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こんな映画は見ちゃいけない! 

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1001グラム こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/10/29

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/10/29   Vol.1698    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
           「1001グラム」  です。

街中の計器の精度を日々検め度量衡をチェックする女は、その正確さ
を失わないように規則正しく生活している。直線を基本としたシンプ
ルかつモダンなデザインの家に住み、角張ったEVで通勤し、夫が去っ
たあとは父との会話が唯一の息抜きだ。映画は“測量”を生業とする
堅物のヒロインが、異国での出会いと父の死を転機に、違った生き方
を模索する過程を描く。ノルウェーでの機能的だが無味乾燥の毎日は
寒冷色で包まれ、一転して彩りと活気に満ちたパリでの体験は忘れて
いた胸のときめきと潤いを思い出させる。そして見つけた新しい恋と、
不確かでも刺激的な未来。金庫室の中の金庫に厳重に保管され、二重
ガラスで密閉されたキログラム原器が彼女の心を象徴していた。

測量研究所に勤務するマリエはパリの学会にキログラム原器を運ぶ途
中、会場で声をかけられたフランス人・パイにホテルまで送ってもら
う。父の死後、叔父を探しにパリを訪れると、偶然パイと再会する。

父の遺品の中に紛れ込んでいた“人生で一番の重荷は背負うものがな
いこと”という叔父の遺した言葉がマリエに突き刺さる。仕事は真面
目にこなしてきたけれど、父以外の他人とは積極的にかかわらず、自
分の価値観を墨守して生きてきた。当然結婚は失敗、肉親もいない。

確かに平穏ではある、しかしこのまま単調な日常に埋没してしまうの
にも疑問を抱いている。そんな中年女の孤独と不安が抑制の効いた映
像で、リアルに再現されていた。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                   「1001グラム」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150911
               
          を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
         「アクトレス〜女たちの舞台〜」  です。

山間を縫って流れる白く長い雲。意志を持った大蛇のごとく身をくね
らせ谷の人々の暮らしを呑み込んでいく。それは雄大な時の流れのよ
うでもあり、後戻りできない人生のようでもある。映画は、ベテラン
女優が己の出世作となった戯曲の再上演に向けて役作りに葛藤する姿
を描く。与えられたのは、当時演じた野心的な娘ではなく、彼女に翻
弄される中年女の役。輝かしい未来に嫉妬し、容姿の衰えを憂う、プ
ライベートのヒロインと重なっている。そんな、個人秘書の前で見せ
る素顔が、競争の激しい人気商売で20年以上生き残ってきた彼女の真
実を物語る。若さは財産、だが時間はそれを容赦なく奪っていく。ジ
ュリエット・ビノシュの顔に刻まれた年輪にその残酷さが凝縮される。

アルプスの一軒家で稽古に励むマリアは、秘書のヴァレンティンとセ
リフ合わせをするうちに役柄にのめり込んでいく。その間、ハリウッ
ド女優・ジョアンと顔合わせをするが、ジョアンは不倫中だった。

過密スケジュールを調整し、相談にも乗り、マリアの生活すべてに寄
り添うヴァレンティン。マリアの耳目手足となってテキパキと仕事を
こなしている。時にマリアの意地悪やワガママに眉を顰めるが、基本
的に2人はビジネスを越えた信頼関係で結ばれている。

ところが戯曲の設定はむしろこの2人に当てはまるかのような危険をは
らんでいる。若き日のキャラクターに自己投影し、結局その幻影にし
っぺ返しを食らうという皮肉が、彼女の生き方を象徴していた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                  「アクトレス〜女たちの舞台〜」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151028

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
         「メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮」  です。

