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こんな映画は見ちゃいけない! 

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アリスのままで こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/06/27

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/6/27   Vol.1669    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
             「アリスのままで」  です。

最初は言葉が出てこないだけだった。しかし、通いなれたキャンパス
で迷子になり、人の名前を覚えられなくなると、集中力も衰えてまう。
物語は不治の遺伝病に侵されたヒロインが、夫や子供に見守られなが
らも徐々に病魔に蝕まれていく姿を描く。己の運命に対する戸惑いと
不安、暗い未来への怒りと絶望、やがてそうした感情すら薄れていく
恐怖。人が人でなくなっていくプロセスをジュリアン・ムーアが繊細
な感性で演じ切る。

夫と3人の子に恵まれた言語学者・アリスは、50歳を迎えた直後若年性
アルツハイマー症と診断される。家族に告げ、ビデオメッセージで覚
悟を決めるが、末娘のリディアが心配で仕方がない。

高学歴一家の中、演劇にはまって自由に生きるリディアにはつい説教
口調になっていたアリス。ところが、いまや彼女の芝居を見ても、わ
が娘と分からなくなっている。アリスの視点でもあるカメラは、むし
ろその過程を家族の再生ととらえる。夫の気遣いは変わらない、独立
した長女も長男もよく会いに来てくれる。いちばん疎遠だったリディ
アが、自分こそがアリスの心労の種だったと気づき、生き方を省みる。

それらを見聞きし体感するアリスの主観は、病状が軽微なうちは正常
な反応を示すが、時と共に場違いな言動を繰り返し、ついには目の前
の出来事が理解できなくなる。本人はもはや何も感じていない、だが
それは周囲が思うほどの悲劇なのだろうかと映画は問いかける。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

              「アリスのままで」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150321

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

        「悪党に粛清を」  です。

人の命を虫けら同様に扱い、無関係な他人に向かって躊躇なく引き金
を引く無法者。世間に対する憤怒があるのだろう、だが映画はそこに
は触れず、ただ彼は“絶対悪”としての存在感を示す。物語は開拓時
代の米国に移住してきた元デンマーク兵が、ならず者に殺された妻子
の仇討ちを果たすが、逆にその兄から報復を受けるという復讐の血な
まぐさい連鎖を描く。悪党の顔色をうかがう町長、見て見ぬふりをす
る保安官、恐怖で声を上げられない住民、立ち上がる主人公……。法
の統治から見放された荒野の町で繰り広げられるデンマーク人が監督
・脚本・主演のウエスタンは、意外に“正統派”の風格を備えていた。

家族と共に駅馬車に乗ったジョンは、妻子を手にかけたチンピラを射
殺する。チンピラの兄で“自警団”のボス・デラルーは町の住人に弟
殺しの犯人を差し出すよう要求、保安官はジョンの身柄を引き渡す。

軍人だったジョンの射撃の腕は非常に高い。急所を一撃し、息があれ
ば間髪入れずとどめを刺す。ジョンの兄・ピーターも銃やナイフに長
け、脱獄後ひとりでデルラーの子分たち数人を音もなく倒していくシ
ーンは「ランボー」を彷彿させる。ジョンもまた巧みに罠を仕掛け陽
動作戦を取るなど、故国では数的に勝る敵軍にゲリラ戦を展開する特
殊部隊にいたのではと思わせる手際よさを見せる。

そのあたり、ガンマン同士の早打ちを競う“決闘”の様式美を捨て、
近代戦の戦術を取り入れたテイストがユニークだった。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                「悪党に粛清を」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150411

