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こんな映画は見ちゃいけない! 

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FOUJITA こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/11/19

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/11/19  Vol.1704     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
               「FOUJITA」  です。

いつも女を侍らせ“お調子者”のニックネームすら進んで使う。だが、
彼が握る細い筆先から生み出される繊細なタッチの裸婦像は、花の都
の人々のハートをとらえて離さない。物語はパリで名を成した日本人
画家の有頂天時代と、陸軍に協力せざるを得なくなった戦争中の彷徨
を追う。現代ほど照明が行き届いていなかった当時の明るさを忠実に
再現しようとしているのか、室内シーンは昼間でも窓から入る光だけ
で薄暗く、夜間の場面に至っては登場人物のシルエットが判別できる
程度にまでライトが抑制され、表情は読み取れない。主人公が置かれ
た状況を“見せる”よりも“感じさせる”のをテーマにした映像は、
いくら評価されても満たされない心の闇を暗喩しているのだろうか。

1920年代パリ、乳白色裸婦画で有名になったフジタは、夜ごとサロン
で騒いでいる。何人もの女を渡り歩きつつ描き上げた新作も大好評、
仮装舞踏会を催して人生の絶頂を味わう。

自らスキャンダルを好み、バカなことをしてより人々の話題になろう
とするフジタ。強烈な自己主張やエゴが創作に昇華されたとき、至高
の芸術が生まれると信じているのか。ところが、映画はフジタの苦悩
に踏み込もうとはしない。それはフジタが絵筆に魂を込める芸術家と
いうより感情を抑えた職人のように作品を完成させるからなのか。

“御用画家”となった藤田が「アッツ島玉砕」画に感動する人々を見
て感慨を受けるシーンに、彼のの絵画芸術への姿勢が凝縮されていた。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                   「FOUJITA」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151116
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
         「ムーン・ウォーカーズ」  です。

戦場のトラウマに苦しむ元工作員からカネを詐取した借金まみれのバ
ンドマネージャーは、全世界を欺く映像の制作に首を突っ込む羽目に
なる。物語はアポロ11号の“月面着陸”の予備映像を撮影する人々が
繰り広げる騒動を描く。チンピラを秒殺し、大勢のギャングを相手に
するCIAマン。口は達者でも中途半端な若者。エキセントリックな監督
と謎の美女。嘘つきが騙される、“映画なんか所詮、いかに虚構を観
客を信じさせるかだ”という主張が楽しい。パンクとアートを融合さ
せた建物と半裸の女たちが、既成の価値観が崩壊していく1960年代末
期の空気を濃厚に反映させていた。

キューブリックに着陸シーンを撮影させるためにロンドンに赴いたキ
ッドマンは、偽キューブリックとジョニーに製作費を渡す。カネを奪
還した後、キッドマンとジョニーは映像作家・レナータスに依頼する。

超肥満体の男がひたすらトランポリンで跳ねるスローモーションフィ
ルムを“作品”と称するレナータス。重力が地球の1/6しかない月面の
動きを連想させ、彼がこの仕事の適任であると直感させる。スタジオ
に再現させた荒涼とした大地と宇宙船のセットもリアルで、あとはジ
ョニーと彼の親友・レオンが宇宙飛行士を演じるだけ。

だがレナータスの館はドラッグの巣窟、関係者が次々とラリッていく。
ボスを筆頭に鉄の掟で結束したギャングたちの方が、よほど真剣に生
きている皮肉が痛烈だった。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                  「ムーン・ウォーカーズ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151117

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
         「ラスト・ナイツ」  です。

剣を振るい武勲を競う世の中は終わった。国家への貢献度は上納金の
額で量られ、応じない者は精勤が足りぬと断罪される。物語は、道徳
が廃れ悪徳がはびこる宮廷で高潔を訴えて命を落とした老主君の仇を
取る忠臣たちの姿を描く。身分を失った騎士たちは平民を装って潜伏
し、監視がつけられたリーダーはひたすら堕落と絶望を偽装し続ける。
鉛色の分厚い雲が立ち込める冬の空、松明とろうそくしかない夜。そ
れら最小限のライティングで撮影された映像はあくまで陰鬱で、信じ
ていた価値観が崩壊した男たちの苦悩を象徴する。主人公をいちばん
理解していたのが仇敵の警備隊長だという皮肉が、時代遅れの正義を
貫こうとした彼の気持ちを代弁していた。

帝国の大臣・ギザの不当な要求を拒否したバルトーク卿は反逆罪に問
われ、弟子で騎士団長のライデンが斬首する刑を言い渡される。ライ
デンはギザに復讐を誓うが領地は没収、騎士団も解散させられる。

映画は“忠臣蔵”の梗概をなぞり、武士道の忠義を騎士道の忠誠に巧
みに翻案し、彼らが何のために生きるかを浮き彫りにする。日本人に
はなじみの深い展開なのだが、ライデン以外の騎士団メンバーは副官
と若武者以外は暗い画面ゆえに特徴がつかめず役割分担が分からない。

密かに連絡を取り合って仇討の計画を練るシーンもあるが、そもそも
何人の騎士団が“討ち入り”に加わったのかも不明。そのあたりは観
客に求められる必須の教養として省略しているのだろうか。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                  「ラスト・ナイツ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151118

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
         「午後3時の女たち」  です。

成功した夫、おとなしいひとり息子、ママ友たちとの交流。満ち足り
た生活を保障されているのにいつしかその現状に甘え、女としての緊
張感を失ったまま小さな不満を募らせていく。物語はそんなヒロイン
が若く奔放な売春婦と出会ったことから、人生に不足していたものに
気づいていく過程を描く。最初は彼女に同情と優越感を抱いていた。
ところが、自身の足でしっかりと生きている姿を見るうちに、次第に
己が卑小に思えてくる。少なくとも男から性の対象と思われているの
がうらやましい。夫婦間のセックスレスの原因が自分にあるにもかか
わらず、夫のせいにしてしまうアラフォー女の図々しさと自信のなさ
が入り乱れた感情を、キャスリーン・ハーンが繊細な演技で再現する。

気晴らしに夫のジェフとショーパブに行ったレイチェルは、マッケナ
というストリッパーに惹かれる。後日偶然を装って会いに行ったレイ
チェルは、住処を追い出されたマッケナを自宅に連れ帰る。

一応、マッケナを子守りと周囲に紹介するレイチェル。職業柄相手の
望みを敏感に察し気を回すマッケナはすぐに家族や友人に溶け込む。
彼女を立ち直らせるつもりだったレイチェルは、それが面白くない。
マッケナの本職を知っているママ友のひとりも複雑な表情を崩さない。

己を偽って波風立てずに暮らしていく事のむなしさ、今まで散々描か
れてきたテーマだが、時間を持て余す専業主婦の悩みは時代や場所が
違えども、やっぱり不変なのだ。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                  「午後3時の女たち」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151119

              を参考にしてください。 

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        余|談|
        ━┛━┛

今年はサケが不漁で、イクラの値段が去年よりも2割近く上がっている
そうです。もしかして回遊中のサケを公海上で中国漁船が捕まえてい
るのかと疑念を抱いてしまいます。

先日、なか卯で天然イクラ丼を食べたのですが、ぷりぷりとした歯触
りとごはんとの相性が抜群でした。

カウンター席のみのチェーン店なので、価格は抑えめの790円。普通の
すし屋なら1000円ぐらい取るクオリティでした。

本格的に品薄になる前に、今度は特盛に挑戦するつもりです。

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      次回配信予定は11/21作品は
         
        「ホワイト・ゴッド」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
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