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こんな映画は見ちゃいけない! 

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彼は秘密の女ともだち こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/08/08

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/8/8   Vol.1679     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
                「彼は秘密の女ともだち」  です。

少女時代に永遠の友情を誓った親友が死んだ。だが、彼女の夫に女装
趣味があると知ったヒロインは急速に“彼”との距離を縮めていく。
“女と男”としてではなく、“女と女”として。ふたりだけの秘密、
最初は細心に人目をはばかるが、ほどなく解放感から大胆に行動する
ようになる“彼”の女装がリアルかつコミカルだ。男と女を巧みに使
い分け、女性の優美な動きをディテール豊かに表現するロマン・デュ
リスの繊細な演技と、やっぱりオカマにしか見えない落差が時に笑い
を誘う。セクシャルマイノリティの悲哀を嘆くのではなく、その生き
方を積極的に享受する姿勢が心地よい。

クレールは、妻に先立たれたダヴィッドの様子を見に行く。ところが
ダヴィッドは妻の服を着て赤ちゃんに授乳中、彼の本心を知ったクレ
ールは女装時にヴィルジニアと名乗るダヴィッドと買い物に出かける。

その後も旅行先で同性愛者のナイトクラブに出かけるうちに、男女の
間では得られない安らぎを覚えるふたり。クレールは夫にばれそうに
なり、真実を言えず悶々とした日々を過ごす。いつしか、クレールは
ヴィルジニアにローラへの友情以上のものを感じ始めている。ダヴィ
ッドもヴィルジニアとしてクレールを好きになっている。

もちろんそれまでは異性愛者だった、でも今はお互いの配偶者を裏切
っている。ローラを含めると性別と性的嗜好が入り組んだ四角関係、
その過程でクレールとダヴィッドは自分の“心の性”に気づくのだ。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                   「彼は秘密の女ともだち」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150620

                を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
        「日本のいちばん長い日」  です。

海軍は壊滅、広島と長崎に原爆が落とされ、ソ連が参戦する。東京や
主要都市は焼け野原にされ、今や国と国民を存続させるには無条件降
伏を受け入れるしかない。だが“国体の護持”だけは譲れない。物語
は、大東亜戦争最末期、政府最高首脳と天皇がいかにして日本を守ろ
うとしたかを描く。この期に及んでも本土決戦を訴える陸軍幹部と彼
らの血気を抑えつつ現実路線を取る陸軍大臣、戦争に早く片を付けよ
うと腐心する総理大臣と国民の安寧を願う天皇。「敗戦」ではなくあ
くまで「終戦」という着地点を模索した当時の指導者たちの苦悩と逡
巡、葛藤と決断をリアルに再現する。

1945年4月、鈴木内閣は陸軍大臣に阿南を指名する。戦局は悪化の一途
をたどり、内閣はポツダム宣言受諾を天皇に上申する。同時に参謀本
部の畑中少佐一派はクーデター画策するが、阿南は彼らの暴走を防ぐ。

静かに成り行きを見守る天皇は、御前会議での話題にも表情を変えず、
胸中は控えめに「〜希望する」と口にするのみ。終戦の詔書も用意さ
れた原稿をマイクの前で読み上げるばかり。玉音放送の淡々とした口
調は、現人神と崇められながらも何の決定権もない無力感を表現した
結果であると、天皇に扮した本木雅弘の冷静な演技が示す。

一方で阿南・畑中・鈴木、および彼らにまつわる多岐にわたる登場人
物の感情と行動は短いショットの連続で畳み掛ける。それら緩急自在
の映像と編集の妙が上映時間の長さをまったく感じさせなかった。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

           「日本のいちばん長い日」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150706

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
    「最後の1本 ペニス博物館の珍コレクション」  です。

