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こんな映画は見ちゃいけない! 

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ホワイト・ゴッド こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/11/21

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/11/21  Vol.1705     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
               「ホワイト・ゴッド」  です。

瓦礫の山から人通りの絶えない街路、入り組んだ市場の雑踏、商店の
バックヤードまで全速力で走り、止まり、隠れ、逃げる。捕まればほ
とんどが死を待つだけの運命。不安に脅えつつも生き延びようとする
本能が疲れ切った脚にエネルギーを与える。そんな、地上数十センチ
の視点で撮影された逃走・追跡場面は、下手なカーチェイスよりも刺
激的でスリリングだ。感情や意志を持ち仲間同士でコミュニケーショ
ンをとって協力する。そして恐怖と痛み、危害を加えた人々や虐待し
た身勝手な飼い主たちは絶対に忘れない。カメラは犬たちの気持ちに
寄り添い、彼らの“生存の自由”への思いを再現する。

雑種犬のハーゲンは飼い主のリリから引き離され、捨てられる。野良
犬の群れと合流したところを野犬狩りに急襲され、ホームレスに保護
されるが転売される。ハーゲンはそこで闘犬としての訓練を受ける。

過酷なトレーニングで心身を鍛えられ、歯まで研がれたハーゲン。と
ころが試合で対戦相手を噛み殺して逃亡すると空き地に戻り、以前助
けてくれたブチ犬と再会する。薬物投与がハーゲンを“進化”させた
のか、自らの安全を図りながら時に他の犬たちと力を合わせて生命の
危機を脱する姿は豊かな知性すら感じさせる。

その間、リリは懸命にハーゲンを探すが手がかりはつかめない。リリ
の孤独とハーゲンの怒り、並行して語られるふたつのエピソードは人
と犬の関係を逆行させる予感をはらむ。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                   「ホワイト・ゴッド」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150815
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
    「ウーマン・イン・ブラック2 死の天使」  です。

我が子を奪われた女、身寄りを亡くした少年、部下を救えなかった男。
それぞれがつらい記憶に苛まれ、戦争という過酷な状況の中で必死で
目の前の日常を生き抜こうとしている。物語は第二次世界大戦中の英
国、ロンドンから避難してきた孤児院の子供たちと引率教師が体験す
る恐怖を描く。昼間は濃い霧に覆われ、夜は灯火管制で薄暗い、そん
な“呪われた館”に充満する死の腐臭が背筋をそっとなでるような不
気味さを再現する。天井の節穴、壁の裂け目、打ち捨てられた人形、
絡まった有刺鉄線、張りぼての戦闘機etc. 意味ありげな小道具がち
りばめられた映像は肌にまとわりつくような不快感を増幅させる。

空襲孤児のエドワードを引き取ったイヴは、他の子供たちと共に疎開
する。宿舎の古い屋敷では子供たちに不穏な事件が次々と起き、イヴ
は列車で知り合ったパイロット・ハリーに調査を依頼する。

ショックからエドワードは失語症になっている。身近で両親の最期を
見たのか、彼はどこか生と死の境界線で綱渡りするかのごとき危うさ
をはらみ、死者と対話しているかのよう。他の子供たちはその気配を
敏感に感じとり、エドワードを排除しようとする。彼の胸中を慮るイ
ヴはエドワードを守ろうと腐心する。

その間、次々と子供が命を落とすが、映画はおどろおどろしい雰囲気
を保ちつつも血や絶叫とは一線を画し、哀切を帯びたトーンを崩さな
い。それは登場人物が皆大切な人との別れを経験しているからだろう。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

