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こんな映画は見ちゃいけない! 

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人生スイッチ こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/07/25

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/7/25   Vol.1674    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
              「人生スイッチ」  です。

モデル、音楽評論家、教師、友人、元上司etc.旅客機に乗り合わせた
乗客は全員ひとりの男を知っている。逃げ場のない空の上で乗客たち
は徐々にこの機に招待された理由を察知していく……。映画はそんな
ミステリー風の密室劇をはじめ6つのエピソードで構成される。そこで
描かれるのは突然常識や良識の箍が外れ暴走してしまう人々のリアル
な心情。日常生活で起こる些細な出来事が抑えていた鬱憤を爆発させ
る過程がコミカルに再現され、軽妙なカタルシスを味あわせてくれる。
復讐や苛立ち、不平不満、貪欲と裏切り、それらを含んだ“怒り”と
いう感情が物語の根底に通奏低音のごとく流れ、気の利いたオチをつ
けることで、一線を越えるには覚悟が必要とくぎを刺すのも忘れない。

父の仇と再会したウエイトレス、ボロ車に罵声を浴びせるアウディ男、
駐車取り締まりにキレた爆破技師、ひき逃げ隠ぺいを図る父、新郎の
浮気を責める新婦。彼らには予想もしない運命が待っていた。

交通量の少ない一本道をノロノロ走るクルマ。先に行かせてくれれば
いいが、後続車のフラストレーションを見透かすようにスピードを上
げない。追い越しざまに悪態をつくアウディ男の気持ちがよくわかる。

また、愛車をレッカー移動され手数料と罰金を徴収される技師の憤り
は、駐車監視員の恣意的な摘発にあった日本人なら理解できるはず。
裏で警察とレッカー会社が結託しているあたり、高額な駐車料のコイ
ンパーキング一帯が重点監視地域になっている東京と同じ構図だ。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                 「人生スイッチ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150618

    を参考にしてください。




 本日はもう一本
 
           「共犯」  です。

世界を拒絶していた少女は死んで初めて“友人”ができた。世界から
拒絶されていた少年は彼女の死を利用して友人を作ろうとした。そし
て、面識のないはずのふたりの思いがシンクロしたとき新たな悲劇が
始まる。物語は女子高生の飛び降り現場に居合わせた3人の高校生が、
自殺の原因を調べるうちに思わぬ事実に遭遇し、苦悩する姿を描く。
偶然と必然、残された手がかりと仕組まれた罠、様々な思い込みを覆
していくスリリングな心理劇はじっくりと人間の闇をあぶりだしてい
く。定められた運命なのか予測できない未来なのか、ただ“死”を媒
介としなければリアルな対人関係を築けない、ネット社会に暮らす高
校生たちの圧倒的な孤独が哀しく切ない。

いじめられっこのホアンは通学途中に同じ高校の女子生徒・シアの死
体を発見。通りかかったリン、イエと共に事情を聞かれるが、学校側
の事なかれ主義に苛立つ。真相を知ろうと3人はシアの身辺を探る。

集合写真でもひとり横を向き、教室にも馴染まなかったシア。母親と
も折り合いが悪く素行も不良。彼女の部屋に忍び込んだ3人は日記を見
つけ、シアがいじめられていたのを知る。自分と似た境遇にホアンは
共感を抱いたのだろう、シアに代わって仕返しを企てる。

日常に倦んでいた3人が大人に隠れて悪巧みを実行する、その過程で彼
らが味わう“高校生の背伸び”っぽいスリルが懐かしい。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

              「共犯」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150425

    を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
           「HERO」  です。

元同僚の歓迎会を兼ねたお食事会でただひとり紫煙をくゆらせる主人
公。東京五輪に向けて飲食店での喫煙は不作法な迷惑行為であるとい
う認識が一般的であるにもかかわらず、当然のごとく煙草に火をつけ
る姿は、いかにも常識にとらわれない彼のポリシーを象徴する。まあ、
それ以上に“俺はキムタク様だ”感が濃厚に漂っているシーンではあ
ったが……。物語は東京にある欧州某国大使館裏で起きた交通事故を
巡って、捜査権・逮捕権の及ばない外交特権に挑む検察官たちの活躍
を描く。一検事では太刀打ちできない巨大な権力の壁、そんな中、国
境や職分を越えた人と人のつながりで少しずつ突き崩していく過程は
チームワークの大切さを教えてくれる。

ネウストリア国大使館裏口から飛び出したコンパニオンがクルマには
ねられ死亡、運転手を取り調べる久利生は不自然さを覚え捜査を開始
する。ほどなく外務省から横やりが入り、久利生自身も命を狙われる。

別件で出張してきた元恋人の雨宮も合流、ネウストリア大使館員と暴
力団の癒着が浮かび上がる。その間、多岐にわたる人物が登場するが、
それぞれにデフォルメされたキャラを持たせわかりやすく交通整理さ
れ、ドラマを見ていなくてもすんなりと作品世界に入っていける。

説明的な映像が多いのも“誰にでも理解できる”点に配慮したのだろ
う、TVの視聴者を映画館に呼ぶための仕掛けが満載。そのきめ細かさ
はTV局制作ならでは、かゆいところに手が届く構成だ。キューブリッ
クを冒涜したのは感心しなかったが。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

