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こんな映画は見ちゃいけない! 

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妻への家路 こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/03/05

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/3/5   Vol.1640     ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は

          「妻への家路」  です。

愛した過去は記憶の中でしっかりと生きている。ところが、今はすっ
ぽりと抜け落ちている。夫と20年間離れて暮らした妻は、一度きりの
再会の機会を逃したがために心の一部が壊れてしまった。物語は、そ
んな妻を支える夫の献身を描く。夫を助けられなかった妻の後悔、彼
女の胸中を慮る夫の寛容。懐かしさとうれしさと安心、疑念と不安と
悲しみといった複雑な感情が、見つめ合う目と目の間で交差し、カメ
ラはそれら言葉にならない思いを丁寧にすくい取る。お互いの愛は本
物なのに、決して交わらないふたりの気持ちが切なくも哀しい。だが、
交わらないからこそ到達できる至高の境地が横たわる。運命大きな流
れには逆らえないが、できる限りのことを続ける夫の姿が愛おしい。

釈放された焉識が帰宅すると、妻の婉玉は焉識を認識できず全くの他
人のように彼を扱う。焉識は近くに部屋を借り、婉玉の脳機能を回復
させるためかつて収容所で書いた大量の手紙を彼女に読み聞かせる。

娘の丹丹はバレエで革命への情熱を示そうとする。ダンスで喜怒哀楽
を表現するはずの芸術が共産党への忠誠心を測る道具に堕している、
そのマスゲーム風の振り付けが文革の非人間性を象徴する。ピアノを
弾きフランス語も理解する焉識は裕福でリベラルな知識人階級だった
のだろう、反右派闘争で標的にされても理性と優しさは失わない。

文革に人生を奪われた、それでも婉玉を通じて父娘関係が修復していく
過程が救いとなって、焉識に希望を与える。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                       「妻への家路」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150109

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

     「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」  です。

腕の立つコックではあるが父親としては失格だった。プライドが高す
ぎるゆえに雇われる立場には我慢ならなかった。ソーシャルメディア
の便利さを過信しすぎて足元をすくわれた。だが、ゼロからやり直す
決意をすると意外にも運命は好転し始める。カネや名誉ではない、人
間に本当に必要なものは信頼できる友人と愛情を注ぐ対象。物語はク
ビになった料理長の、おんぼろトラックを改装した屋台での旅を描く。
フルコースは作れない、ならば食材の風味を生かしたシンプルな料理
で勝負する。その発想の転換とSNSを効果的に使った宣伝でたちまち行
列ができる。料理映画の王道とネットの発信力を融合させ、家族の再
生とロードムービーの要素を加えた欲張りな展開に満腹感を覚えた。

LAの有名レストランのシェフ・カールは料理批評家の来店に合わせて
新作を考案するが、オーナーの反対で通常のメニューを供す。ブログ
で酷評されたことから反論するが、彼の悪口は一夜で拡散してしまう。

オーナーとの対立は決定的になり、店を辞めたカールは元妻・イネス
の計らいでマイアミに飛ぶ。かねてから溝ができていた息子・パーシ
ーと久しぶりに持てた2人だけの時間。イネスの最初の夫の好意でフー
ドトラックを手に入れたカールは、薄切り肉にチーズや野菜を挟みソ
ースで味付けしてパンに挟むキューバサンドの屋台をオープンさせる。

パンの焦げ目にまで気を使う繊細さに、客においしいものを食べさせ
たいというカールの思いが凝縮されていた。

        お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150303

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

            「イーダ」  です。

光と影のコントラストが紡ぎだす豊穣なイメージは、ヒロインの世界
から曖昧さを削ぎ落とし、闇に葬り去られた真実を抉り出す。ただ、
両親がどんな人だったかを知りたい、きちんと悼んでやりたいと願う
だけなのに、彼女の訪問はつらい記憶を封印した人々にとっては死の
忌まわしさが付きまとう。物語は信仰と清貧に身を捧げる少女が自ら
のアイデンティティを探す旅を描く。カトリックの修道女になる予定
だったのに、体に流れているのは異教徒の血。その事実を受け止めつ
つも、なぜ家族の中で自分ひとり助かったのかを探るうちに、戦争に
翻弄された運命に触れる。

修道誓願を前におばのヴァンタと面会を許された少女は、イーダとい
う本名とユダヤ人の出自を聞かされる。かつて検事だったヴァンタと
共に、イーダは両親が住んでいた小さな村を訪ね、住人に話を聞く。

ドイツとソ連双方に蹂躙された第二次大戦の惨禍が大人たちの脳裏に
は生々しく残っている1960年代初頭のポーランド。ある者はナチスに
協力し、ある者はコミュニストの手先になった。生き残るために他人
を売り、裏切った者に報復し、支配者が変わるたびに同国人同士で粛
清を繰り返してきたのだろう。

イーダの来訪はせっかくおさまりかけた感情を彼らに再び呼びさまさ
せ苦悩の種をまく。彼女の両親の死の真相を関わる者にとって、良心
の呵責は耐え難い苦痛だったに違いない。

        お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「イーダ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150302

    を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

2019年ラグビーW杯の開催都市が発表されました。それなりにラグビー
が盛んなところが選ばれたとは思いますが、5万人規模のスタジアムは
客が埋まるのでしょうか?

1980〜90年代は大人気スポーツでしたが、国際試合で強豪国との力の
差が明らかになると競技人口も低迷、すっかりサッカーにとってかわ
られました。

ラグビーW杯で思い出すのがクリント・イーストウッドの「インビクタ
ス」。地元開催で優勝を目指す南アチームの活躍を描いています。

あの映画の中で、満員の観衆が「オレ〜オレオレオレ〜」と、日本で
はサッカー応援の歌を口ずさんでいましたが、あの謎がいまだにわか
りません。。。

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      次回配信予定は3/7、作品は
         
        「ソロモンの偽証 前篇・事件」
         
              です。

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