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こんな映画は見ちゃいけない! 

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真夜中のゆりかご こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/05/14

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/5/14   Vol.1656     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
            「真夜中のゆりかご」  です。

錯乱した妻を宥めるために芽生えた出来心を抑えきれなかった。秘密
が守られればうまくいくはずだった。ところが、事実を隠ぺいし嘘を
重ねるうちに、思わぬところから破綻する。物語は、わが子の死体を
他人の赤ちゃんと交換した男が罪の意識に苦悩する姿を描く。夜泣き
する子に精神が蝕まれていく美しい妻とおむつも替えてやらない若い
母親、上質な中流の暮らしと希望なき貧困層の日常。格差社会を象徴
する2つの家庭を通じ人間の愚かさを突き詰める過程はあくまでミステ
リアスだ。そして、繊細で濃密な感情をとらえた映像と丁寧な語り口
は根底に愛をしのばせ、怒りや憎しみよりもあたたかさを感じさせる。

刑事のアンドレアスは育児放棄されたジャンキーの乳児を発見、同月
齢の息子を持つ彼は他人事とは思えない。後日、アンドレアスの息子
が突然死、妻・アナが眠っているうちにジャンキーの子と取り換える。

アナは赤ちゃんの死を受け入れられない。当然血のつながらない子に
も拒否反応を示すが、アンドレアスの行為が自分のためと知って落ち
着きを取り戻す。一方、ジャンキーの男は、同棲相手が赤ちゃんの違
いに気づいているにもかかわらず聞く耳を待たず、挙句に誘拐をでっ
ち上げて死体を処分してしまう。

アンドレアスは真相に背を向けジャンキーを尋問するが、隠し通さな
ければならないと思いつつ発覚するのを期待している。保身と呵責、
良心と葛藤するアンドレアスの胸の内が痛々しいまでに切実だった。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                     「真夜中のゆりかご」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150324

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

     「ホーンズ 容疑者と告白の角」  です。

あんなに愛し合った彼女は殺されてしまった。身に覚えはない、だが
彼の犯行ということになっている。何も信じられない、誰も信じてく
れない。神を呪ってマリア像を破壊した男は、悪魔のしるしである二
本の角を額に生やす。物語は、他人の心を見抜き告白させる能力を手
に入れた主人公が独力で真犯人を探す過程を追う。笑顔の奥に潜む不
満や嫉妬・エゴと欲望、普段口にしない本音を引き出していく行程は、
彼にとって苦痛に満ちたものであると同時に恋人への思いを再確認す
る旅でもある。そして信仰や道徳といった社会の建前がストレスの根
源であり、自分自身に忠実な生き方こそが人間らしいと訴える。

恋人・メリンを惨殺されたイグは、彼女に対する殺人容疑で世間の注
目を集めている。味方は親友で弁護士のリーだけ。そんな状況の中、
イグは偽証をしたウエイトレスに嘘をついたと認めさせる。

イグはメリンから別れ話を切り出され、口論しているところを目撃さ
れている。一方でイグの兄・テリーがメリンを連れ出した後に彼女が
死体で見つかった事実が明らかになる。己を陥れた者たちへの復讐、
いまやイグにとって角は運命を切り開くための武器となり、悪魔に魂
を売ったはずがいつしか悪魔によって真実に導かれていく。

その姿は、いつも十字架を首から下げていたメリンの悲惨な最期が暗
示する、神の無力にも通じている。大切なのは見かけではないと、イ
グに憑りついた“それ”が証明していた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                「ホーンズ 容疑者と告白の角」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150511

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

        「脳内ポイズンベリー」  です。

少し話しただけなのにずっと気になっていた年下のイケメン。街で彼
と遭遇したヒロインの頭の中では、勇気を振り絞ってアクションを起
こせと言う人格と、傷つくのがオチだからやめておけと主張する人格
が格闘する。さらに直感や過去の経験を踏まえ、総合的に判断しよう
とするがなかなか決断に至らない。物語は、恋に悩む三十女の繊細な
思いを描く。5種類の精神活動を擬人化したキャラクターに葛藤や逡巡、
計算と不安を繰り返し演じさせることで彼女の内面の動揺を視覚化す
る試みは、ドタバタしすぎるが共感できる部分もあり、自分の優柔不断
さをのぞき見られている気分になった。感情と理性と記憶、それらが
バランスよく機能しているからこそ社会に順応できる。他愛ないラブ
コメを装って“心”の構造に切り込むメスは鋭い。

電車の中で早乙女に声をかけたケータイ小説家のいちこは、彼の部屋
に上がり込みそのまま一夜を過ごす。誕生日を迎えたいちこが30歳に
なったと言うと、早乙女は「ないわ〜」と反応、いちこは逃げ帰る。