どんなカテゴリーでも1番になりたい者は必ずいる。“息子自慢”な
らばなおさら、「我こそは世界一」と誇示したくなる気持ちはやがて
暴走する。肉体的な痛みやQOLの低下といった“失うモノ”よりも、注
目を浴び名を残す方が重要になってくるのだ。映画は、アイスランド
のペニス博物館館長の半生を顧みつつ、キュレーションの最後の1本を
巡る珍妙な競争を追う。小動物からクジラまで、あらゆる哺乳類のコ
レクションは圧巻。そして、空白のままの人間ペニス展示スペースを
埋めようとする人々のエピソードの数々は、提供者が真剣なほど滑稽
さが増し、彼らを追うカメラの視線が柔らかいユーモアで包まれる。

動物のペニス集めをはじめたシッギは唯一未入手の人間のペニスを求
め、元冒険家の老人・パゥットルから死後寄贈の同意を得る。だが、
目立ちたがりの米国人・トムからの申し出も受ける。

シッギは元教師で、ペニスへの関心もごく真面目な学術的興味。彼の
こだわりはお土産などにも反映され、ペニスに対する大いなる愛が感
じられる。そこにあるのは、他に誰もやらないことをやるオンリーワ
ンの矜持。しかし、トムはタトゥーを入れたり生前寄贈を画策したり
と、己の巨根への偏愛とエゴをシッギに押し付ける。

自分が変人なのは自覚している、ところが自分以上に強烈な奇人のト
ムに、どう対応していいのかわからず戸惑うシッギのリアクションに、
ドキュメンタリーならではの人間のリアルが凝縮されていた。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

          「最後の1本 ペニス博物館の珍コレクション」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150529

              を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
        「フリーダ・カーロの遺品」  です。

左右がつながった太い眉、きりりと引き締まったまなざし、口元には
うっすらひげまで生えている。その厳しい表情は、幼い時の病気と若
いころのケガで身体の自由を奪われながらも強烈な愛に殉じた女の、
世界に対する怒りと命への情熱、そして運命に挑む決意を示す。カメ
ラはひとりの日本人写真家がメキシコの伝説的アーティスト、フリー
ダ・カーロの遺品を写真に記録するという仕事を通じて、彼女の人生に
触れていく過程を追う。それは同時に、写真家自身がアーティストと
しての生き方を問い直す旅。フリーダが身につけた衣類や服用した鎮
痛剤に向けてシャッターを切る姿は、不幸を創作のエネルギーに昇華
した彼女への敬意と、女性だからこその共感に満ちていた。

フリーダ・カーロ博物館から遺品撮影の依頼を受けた石内都はメキシ
コに飛ぶ。当初、フリーダに関心がなかったと言っていた石内も、彼
女の半生を知り思いがこもった遺品に接するうちに理解を深めていく。

石内の遺品への姿勢はあくまで“もの”への冷徹な視線。ファッショ
ン誌のようにストーリーを持たせるのではなく、カタログ風の無機質
さにこだわる。それでも、左右かかとの高さが違う真っ赤なブーツの
写真には、フリーダの壮絶な戦いを饒舌に物語る力がみなぎっている。

出来上がったプリントは当然静止したまま、だが石内の写真には切り
取られた時間が封じ込められていた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

              「フリーダ・カーロの遺品」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150530

              を参考にしてください。 

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        余|談|
        ━┛━┛

夏の甲子園が始まると毎夜楽しみなのが「熱闘甲子園」。今年から元
ヤクルトの古田キャスターに代わり、よりID野球的な解説に期待でき
ます。

と思って、大会初日を迎えたのですが、なんと放送は深夜1時40分か
ら。世界水泳のせいで押しやられた形です。

水泳などレースの間に時間が開くのだから、「熱闘甲子園」を優先さ
せた方が視聴率も上がるはず。

この時期、世界水泳に熱くなっているのは松岡修三だけだと思うので
すが。。。

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      次回配信予定は8/13、作品は
         
      「ビッグゲーム 大統領と少年ハンター」
         
              です。

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