            「ウーマン・イン・ブラック2 死の天使」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151008

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
         「アレノ」  です。

腹を見せたボート、水に沈んだ夫。救出された妻と愛人は夫の安否が
確定するまでラブホテルに逗留し、愛欲にふける。物語は愛を感じて
いなかった夫を愛人と共謀して殺した妻が味わう、良心の呵責と絶望
を描く。彼らを包む空気は濃厚な死の腐臭を放ち、一度汚した手は二
度ときれいにはならないと訴える。一時でも不安から逃れようとふた
りはお互いの肉体をむさぼりあう。ところが性欲を満たせば満たすほ
ど、肌を密着させればさせるほど孤独は深まっていく。後悔に苛まれ
るわけでもなく邪魔者を消した達成感もない、映像はそんな彼らの不
毛な胸中をざらついた質感のフィルムで再現する。

郊外の湖に遊びに来た夫婦と彼らの幼馴染でもある妻の愛人。妻と愛
人は泳げない夫を溺死させようとボートに乗るが、図らずもボートは
転覆、夫だけが行方不明になる。

夫の遺体が発見されるまで現地で待つ間、愛人は何事もなかったかの
ようにふるまうが、妻の脳裏に浮かぶのは夫と最後に交わした会話。
冷たい湖の底で自分たちを恨んでいるのではないかと気が気ではない。
カメラは彼女の心に寄り添い、その揺らぎをとらえようとする。

夫の母が遺体の確認に来たとき思わず否定してしまうのは、母の叱責
に耐えられなかったからなのか、それともショックで現実を受け入れ
られない妻を演じているのか。隠し通すことでさらけ出されるという
逆説的な真実が、山田真歩の抑制された演技に凝縮されていた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「アレノ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151015

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
         「放浪の画家ピロスマニ」  です。

首の長い馬にしか見えないキリンの絵、シカやキツネといった野生動
物も躍動感というより静かに存在を主張する安定感のある構図に収ま
っている。正面を向いた人物像は東方教会のイコンのごとく平面的。
物語は、西欧絵画とは一線を画す技法で強烈な印象を残すグルジアの
画家の波瀾の半生を追う。創作の苦悩や葛藤には触れず、主人公から
一歩離れた視点から浮き彫りにされる日常は、どこか彼のアート同様
とぼけた味わいに富む。旧ソ連時代の厳しい検閲を通すためなのだろ
う、束縛を嫌いひとところに留まらない人生を、飲食店の壁に飾られ
た絵で表現しようとする当時の映画作家の苦心がうかがえる。描かな
いことで自由への渇望に昇華する、逆説的なテクニックが興味深い。

世話になった一家を追い出されたニカラは、友人と乳製品店を開き繁
盛させる。だが、姉夫婦が持ちかけた縁談に怒った挙句、商売を投げ
出して町に飛び出す。その後、日銭を稼いで生活する画家になる。

居酒屋やレストランを転々として、わずかな見返りで絵筆をとるニカ
ラ。それらの絵が2人の若い男の目に留まり称賛され、さらに町の美術
サロンで紹介されるなど、一躍時の人となる。

ところが、独学ゆえ新聞が酷評、それが原因で町の人々の態度が一変
し、誰もニカラに声をかけなくなる。権威に弱く移ろいやすい心理が
いかにも田舎の民衆らしい。。ニカラはグルジアがコミュニストに蹂
躙される前に死んだ。彼の生き方はソ連時代に許されただろうか。。。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                  「放浪の画家ピロスマニ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151002

              を参考にしてください。 

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        余|談|
        ━┛━┛

ATPツアーファイナルでフェデラーに惜しくも敗れ決勝トーナメント進
出を逃した錦織。まだまだBIG4には及ばないものの、その差は手の届
くところまで迫っています。

去年までこんな大会があること自体知らなかったのですが、通常の大
会とは違ったショーアップに出場選手もどこか4大大会とは違ってリラ
ックスしています。

オンラインのボールをアウトとコールしてチャレンジの結果やり直し
たり、返球が天井にあたって相手のポイントになったりとあまり見ら
れないアクシデントを楽しめました。

個人的には今年復調の兆しが見えるナダルを応援しています。。。

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      次回配信予定は11/26作品は
         
        「ハンガー・ゲーム FINAL」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
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