映画

こんな映画は見ちゃいけない! 

映画批評系メルマガで読者数No.1! プロの編集者が簡潔な文章と的確な表現で書き下ろす「1分で読める新作映画批評」です。映画紹介だけのメルマガにはない「本物の批評」を堪能したい方だけご登録ください。

全て表示する >

ベテラン こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/12/12

■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/12/12  Vol.1711    ☆
   
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
              「ベテラン」  です。

悪党には手段を選ばず抵抗するヤツは容赦なくブチのめす。同時に情
に篤く正義感は誰よりも強い。そんな男が巨大財閥の壁に立ち向かう。
物語は不当解雇を訴えた労働者が瀕死の重傷を負ったことに不審を覚
えた刑事が、体当たりで事件を解決しようとする姿を描く。容疑者は
傍若無人に振る舞う大企業後継者、社会的弱者を虫けら並みに扱うう
え、不法行為も強力なコネとカネの力で部下が尻拭いしてくれる。影
響力は警察幹部にも及ぶ。貧富の格差・金持ちの横暴・権力の腐敗な
ど今日的な問題を盛り込みつつミステリーとアクションをコミカルに
処理した映像と、さまざまな外圧や内部干渉と闘いながら己の信念を
曲げずひたすら突き進主人公の背中には、清明なヒロイズムを感じた。

不可解な証言を得た広域捜査隊のドチョルは独自に捜査を開始、財閥
グループ会長のドラ息子・テオに目星を付ける。だが彼の側近・チェ
は潤沢な資金と豊富な人脈でドチョルの行く手をさえぎる。

ドチョルは、何度もテオの元に現れ、そのたびにチェが矢面に立つ。
血縁関係があるからこそ無理難題を押し付けられても断れない、あく
まで一族の名誉のためにわが身を犠牲にするチェの忠義は封建時代の
よう。一方、財閥ばかりが豊かになり、学歴のない一般市民は搾取さ
れる現代韓国の縮図に敢然と挑むドチョルは、いわば悪を正す希望。

裏切りや欺瞞などの駆け引きはない。良心や人情の葛藤もない。まる
で時代劇のごときわかりやすい構図が映画にスピード感を与えていた。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                「ベテラン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151101
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
              「母と暮せば」  です。

母をひとりにしておけないという思いが青年を家に帰らせる。楽しか
った思い出も忌々しい記憶も、今となってはすべてが懐かしい。そん
な他愛ない会話が母の寂しさを和らげていく。物語は長崎原爆の犠牲
になった医学生の魂が、母と共に、恋人だった娘の将来を見守る過程
を描く。自分に操を立てる彼女が愛おしくてたまらない。だがもう言
葉をかけることも姿を見せることもできない。青年は己の葛藤を母に
こぼし、母もふたりの関係を好ましく受け取りつつ、このままではダ
メと心配している。まだまだ敗戦の荒廃から立ち直っていない時代、
誰もが哀しみを背負っている。しかし立ち止まってはいけない。愛す
る者の幸せ、それが先に死んでいった者の願いなのだから。

3年前に被爆死した浩二が母・伸子の前に現れる。浩二は伸子にしか見
えないが、日ごと2人で昔話に花を咲かせるようになる。2人は、浩二
の婚約者だった町子が別の人生を歩めるように気を使い始める。

町子は伸子を実の母のように慕っている。伸子はありがたいと感じな
がらも浩二を諦めるよう諭す。浩二には町子が見えず、伸子に聞かさ
れる話から町子に男の影がちらついてるのを知ると顔色を変える。母
子のセリフは多分に演劇的かつ説明的であるが、映画は何気ない日常
において母と子がお互いに思いやる光景が平和である訴える。

一方で伸子と闇商人のやり取りや、町子が復員局に行くエピソードな
ど、戦後の混乱と困窮の中でも力強く生きる日本人が活写されていた。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                「母と暮せば」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151112
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
         「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」  です。