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

        「ハッピーエンドが書けるまで」  です。

父の日常は停滞したまま前に進めない。娘は成功をつかみかけたのに
不満気な態度を隠さない。息子は傷つくのを恐れ殻にこもっている。
人間の真実を文章にする才能に恵まれた父子、だが何かが足りないせ
いで足踏みしている。それは思いを口にする勇気なのか、周りの人々
への気遣いなのか、表現に幅とリアリティを持たせるための実体験な
のか。物語は作家の父と文筆の道を目指す姉弟がそれぞれの“現在”
に苦悩を抱え葛藤する姿を描く。決定的に欠けているのは母親の存在。
もう家族ではないが完全な他人にはなりきれない。嫉妬、わだかまり、
居心地の悪さ、本当はきちんと愛を伝えたいのに、つい臆病になる彼
らの微妙で繊細で煮え切らない感情に共感を覚えた。

別れた妻・エリカに未練を残すビルは、同級生のケイトに恋をした息
子のラスティにもっと世間知を高めるよう促す。一方、娘のサマンサ
はエリカの浮気現場を見てから恋愛に否定的になっていた。

ケイトと付き合い始めたラスティは彼女の性癖を知るにつれ戸惑う。
サマンサは口説いてくる学生の母が重篤と知って自分と母の関係を思
う。ビルはセックスフレンドからデート相手を探せと勧められる。取
り立てて劇的なことが起きるわけではない普通の毎日、それでもひと
つひとつの小さな出来事の積み重ねが人生だと彼らの行動は訴える。

個人主義が発達だからこそ、機会があるたびに言葉とハグでお互いの
気持ちと信頼を確かめ合う、そんな家族の在り方が温かい余韻を残す。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                「ハッピーエンドが書けるまで」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150509

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

        「雪の轍」  です。

確かに精いっぱいの努力はしてこなかった。父の遺産の上に胡坐をか
き、面倒事は使用人に任せてきた。それでも、他人には迷惑をかけて
いないはずたし、出戻り妹にも若い妻にも不自由はさせていない。に
もかかわらず辛らつな言葉を浴びせてくる。物語は、苦労知らずに年
老いた男が、生き方を否定され、苦悩し彷徨する姿を描く。多分、主
人公の言い分は正論。ところが、彼のような人物の口から発せられる
ことに、言われた方は感情を害する。気付かなかった真実、思い知ら
された現実、人里離れた不毛の地、雪に閉ざされた冬は胸にたまった
不満の澱を爆発させる。果てしなく続くかと思われる批判は見る者の
心に突き刺さり、自問を促す。“お前もまた偽善者ではないのか”と。

岩盤をくりぬいたホテルを経営するアイドゥンは、クルマで移動中に
不払い家賃でトラブルを起こした男の息子から石を投げつけられる。
事件を機に、アイドゥンの日常は歯車が狂い始める。

役者志望だったアイドゥンは地元紙にコラムを連載し、「トルコ演劇
史」の執筆にも余念がない。その“文化人”の顔は彼にとってささや
かなプライドだ。だが妹のネジラは、人生を上っ面でしか生きていな
いアイドゥンを夜ごと罵る。さらに、妻・ニハルの慈善活動に口をは
さむと、彼女から予想外の逆襲を受ける。

そのあたり、女心の扱い方が下手な上、独善的な自身を客観的に見ら
れないアイドゥンの戸惑い途方に暮れる肩がむしろ滑稽だ。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                「雪の轍」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150507

    を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

「マッド・マックス」に始まり、「アベンジャーズ」「ターミネータ
ー」「ジラシック・ワールド」「ミッション:インポッシブル」と今
夏公開のハリウッドの大作映画は続編・リブート作品が目白押し。

大ヒットした作品の知名度にあやかって、さらにパワーアップさせた
映像で観客を呼ぼうという戦略が見えてきます。

おなじみのキャラクターが予想通りの大活躍をする安心感があってい
いのですが、やはり見たこともないような新機軸を生み出してもらい
たいものです。

オリジナルのヒーローでは、やはり巨額の製作費を集めづらいのでし
ょうか。。。

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      次回配信予定は7/2、作品は
         
        「ストレイヤーズ・クロニクル」
         
              です。

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