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こんな映画は見ちゃいけない! 

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ザ・トライブ こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/04/18

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/4/18   Vol.1651    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
            「ザ・トライブ」  です。

小学部の卒業式、大人は子供の晴れ姿に優しいまなざしを送る。祝福
も感謝も視線とゼスチャーのみ。町の外れの聾学校、生徒は手話を覚
え世間の役に立とうと懸命に努力している、はず。ところがそんな先
入観は年長者のクラスになると一変、暴力と不法行為が跋扈する弱肉
強食の世界と化す。言葉として発せられる音は一切ない、だからこそ
殴られ蹴られた時の骨のきしみや子宮をかき回されるうめきが強調さ
れ、苦痛がリアルに伝わってくる。もちろんこの学校で教育は施され
る、しかし、ある意味一番大切なサバイバル能力も教えているのだ。

新しいクラスの編入した“彼”は、不良グループの洗礼を受けるが、
根性を見せて仲間と認められる。グループのリーダーは夜毎クラスの
女子2人を連れ出し、トラック運転手相手に売春をさせていた。

年少者への恐喝、通行人への強盗、列車内での置き引き。売春の手引
き以外にもカネになることならためらわず手を出すグループの少年た
ち。だが“彼”は売春少女のひとりと関係を持ったことから、恋とい
う感情に押しつぶされていく。

ワンシーン・ワンショットで撮影された流麗な映像は、殺伐としたウ
クライナの冬の空気と少年たちのギスギスした心をとらえ、一瞬の油
断もならない緊張をはらむ。一方で思いが高ぶるほど手話の動きは激
しくシャープになり喜怒哀楽が強調される。21世紀のサイレント映画、
この斬新な体験は観客のイマジネーションに対する挑戦なのだ。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                     「ザ・トライブ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150305

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

          「アルプス 天空の交響曲」  です。

かつては畏敬の念を持って頂きを見上げるだけだった。冒険者たちの
挑戦を長く拒み続けていたが、道具の発達で征服された。そして、今
や空撮用のカメラを手に入れ、さらなる高みから山々を見下ろす。映
画はヘリコプターに取り付けられた専用カメラでアルプスの雄大な山
並みを散文的にスケッチする。ほぼ垂直に切り立った奇岩、年々消失
していく氷河、荒れた山肌と水量豊かな湖。一方で絶壁のわずかなス
ペースにたたずむ山小屋は建築技術を誇示したい人間の欲望を象徴し
ている。だが、どれほど大きな峰々も、大規模な開発も、人々の営み
も、上空から俯瞰した風景はスケール感が違い、むしろ地球と対比し
た場合の小ささが強調される。これこそが“神の視点”なのか。

ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸がぶつかり隆起してできたアルプス山
脈。19世紀以降リゾート化され、登山家たちの心を捕まえて離さない
名峰の数々はカジュアル化し、スキー場と夏の避暑地としてにぎわう。

当然天気のいい日にしかヘリを飛ばせない。ゆえにカメラがとらえた
アルプスは穏やかな天候に恵まれた“表の顔”ばかり。突き抜ける青
空と氷河期から解けずに残った氷雪、命の息吹に満ちた木々の緑と脆
く崩れやすい無機質な岩肌などの天然の色彩が絶妙のコントラストを
なし、地上からの映像では表現できない深い奥行と高低差を再現する。

それは決して目くるめく浮遊感ではなく、重力から解放された精神が
飛翔の自由を味わっている感覚だ。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                   「アルプス 天空の交響曲」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150307

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

          「カイト KITE」  です。

法も秩序も崩壊した社会、無法者が幅を利かせて活気を失った街は暗
冷色にくすんでいる。唯一、ヴィヴィッドな赤を放つ彼女の髪は、己
の人生を生きる強固な意志が残っている証拠。たとえそれが、愛や希
望などではなく、怒りと憎しみであったとしても、目的を果たすまで
は前に進み続けるのみ。物語は、人身売買組織に父を殺された少女が
仇を取ろうとする姿を描く。消えていく記憶、錯綜する情報、裏切り
と嘘。そしてたどり着いた驚愕の真実。硬質でスタイリッシュなショ
ットとスピーディな編集、ノリの効いた音楽、それらイメージ重視の
TVCMをつないだような映像は刺激に満ち、童顔なのに凶暴なヒロイン
の未熟さを補っている。復讐でしかアイデンティティを確認できない、
さらにその思いも次第に薄れていく彼女の喪失感がはかなく切ない。

売春組織のボス・エミールを探し出そうとするサワは、刑事・カール
から支援を受けながらポン引きたちに近づく。だが、心身強化に常用
していたドラッグのせいで両親の顔を思い出せなくなっていく。

チンピラの頭には躊躇なく銃弾をぶち込み、悪党の急所には正確に刃
物を突き立てる。妖しく艶めかしいサワの姿態に隙を見せたら最期、
男たちは血まみれの死体に変り果てる。そのあたりの描写はグロテス
クになる一歩手前で抑制しているので不快感には至らない。

一方で格闘シーンや暗殺テクニック、逃走時に見せる身体能力に目新
しさはなく、あくまでサワの感覚で“世界”の荒廃が強調される。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                   「カイト KITE」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150417

    を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

液晶パネル事業の不振にあえぐシャープが本社ビル売却も含めた大幅
なリストラを断行するそうです。

電子手帳のザウルスやスマホのアクオスなど、シャープ製品を愛用し
ていた身には寂しいニュース。

そろそろスマホの買い替え時なのですが、シャープ製品は1年近く新機
能のものが出ておらず迷っています。

今度は経営再建が軌道に乗りつつあるソニー製に乗り換えるべきでし
ょうか。。。

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      次回配信予定は4/23、作品は
         
        「セッション」
         
              です。

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