オリンピックが開かれるまでは、これほど壮大かつ奇抜な建築物がこ
の地にあるとはあまり知られていなかった。その後観光名所となって
資金も潤沢に回り始め、落成までに200年かかるといわれてきた一大事
業が2026年に終了するめどがついたという。カメラは奇跡とも称され
る巨大教会建築の現場に密着し、斬新な工法と精緻な装飾に迫る。設
計されたのは130年以上も前、資金難や内戦、反対運動などでたびたび
中断したプロジェクトは、21世紀のコンピュータ技術のおかげで飛躍
的にはかどり、焼失した資料を補ってゆく。はたしてそれは、アーキ
テクトの意図をどこまで反映させているのか。それでも、そこには携
わった人々の宗教的情熱にも似た使命感は綿々と受け継がれている。

バルセロナの郊外に計画されたサグラダ・ファミリア教会は1882年に
着工、ガウディは地下礼拝堂とファザードを作った後事故死する。後
継者は何本もの尖塔を天に伸ばし、数多の職人が今も腕を振るう。

現代のバルセロナ市民にとって、“生まれる前から工事中だった教会”
という認識だろう。父子二代にわたって関わっている人もいる。子供
の頃とほとんど変わらない見慣れた風景、人の寿命の長さをはるかに
超えた時間の流れこそが、この建物の魅力だ。

彫刻制作の責任者・外尾悦郎は30年以上石を削り続けている。晩年、
教会内に寝泊まりしその進捗具合を見守ったガウディ同様、サグラダ
・ファミリアで働くのはそこに人生を捧げる覚悟が必要とされる。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

           「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151203
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
              「A FILM ABOUT COFFEE」  です。

ルワンダの山奥、一粒ずつ手摘みされた赤い実は大きな袋に詰められ
て町の加工場に運ばれる。念入りに果肉を取除き、天日干しにし、不
純物を取り除いて初めてコーヒー豆として輸出される。丹精込めて育
て精製した豆はまさに工芸品、そして洗練されたバリスタたちがドリ
ップしたコーヒーは芸術の域に達している。米国や日本で愛飲される
特別なコーヒー、カメラはそれらがいかに生産され流通し消費者に届
くかを追う。香りとコクのど越しの余韻。カフェインによる覚醒効果
だけではない、コーヒーは、カフェでの熱い議論や愛の言葉、沈思黙
考といった人間の営みも含めて文化に昇華されているのだ。

エチオピアからアラビア半島を経由して欧州にもたらされたコーヒー
豆は、その後、世界中に広がる。20世紀半ばまでは大衆品やインスタ
ントが幅を利かせていたが、1970年代から風潮が変わる。

米国の“コーヒー革命”は西海岸発祥。確かに80年代前半はポットに
入れたコーヒーをカップに移すだけの、「眠気覚まし」。エスプレッ
ソやカプチーノはイタリア人街にしかなかった。大阪や東京でも「ブ
レンド」か「アメリカン」以外のコーヒーを出す喫茶店は記憶にない。

80年代後半からエスプレッソマシーンを備えたコーヒーショップが増
え、格段に種類も味も向上したが、これはコーヒーの魅力に気付いた
人々の努力のたまもの。映画は日本で独自に進化した「喫茶店」にも
時間を割く。見た目も興味深いサイフォン機には懐かしさを覚えた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                「A FILM ABOUT COFFEE」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151003
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
              「アンジェリカの微笑み」  です。

彼女の微笑みは甘い媚薬なのか心地よい毒なのか。昼間は正気を保っ
ていられても、夜になると死の香りが濃厚に漂うベッドの上で、甘美
な幻想に取り込まれていく。ハートの高鳴りはまさしく恋。物語は美
しい若妻に心を奪われた青年の苦悩と葛藤を描く。死者に夢中になる
など、おかしいと分かっている。だが、澄んだまなざしを送られると、
もうどうにもできない。やがて、無意識の中で過ごす彼女とのひと時
が至福の時間となり、生きる気力をなくしていく。彼にとって死は永
遠の愛に至る入口。同時に農夫に象徴される生の苦しみからの解放。
肉体は活動を停止しても、魂は生き続けるとこの作品は訴える。