              「HERO」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150720

    を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
           「海のふた」  です。

都会での生活に疲れ果てた女が帰郷する。だが故郷は、かつての賑わ
いは影を潜め、すっかり寂れていた。迎えてくれた元恋人も精彩を欠
いている。物語はそんな街でかき氷屋を開いたヒロインが、ひと夏の
出会いと別れを通じて人生を見つめ直していく姿を描く。砂浜、神社、
古いビル……。活気がないのに気づきながらも美しい思い出だけに浸
ろうとする彼女の態度は、街の変遷を目の当たりにしてきた元恋人と
の間に軋轢を生む。どうすることもできなかったのか、もうどうにも
ならないのか。人が去りカネが回らなくなった田舎の現実に、スロー
ライフ・スローフード・ナチュラル志向といった都会人の幻想は打ち
砕かれる。海水浴客がいないビーチが住人の閉塞感を象徴していた。

実家に戻ったまりは、海岸沿いにかき氷店を開く。顔と心に傷を負っ
た娘・はじめを雇い、天然素材のシロップのかき氷を出すが、客は来
ない。ある日、仕事をさぼっている元恋人のオサムを見つける。

もともと人通りの少ない立地、たまに来る客はかき氷に冷涼感を求め
ても味への要求は低い。あえて売り上げの数字を見ないのか、親から
の援助を期待しているのか、まりには経営的観点が抜け落ちている。

むしろ、人間不信に陥ったはじめの気持ちをほぐす方に重心を置くか
のよう。はじめの視点で見れば、海も山も近い空気のきれいなところ
で人情に触れて心身をリフレッシュするという展開ではあるが、かき
氷屋の将来に明るい展望は見えない。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

              「海のふた」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150721
  
  を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
        「ソレダケ that's it」  です。

逃げる若者、追うオッサン。多彩なアングルのカメラワークは、地下
街から道路、裏路地まで全速力で疾駆するスピード感だけでなく、怒
りや憎しみ・不安や焦りを再現する。さらに激走する彼らの鼓動に合
わせるように、暴力的に増幅されたロックの爆音が耳から脳天を貫く。
還暦近くなっても全く衰えない石井監督の映画への激情がほとばしる
プロローグに圧倒された。物語は無戸籍児として育てられた男が、ア
イデンティティと人生を取り戻そうとする姿を描く。死んでも身元は
分からない、そもそも身元がない。そんな裏社会にしか居場所がない
運命に抗いながら新しい自分を見つけようと奮闘する主人公の哀しみ
を、染谷将太が生気のない目つきで表現する。

財布とハードディスクを盗んだ大黒は、持ち主の恵比寿に父の居所を
聞き出そうとして逆に拉致される。居合わせた阿弥と共に脱出、デリ
ヘル店の猪神に助けを請うが、今度はボスの千手に拘束される。

ハードディスクのデータは様々な個人情報、千手は何とか隠し場所を
吐かせようと大黒と阿弥に拷問を加える。その過程で知らされた、大
黒が探していた彼の父はすでに殺されていたという事実。その上で衝
撃の告白を受け、大黒は絶望の海に突き落とされる。

モノクロームの強烈な陰影は大黒の息苦しさを象徴する一方、ため込
んでいた鬱憤の大きさも内包する。そこにあるのは途轍もないエネル
ギー、更なる爆発に向けての予兆をはらんでいた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

              「ソレダケ that's it」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150723

    を参考にしてください。 




 本日はもう一本
 
        「サイの季節」  です。

監獄、荒野、曇天、さびれた街。永遠とも思える時間を刑務所で過ご
した男の脳裏に焼き付いた光景と目に写る世界はほとんど色彩を失い、
重要な記憶の片鱗に触れた時に強烈なコントラストをなす。物語は投
獄されていた詩人が、生き別れた妻を探す旅を追う。夫が死んだと聞
かされている妻は故国を離れ異国に転居した。今更現れても混乱させ
るだけと考えつつも、無事を確かめ幸せなのか訊いてみたい。逡巡と
葛藤の中で彼は少しずつ愛と復讐の炎を燃え上がらせていく。どんな
言葉よりも饒舌に感情を伝える長い沈黙、未来や希望などの甘ったる
い感傷を一切排した苛烈な映像には最後まで圧倒された。

イラン当局から反革命的と有罪判決を受けて30年、刑期を終えたサヘ
ルは、妻・ミナの消息を追う。サヘルは、ミナがトルコに移住した上、
自分を陥れたアクバルの近くにいると知らされる。

革命前、まだ若かったアクバルはミナに横恋慕するが、相手にされな
かったことでサヘルとミナを憎んだ。アクバルのミナへの思慕はその
後も冷めず、服役中も出所後もミナにまとわりつく。アクバルのせい
で人生を棒に振ったサヘル、だがその原因が、表現の自由や差別と貧
困の解消を求めた反政府・反イスラム運動ではなく、アクバルの純粋
な恋愛感情だったあたりが人間の業の深さを感じさせる。

価値観が逆転したとき最初に報復を受けるのは、「あいつだけは許さ
ない」というパーソナルな恨みなのだ。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

              「サイの季節」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150718

    を参考にしてください。 

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        余|談|
        ━┛━┛

高校野球の地区予選も終盤を迎えていますが、今年ぜひ甲子園に出て
もらいたいのは、監督不在のPL学園と、名将・渡辺監督が引退を表明
している横浜高校。いずれもまだ勝ち残っています。

PLは新入部員の募集もせず来年以降の廃部は確定的と言われる中、選
手はモチベーションを高めるが大変でしょう。

逆に渡辺監督に有終の美を飾らせたい横浜は気合十分なはず。神奈川
県予選はノーシードからの勝ち上がってきました。

PL対横浜、もう一度甲子園で見たいものです。。。

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      次回配信予定は7/30、作品は
         
          「奪還者」
         
              です。

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