤を描く。上層階級への道は閉ざされているわけではな
い。それでもそちらに行けば故郷を裏切ったと思われるのを心配する
少女。一方でより良い人生のために志望する少年もいる。貧しいけれ
ど人と人の距離感が緊密なムラ社会と、科学的にも文化的にも洗練さ
れてはいるが無機質な管理社会。より人間的に生きられるのはどちら
なのかとこの作品は問う。

キュリオ階層の鉄彦と結。鉄彦は先進文明を享受するノクスになりた
いと願っているが、結はノクスを嫌っている。鉄彦がノクスへの転換
手術に応募すると、結の父が彼女の応募書類を提出してしまう。

ノクスは妊娠しにくく、キュリオの子供をノクスに転換させ養子にし
ている。キュリオの村では成人に近い鉄彦と結がガキじみた遊びでじ
ゃれ合っている。いまだ木造家屋に裸電球のキュリオと高層ビル群で
清潔な生活を送るノクス。

圧倒的な格差は21世紀の資本主義社会の行く末を暗示する。いや、ノ
クスはむしろ人間に対して優位に立つまでに発達した人型人工知能の
ようにも見える。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

               「太陽」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160319
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「孤独のススメ」  です。

夕食は6時きっかり、外出はジャケットにネクタイ。几帳面で信仰心篤
い男は、妻と息子がいなくなった家で規則正しい生活を送っている。
ある日出会った言葉も記憶も失くしたひげ面の中年男。ただ眉間にシ
ワを寄せ、ヤギに接する時以外表情はほとんど変えない。物語はそん
なオッサン2人が一緒に暮らし始めたのをきっかけに生まれる奇妙な友
情を描く。亡き妻を愛している、彼女の衣装に身を包んだひげ面の男
が幸せだったころを思い出させ、主人公の心が徐々に未来をむいてい
く過程は、他人とのかかわりこそが人生を豊かにしてくれると教えて
くれる。セリフも感情表現も極限までそぎ落としたミニマルな映像は、
男の単調な今を象徴する一方、バッハの旋律が複雑な過去を暗示する。

男やもめのフレッドは寸借詐欺を繰り返すテオに庭仕事をさせるが、
テオはそのままフレッドの家に居つく。スーパーでテオがヤギの鳴き
まねをすると、金持ち夫婦から娘の誕生会の余興を頼まれる。

変化やよそ者を嫌う田舎の町、テオを同居させるフレッドに人々の目
は厳しい。特に教会の手伝いをするカンプスからは射るような視線を
浴びる。その後、テオの身元と事情が判明するとフレッドは余計にテ
オの庇護者然と振る舞うようになる。その間、見る者を寄せ付けない
硬質なスタイルが、フレッドの気持ちの変遷と共に饒舌になっていく。

同性愛や性的倒錯を認めない社会の偏狭さと、同調していた自分に気
づいたフレッドは、追い出した息子に対する理解を深めていくのだ。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

       「孤独のススメ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160421
               
          を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

まだまだ多発中の「ノーバン始球式」。アイドルがプロ野球公式戦の
始球式を務めると必ず翌日のスポーツ紙に踊る見出しです。

アイドル名の後に「ノーバン」←濁音と表記され、「ノーパン」←半
濁音と読み間違える効果を狙っているのですが、さすがにもう騙され
れて買う人はいないでしょう。

もう一つ気になるのが、新聞テレビ欄のタテ読みメッセージ。先日も
東北放送が楽天戦の告知で被災者へのメッセージを送りました。

両方とも手あかが付いた手法。そろそろ斬新な表現法を生み出しても
らいたいものです。。。

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      次回配信予定は4/28作品は
         
         「テラフォーマーズ」
         
              です。

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