写真家のイザクは、地元名士の娘・アンジェリカの撮影を依頼される。
ファインダーを覗くと、生前同様の麗しさを再現した死化粧を施され
たアンジェリカが目を開け、イザクに笑顔を向けてくる。

動揺したイザクはそそくさと屋敷を後にするが、翌朝フィルムを現像
すると同じようにアンジェリカの写真が誘惑してくる。すっかり平常
心を失ったイザクはその夜、アンジェリカと空を飛ぶ夢を見る。狂お
しいまでの心の滾り、もはやアンジェリカなしではいられない。彼女
の墓に「アンジェリカ!」と叫ぶイザクの姿が切なくも情熱的だ。

出会えば消滅する物質と反物質の関係なのか、宇宙に保存された永久
不変のエネルギーなのか、様々な理屈をつけてイザクはアンジェリカ
への思いを正当化していく。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                「アンジェリカの微笑み」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151210
               
          を参考にしてください。




 本日はもう1本
 
              「さようなら」  です。

汚染された故郷を捨て、次々と人が去っていく。残されたヒロインは
無為な時間を過ごすしかない。とりあえず食料と電気は何とかなる。
一応、“避難の順番が来るのを待っている”のだが、チャンスはほと
んどないと自覚している。物語は原発事故で人間が住めなくなった日
本、人里離れた一軒家でアンドロイドと暮らす女の緩慢な死を描く。
アンドロイドはあらゆる記憶と記録と共に、彼女自身と似た感情や美
的センスも備えている。見た目は人間そっくり、話し方の抑揚のみな
らず、詩を読んで慰めてくれる。彼女とアンドロイドは、“心”のレ
ベルで通じているのか。人間がそう勘違いするようにプログラムされ
ているだけなのか。ただ、彼女を孤独から救っていたのは確かだ。

アンドロイドのレオナに身の回りの世話をさせるターニャは、外国人
ゆえに脱出できる可能性は薄い。ある日、友人の佐野と街に出る途中、
婚姻届を提出する若いカップルに出会う。

人々の終末観なのか、ターニャの諦観を象徴しているのか、風は強い
が太陽は力ない。ターニャの恋人・サトシは、ターニャが難民だった
と打ち明けても最後まで聞かずに連絡を絶つ。彼との結婚にわずかな
期待を抱いていたターニャはますます弱っていく。

死ぬまで生きなければならない、その気力の元となるのは希望。充電
さえしていれば絶望も悲嘆もなく普段と変わりなく振舞えるレオナは、
人間とアンドロイドの間の圧倒的な違いを提示する。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                「さようなら」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151211

          を参考にしてください。

==============================================================

        余|談|
        ━┛━┛

「靖国神社爆発音事件」の韓国人容疑者が逮捕されました。本人は供
述を二転三転させているそうですが、まあ大筋は認めているようです。

彼は一度韓国に帰国した後、自分の意志で再来日したことになってい
ますが、ここは対日関係悪化に苦慮する韓国政府が理性的な対応をし
たということでしょう。

ただ、この男の扱い如何で、韓国内でまた反日を騒ぎ立てるバカが出
るのは必至。現時点でもマスコミが顔をさらしたと抗議しているそう
です。

なんか、うやむやな「政治的決着」で終わりそうな気がします。。。

==============================================================

      次回配信予定は12/17作品は
         
           「リザとキツネと恋する死者たち」
         
              です。

---------------------------------------------------------------

このメルマガは、週2回発行です。

皆様からのご意見、ご要望、感想をお待ちしています。

            otello.com.ua@gmail.com

                         までお願いします。

いただいたメールはこのメルマガで紹介させていただくことがあり
ます。

なお、相互紹介の依頼は受け付けておりません。

最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、よい一日を!

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
発行周期:週3回  
Score!: 98 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。