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こんな映画は見ちゃいけない! 

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ソロモンの偽証 こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/03/07

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/3/7   Vol.1641     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は

        「ソロモンの偽証 前篇・事件」  です。

誰かが嘘をついている。嘘をついていない者も、見て見ぬふりをする。
みんな事実から目を背け、なかったことにしている。先生も、親も、
警察も、そして生徒たちも。わが身を守るため? それとも学校の体
面を保つため? 物語は校内での生徒の死を機に、この中学にくすぶ
っていたいじめ問題を浮き彫りにする。自殺なのか他殺なのか、復讐
なのか事故なのか。カメラはあらゆる登場人物の内面に潜む人間の本
質に迫っていく。優越感と劣等感と無関心が渦巻く教室、事なかれ主
義がはびこる職員室、過保護と無理解に蝕まれる家庭。そんな中、立
ち上がったヒロインが、死んだ生徒の訴えを明らかにしようとする。

2学期最後の日、涼子と野田は雪の中で柏木の死体を発見する。警察は
状況から飛び降り自殺として処理するが、後日、柏木は大出ら不良グ
ループに殺されたと書かれた告発状が涼子と校長のもとに届く。

告発状の存在がTVレポーターに漏れ、担任も校長も追い詰められる。
普段の行状から大出も犯人扱いされるが、担当の刑事は告発状の差出
人を特定したうえ、稚拙な内容を否定する。しかし納得いかない涼子
は、大出を被告人とする疑似刑事裁判の開催を主張する。

その過程で、仲良し2人組のパワーバランス、涼子の葛藤、高圧的な教
師に対する反感などが一気に噴出する。それらは誰もが胸の奥に抱え
ている残酷で無責任な負の感情。共感したくはないが認めざるを得な
い不快さが映像に充満し、見る者の心に鋭いナイフを突き立てる。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                     「ソロモンの偽証 前篇・事件」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141227

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

     「パリよ、永遠に」  です。

ワルシャワは瓦礫となった。ベルリンは焼け落ちた。しかし、パリは
無傷で守らなければならない。町自体が壮大なヨーロッパ文明の蓄積
であり、次世代に遺すのが受け継いだ者の責任だから。物語は第二次
大戦末期、パリ破壊を命じられたドイツ将軍と計画を止めようとする
中立国外交官の駆け引きを描く。闇の中から現れ将軍の説得する外交
官、命令は絶対と拒む将軍。その過程で将軍は、蛮行を厭う本心と家
族の安全を天秤にかける。言葉こそ何が正しいかを定義し、人を動か
す。いまだ変わらぬパリの美しさが理性の勝利を謳いあげる。

ドイツ軍在パリ総司令官・コルティッツは、歴史的建造物やセーヌ川
に架かる橋に仕掛けた爆弾に着火命令を下そうとしていた。長い会議
の後、スウェーデン総領事・ノルドリンクの訪問を受ける。

ドイツの敗色は濃厚、だがヒトラーの狂気はパリへの憎しみに転じて
いる。コルティッツは祖国には忠誠は誓っても、ナチスには同調しな
い。ノルドリンクはそんな彼の矜持を巧みにくすぐりつつ、良心に語
りかける。ナポレオン3世の隠し階段がきちんと機能するなど、歴史上
の人物を同じ部屋にいる感慨がコルティッツの心に湧き、ついに妻子
を人質に取られ仕方なくヒトラーに従っているという本音を引き出す。

一幕芝居風テンポの会話は緊張感の中にも教養と薀蓄がちりばめられ、
戦争と和平を繰り返してきた独仏のはざまでもお互い対する敬意を失
わない知識人は確かに存在していたことを訴える。

        お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「パリよ、永遠に」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150205
    を参考にしてください。




 本日はもう1本

            「振り子」  です。

お金はなかったけれどふたりでいるだけで楽しかった。娘が生まれた
後は家族と未来に希望を持たせてくれた。不幸のスパイラルを転落し
ている間も、ずっと笑顔を絶やさなかった。そして彼女の深い愛に気
づいたときにはもう手遅れになりかけていた。できるならタイムマシ
ンで過去を修正したい、そう願う主人公の胸の内が切実だ。映画は、
若くして結ばれた男と女が苦労とすれ違いをの果てに、ともに寄り添
いあおうとする姿を描く。そんな彼らの暮らしを見つめる柱時計が刻
む音が切なさを誘う。人生とは、時計の振り子のように右に行ったり
左に行ったりの繰り返し。真ん中で止まっていてはダメ、様々な体験
を経て美しいものに昇華されていくのだ。

ヤンキーに絡まれているサキを助けた大介。ふたりはたちまち恋に落
ち、サキの父の反対を押し切って結婚する。やがて娘を授かり、バイ
ク修理屋を開く目標に向かって働く大介を、サキは陰で支えていた。

しかし、騙されて借金を背負った大介は会社員になり、慣れないデス
クワークにストレスはたまるばかり。心が荒れ、浮気し、あまり家に
寄りつかなくなる。だがサキは一切不機嫌な顔を見せず帰ってきた大
介を迎え手料理で励まそうとする。一途で健気なサキの優しさに耐え
かねて、ますますいたたまれなくなる大介。

涙を流した大介に“うれしかった”とサキが言ったのと同様、大介も
本当はサキに怒鳴ってほしかったはず。そのあたりの微妙な感情の齟
齬が、夫婦という最も近い他人との距離感をリアルに再現していた。


        お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「振り子」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150304

    を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

相互監視が常態化した管理社会でひとり国家権力に立ち向かう男の活
躍を描いた、伊坂幸太郎の新作「火星に住むつもりかい」を読みまし
た。

現代の魔女狩りともいえる残虐な拷問と死刑を繰り返す「平和警察」
に対し、誰もが口をつぐむか他人を密告する、“自由”を奪われた社
会が不気味なリアルさで描写されます。

また「正義の味方」が使う武器が強力な磁石というのもユニークで、
「X-メン」のマグニートを思い出させます。

最後まで正体を見せなかった謎の警察官の飄々としたキャラクターが
とても魅力的でした。。。

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      次回配信予定は3/12、作品は
         
        「イミテーション・ゲーム」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
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