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こんな映画は見ちゃいけない! 

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ブリッジ・オブ・スパイ こんな映画は見ちゃいけない! 

2016/01/07

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2016/1/7  Vol.1715      ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
            「ブリッジ・オブ・スパイ」  です。

ただ依頼された仕事を誠実に処理するだけ。たとえ周囲の反感を買お
うとも、己の信じる正義を曲げたりはしない。そして、一見牽強付会
かつトリッキーな一石二鳥を狙う論法でも、相手の顔を立てることで
落としどころを探り、WIN-WINに着地させる。決して豪腕ではないが粘
り強い説得力と不屈の精神を持った男。物語は米ソ冷戦時代、双方で
拘束されたスパイを交換するために奔走した米国人弁護士の活躍を描
く。敵であっても“祖国に尽くした”と、きちんと裁判を受けさせよ
うとする主人公は、やがて容疑者の信頼を得る。法廷、U2、ベルリン
の壁等の濃密なディテールが50〜60年代の空気をリアルに再現する。

スパイ容疑のアベルを弁護するドノヴァンは死刑判決を覆す。数年後、
ドノヴァンは捕虜となった米偵察機のパイロットとアベルの交換の交
渉役に指名される。一方で東ベルリンでは米国人留学生が逮捕される。

非公式の活動ゆえサポートはほとんど望めず、ドノヴァンは見知らぬ
土地で窓口を見つけるところ始めなければならない。それでも彼は怒
りや不満を抑え淡々とするべき課題をこなしていく。それは、人間の
自由と生きる権利を定めた最高の理念と彼が信奉する米国憲法が味方
だと確信しているからなのだろう。

筋金入りのコミュニストもガチガチの反共主義者も出てこないなか、
何事にも動じないアベルを演じたマーク・ライアンスの枯れた味わい
が映画を引き締めている。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                「ブリッジ・オブ・スパイ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151107
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
              「サンローラン」  です。

定期のコレクションの他に、舞台・映画などの衣装デザインの注文が
次々に舞い込む。迫りくる締切り、肥大するプレッシャー。ストレス
に耐えかね、つい酒におぼれドラッグに手を出し男を漁ってしまう。
20世紀ファション界に偉大な足跡を残したデザイナー、彼の“愛と人
間関係”の苦悩を描く。若くして成功したあと、精神病院に入れられ
た。エッジにとどまるには変化し続けるしかない。自分がいなければ
多くの従業員を失業させるかもしれない。眼鏡の奥の青い瞳は危うい
光を湛え、自信の裏側の不安を象徴する。そして愛人への狂おしいま
での思いを創作に昇華させる姿は、アーティストの矜持に満ちていた。

ビジネスパートナー兼ゲイ恋人・ピエールとの事業が軌道に乗ったイ
ヴは、新コレクションの構想を練るために別荘にこもるが新作は不評
に終わる。そのころから、ジャックにのめり込んでいく。

口ひげを蓄え男らしさを強調するジャックに、ピーターにはない魅力
を感じているイヴ。セックスを楽しむためにより強いドラッグを使い、
誤飲した愛犬が死ぬ。人間並みの立派な墓に葬られた犬の冥福を祈る
背中は、実は誰にも心を許していないイヴの孤独を物語る。さらにジ
ャックとの仲を心配したピエールがジャックを遠ざけたことから、イ
ヴは切ないまでの気持ちを手紙に綴る。

男同士の恋の駆け引き、怒りと嫉妬。莫大な富と名声を手にしても埋
められぬ胸の空洞が丁寧に再現される。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                「サンローラン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160106
              
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
      「ストレイト・アウタ・コンプトン」  です。

