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こんな映画は見ちゃいけない! 

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ビッグゲーム こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/08/15

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/8/15   Vol.1680    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
        「ビッグゲーム 大統領と少年ハンター」  です。

険しい山、深い森。少年は弓矢を手に道なき道を進む。それは大人に
なるための通過儀礼、不安でたまらない気持ちを誰にも打ち明けられ
ない。一方、“システム”から切り離され、最高権力者からただの男
となった大統領は自らの弱さを隠そうと虚勢を張る。物語はそんな彼
らが孤立無援状態で出会い、力を合わせてテロリストの追撃を退けて
いく姿を描く。最先端の文明とは無縁の辺境で育った少年にとって、
空から降ってきた光に包まれた乗り物はE.T. との遭遇。さらに逃走か
ら反撃に至るまで様々なハリウッド映画からの引用がちりばめられ、
思わず小腹をくすぐられる。

フィンランド山間部、13歳の誕生日に独力で鹿を狩る試練に挑むオス
カリは、撃墜された専用機から脱出した米国大統領・ビルを見つける。
テロリストたちはビルを生け捕りにしようとしていた。

非米国人のオスカリに大統領然と命令するビルに対し、オスカリは主
導権を渡そうとしない。かしづかれるのに慣れたビルが渋々オスカリ
に従う場面は、国際社会で傍若無人に振る舞う米国への強烈な皮肉。
そして、オスカリは本物の男なるには何をすべきかに気づく。

野生の“大物”を仕留めるのではなく、人間界随一の“大物”を守る
ことこそ自分に与えられた使命と覚悟を決めるのだ。このあたり、世
界は米国中心に回っているのではないという、欧州からの辛らつなメ
ッセージとなっている。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                   「ビッグゲーム 大統領と少年ハンター」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150516

                を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「ベルファスト71」  です。

“敵”と教えられた人々に助けられ、“味方”のはずの男たちに命を
狙われる。深刻な宗教対立と独立闘争、テロリストを取り締まる警察
と軍、双方に過激派穏健派が混在し主導権を争っている。1971年北ア
イルランド、映画は紛争地域に派遣された新兵が体験した混沌と死の
恐怖を描く。見知らぬ敵地で孤立、武器はなく、容赦ない銃撃を受け
る。現在地も目指す場所もわからず通行人は皆敵に見える。救出を呼
ぶ手段もなく、途方に暮れながら疲れ切った肉体に鞭を打つサバイバ
ルの過程で、主人公の孤独と不安、焦りと痛みがリアルに再現される。

イギリス軍入隊後ベルファストに赴任したゲイリーは、現地警察の治
安活動に同行する。だが、カトリック住民の反英運動と遭遇、小銃を
盗んだ少年を追ううちに住民に囲まれ部隊からはぐれてしまう。

もちろん事前に複雑に絡み合ったパワーバランスと大まかな実情をレ
クチャーされてはいる。しかし住民パワーを抑えきれない。しかも群
衆に紛れた過激派がいきなり発砲してくる。走らなければ殺される状
況でゲイリーは迷路のような住宅地を全力で駆け抜け、難を逃れたと
ころをプロテスタントの少年に保護され親英派のアジトに案内される。

その後重傷を負ったゲイリーに、今度はカトリックの父娘が彼に手を
差し伸べる。さらにゲイリーを交渉材料にしたい穏健派や秘密を見ら
れた警察も動きだし、それぞれがゲイリーという“ジョーカー”を手
に入れんと権謀術数を巡らせる様子は紛争地域の現実を物語っていた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                  「ベルファスト71」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150814

