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こんな映画は見ちゃいけない! 

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くちびるに歌を  こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/02/28

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/2/28  Vol.1639   ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は

          「くちびるに歌を」  です。

私はなぜ生まれてきたのか、何のために生きているのか。大人でも迷
うその問い、15歳の少年少女には限りなく重い。明確に自覚している
者もいるが、答えを模索しても言葉にはできない者がほとんど。数年
後の将来はおぼろげながら見えてきているがまだ形を成していない中
学生たちの、人生への微妙な不安と期待がリアルに再現される。映画
は離島の中学校に赴任してきた元ピアニストが、コーラスを通じて音
楽がもたらす感動を再発見する過程を描く。従来の学園モノとは反対
の構図を取り、やりたいことは大人になってから探しても遅くないと
訴える。眼前のタスクを精一杯やり抜く気持ちが未来につながるのだ。

音楽の代用教員・ユリは合唱部の指導を任されるが全くやる気ナシ。
男子部員を入部させ部長のナズナを怒らせる。ユリはコンクールを目
指す部員たちに「15年後の自分」に宛てた手紙を書く課題を与える。

成り行きで合唱部員になった悟は素晴らしいボーイソプラノだが、家
庭の都合で思うように練習時間が取れない。だが、ユリは彼の事情を
知っても両親を説得しない。このあたり、傷心を抱えてこの島にやっ
てきたユリの喪失感の深さを物語る。それでも、“兄の世話をするの
が自分の存在理由”という悟を見て、少しずつユリも変わっていく。

最愛の人を失って世界一不幸と思っていたのに悟はもっと過酷な運命
を背負っている、そう気づいてもう一度ピアノに向かうユリの姿は、
過去にきちんと向き合わないと前には進めないと主張していた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                       「くちびるに歌を」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141220

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

            「さいはてにて」  です。

客の来訪を拒むかのごとき険しい海沿いに建つ休業中の民宿で寝起き
する家族。シングルマザーは半ば育児放棄、残された小学生の姉弟は
健気に学校に通い辛い現実にさらされている。物語は彼らが暮らす海
岸にカフェを開いたヒロインが、芳醇なコーヒーの香りで荒れた母子
を癒していく姿を描く。幼いころ父を捨てた呵責から一人暮らしを続
けているけれど、人間嫌いなわけじゃない。救いを求める者に手は差
し伸べるが、必要以上には相手の事情に踏み込まない。依存するのも
されるのはイヤ、とはいっても突き放したりしない。そんな彼女の周
囲との微妙な距離感が、濃密さを避ける現代の人間関係を象徴する。

漁に出たまま行方不明になった父の船小屋をカフェに改装した岬は、
眼前の民宿に住む有沙と翔太を店に招く。彼らは母・絵里子がときお
り連れ込む怪しげな男を怖がっていた。

巨大な機械でコーヒー豆を焙煎する岬。丁寧に挽かれ一杯ずつ淹れら
れたコーヒーは家庭訪問で疲れた有沙の担任の心身をほぐす。その過
程は、後悔しないように生きてきた岬の人生そのもの。父の思い出は
船小屋で弾いてくれたギターだけ、だから父との再会を信じている。

頭では“もう死んでいる”のは理解している、だが心は頑なに否定す
る。そのあたりの、理性と感情の矛盾した動きを、永作博美は抑制の
効いた演技で表現する。父親不在の有沙たちを無条件で甘やかさない
岬の厳しさは、甘ったるい「女性映画」とは一線を画していた。

        お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「さいはてにて」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150122

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

            「君に泳げ!」  です。

怒ったコブラのような圧倒的に広い肩幅、その上に乗った小さな顔、
引き締まったウエストと張り出した尻。主人公のひとりを演じるソ・
イングクの、鍛え上げられそぎ落とされた肉体がスイマーの役柄にリ
アリティを与えている。プールを500往復するスタミナもラスト50メー
トルを無呼吸で泳ぎ切る肺活量も、彼の発達した胸郭が大いに説得力
を持たせていた。映画は高校水泳部に所属する2人の競泳選手が互いに
意識しながら五輪を目指す姿を描く。だが、天才肌と努力家、無産階
級とブルジョア、正反対の性格と境遇の彼らがライバルとなるのは、
水泳ではなく恋。極限まで自分を追い詰めトレーニングに励む動機が、
好きな女を手に入れるためというのが微笑ましい。

高校を退学になったウォニルと暴力事件で代表メンバーを外されたウ
サンは体育専門高校に転校する。しかしウォニルは一向に練習に身を
入れず、ウサンは水泳部の空気が肌に合わず独自のメニューをこなす。

ジュニア時代からホープと目されていたウォニルは父の死で水泳から
遠ざかっていたが、ポテンシャルは衰えていない。一方のウサンはエ
リート主義の父から多大なプレッシャーをかけられている。そんな2人
が様々な紆余曲折を経た後友情を深め、幼馴染のジョンウンをめぐっ
て初めて泳ぐ目的を見出していく。

科学的トレーニングで身体能力を高めるウサンと、廃プールでひたす
ら泳ぎ山野を駆け巡るウォニルの対比が「ロッキー4」を思わせる。

        お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「君に泳げ!」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150131

    を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

川崎の中学生惨殺事件で犯人と疑われる少年が逮捕されました。時間
がかかったのはやはり18歳という“少年”だったから警察が慎重にな
ったからでしょう。

18歳と言えば日本でももうすぐ選挙権が与える趨勢。責任ある大人と
考えて問題はなく、実名と顔写真の公開を要望する声も高まっていま
す。

まして今回は明らかな凶悪犯罪。TVや新聞は人権屋弁護士の抗議を恐
れて自粛するでしょうが、来週発売の「週刊文春」と「週刊新潮」は
実名報道に踏み切るはずです。

いずれにせよ、ネットで探せば見つかる時代、あまり匿名報道にする
意味はないと思いますが。。。

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      次回配信予定は3/5、作品は
         
          「妻への家路」
         
              です。

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