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こんな映画は見ちゃいけない! 

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ヴィヴィアン・マイヤーを探して こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/10/10

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/10/10   Vol.1693    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
           「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」  です。

何人も踏み込ませない壁を築き、肉親も親しい友人も作らなかった。
何時もカメラを首から下げ、町で出会った人々に不躾にレンズを向け
ていた。極端な秘密主義、年老いてからはさらに偏屈ぶりに磨きがか
かり、誰も寄せ付けなくなった。映画は大量のネガを残して死んだ無
名の写真家の実像に迫る。フィルムは管理もされず倉庫に保管された
まま。ところがポートレートは一瞬で被写体の人生を連想させる物語
性を持ち、見る者の心を鷲掴みにする。彼女はいったい何者なのか、
どんな生涯を送ったのか。チケット、レシート、メモ等膨大な遺品を
整理し、彼女の足跡をたどる旅は、精緻なミステリーのようだ。

オークションで落札したヴィヴィアン・マイヤーのネガをプリントし
たジョンは、独特の味わいに興味を持ち、彼女の経歴を調べ始める。
すでに亡くなっていたが、彼女が乳母をしていた人々と連絡を取る。

ジョンからインタビューを受けた男女は中年を過ぎている。ヴィヴィ
アンはプロのカメラマンではなく、乳母や家政婦として働きながらシ
ャッターを切り続けていたと証言する。数十年前を思い出してヴィヴ
ィアンの毀誉褒貶を語る彼らの口から出るのは、屠殺場、交通事故、
食べ残し、フランス訛り、偽名など。

みな懸命にで“いい思い出”を探そうとするが、彼女に関しては奇妙
な記憶ばかりで「変人」が共通した認識だ。ファインダー越しにしか
世界を見られなかったヴィヴィアンの孤独が浮き彫りにされていく。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                   「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150807

                を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
         「カンフー・ジャングル」  です。

その流派の達人たちが次々と血祭りに上げられていく。彼らが極めた
拳法で。誰の仕業なのか、何が目的なのか、物語は武術家連続殺人事
件を追う刑事に協力を申し出た武術家が壮絶な闘いに巻き込まれてい
く姿を描く。驚異的な修業を自らに課して身体障害を克服した男が欲
するのは“最強”の称号、ただただ己の腕前を誇示せんと命を賭けた
真剣勝負に挑む。神出鬼没、警察の裏をかき武装警官を手玉に取る、
ワン・バオチャン扮する狂気の格闘家の圧倒的なスピードとパワー、
技のキレはまさにカンフー映画の原点だ。いかにエキサイティングに
表現するかにこだわったたカメラワークと鋭角的なショット、身体能
力の限界に挑むアクションの波状攻撃に、思わず目が釘付けになった。

他流試合で相手を絶命させ服役中のハーハウは、武術家惨殺をニュー
スで知り、担当のロク刑事を呼び出す。容疑者の目星をつけたハーハ
ウは警官隊と共に隠れ家で待ち伏せするが、逃がしてしまう。

「カンフーは殺人技」と言う犯人のフォンは強い悲しみと憎しみを抱
いている。それは妻を無為に死なせてしまった自分と、何もしてくれ
なかった世間への怒りに変わる。動機としては歪んでいるのだが、も
はや彼には些事はどうでもいい、あらゆる格闘家の中でNO1となるのが
妻の無念を晴らすと妄信している。

そんなフォンに対してはハーハウも拳で応えるしかない。フォンの行
動パターンを知るハーハウは警察を振り切って彼との一騎打ちに臨む。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                  「カンフー・ジャングル」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150825

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
             「名もなき塀の中の王」  です。

飢えた野獣のように凶暴さを隠さず、鋭利な刃物のように触れる者す
べてを傷つける。友情、信頼、寛容、優しさ、思いやり……人間の美
徳を知らずに育った若者は、ヒリヒリする孤独の中で「ナメられたら
負け」の掟を自らに課し、周囲に敵意をむき出しにしている。物語は
そんな主人公が刑務所内の大人たちと交流していくうちに少しずつ社
会性を身につけていく過程を描く。決して曲げない強固な意志、しか
し持て余す感情を発散させる手段が乱闘しかない不器用さが哀れだ。
そして甘い感傷や同情を一切排した映像は、暴力が唯一のコミュニケ
ーションである彼の苦悩を象徴していた。

素行の悪さゆえ少年院から一般刑務所に移されたエリックは早速トラ
ブルを起こす。ところが、ボランティアスタッフ・オリバーの計らい
で、懲罰房代わりに他の囚人たちとのグループセラピーに参加する。

オリバーの粘り強い説得とセラピー仲間に助けられたことから、エリ
ックは怒りを抑える術を教わり、徐々に態度を軟化させていく。その
間、獄中生活が長い実父・ネビルもエリックの面倒を見ようと介入し
てくる。だが、ネビルには父子という人間関係はほとんど経験がない。
彼自身もまともな少年時代を送れず若いころは凶悪犯だったはず、実
の息子にぎこちない接し方をする彼の戸惑いが切ない。

皮肉にもエリックとネビルのファミリーネームは「Love」。彼らの人
生にいちばん欠けていたものだが、他に特別な意味があるのだろうか。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                  「名もなき塀の中の王」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150822
  