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
        「この国の空」  です。

恋愛の対象となる男は周囲にはいない、ところが心身の「女」は確実
に目覚めている。ある日、妻子が疎開した隣人と言葉を交わす。男も
また彼女の艶めかしい生気に抗いがたい魅力を感じている。大東亜戦
争末期、物語はうら若きヒロインが中年男との道ならぬ恋に落ちる姿
を描く。物資は不足しがちだが危機感は薄く、食料の心配と空襲警報
がなければ“戦時中”のイメージからは距離を置いた生活をしている。
その余裕が、本能に忠実に生きようとする彼らの背中を後押しする。
そんな人間の本質が、古いフィルム風の質感を持つ映像に焼き付けら
れていた。二階堂ふみが話す“女ことば”が美しい余韻を残す。

母娘2人女世帯の里子は隣家の銀行員・市毛と親しくなる。ひとり暮ら
しの彼の世話を焼くうちに、里子も市毛もお互い男と女の部分を意識
する。その後、被災した里子の叔母が転がり込んでくる。

都心で働く市毛は空襲を受けた人々の死体を数えきれないほど目にし、
自身も招集されるかもしれない。「死」が非常に身近なところにあり、
不安に脅えている。一方里子たち女3人は命の切迫感がなく、日常の
維持に腐心している。

母はむしろ里子の心中を見抜き、市毛との駆け引きを教えたりする。
年齢的には母のほうが市毛にふさわしい、彼女もまた未亡人として熟
れた肉体を持て余しており、本当は自分が市毛に抱かれたかったに違
いない。におい立つような脇毛が抑えてきた母の欲望を象徴していた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

              「この国の空」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150812

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
        「進撃の巨人」  です。

指先でひょいとつまみ上げた人間を丸かじりする巨人たち。その目に
知性の光は宿らず、貪る満足感を表情に浮かべる。それは地球の環境
を破壊し尽くした人類に対する天罰のようでもあり、新たな進化へ試
練のようでもある。説明は一切なくただこの作品世界の現実として提
示されるのみ。物語は巨人との攻防の中で希望を見出そうとする少年
たちの葛藤を描く。喰われるだけの存在から抜け出すためには巨人を
研究し殺す技術を磨き、活路を切り開かなければならない。「自分の
人生」を手に入れるにはリスクを取る、壁の外を見てみたいという主
人公の進取の気性こそが人間を進歩させてきた勇気と理性なのだ。

超巨人に壊された壁の穴から巨人が次々と侵入、エレンの幼馴染・ミ
カサも犠牲になる。2年後、壁修復の調査団に志願したエレンは巨人ハ
ンターとなったミカサと再会、自らも巨人を倒すテクニックを学ぶ。

壁の中の暮らしは電気や動力源に乏しく中世のような生活様式。社会
はある種の統制が布かれ自由が制限されている。農業地帯を巨人に占
領されたのちは食料不足が起きている。そんな状況で調査団に入隊し
た若者は錬度も意識も低い素人集団。次々と自滅に近い形で巨人の餌
食になる様子は「口減らし」の意図すら感じさせる。何を信じて何を
目指せばいいのかわからないままエレンは巨人に戦いを挑む。

秩序は崩壊しあらゆる出来事が混沌の中でうごめいているばかり。後
編でしっかり伏線が回収されることを願う。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

           「進撃の巨人」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150810

              を参考にしてください。 

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        余|談|
        ━┛━┛

直木賞受賞作「流」を読みました。舞台は台湾、抗日戦争中に中国本
土で悪名を流していた老人が惨殺され、その孫が真犯人を探すという
梗概です。

とはいっても1970年代に青年期を迎えた主人公の、ケンカや恋に明け
暮れる日々が話の中心。当時の台湾と台湾人のメンタリティが微細に
描かれます。

ただ、肝心の犯人探しは一向に進まずストーリーは停滞したまま。も
っと、抗日と国共内戦を生き抜いた男にスポットを当ててほしかった。

冒険というには刺激が少なく、青春というにはほろ苦さが足りない、
直木賞に値する作品なのかと首をひねりました。。。

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      次回配信予定は8/22、作品は
         
      「かけがえのない人」
         
              です。

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