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こんな映画は見ちゃいけない! 

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グッド・ライ こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/04/16

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/4/16   Vol.1650    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は
 
            「グッド・ライ いちばん優しい嘘」  です。

貧しいけれど平和な暮らしを営んできた人々は圧倒的な暴力の前で一
瞬にして略奪され、無事だった者は苦痛に満ちた長い旅に出るしかな
い。物語はスーダン内戦で孤児となった子供たちが、難民キャンプを
経て移住、米国での日常に馴染んでいく過程を追う。水も食料もない
着の身着のままの放浪、とりあえず危険はないが退屈なキャンプ、期
待に胸を膨らませて臨んだ文明社会。流転する運命の中でもしっかり
とリーダーの自覚と人間としての矜持を保つ主人公の姿に、生きるこ
との苦難とすばらしさが凝縮されていた。時には“よい嘘”が未来に
つながると学んでいく展開は、希望が人生を明るくすると訴える。

武装勢力に両親を殺されたマメールら兄弟は、安全な場所を目指す途
中ジェレマイアとポールの兄弟と合流、4年間の漂流の末にキャンプに
たどり着く。そこで教育を受けて13年、彼らは渡米を認められる。

見聞きするものすべてに目を丸くするマメールたちだが、職業斡旋業
のキャリーの援助で徐々に米国の価値観を身につけていく。彼らはそ
の間、悲惨な体験を米国人に話したりはしない。むしろ結婚していな
いキャリーの心配をしたりする。仲間だけでなく身近な人を思いやる
心を失わないマメールに、家父長の責任感を感じた。

そしてキャリーもまた、離れて引き取られたマメールの妹を探すなど、
彼らのケアに仕事以上の充実感を覚えていく。人は他人と関わりの中
で成長するのだ。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                     「グッド・ライ いちばん優しい嘘」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150207

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

          「海にかかる霧」  です。

大漁に沸いた時代ははるか昔、水揚げは細り、いまや漁船の修理もま
まならない。融資は断られ、妻には浮気され、まとまったカネが必要
になった男は仕方なく違法行為に手を染める。ところが、部下や自分
の安全すら危ういボロ船では、見知らぬ他人の命まで責任はとれない。
物語は、不法労働者の密航に手を貸す漁船の乗組員たちが徐々に悪意
に侵食されていく姿を描く。逃げ場のない小さな漁船、海に落ちれば
生き残れる保証はない。飛び散る鮮血、切断された人体、地獄絵図の
中で葛藤し苦悩しながらも生存本能をむき出しにしていく過程は、人
間の本性はエゴイズムであると訴える。

資金繰りに窮したカン船長は、中国在住朝鮮族の密入国を請け負い、
時化の夜に密航者を受け入れる。公海上で船を乗り移る際に転落した
女・ホンメを助けた若手乗組員ドンシクは、彼女を機関室に匿う。

狭い甲板の上で雑魚寝する密航者たち。彼らはみな賃金の高い韓国に
出稼ぎに出て、故郷の実家に仕送りしようとする善良な人ばかり。身
の上話をするうちに、乗組員たちも彼らが“荷物”ではなく誰かの家
族であるという事実を実感していく。そでれも、船長のカンだけは無
事に彼らを送り届けるために厳しい態度を取らざるを得ない。

つかれば逮捕され失業する乗組員と強制送還される密航者、反目しな
がらも相手を信じるしかない。一触即発の空気を孕みながら漁船は合
流地点を目指す。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                   「海にかかる霧」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150224

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

              「バードマン」  です。

“お前はこんなところにいるべき男ではない”と、もう一人の自分が
ヴィジョンを見せる。スーパーヒーローを演じていた時代の名声を取
り戻せとそれは囁く。ところが目の前には難問が山積し、思い通りに
いかないことばかり起こり、些事に追われストレスがたまる。物語は
かつての映画スターが演劇で再起を図る姿を描く。演技を志した原点
に回帰したはずなのに胸によぎるのは安っぽいプライド、現実と妄想
が入り乱れる中で彼は本当に目指していたものに気づいていく。主観
と客観だけでなく数人の登場人物の視点と思惑が混在し凝縮された2時
間近いワンショット風の映像は、まさしく人間の感情そのもの。苛立
ちと焦り、怒りと後悔、さらには愛と人生にまで言及し、その緊張感
はぎりぎりまで追い詰められた主人公の心理を体感させてくれる。

元ハリウッドスターのリーガンは、ブロードウェイから復活を目指す
べく準備に余念がない。だが、セリフ合わせ中に共演者が大けが、代
役のマイクは鼻持ちならない男で勝手にセリフを改変していく。