            を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
         「光のノスタルジア」  です。

チリ、アタカマ砂漠。砂と岩と塩だけの乾燥した高原には見渡す限り
野生生物の痕跡はない。丘の頂上には数十基の天体観測所が設けられ、
はるかかなたのメッセージを受け取っている研究者たちは大いなる過
去を詳細に記録している。一方で同じ平原では、無念の最期を遂げた
家族の遺骨を探す母たちがいる。無限の広がりを持つ空間と、足元の
大地に打ち捨てられた命。映画は、一見まったく無関係な事象を並列
に扱い、あらゆる出来事は宇宙創成後の時間の流れという一つの因果
で結ばれていると訴える。そこには宗教的な押しつけがましさは希薄
だが、自国で起きた悲劇は忘れまいとする固い決意がうかがえる。

ドーム型の天井を少し開き、光学式望遠鏡を空に向ける。歯車をふん
だんに使った精緻な機械は、工業製品ならではの美しさ。ビッグバン
以降の歴史の仮説を証明するため、天文学者は日々望遠鏡を覗く。

カメラはピノチェト政権下で拘束され、拷問・殺害された人々にも言
及する。かつて鉱山労働者用に建設された強制収容所に送られ、過酷
な環境に置かれた囚人たち。ほとんどは反政府のレッテルを貼られた
普通の市民に過ぎない。力尽きた者は捨ておかれ、生き残った者はつ
らい記憶を引きずり出す。

その多くは苦難に満ちたものではあるが、乏しい材料で作った天体観
測具で星を見上げるグループがいた事実に、どんな境遇でも生きる希
望をみいだせる人間の強さに感銘した。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

            「光のノスタルジア」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150916

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
      「真珠のボタン」  です。

宇宙の起源を解明するヒントを含んだ微弱な電波を探知するために設
計された巨大なパラボラアンテナ群。水も生命の種となる物質も、最
近では彗星・小惑星由来である説が有力になっている。夜空を見上げ
るのは遠い故郷と祖先を思う行為、それはきっと南米の先住民も同じ
だったにちがいない。カメラはチリ南部、パタゴニアの厳しい自然と
共存してきた先住民の哀しい歴史を追う。吹きすさぶ風、猛り狂う白
波、小さなカヌーに乗ってやせた陸地を転々とする先住民父祖伝来の
土地を、白人たちは鉱物資源発掘のために接収する。もちろん先住民
は人権など認められず、狩りの対象になったりもする。真珠のボタン
と交換に身柄を売られた先住民の運命が、白人社会の横暴を告発する。

氷河に削られた荒れた海域で、島を渡りながら暮らす先住民。彼らの
言語はもはや失われつつあり、ライフスタイルも以前とは変わってい
る。それは19世紀末に始まる、開発と名を変えた迫害の末路でもある。

石器時代さながらだった先住民を文明の力で教化する白人。彼らの文
化習慣を奪い、啓蒙することに何の疑いも持たなかったのだろう。今
では先住民は20人ほどにまで減り、人口維持は難しい。少なくとも近
代化されてしまった21世紀で、かつての狩猟生活に戻る者はいない。

同時にピノチェト政権下で獄死した死体について語る証言者。30キロ
のレールをくくりつけビニールをかぶせて海に投棄したのに、いくつ
かの死体は海岸線に打ち上げられ、拷問・虐殺の証拠となっている。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

            「真珠のボタン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150917

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
      「バクマン。」  です。

描いて描いて描いて描いて描きまくる。睡眠時間を犠牲にして構想を
練り、食事を忘れてペンを走らせる。それはまさしく血をインクに変
え魂を形にする作業。物語はマンガ家を志した高校生2人組が様々な困
難を乗り越えて、プロの心構えを身につけていく姿を追う。ペン先の
使い分けからネームの書き方といったマンガ製作、および編集部にお
ける掲載作品の選定など、“商品になる前の舞台裏”のディテール豊
かな描写は圧倒的なリアリティ。何より、目標達成後に待ち受けてい
る地獄の日々を再現することで、人生とは戦いの連続であると訴える。

最高のスケッチを盗み見た秋人は、原作と作画を分担してマンガ家に
なろうと誘う。夏休み、最高の叔父の仕事場に入り浸って完成させた
作品をジャンプ編集部に持ち込み、編集者の服部に才能を認められる。

服部のアドバイスに従って修正した作品は新人賞の次点になり、大賞
を取った新妻と共に2人は高校生マンガ家としてデビューする。その間、
最高と美少女の恋、服部と編集長のせめぎ合い、そしてマンガ家同士
の狭くて濃い人間関係にも触れ、カメラは彼らの成長を見守っていく。

乾いた雑巾を絞るようにアイデアを出し血尿が出るまで自分を追い込
む2人。アンケートの結果に一喜一憂しながらも作品の質を保ち売り上
げに貢献しなければならない服部。面白いマンガを作りたいと願う情
熱、というより執念と呼ぶほうがふさわしい彼らの思いがスクリーン
からほとばしっていた。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

            「バクマン。」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20151009

              を参考にしてください。 


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        余|談|
        ━┛━┛

見てしまった。甘さが控えめでサクサクとした食感のセブンイレブン
のドーナツ、店員さんが10個くらい入ったビニール袋から出してショ
ーケースに並べているところを。

もちろん店内で揚げているとは思っていませんでしたが、工場で大量
に作ったものだったら最初から個別包装でもよいはず。

いちいち袋から出して陳列して、客に売るときはまたトングで挟んで
紙袋に包む。なんかめんどくさいことをしている気がしてなりません。

やっぱり、“できたて感”を演出したかったのでしょうか。。。

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      次回配信予定は10/15作品は
         
        「ヒトラー暗殺、13分の誤算」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
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