歩道でたむろしていると取り調べを受け、抗議すると後ろ手に手錠を
かけられる。違法行為は一切していなくても、白人警官に目の敵にさ
れる住人達。1980年代LAのストリート、映画は黒人たちのくすぶった
不満を歌にして不当な差別を告発したラップミュージックの先駆者た
ちの生きざまを追う。過激な歌詞で警察を挑発し、暴力とドラッグが
はびこる街の現実を訴える彼らはたちまち時代の寵児となる。一方で、
酒と女に溺れる日々は彼らの才能を徐々に蝕んでいく。そして成功の
スピードに気持ちが追い付かない焦りと、白人の搾取から逃れてもま
た契約に縛られる無力感が追い打ちをかける。社会の矛盾と戦ってき
たのに社会のルールで身動きできなくなっていく、その皮肉が生き馬
の目を抜く音楽ビジネスを象徴していた。

売れないDJ・ドレーはイージー・E、アイス・キューブらとN.W.A.を結
成、レコードが大ヒットを機に白人のジェリーをマネージャーに加え
る。全米ツアーに出るが、LAに戻るとアイス・キューブが脱退する。

デトロイトでは警察から警告されるが当然無視、“Fuck the police”
を熱唱して公演をぶち壊された上に逮捕される。失うものはない、だ
から勝ち目のない相手にもひるまない。記者会見で既成の価値観を徹
底的に否定する態度を変えない。そんな彼らに大衆は共感を覚える。

このあたり、まだまだ黒人に対する偏見が色濃かった当時の空気が濃
厚に反映され、米国が抱える闇を忠実に再現されていた。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

          「ストレイト・アウタ・コンプトン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20160104
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
             「ひつじ村の兄弟」  です。

道ですれ違っても目を逸らす。用事があっても犬に託した手紙で伝え
る。すぐ隣で暮らしているのに40年も口を利かない仲の悪い兄弟。髪
やヒゲがすっかり白くなっても子供のように意地を張り合う姿が滑稽
だ。物語はアイスランドの田園地帯で牧羊を営む男が、疫病で殺処分
される羊の血統を維持しようと数頭を匿ったために起きる騒動を描く。
どこまでも続くなだらかな丘陵と草原、時折顔を出す太陽は力なく、
鉛色の雲が重く立ち込める。それら欧州の北の果ての風景が、冬には
雪と氷で閉ざされる。季節の変遷の中で、人間よりも羊と話す時間の
方が長いふたりは、自分たちが何をすべきかに気づく。それは先祖か
ら受け継いだレガシーを守り、過去の修復することなのだ。

羊の品評会で2等だったグミーは、優勝したのが兄・キティーの羊なの
が気に食わない。その後キティーの羊に伝染病の兆候が見つかったた
めに衛生局が動きだし、検査の結果、羊の全頭処分が決定する。

キティーの抵抗も虚しく獣医たちは羊を処理し、グミーは己の手で羊
を殺す。補償はされるものの、廃業する牧羊家も後を絶たず、生きる
希望を奪われたキティーは酒に溺れてしまう。短気で分別のないキテ
ィーでも羊を失った悲しみは大きい。

彼の気持ちが痛いほど理解できるグミーの、大嫌いなのに放ってはお
けないバツの悪い優しさが共感を呼ぶ。確かに少年時代は一緒に育っ
た、そんな思いが凝縮された一葉の写真がふたりの関係を象徴する。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

           「ひつじ村の兄弟」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151225
               
          を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

年末に箱根に行きました。寒い中あちこち歩き回ったので、休憩所に
入るとあたたかいものを飲みたくなりました。

壁のメニューには「HOT COFFEE」の他に「HOT CHOCOLATE」がありまし
た。「HOT CHOCOLATE」はココアだと思って、「ココアください」と注
文しました。

ところが店のおばさんは「うちはホットチョコレートです」と答える
ので、「じゃあそれください」と再注文。

でも彼女は「森永ミルクココア」を戸棚から出すと、その粉末を湯で
溶かしていました。やっぱりココアやんけ。。。

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      次回配信予定は1/9作品は
         
           「ヘリオス」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
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