リーガンの娘・サムは元ジャンキーで独特の世界観を持っている。彼
女にあまり愛情を注いでやれなかったリーガンは負い目を感じ、サム
もまたリーガンに対し父娘らしくない距離感で接している。ある時、
サムが過去の栄光を忘れられないリーガンに辛辣な言葉を投げつける。

いまや天命を知り耳順を迎える年齢だろう、迷いもがき続けても前に
進もうとするリーガンの背中に、「負けるな!」と声をかけたくなる。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                     「バードマン」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150413

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

          「JIMI:栄光への軌跡」  です。

天才的なテクニックで伝説となったギタリストは、どのようにして見
いだされスターへの階段を駆け上っていったか。並みの映画ならば、
夢を抱いた若者が不断の努力と革新的なアイデアで世間に衝撃を与え、
チャンスをつかむ姿を描くはず。だがこの作品は、主人公の真摯な態
度や上昇志向、愛や苦悩とは距離を置き、いかに自己中心的の考え方
しかできない幼稚な男だったかにスポットを当てる。ゆえに、創作の
苦しみや挫折の失望、再起の希望や成功の陶酔といった要素はほとん
どない。代わりに、彼に直接かかわった人々の“裏切られた後味の悪
さ”を体感させるまったく新しいスタイルの伝記になっている。

NYの小さなクラブに出演していたジミは、彼の才能を見抜いたリンダ
に声をかけられる。リンダはジミーをチャスに積極的に売り込み、チ
ャスはジミをロンドンでデビューさせようとする。

ロンドンでのライブの後、いろいろ骨を折ってくれたリンダの前でジ
ミはグルーピーのキャシーといちゃつき、リンダを怒らせる。その後
も黒人のために戦えと提案されも拒否したり、ステージで演奏をボイ
コットしたり、キャシーに暴力を振るったりと、周りの人々に迷惑を
かけてばかり。基本的にジミを魅力的な人物にとらえる意図は映像か
らは感じられない。

神の指先つサイテー男、語り尽くされたエピソードに頼らずネガティ
ブな情報を前面に出す手法は、彼もまた人間だったという共感を呼ぶ。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                   「JIMI:栄光への軌跡」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150415

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

          「カフェ・ド・フロール」  です。

彼女は誰よりも彼を大切にし、彼が死ぬまで思いを貫くはずだった。
彼もまた彼女との絆は永遠だと信じていた。魂で結ばれた相手と出会
うまでは。並行するふたつの時代、前後する小過去と大過去と今、錯
綜する夢と記憶と感情、それらバラバラだったピースをひとつずつ組
み立てていく過程で浮かび上がる大いなる意図は、人はなぜ生まれ何
のために生きるのか、答えの一端を提示する。物語は現在のモントリ
オールで暮らすひとりの男とふたりの女、そして20世紀パリのシング
ルマザー家庭の、愛の彷徨を描く。世界は耳目でとらえた事象だけで
はない、未来は己の意志だけで決まるのではない。もっと大きな“運
命の力”を感じることで人生の真実を理解できるとこの作品は訴える。

妻・キャロルと平穏に過ごしてきたアントワーヌは、ローズを初めて
見た瞬間体を貫いた衝撃が忘れられず、彼女と同棲し始める。娘も引
き取り幸せを満喫するが、キャロルへの罪悪感が拭いきれない。

一方、ダウン症児・ローランを女手ひとつで育てるジャクリーヌ。ロ
ーランは母を頼りジャクリーヌは息子を守る、ふたりの関係は彼らだ
けで完結した小宇宙のようで、逆境でも一緒にいれば満たされている。
それは母としての決意でもあり、彼女自身の生きる糧でもある。とこ
ろがローランはヴェラという女の子と恋に落ちる。

教えていない“愛”の意味を、ローランがジャクリーヌに話すシーン
は、どんな言葉よりもその本質を伝えていた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                   「カフェ・ド・フロール」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150414

    を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

1万2千人以上ものフィリピン人女性を買春した横浜の中学校校長が逮
捕されました。容疑は彼女たちとのわいせつな写真を保管していたと
いうことで「児童買春・ポルノ禁止法違反」

つまり“記念写真”がみつからなければ逮捕されなかったということ。
被害者も日本人ではなく日本国内での犯罪でもありません。また、被
写体がすべて成人ならばこの罪には問われなかったのでしょうか。

気になるのは、TVや週刊誌が容疑者を極悪人のように扱っていること。
確かに教育者としてはあるまじき破廉恥な行為ですが、少なくとも自
分から被害を訴え出た女性はいないはず。

マスコミ関係者は容疑者を声高に糾弾できるほど清廉な人生を送って
きたのだろうか。。。

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      次回配信予定は4/18、作品は
         
        「ザ・トライブ」
         
              です。

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