早乙女もいちこに好感を持っているが、いちこの突飛な行動について
いけない。考えを言葉にしてくれと頼むが、いちこは口ごもる。その
後、編集者にも言い寄られるがどちらを選ぶか明確な答えは引き伸ば
す。このあたりの女心の複雑さは男からは不誠実にしか見えない。

ところが、平気で男の気持ちを踏みにじっても、女には女の思考回路
があると、5人の脳内キャラがわかりやすく解説してくれる。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                   「脳内ポイズンベリー」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150513

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

          「百日紅」  です。

きりりと引き締まった太い眉は彼女の強い意志を象徴する。目に見え
る光景に躍動感を加え、想像上の生き物には命を与え、地獄の苦痛は
リアルに描いた女絵師。仕事決して妥協はしないが、恋に奥手ゆえ男
女の睦み事だけは上手に筆が走らない。19世紀前半、映画はそんなヒ
ロインが見聞する江戸庶民の四季の移ろいを通じ、人間が抱える様々
な思いを散文的にスケッチする。隅田川にかかる大きな橋の上で行き
交う人々は生気にあふれ、一方で夜になると跳梁跋扈する物の怪たち
の気配は死の臭いを濃厚に放つ。そこにおどろおどろしさはなく、現
世と異界の境界があいまいだった当時の生死観を反映させていた。

北斎の名で浮世絵界に君臨する鉄蔵の娘・お栄は、才能を認められて
はいるが壁を越えられない。兄弟子の善次郎や盲目の妹・お猶と過ご
すうちに、己に足りないものは男性経験であると気づく。

浮世絵を思わせるような鮮やかなカラーで彩られたエピソードの数々
は、物質的にも精神的にも爛熟期を迎えた江戸時代の町人の暮らしを
再現する。貧乏長屋でもひもじさはなく、絵筆一本で飯が食える身分
を結構楽しんでいるお栄。それは画才以上に鉄蔵から受け継いだ処世
術でもある。また、お猶の身を誰よりも案じ、暇があれば外に連れ出
して街の空気に当たらせたりする。

その、他者を思いやる心こそ彼女が到達した独自の作風、見えないは
ずの金魚を愛でるお猶を活写した絵には彼女の願いが凝縮されていた。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                   「百日紅」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150512

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

          「ズタボロ」  です。

決斗に赴くときの昂揚感が忘れられない。さらに、殴られ蹴られボコ
ボコにされてもなお、内なるエネルギーを解放しアドレナリンを体中
に巡らせる快感は、肉体的な痛みを超越した満足を得られる。そして、
一緒に闘った仲間との友情が認められたい欲求を満たし、己を唯一無
二に高めてくれるという陶酔に浸らせてくれる。物語は、不良を気取
る高校生が様々な抗争でヤクザや準構成員と関わりを持つ中、本当に
大切なものは何かに気づいていく過程を描く。中途半端な覚悟ではつ
ぶされるだけ、死に物狂いで走り続ける奴だけが生き残る厳しい世界
の一端を見せられて、怖気づき迷い苦悩しながら進むべき道を模索す
る主人公たちの破滅的な青春は、あまりにも切なく哀しい。

中学時代の友人と立川の暴走族に入ったコーイチは、毎日続く先輩の
ヤキ入れに耐えかね脱退しようとしている。ある日、新宿のグループ
と衝突、彼らからも暴走族からも逃げ回る身になる。

学校では植木や鬼といった新しい友達ができるが、所詮高校生の力で
は暴走族や半グレに太刀打ちできず、ヤクザの叔父にケツ持ちを頼も
うとする。テキヤの屋台で働いているうちは彼女ができたりもするが、
本物のヤクザが債務者を殺すのを見て躊躇するコーイチ。

一方でヤクザを嫌う母はコーイチの行動が気に入らず、体を張って止
める。口は悪いが腹は坐っている、そんな強烈な肝っ玉母さんを南果
歩が圧倒的な存在感で演じていた。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                   「ズタボロ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150514

    を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

いよいよ「大阪都構想」の是非を問う住民投票が迫ってきましたが、
今週発売の週刊誌を読むと、事前調査の不利を覆して橋下市長側に軍
配が上がりそうな予感。

「週刊現代」は橋下勝利を確信し今後の大阪都を論じているのに対し、
「週刊文春」まだどちらにも決めかねている様子。「週刊新潮」は反
対派の論客に対談させネガティブキャンペーンを張っています。

確かに都構想にはリスクもあるけれど、大阪はここ30年“地盤沈下”
しっぱなし。これからの30年を考えると、リスクを取らないリスクの
方が大きいはず。

再生するには一度ぶっ壊す必要アリ。それには若年層が賛成票を投じ、
自分たちの未来を自分たちで選択すべきだと思います。

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      次回配信予定は5/16、作品は
         
        「国際市場で逢いましょう」
         
              です。

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