真実を知りたい、その一念に突き動かされる主人公は、希望のシンボ
ルなのか。彼をリーダーに、体力精神力に恵まれた若者たちは、待ち
受ける地獄に向けて飛び出していく。コントロールされた平和、制限
された自由からの解放を求めて。物語は巨大迷路を脱出した彼らが、
管理組織の陰謀に気づき、反旗を翻す姿を描く。大量のゾンビ、敵味
方不明の生存者、そして圧倒的装備の追手。危機また危機の中、もは
や宿命であるかのように彼らは走り続ける。その過程でひとつずつ謎
が解けていく構成は複雑ではあるが、科学や文明の裏側にある人間の
深い業も感じさせる。見渡す限り広がる砂漠と崩壊した大都市、緑あ
ふれる前作とは正反対の荒涼がこの作品の世界観を象徴していた。

WCKDの施設に収容されたトーマスらは、他の迷路の脱出者・エリスと
人体実験室を発見、他のランナーと共に反乱を起こし逃亡し、埋もれ
たショッピングモールでゾンビ集団・クランツに遭遇する。

命からがら振り切った後、地平線の彼方に見つけた照明に近づくと、
そこはホルヘとブレンダらが隠棲するアジト。共通の敵・WCKDと戦う
ために何とか協力関係を結び、抵抗組織・RAを探す。

その間トーマスは一行とはぐれ、ブレンダとともに廃墟をさまようう
ちに断片的な記憶がよみがえり、己が一体何者だったかのおぼろげな
がら思い出していく。ただ、クランツに執拗に追いかけられるシーン
が多く、もう少し別のトラップを用意してほしかった。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                  「メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151026

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
         「ヴィジット」  です。

夜ごと聞こえる不気味な音。優しかったおばあちゃんが別人のような
姿で徘徊し、邪悪な空気をまき散らしている。おじいちゃんに報告し
ても歯切れが悪く、都合の悪い事実を隠しているよう。見て見ぬふり
をすべきなのか、真相を突き止めるべきか迷うが、ティーンエージャ
ーの姉弟は真実を記録しようとカメラを回し続ける。物語は母方の祖
父母に預けられた孫2人が体験した、恐怖の一週間を再現する。映画監
督を志す姉は片時もカメラを手放さずおいしい瞬間を狙っている。弟
も強い意志を持って手伝っている。そして彼らの主観と重なるPOV映像
が奇妙なリアリティで見る者の感情に爪を立てる。

ベッカとタイラーは、初対面の祖父母に迎えられ人里離れた屋敷に宿
泊する。2人は祖父母から、地下室は立ち入り禁止、9時半消灯という
ルールを告げられる。だが、10時半を過ぎたころ階下の異音に気づく。

ベッカは、母が祖父母と喧嘩別れした時の様子を知りたがっている。
祖父母はその話題に触れたがらない。まだ母を許してはいない、でも
孫をかわいがるのは別の話と割り切っているとベッカは解釈している。

なんとかカメラの前に祖母を引っ張り出しインタビューを試みるシー
ンでは、祖母の肩越しにスペースが取られ、そこに何か異質なものが
映るのではと予感させる。また、祖母がベッカにオーブンの掃除をさ
せる場面でも、よからぬことが起きるのではと思わせる。そんな観客
の想像力を刺激する緊張感が全編を通じて途切れない。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                  「ヴィジット」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151029

              を参考にしてください。 


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        余|談|
        ━┛━┛

自動車メーカー各社が自動運転車の開発にしのぎを削っています。カ
メラと人工知能を搭載したクルマが周囲の状況を判断して走るのです
が、とりあえず2020年市販を目指しているということ。

理想は、ナビにセットすれば寝ていても目的地に着き、駐車までして
くれること。

いずれタクシーなども完全自動化され、車載のタブレット端末に行先
を入力すればいい時代になるでしょう。

こうなると運転免許証の意味も薄れてきます。ID代わりに持っている
ペーパードライバーも多いですが、マイナンバーにとってかわられる
のかな。。。

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      次回配信予定は10/31作品は
         
        「PAN ネバーランド、夢のはじまり」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
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